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シリーズ生誕から10年。ゲームポットとテクモのキーマンに聞く,「モンスターファームオンライン」の目指すものとは?
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印刷2007/08/22 15:31

インタビュー

シリーズ生誕から10年。ゲームポットとテクモのキーマンに聞く,「モンスターファームオンライン」の目指すものとは?

 コンシューマゲームの人気シリーズがオンライン化された作品として,注目を集めている「モンスターファームオンライン」(以下,MFO)。過去のモンスターファームシリーズの特徴であるCD/DVDからのモンスター再生をメインフィーチャーとして,そのモンスターの育成,戦闘,対人戦などを楽しめる作品である。7月上旬にはネットワークトライアルとして小規模な動作テストが行われ,そこで初めて,限られたテスターにゲームの仕様(の一部)が明らかにされた。現在は,クローズドβテストの日程がいつアナウンスされるのか,という状態だ。

 500名のテスターのみで実施されたネットワークトライアルに参加できず,続報が気になっている人も多いのではないだろうか。――というわけで,ゲームポットにお邪魔して,本作のこれまでと今後に関するあれこれを聞いてきた。今回のインタビューに応じてくれたのは,開発元であるテクモの本作プロデューサー 高崎俊行氏,ゲームシステム担当 アシスタントディレクター 井内毅氏,アートディレクション担当 アシスタントディレクター 寺田努氏と,運営元ゲームポットの企画運営チーム サブマネージャー 坂本慎治氏だ。

 今回のネットワークトライアルの結果を,開発元としてどう受け止めているのか,プレイヤーからのフィードバックにどのように対応するか,クローズドβテストへ向けてどのような機能追加があるのか,などを中心として話を聞いてみた。オフィシャル情報の大部分が開発者ブログ頼りとなっているだけに,プレイヤーにとっても興味深い情報を引き出せていると思う。ぜひ一度目を通してみてほしい。



■MFOは,軸足を過去に置かない

左から:テクモ 高崎俊行氏,同 井内毅氏,同 寺田努氏,ゲームポット 坂本慎治氏
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 まず,7月13日,14日に実施されたネットワークトライアルについて聞かせてください。今回のテストは大きなトラブルもなく無事終了しましたね。

坂本慎治氏(以下,坂本氏):
 はい,今回行ったネットワークトライアルの本筋である,サーバーへの接続やゲームプレイの部分に関しては,大きなトラブルはありませんでした。2日間という限られた時間ですけどね。

4Gamer:
 その一方で,ゲームクライアントが重いという声がプレイヤーからあがっていたようですが,これについての原因は特定できたのでしょうか?

井内毅氏(以下,井内氏):
 クライアントの内部処理が原因だと判明したので,すでに対策に移っています。

4Gamer:
 なるほど。ということは,次回のテストでは問題は解決されていると考えてよいのでしょうか?

高崎俊行氏(以下,高崎氏):
 そうですね。ただ,私達はこれまでコンシューマゲームをメインに開発を行ってきましたので,PCでの開発はなかなか難しい面があります。当たり前ですが,PCでは個々の環境によって問題の再現性が変わるんですよね。クライアントの問題は,今回の障害の中で最も大きなトラブルで,こちら側の見通しが甘かったなと感じる部分はあります。

4Gamer:
 プレイヤー一人ひとりのPC環境は千差万別ですからね。そういえば,Windows Vistaへの対応についてはいかがですか?

井内氏:
 最終的に,どの段階でWindows Vistaへの完全対応が完了するかは未定ですが,もちろん対応する予定です。今後のβテストで,プレイヤーさんからたくさんの報告をいただければと思います。

4Gamer:
 そのあたりは,プレイヤーも気になっていると思います。ところで,Lievo Studio(※)のお三方は,これまでにどういったタイトルを手がけていらっしゃったのですか?

※Lievo Studio……テクモのオンラインゲーム開発チーム。高崎氏は同スタジオのプロデューサーでもある。

高崎氏:
 私は元々はプログラマーで,古くは「影牢」シリーズや「ギャロップレーサー」シリーズ,「零〜zero〜」シリーズなどのタイトルを手がけてきました。

井内氏:
 私は「零〜zero〜」シリーズの3作品で,主にシナリオやテキストを担当してきました。

寺田努氏(以下,寺田氏):
 私はテクモに入社して日が浅いのですが,「モンスターファーム5」の制作に携わっています。

4Gamer:
 おお,そうでしたか。ほかのスタッフの中にも,過去シリーズの開発に携わってきた方がいらっしゃるのですか?

