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[TGS 2006#63]アジア圏最有力メーカーの「MMORPG一辺倒からの脱却」が意味するところとは? Gamania CEO Albert Liu氏&日本支社COO 浅井清氏ロングインタビュー
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印刷2006/09/26 18:18

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[TGS 2006#63]アジア圏最有力メーカーの「MMORPG一辺倒からの脱却」が意味するところとは? Gamania CEO Albert Liu氏&日本支社COO 浅井清氏ロングインタビュー

(左から)Albert Liu氏,浅井清氏
 東京ゲームショウ2006(以下,TGS 2006)のGamaniaブースの出展作は,例年とは方向性が少々異なっていた。かつてはMMORPG一辺倒だったのに対し,カジュアルゲームを含めた幅広いラインナップになっているのだ。しかもこれは日本支社だけではなく,台湾本社をはじめとしたグループ全体の意向とのこと。アジア全域に大きな影響力を持つGamaniaの変化は,今のところ明確な形で日本市場に反映されてきてはいないものの,個人的にはTGS 2006における大きなトピックの一つだと感じている。

 そのような状況が出展作から見え隠れする中,台湾Gamania本社のCEOであるAlbert Liu氏,そして日本支社COOの浅井清氏に直接話を伺うことができた。多忙極まるAlbert氏は会場到着が若干遅れたため,それまでの間は主に浅井氏に日本における新作タイトルの話を,そしてAlbert氏の到着後は台湾をはじめとしたアジア市場全体について聞くインタビュー構成となっている。



■新作3タイトルをプレイアブル出展

ガマニアデジタルエンターテインメント COO 浅井清氏
浅井氏:
 いやー,すいません。Albertはたった今海浜幕張駅(幕張メッセの最寄駅)に到着したとのことで,もうしばらくお待ち下さい。

4Gamer:
 いえいえ,今日はよろしくお願いします。TGS 2006では,3月のプレスカンファレンスでムービー出展されていたタイトルが,初めてプレイアブル状態で出ていますね。これらの経緯について聞かせてください。

浅井氏:
 ご存じの通り,当社は主に開発メーカーからライセンスを供給してもらう,パブリッシングビジネスを行っています。しかし今から3年くらい前からでしょうか,自社でも開発をやってみようということになりまして。開発の舵取りは未経験だったため難航していたものの,最近になってそれがようやく表に出せる形になってきたかな,というところです。

4Gamer:
 今回プレイアブル状態での初出展だった「仙魔道」「Bright Shadow」「す〜ぱぁ★リッチ」の,3タイトルすべてが自社開発タイトルなんですか?

浅井氏:
 「Bright Shadow」「す〜ぱぁ★リッチ」は両方ともGamaniaで開発していますね。「仙魔道」だけは,台湾Gamaniaの子会社である「飛魚」が開発作業を行っています。この会社としては初めて手がけるタイトルですが,スタッフはそれなりのベテランを揃えています。

4Gamer:
 初のプレイアブル出展となった3タイトルの,台湾と日本両方のサービススケジュールについて聞かせてください。

浅井氏:
 「仙魔道」は,台湾では2006年内にクローズドβテストで,順調に進めば年明けに正式サービス予定です。ですので,日本語版展開はその後になりますね。「Bright Shadow」は台湾では年内に正式サービス開始で,日本では2007年明けに正式サービスを予定しています。 最後の「す〜ぱぁ★リッチ」に関しては,台湾ではすでに正式サービスが始まっており,日本でも年内にスタートとなります。

4Gamer:
 「仙魔道」と「Bright Shadow」は,今回出展されているものを見る限りではローカライズ作業がほとんど終わっているように思いました。リリースはしばらく先ということで,急ピッチな作業だったかと思いますが,このあたり苦労されたんじゃないですか?