高崎氏:
 ええ,もちろんいますよ。

4Gamer:
 モンスターファームの古参プレイヤーにはこだわりを持った人が多いので,過去シリーズに携わったことのあるスタッフがいると聞いたら期待が高まりそうですね。
 今回のネットワークトライアルでは,プレイヤーにアンケートを行っていましたが,モンスターや世界観のデザインに関する反応はいかがでしたか?

寺田氏:
 比較的好評ではありますが,「昔のモンスターファームが好きだ」というプレイヤーさんも大勢いますので,過去シリーズに登場したモンスターなどをそのまま出してほしいという要望が多かったですね。こうしたプレイヤーさんの声も真摯に受け止めて,モンスターのデザインに生かしていきたいと考えています。

4Gamer:
 MFOにおけるモンスターデザインのコンセプトはどのようなものでしょう?



テクモ 寺田努氏
寺田氏:
 モンスターのデザイン自体は,これまでもほかのタイトルで手がけてきたのですが,それらのモンスターとMFOとの違いは,MFOのモンスターは同じ世界に“住む”存在だということです。過去シリーズをプレイされた人ならお分かりだと思いますが,モンスターファームにおけるモンスターは,ただひたすらプレイヤーを攻撃してくる“敵”ではないんですね。その分,色々と考え方を切り替える必要がありました。
 多種多様なモンスターが人間の世界と溶け込み,一緒に生活している――。そのイメージを膨らませ,さらにオンラインゲームとしての世界観の広がりをプラスする。今回はそういったことを大事にしたつもりです。

4Gamer:
 過去シリーズに登場したモンスターには,プレイヤーそれぞれの思い入れがあるでしょうからね。デザインにはかなり気を遣いそうです。

坂本氏:
 そうですね。また,過去シリーズではCD/DVDでモンスターを再生して初めて種族がわかったのに対し,今回からは種族を先に選択する形に変わったことに驚いている人が多いようです。

4Gamer:
 過去シリーズの中で,プレイヤーからの人気が最も高い「2」の“オンラインゲーム版”を求めている人も多いのではないかと思うのですが,現状ではMFOがどういったゲームになるのかが見えにくいように感じます。開発側としては,MFOをどのようなゲームに仕上げていきたいと考えているのですか?

高崎氏:
 モンスターファームシリーズを作り続けてきた中で,次の作品をどういうものにするかという議論は今回に限らずありました。過去シリーズからの順当な進化にするのか,それともまったく新しい形にするのか,というのは,開発スタッフの間でも常に議論の的になってきたのです。
 とくに今回は,PC向けのオンラインゲームにするということで,これまで以上に議論を重ねてきました。その結論として,オンラインゲームとして今後5年,10年と遊び続けられるものにするためには,軸足を過去に置かないほうがいいのではないか,ということになったのです。

4Gamer:
 10年間の歴史と,多くのファンを抱えるモンスターファームシリーズとしては,それはかなり大きな決断だったのではないですか。

高崎氏:
 確かに難しい決断でした。とはいえこれは,過去シリーズと完全に決別するという意味ではありません。ネットワークトライアルを開始する前から,MFOを牽引してくれるのは過去のシリーズをプレイしてくださったプレイヤーさん達だろうと考えていました。実際に今回のアンケートでも,それを裏付けるような結果が出ましたが,そういった人達のために,過去シリーズへのリスペクトを表現していくことも忘れてはいません。それは例えば,MFOで登場するモンスターの選択にも反映されています。
 しかし,モンスターファームの「1」「2」は,プレイステーションの黎明期に作られたゲームですので,必ずしも現在求められているゲームシステムと合致したものであるとは言えません。なのでそちらに軸足を置いてしまうと,オンラインゲームとしてのモンスターファームの足かせになってしまう可能性がある。MFOの土台となるゲームシステムや拡張性を考えたときに,過去シリーズが持っていた“こだわり”の部分は残しつつ,新しい世界観を提示していこうということになったのです。



■キーワードは“モンスター愛”

テクモ 高崎俊行氏
4Gamer:
 では,過去シリーズから最も大きく変わったのはどの部分でしょうか?