浅井氏:
 そうなんですよ(笑)。しかしGamaniaグループ全体にとって日本市場は大きな意味があるので,がんばって仕上げてきました。とはいえ,台湾での開発作業がまだ完全に終わっていないこともあり,今後もローカライズの作業量は増えていくでしょうね。

4Gamer:
 まだまだ気が抜けない段階というわけですね。「仙魔道」のグラフィックスセンスはオリエンタル要素が強いですが,「Bright Shadow」は非常に日本的だという印象を受けます。これが台湾で開発されていたというのには驚きました。

「ネットdeすごろく す〜ぱぁ★リッチ」ゲーム画面


浅井氏:
 元々,台湾のユーザー層自体が日本文化の影響を強く受けているんですよ。私はコンシューマ用ゲームも結構遊ぶのですが,それでも台湾本社に行ってみると,現地スタッフが先にソフトを購入していることも多くて,よく驚かされます。
 台湾文化はそういった土台があるので,自社開発タイトルのグラフィックスやゲームシステム面で,日本の影響が出てくるのはごく自然なことだと思いますね。

4Gamer:
 日本のアニメやゲームは,台湾でも人気がありますからね。では,これらのタイトルのビジネスモデルについて聞かせてください。

浅井氏:
 「Bright Shadow」「仙魔道」は,今のところは「基本プレイ料金無料+アイテム課金」で考えてます。

4Gamer:
 「す〜ぱぁ★リッチ」は直球のカジュアルゲームですが,こちらについてはいかがでしょうか。

浅井氏:
 一プレイごとに,必要なゲーム内通貨を投入する形式です。しかしほかのプレイヤーとのゲームに勝利すれば,お金は減らないような仕組みにして,モチベーションを持続できればいいなと。
 またそれとは別に,新たなゲーム内マップを購入したり,有料で機能拡張したりといった展開も考えています。こちらは一般的なアイテム課金に近い形式ですね。

4Gamer:
 すでに正式サービスされている「す〜ぱぁ★リッチ」台湾版と,これからスタートする日本版での,一プレイ時の金額はどのように設定されていますか?

浅井氏:
 台湾では数十円程度と抑え目です。日本だとアーケードに近いゲーム感覚ということもあり,50〜100円をイメージしています。ただし日本版の金額はまだまだ調整段階で,従来のGASHとは違った通貨単位になる可能性もあります。

4Gamer:
 アーケード感覚,ですか。ゲームに勝つとお金が減らないというのはとてもユニークですが,上級者が延々と勝ち続けてしまう心配はないのですか?

浅井氏:
 「す〜ぱぁ★リッチ」には戦略性ももちろんありますが,ランダムな要素も大きいです。例えば対戦格闘ゲームのように,極端な勝敗結果にはならないと思います。

4Gamer:
 それならあまり心配する必要はなさそうですね。ちなみに一プレイに要する時間はどれくらいですか?

浅井氏:
 マップにもよりますが,大体30分から1時間ですね。もっと短時間で遊べるマップも用意し,そういったものは完全に無料で遊べるようにすることも考えています。

「ネットdeすごろく す〜ぱぁ★リッチ」キャラクターイメージ


Gamania Digital Entertainment CEO Albert Liu氏
(ここでAlbert Liu氏が登場)

Albert Liu氏:
 (両手を合わせて)遅れてゴメンなさい!

4Gamer:
 こちらこそ,多忙なところに無理を言ってすいません。では早速質問に入りますね。
 Gamaniaはアジア地域において,いまや老舗といえるゲーム会社です。会社設立後からこれまでの間に,ターニングポイントとしてとくに印象に残っていることはありますか?

Albert Liu氏:
 Gamaniaは1995年にゲーム開発会社として設立され,1997年にPCゲームパブリッシング業務,そして2000年にオンラインゲーム業務を手がけるようになって,現在にいたります。その中でも最大の転換期といえるのは,2002年に台湾で「リネージュ」が爆発的にヒットしたことですね。あれによって,すべてが変わりました。

4Gamer:
 なるほど。オンラインゲームのビジネスは現在は軌道に乗っていますが,近年はライバル会社も多く,競争もかなり厳しいかと思います。今後どういった面で差別化を行い,ライバルとの競争に打ち勝つ構えですか?

Albert Liu氏:
 Gamaniaは日本だけでなく,アジア各国で子会社を設立しています。そういった国々からフィードバックを受け,これをベースにさらに良いサービスを展開できるのが最大の強みです。また組織的な面だけでなく,ゲーム内のシステム面でも差別化を考えています。

4Gamer:
 ゲームシステムでの差別化とは,具体的にはどのようなものですか?

Albert Liu氏:
 ユーザーの要望を,直ちに開発側に届けるための流れを作っています。素早いレスポンスで開発と運営を相互に行い,長期間積み重ねてきたノウハウが,他社とは決定的に違います。

4Gamer:
 実際に日本から得られるフィードバックに関しては,どういった印象を持っていますか?

Albert Liu氏:
 ゲームシステム面に対する鋭い考察が,とても参考になります。これについては,日本はコンシューマゲーム分野での実績があることも大きく影響しているのだと思います。ちなみに,隣に座っている日本支社COOの浅井も,コンシューマメーカーの出身者なんですよ。
 ビジネスモデルの一翼を担っているアイテム課金については,ユーザーにアイテムを買ってもらうための流れに関してのフィードバックが参考になっています。

4Gamer:
 具体的にはアイテム課金制を導入する際,ユーザーにアイテムを買ってもらうまでの,どの部分を重視しているんですか?

Albert Liu氏:
 それについては浅井から話してもらったほうがいいでしょう。

浅井氏:
 そうですね,単純に「売れればいいや」ではなく,日本人のプレイスタイルに合った売り方を行えるかが重要だと考えています。アイテムを買って楽しく遊んでもらえるのが理想ですが,そのための流れも考えなければ,いつかユーザーは離れていってしまいます。アイテムを買うという行為を含めて,ゲームの一部だと感じてもらえるような仕組みが大切ですね。

4Gamer:
 ユーザーに対し,一体どのようにして課金アイテムまで導いてあげられたら,彼らが楽しいと感じてくれるのでしょうか?

Albert Liu氏:
 具体的に答えるのは難しいですね……。では,たとえ話で説明してみましょう。
 仮に,プレイヤーが「川」を泳ぎながら渡るのをゲームの目的とします。プレイヤーにとってはただ泳ぐだけでも面白いですが,その横に課金アイテムを「ボート」として流してみましょう。そうすると,プレイヤーは船に乗って漕ぎ,早く渡ることができますね。あるいは川を渡らずに,船の上で釣りをしたりといったさまざまな遊び方もできます。ボートよりもっと速く進みたい人には,立派な船を与えてあげるのもいいでしょう。

4Gamer:
 そこで大切なのは,たとえ船に乗らずとも,普通に泳ぐだけでもそれなりに楽しさを感じてもらえる,という部分でしょうか。

Albert Liu氏:
 その通りです。そのうえでさらに,船に乗ることの楽しさも選択肢の一つとして与えてあげることが,同じくらい重要です。課金アイテムを手に入れることで,プレミアム的な満足感を得られるのが一番だと思います。

4Gamer:
 最近の日本市場には,アイテム課金制のオンラインゲームが乱立しています。それらの中には,“ボート”なしには普通に泳ぐことができず,すぐに溺れてしまいそうなタイトルも見受けられますが。

Albert Liu氏:
 それではまったくダメですね。

4Gamer:
 あっさりと言いますね(笑)。
 では続いて,台湾市場の現在の動向について聞かせてください。

「仙魔道」スクリーンショット


■マーケットの特質に合わせたサービスが重要

Albert Liu氏:
 数年前までは台湾市場全体に,「オンラインゲーム=MMORPG」というイメージがありました。しかし2005年あたりから,少しずつそうではなくなってきています。プレイヤーのニーズが多様化し,さまざまな遊び方を求めるようになってきていますね。

4Gamer:
 それは言い換えると,MMORPGの競争力が落ちてきている,ということですか?