高崎氏:
 少し概念的な話になってしまうのですが,社内で意見をまとめるのが一番大変だったのが“育成”の部分です。過去シリーズの育成は,ファームでのトレーニングで狙ったパラメータをピンポイントで成長させるのが主な目的で,その手段もはっきりと分かるものでした。
 一方MFOでは,戦闘時の行動によって,成長するパラメータが変化していくという点に主眼を置いています。しかし,どういった行動をとればどのパラメータに影響するのか,というのがプレイヤーさんに見えにくかったために,どのようなゲームになるのかが分かりにくかったかなと反省しています。MFOでは育成方法は変わるものの,行動とパラメータの関係を(プレイヤーに探らせるのではなく)明示して,それぞれの行動によるメリット/デメリットを考慮して育成できる,という形にしていくつもりです。

4Gamer:
 “狙ったパラメータをピンポイントで成長させられる”という部分は変わらない,と。そして今のお話にもあったように,過去シリーズではファームでの育成がメインだったがMFOでは戦闘を通じての育成がメインになる,ということですね。しかし,こうなってしまうと,もうすでに“あの”モンスターファームではなくなってしまいますよね。今のような形になってしまうと,「ほかのMMORPGにあるような“ペットの育成”とどこが違うのか?」と感じるプレイヤーもいるのではないでしょうか?

高崎氏:
 うーん,そこは難しい質問ですね。ただ,極論を言ってしまうと,ほかのMMORPGのペットとMFOのそれには決定的な違いがあると思っていまして,それは「ただ時間をかけるだけは強いモンスターにならない」という点にあります。

4Gamer:
 つまり,どういうことでしょう?

高崎氏:
 キーワードは“モンスター愛”です。一般的なMMORPGでは,基本的には時間をかけた分だけキャラクターもペットも成長していきますが,MFOは,ただ漫然と過ごしているだけでは,強いモンスターにはなりません。
 どのモンスターと戦わせる,あるいは戦わせないのか? どんなスキルを使った戦闘を行うのか? どんなエサを与えるのか? という一つ一つの選択によって,成長の仕方がまったく異なってくるというわけです。

井内氏:
 MFOでは,過去シリーズにあったファームでのトレーニングスケジュールの代わりに,戦闘の中でのスケジュールを自分で組み立てていくと考えてください。これまでファームの中で行っていたことを,外に出したのがMFOにおける育成の特徴ですね。

4Gamer:
 そうすると,今後実装が予定されているファームの役割はどういったものになるのですか?

高崎氏:
 ファームには多くの要素を持たせる予定ですが,基本的にはゲームに広がりを持たせるものになると考えてください。冒険に出てモンスターを成長させるという大きな流れがあって,ファームにはその育成の幅を広げるような機能を持たせる予定です。
 冒険から持ち帰ったアイテムでファームを拡張したり,ファームが拡張されることによって育成に何らかのフィードバックがあったり,といったようなものですね。遊びの幅を広げていく過程で,ファームに設置したガジェットによる育成といったものも考えています。

4Gamer:
 なるほど,将来的にはファームでの育成も可能になるというわけですね。ファームにはほかのプレイヤーを招待することもできるのですか?

高崎氏:
 ええ,もちろんできますよ。ファームには自分の家を持つこともできて,みんなで集まっておしゃべりができるような場所になります。



■まずは世界に馴染むためシナリオを実装する

ゲームポット 坂本慎治氏
4Gamer:
 ファームといえば,開発ブログにもたびたび話題が上っている助手キャラクターですが,今後実装される予定はあるのですか?

高崎氏:
 ええ,ファーム拡張の延長線上に,助手キャラクターの実装を予定しています。

4Gamer:
 この助手キャラクターは,何をしてくれるのでしょう?

坂本氏:
 過去シリーズでは,プレイヤーの元に届いた大会の案内状を読み上げて大会のスケジュールを教えてくれたり,ショップでの割り引き情報などを教えてくれたりしたのですが,MFOでは友達からのメール到着などを知らせてくれるといった,オンラインならではの機能を持たせる予定です。

高崎氏:
 それと現在検討中なのは,ファームに設置したトレーニング用のガジェットと組み合わせて,ログアウト中の育成を可能にする機能です。このトレーニングの成果は,助手の“腕”によって変わってきます。

4Gamer:
 ……ということは,助手キャラクターも複数登場すると。

高崎氏:
 そうですね。複数登場することになります。どこかで,コルトやホリィも登場させたいですね。

4Gamer:
 モンスターは何匹まで同時に育成できるのですか?

井内氏:
 連れて歩けるのは一匹だけですが,今後の予定では三匹まで同時に育成できるようになります。

4Gamer:
 それは楽しみですね。
 ではここで一度,ゲームの流れと言いますか,一プレイごとのゲームのサイクルをまとめていただけますか?

井内氏:
 ゲームはまずファームから始まります。そこから街へ出て,クエストを受けて戦闘することでモンスターを育成するというのが基本的な流れです。そしてモンスターを成長させて街に戻ると,モンスター同士を比較する場としてさまざまな大会があります。
 ただ,過去シリーズではモンスター同士を比べる軸は対戦しかありませんでしたが,MFOでは新たに加わった外見の要素を比べる大会など,戦闘だけに偏らない大会を用意する予定です。
 もちろん育成ゲームですので,いったん成長させたら終わりというのではなく,次の世代のモンスターにある程度のパラメータを引き継がせながら,モンスターを強くしていきます。何か特定のゴールを目指して育成するのではなく,自分なりの目標を持ってモンスターを育成していくわけです。

4Gamer:
 成長が終わっても遊べる,と。ストーリーはそれほどゲームに絡まないということでしょうか?

井内氏:
 もちろん,大会といった枠を超えたストーリー性のあるクエストもあります。しかし,それをプレイヤーさんに押し付けるようなことはありません。モンスターがある程度強くなったので,じゃあここでこのシナリオに挑戦してみようかな,といった具合に遊んでもらえればと考えています。

4Gamer:
 シナリオを追っていくのではなく,育成をメインに楽しんでほしいということですね。とはいえ,シナリオを楽しみにしている人もいると思いますし,MFOの公式サイトでもストーリーが紹介されていますよね。あのストーリーが,ゲームにどう絡んでくるのかが非常に気になるのですが……。

寺田氏:
 モンスターファームには歴代のタイトルがあり,シリーズを通してさまざまな設定が存在します。MFOとしての新しい世界観と,過去シリーズが持っていた世界観をどう融合させるか。その部分に時間をかけてできあがったものが,公式サイトで紹介されているMFOの世界観であり,ストーリーです。

井内氏:
 まず世界観の根底に,公式サイトで紹介しているような舞台があると考えてください。ひょっとすると,いずれはあの世界を復興させていくとか,“塔”の最上階にいる親玉を倒すといった展開があるかもしれませんが,まずはキャラクター達が生活していく舞台としての世界観やシナリオを用意しています。
 ゲームを始めて,最初に待っているシナリオは,あの世界で生きていくためのものです。モンスターと人間との関係や,どうやってモンスターを育てていくのか,モンスターを育てる目的は何か,といったことが少しずつ明かされていくわけです。

4Gamer:
 最初に大きな目的が与えられて,その目的のためにモンスターを育成するのではなく,まずはこの世界での生活を楽しんでもらうのが大前提というわけですか?

寺田氏:
 そうです。現在用意されている世界はアジアンテイストな設定のものですが,今後はヨーロッパ風の世界も用意する予定です。また今回は,それぞれのモンスターが,どんな場所に住んでいるのか想像できるようなデザインにしたつもりなので,その点にも注目してもらえると嬉しいですね。



■モンスターは「転生」と「合体」で引き継ぐ

テクモ 井内毅氏
4Gamer:
 冒険の途中でそういった発見をしていくのも,楽しみの一つになりそうです。
 ところで先ほど,モンスターの“世代”という言葉が出ましたが,今回もやはりモンスターに寿命があるのですか?