Albert Liu氏:
 当社の経営状況を見ると,MMORPGジャンルは売上としては縮小していません。しかし,カジュアルゲームなどの台頭により,全体ではMMORPGが占める割合が減ってきているとはいえます。

4Gamer:
 オンラインゲームの市場全体としては,まだまだ拡大し続けているということですか。

Albert Liu氏:
 そうです。最近はとくにカジュアルゲームが盛り上がってきているので,MMORPGの競争力が落ちたのかと誤解してしまうのかもしれないですね。

4Gamer:
 そうですね。実際にはMMORPGとカジュアルゲームの割合は,以前と比べてどのように変化しているのでしょうか?

Albert Liu氏:
 数年前までは売上全体の95%をMMORPGが占めていました。しかし今は,MMORPGとカジュアルゲームが,半々程度まで変わってきています。

4Gamer:
 先ほど,MMORPGの市場は決して減少していないと話してましたが,日本市場においては,「EverQuest II」「Star Wars Galaxies」「Dark Age of Camelot」といった,いくつかのビッグタイトルの運営元が移管されています。こういった現状については,どのように受け止めていますか?

Albert Liu氏:
 世界的に見ればビッグタイトルといっても,それぞれのマーケットの特質に合っていないとダメだと思います。日本のオンラインゲーム市場は欧米圏だけでなく,ほかのアジア諸国とも違う,かなり独特なものだと認識しています。
 「EverQuest II」については,個人的には素晴らしいゲームだと思うし,実際にずっとプレイしていました。しかし対象とするプレイヤー層がコア寄りで,アジア圏にもそういったニーズは確かに存在するのですが,やはり全体としては少数派です。それが,アジアで苦戦を強いられる要因となったのでしょう。

4Gamer:
 それでは現在の台湾のゲーマーには,どういったビジネスモデルが支持されているのでしょうか?

Albert Liu氏:
 台湾においては,月額課金スタイルの「リネージュ」は今でもダントツの人気があり,同時接続者数も17万5千人を記録しています。もう一方のアイテム課金スタイルも好評で,このタイプだと,「メイプルストーリー」は正式サービス一年後の時点で,同時接続者数が13万人に達しています。
 確かに今は,アイテム課金タイトルに勢いがありますが,月額課金と比べてどちらが良いのか一概には言えませんね。

4Gamer:
 その2タイトル以外の現状はどうでしょうか。

Albert Liu氏:
 「リネージュII」の同時接続者数7万人をはじめとして,いくつか好評なタイトルがあります。ほかにも10余りのタイトルを運営していますが,平均では同時接続が8千から1万といったラインです。

4Gamer:
 なるほど。では今後も,月額課金とアイテム課金の両方のビジネススタイルを継続していくということになりますね?

Albert Liu氏:
 ええ。ここで大切なのは,最初にビジネススタイルを決めたら,月額課金なら月額課金のままで,後から変えてはならないということです。仮に後からアイテム課金に変えても,いい結果を残すことは難しいのです。

4Gamer:
 最近日本ではブームなのか,かつては月額課金だったタイトルが,アイテム課金へと移行するケースが目立っています。そのことについてはどう思いますか?

Albert Liu氏:
 アイテム課金にしたからといって,それまで人気がなかったものが人気の出るものに変わるとは限りません。もっとも,ビジネスモデルを途中で変えて成功したタイトルも中にはありますが,それは開発側と運営側とが密接な連係を確立できたからこそでしょう。しかし,多くのメーカーにとっては,そういった環境を構築するのは難しいのではないでしょうか。

4Gamer:
 確かにその通りだと思います。ところで,ビジネスモデルに関する話題となると,RMTの問題は外せません。台湾におけるRMTの現状についても聞かせてください。

「仙魔道」キャラクターイメージ


Albert Liu氏:
 台湾でもかなり深刻な状況です。例えばオークションサイトに,RMTによる出品書き込みがあったら,あっという間に膨大なレスポンスが付けられます。または,ネットカフェにおいてRMTを直接取り引きしているケースも多いと聞きます。

4Gamer:
 ネットカフェでの場合,もしかすると店側が公に仲介しているのですか?