井内氏:
 ええ,あります。限界を迎えたモンスターは,次の世代にある程度のパラメータやスキルを受け継がせることができます。これも,ほかのMMORPGのペットとは大きく異なるところです。
 これを続けていくと,パラメータがどんどん上がって,インフレを起こしてしまうのではないかと思われるかもしれません。しかし,MFOではパラメータの引き継ぎは最小限に留めて,スキルや体の色,モンスターの性格といったほかの要素をメインに受け継いでいくようになっています。そして,何世代かあとになってからも,これはあのときのあのモンスターの性質を受け継いでいるんだな,というのがプレイヤーさんに分かるようなものになっています。

4Gamer:
 では,過去シリーズにあった「合体」システムはMFOにもあるのですか?

井内氏:
 MFOでは,モンスターの能力を次の世代に引き継ぐ方法として「転生」と「合体」の2通りを用意しています。
 「転生」では,CD/DVDや円盤石で新たにモンスターを再生するときに,自分のモンスターの能力を次の世代に受け継がせることができます。一方「合体」では,ほかのブリーダーが育てたモンスターから何らかの方法で“種”をもらって,自分のモンスターの特徴と併せて引き継げるようになります。

4Gamer:
 「転生」に「合体」,それに“種”ですか。なにやら次のβテストで重要なキーワードのようですね……。覚えておきます。
 モンスターの育成は大体見えてきましたが,MFOにはプレイヤーキャラクターとしてのブリーダーが登場しますよね。彼らブリーダーにも成長要素はあるのですか?

井内氏:
 ブリーダーに何かが蓄積されていってモンスターが強くなる,といったことは基本的にはありません。

4Gamer:
 ブリーダーのパラメータには「ガッツ」がありますが,これが成長して増えていくといったこともないわけですね?

高崎氏:
 そうですね。成長要素はありませんが,ブリーダーに関しては,コミュニティの中で役割を担っていくための,いくつかのジョブを用意する予定です。それともう一つ,ブリーダーが手に持つ武器によって,ガッツのパラメータが上下したり,スキルの配置が変わったりというものを予定しています。

4Gamer:
 なるほど。ジョブについてもう少し具体的に教えてください。ジョブは戦闘に役立つものではなく,何かほかのところで役立つものなのですか?

井内氏:
 まだあまり多くはお話しできませんが,基本的には育成に役立つものだと考えてください。例えば,モンスターが病気になってしまったけれど自分には治療できないとか,モンスターの機嫌が悪いようだけど自分には判断できないといったときに,それらを治療したり判別できるジョブのプレイヤーと情報交換を行って,コミュニケーションのきっかけにしてもらえればと考えています。

4Gamer:
 ジョブの実装はいつ頃になりそうですか?

高崎氏:
 実装時期については調整中ですので,楽しみにお待ちください。

4Gamer:
 ブリーダーには複数の出身地があるようですが,それと関係があったり……?

井内氏:
 それについても,実装時期は現在調整中です。でも,出身地によって有利/不利があるといったようなことはありませんよ。出身地はあくまで,外見のバリエーションの一つだと考えてもらって問題ないです。



■好きなモンスターを育成できる再生方法を選んだ

4Gamer:
 さて,ネットワークトライアルで一つ気になったのは,戦闘フィールドの仕様です。MFOの戦闘フィールドはすべてインスタンスゾーンでしたが,これは今後も変わらないと考えていいですか?

井内氏:
 そうですね。今後,例えば20人まで入れるゾーンを用意するといったことがあるかもしれませんが,不特定多数のプレイヤーが共有するMMOフィールドを用意する予定はありません。

4Gamer:
 では,インスタンス制を採用した理由はどんなものでしょう?

井内氏:
 モンスターの育成がゲームのメインとなりますので,「このフィールドにはこの敵が何匹いるので,今日はここまで進んでみよう」といった具合に,ある程度戦闘を自分で計算しやすいようにインスタンス制を採用しています。

4Gamer:
 なるほど,そういうことですか。

井内氏:
 もちろん,5人までのパーティが組めるので,協力プレイも可能ですよ。
 ちなみに,クエストの目的と育成の目的は常に合致しているわけではありませんので,街の外に出るために常にクエストを受ける必要はありません。クエストは,過去シリーズで言うところの「アルバイト」で,育成の資金を稼ぐためのものという位置づけです。アルバイトばかりに精を出していると,育成がおろそかになってしまう。そのあたりのバランスを,プレイヤーさんが自分でコントロールしていくことになります。

4Gamer:
 やっとあの仕様の理由が理解できたような気がします(笑)。
 もう一つ気になっていた,モンスターの再生方法についても確認させてください。MFOでは,モンスターの再生方式が,種族を選んでからCD/DVDを入れる方式に変更されていますが,これは今後も変わらないのですか?

井内氏:
 実はプレイヤーさんからも変更の要望が多く寄せられていますが,MFOでは自分の好きなモンスターを育成してもらおうという狙いがあります。今回のモンスターは,外見や性格といった部分に凝っていますので,お気に入りの種族が出るまで何度もCD/DVDを入れ替えるのではなく,好きなモンスターを最初に選んだうえで,外見やパラメータといった細部にこだわってもらえたらと考えているんですよ。

4Gamer:
 では将来的には,CD/DVDから直接再生されるモンスターが実装される,といったこともありますか?

井内氏:
 そうですね。現在もすでに,円盤石を使った再生のときは種族を選べませんし,レアCD/DVDを読み込ませたときに出現するレアモンスターも種族は決まっています。

4Gamer:
 なるほどなるほど。とはいえ,今回のコンセプトがプレイヤーにどのように受け止められるかは,もう少し時間が経ってみないと分からないですね。
 この辺で,モンスターの種類についても聞いておかねば。ネットワークトライアルでは,人気モンスターのアンケートを実施されていましたが,人気上位のモンスターが実装される予定はありますか?

高崎氏:
 ええ,前向きに検討していますよ。

4Gamer:
 では質問を微妙に変えて。ネットワークトライアルでは,5体のモンスターが実装されていましたが,クローズドβテストではどれくらいの数になりそうですか?

坂本氏:
 2〜3体のモンスターの追加を予定していて,さらにレアモンスターの追加なども検討しています。

4Gamer:
 そういえば,ネットワークトライアルでもレアモンスターは実装されていたのですか?

坂本氏:
 CD/DVDからのレアモンスターは実装されていませんでしたが,円盤石からのレアモンスターはありましたね。

4Gamer:
 そうだったんですね。しかし,そこまで探しきれた人は今回は少なかったのではないかと……。

高崎氏:
 確かにそうですね。MFOでは,同じクエストを受けてもランダムな要素があって,いくつかの条件が重なると,普段とは違ったものになります。例えば,普段は昼のフィールドが,ある条件を満たすと夜になったりします。そうすると,出現するモンスターも通常とは異なるものになるわけです。
 それで,ネットワークトライアルでも「そんな条件出ないよ」という条件で,あるモンスターが出現するようにしていたのですが,さすがに誰にも気づかれなかったようで(笑)。

4Gamer:
 2日間限定のテストでしたから,時間的にも厳しかったでしょうね。でも,それを見つけられた人がいたとしたら,きっと嬉しいだろうと思いますよ。

井内氏:
 インスタンス制を採用した理由の一つが,実はそこにあるんですよ。フィールドに入ったときに“当たり”だったら,みんなで盛り上がりますよね。そういった,一回ごとに異なる演出ができるのが,インスタンス制の利点だと思います。

4Gamer:
 ちなみに,今回の条件というのはどんなものだったんですか?

高崎氏:
 今回の条件の中に,とあるブロックで20分待つというのが含まれていたのですが,さすがに気づきませんよね。でもネット上の掲示板を見ていたら,一人だけそれを発見したと思われる人がいて,その書き込みをしていたのですが,内容があまりにも突拍子がなさすぎて,ガセネタ扱いされていましたね。



■育成の幅は無限大。今後5年,10年と遊んでほしい

4Gamer:
 ではそろそろ,今後の運営に関する質問を。
 ズバリ,クローズドβテストはいつ頃実施される予定ですか?

高崎氏:
 細かい調整はこれからですが,9月に開催される東京ゲームショウの前後で実施できればと考えています。

4Gamer:
 規模はどうなりますか?

坂本氏:
 そのときのテスト内容次第という面がありますので,現時点では未定ですね。

4Gamer:
 ちょっと気が早いかもしれませんが,課金スタイルについては“基本プレイ料金無料のアイテム課金制”で変更はありませんよね?