Albert Liu氏:
 そういうケースもあるかもしれませんし,プレイヤー同士がネットカフェで待ち合わせて行うケースもあります。中国の業者が労働者を200〜300人単位で雇ってプレイさせ,そうやって得たゲーム内通貨などを,ネットカフェにおいて一般客に売りさばいているんです。

4Gamer:
 思った以上に深刻ですね……。そこまで一般客にRMTが浸透していることについて,どのようにお考えですか?

Albert Liu氏:
 私自身は,RMTに関してニュートラルな姿勢でいたいと思っています。もちろんRMTを行わないほうがいいと思いますが,ただ反対することはできません。プレイヤーが時間と労力をかけて築き上げた結晶を奪う権利は,私達には無いからです。
 それよりも,いかにゲーム内のサービスを整備して,プレイヤーに楽しく遊んでもらえるかを考えています。言い方を変えると,現状のMMORPGではRMTは自然と発生してしまう仕組みになっているので,強引な介入は行わないということです。

4Gamer:
 もし,ご自身にRMTを取り締まる権限があったら,それを行使はしますか?

Albert Liu氏:
 ええ,行使すると思います。しかしそれと同時に,プレイヤーに対し「ゲームの本質的な魅力とは何か?」ということを教育する必要もあると思っています。

4Gamer:
 今後台湾において,RMT関連の法律が整備される見込みはないのでしょうか?

Albert Liu氏:
 現状ではあまり望めません。例えば,ユニークな並びの電話番号やナンバープレートに人気があったとして,それらの取引を取り締まることはできないのと同じです。
 そういったことよりも,「RMTなど行わずともゲームは面白い」という部分を,どうやってアピールするかを常に考えています。

「Bright Shadow」スクリーンショット


■今後はパブリッシングから自社開発へ

4Gamer:
 確かにそのほうが前向きな考え方ですね。では,台湾オンラインゲーム業界は,今後どのように変化していくと思いますか?

Albert Liu氏:
 それについては二つあります。一つは,数多く見かける似通った内容のMMORPGが,レースゲーム,カードゲーム,野球,といったように多様化されていくだろうということ。
 そしてもう一つは,パブリッシング中心の業務から,自社で開発する方向へとシフトしていくだろうということです。

4Gamer:
 これまでGamaniaは,パブリッシング業務をメインに行ってきました。それが今回のTGS 2006では,3本もの自社開発タイトルをプレイアブル出展している件について,先ほど浅井さんに話を伺っていたところです。オンラインゲームの多様化についても,先ほど伺った売上比率の変化にも結びついてきますね。

Albert Liu氏:
 その通りです。私は面白いゲームや良いサービスを提供することを最優先に考えています。そしてプレイヤーのニーズにもっと応えていくには,自社で開発を行うのがベターだという判断に至ったのです。
 遊んでいる人にとっては,当社のビジネスが自社開発だろうが代理店だろうが,あまり関係はないんです。最終的に,プレイヤーに良いゲームやサービスを提供できればそれでいいのです。
 言い換えると,MMORPG以外へと多様化したプレイヤーのニーズに応えていくには,もはやパブリッシャとしてのみの形態では追いきれないということですね。

4Gamer:
 現在,「仙魔道」「Bright Shadow」「す〜ぱぁ★リッチ」といった何本かの自社開発タイトルが,台湾でリリースされつつあります。それらの実際の反応はどうですか?