坂本氏:
 はい。当初の発表どおり,そこに変更はありません。

4Gamer:
 では,当初からアイテム課金制を前提に開発が進められているわけですから,課金アイテムについてもすでにアイデアがあると思います。その中のいくつかを教えてもらえますか?

坂本氏:
 いくつか予定していますが,育成の幅を広げるアイテムがメインになると思います。こういう育て方をしたい,と考えたときに,このアイテムを使うとそうなりやすい,といったものですね。
 ほかには,ブリーダーやモンスターが装備できる服装アイテムであったり,先々の話としては,ファームのカスタマイズ用のアイテムなどを予定しています。

4Gamer:
 服装アイテムについてですが,アイテムを装備することによって,モンスターのパラメータが変わるようなことはありますか?

井内氏:
 まったくないとは言いませんが,それによって決定的に強さに差が出るようなものにはなりません。パラメータの上下だけではなく,色や体型が変わりやすくなったりといった,育成に影響を与えるようなものを考えていますよ。

4Gamer:
 分かりました。そのあたりのバランスは,今後のβテストを通じて煮詰めていただきたいと思います。
 では最後に,プレイヤーに向けて,お一人ずつコメントをお願いします。

高崎氏:
 モンスターファームというタイトルを使う以上,今後5年,10年と続いていくゲームを目指します。そのための土台として,どこまで完成度を高めてプレイヤーさんに提示できるかというのが,最初の大きな課題だと思っています。
 これまではずっとコンシューマゲームの開発を行ってきましたので,頭では分かっていても,オンラインゲームは開発半分/運営半分であるということが骨身に染みているとは言えません。このあたりはゲームポットさんとも協力しながら,長く続けられる良いサービスを目指していきますので,ぜひ期待してください。

井内氏:
 ゲーム内容の面からお話しすると,MFOではモンスターを育成するうえでのコミュニケーションを,ぜひ楽しんでもらいたいですね。それにはプレイヤーさん同士のコミュニケーションであったり,モンスターとのコミュニケーションであったりという,両方の側面があります。自分が育てたモンスターを愛せるようなゲームにしていきたいと思います。

寺田氏:
 グラフィックスやデザインの部分で,世界観を補強していくものを作り上げていきたいですね。MFOはシリーズ初となるオンラインゲームなので,変化にとまどう人もいるかもしれませんが,ぜひ多くの人にプレイしてもらえればと思います。

坂本氏:
 育成の幅が無限大といってもいいくらいに広いゲームなので,運営側としても,さまざまな仕掛けのイベントなどを行っていきたいですね。過去に,モンスター甲子園を開催し大いに盛り上がったゲームですし,MFOでもぜひオフライン大会は実施したいです。勝ち負けだけでなく,自分が育てたモンスターのお披露目の場として交流が深まればいいですね。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。



 今回のインタビューでとくに強調されていたのが,“育成”というキーワードだ。おそらくはシリーズのファンであるプレイヤーの興味は「戦闘がメインか,ファームがメインか」にあったと思うが,開発側としては――今回は戦闘での育成をメインに据えているものの――育成の軸さえブレていなければある意味“どちらでもいい”という意思を感じた。戦闘フィールドのインスタンス制採用,モンスターのパラメーターの引き継ぎ,果ては課金アイテムまで,すべての話題が最終的には“育成”に収束していたことからも,それが伺える。

 また,10年間の歴史を持つ過去シリーズが大きな強みであると同時に,本作の開発におけるハードルを上げていることも,ひしひしと伝わってきた。新しいモンスターファームシリーズとして新規プレイヤーを取り込み,それと同時に古参プレイヤーの興味を満足させつつ,新たな要素を提供する――。単なる機能や要素の取捨選択ではなく,過去シリーズからのプレイヤーの思い入れを汲み取ることまで含めて,きわめて複雑なバランス取りを要求されているわけだ。

 今回のインタビューで,開発元の使命感と情熱は理解できた。あとは,現在唯一の情報源である開発者ブログなどに注目しつつ,静かに,熱く,次なるβテストのアナウンスを待って,さらなる「仕様の公開」に期待したい。(Interview and text by ginger/Gueed,photo by kiki)

(2007年8月6日収録)




  • 関連タイトル:

    モンスターファーム ラグーン

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