Albert Liu氏:
 今のところ反応は上々です。「Bright Shadow」は現在クローズドβテスト中ですが,台湾コミュニティを総合的に見る限りでは,かなり人気があります。今後もプレイヤーからのフィードバックを汲みあげて反映させ,この地位をキープしていくつもりです。

4Gamer:
 私はTGS 2006の出展で初めて「Bright Shadow」に触れたので,まだ深くはプレイできていません。台湾の本社で直接開発されたこのタイトルは,具体的にどういった部分が今までのMMORPGと違っているのですか?

Albert Liu氏:
 MMORPGではあるのですが,かなりカジュアルライクに仕上げています。レベル上げも簡単に行え,たった1レベルを上げるのに何十時間もの作業を必要としません。同様にクエストも,あまり複雑な内容にはならないようにしています。
 グラフィックスに関しては,世界各国の神話伝承やオバケといった要素を,親しみやすいようにうまく取り込んでいます。日本からの要素だと「河童」のモンスターが登場するのですが,台湾でもこういったモンスターに人気がありますよ。

4Gamer:
 「Bright Shadow」は日本でもローンチが予定されていますね。

Albert Liu氏:
 ええ。これは台湾で作ってから日本に持ってくるというより,最初から日本市場を重視して作ったタイトルです。開発のかなり初期段階から,日本側のスタッフにも参加してもらっています。

4Gamer:
 そうすると,かなり日本人好みのものに仕上がりそうですね。では最後に4Gamer読者に向けて,コメントをお願いします。

Albert Liu氏:
 私達は常に,いかにしてプレイヤーに楽しいサービスを提供できるかを考えています。これからもぜひ期待していてください。

浅井氏:
 近年のオンラインゲームのビジネスは,とても巨大なものになってきています。当社はその中では黎明期からサービスしていますが,今までうまくやってこれたのは,日本に合ったマーケティングを行えたからだと認識しています。オンラインゲームが流行だからやろう,といった安易な考えでは,決して長続きしなかったでしょう。
 当社は今後も,タイトルを増やすよりも,プレイヤーの要望を取り入れることを意識してサービスを行っていきます。「Bright Shadow」についても,きっと日本のプレイヤーに受け入れてもらえると思いますので,楽しみにしてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

「Bright Shadow」キャラクター


 今回は大音量が鳴り響くGamaniaブースのすぐ隣ということで,終始顔を付き合わせるようにして,お互いに声を張り上げながらのインタビューとなった。それでも遅れて到着したAlbert氏は実に堂々としており,威厳のようなものが感じられた。仮に密室で二人きりのインタビューだったら,Albert氏の迫力に思わずたじろいでいたかもしれない。
 しかしそれでも,今こうやって原稿を執筆している間も「もう一度話してみたい!」と強く感じさせる,不思議な人間的魅力を持つ人物であった。

 さて,インタビュー内容を振り返ると,アジア各国の支社からフィードバックを吸収し,素早く反映させられるだけの体制を築き上げていることは,確かにGamaniaの最大の武器といってよい。そして,Albert氏の語る内容と,今回のTGS 2006における出展作の方向が完全に一致しているのは実に興味深い。
 浅井氏の話によると,自社開発への動きが起きるのが3年前,そしてAlbert氏によるとユーザーのニーズが多様化しはじめるのが約1年前からということであったが,これらをあわせ見ると,Gamaniaの変化はニーズの多様化が浮上する以前に始まっていることになる。

 今回プレイアブルで出展されていた「Bright Shadow」については,グラフィックには目を引くところがあるものの,それでゲーム内容の評価を下してしまうのはまだ早計である。ただし,「Bright Shadow」がGamaniaの現在を反映させたタイトルとして登場してくる以上,今後のアジア市場の方向性を占う意味で,大きな意味を持つことは間違いない。今後このタイトルが,台湾,そして日本でどのように受け止められていくか,じっくり見守っていきたい。(ライター:川崎政一郎)

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