Centrino 2の構成コンポーネント。CPUとMobile Intel 4シリーズチップセット,IEEE 802.11n対応のIntel製無線LANモジュールで構成される
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2008年7月16日,Intelの日本法人であるインテルは都内で,新世代モバイルプラットフォーム
「Intel Centrino 2 Processor Technology」(インテル Centrino 2 プロセッサー・テクノロジー,以下Centrino 2)を発表した。
米国本社による発表内容は
7月15日のニュース記事,そしてそのパフォーマンス検証は先に掲載した
テストレポート記事に詳しいが,本稿ではそれらを踏まえつつ,発表会の内容を簡単にまとめてみたいと思う。
なお,Centrino 2の要点は以下のとおり。
●CPUラインナップ
発表時点のラインナップは
表のとおり。クアッドコアCPUも準備中という。また,企業向けの「Intel Centrino 2 Processor Technology with vPro」(vProテクノロジー インテル Centrino 2)の
ホワイトペーパー(※クリックするとpdfファイルのダウンロードが始まります)によると,Small Form Factor向けに,「P」型番だけでなく,「L」「U」型番のプロセッサも準備中とされている。
※「Deep Power Down」は簡単にいうと,完全なアイドル時の消費電力をさらに低減する機能。価格は,インテルからPCメーカーに1000個単位で販売するときの単価であり,店頭価格と直接の関係はない
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●チップセット
発表時点における製品ラインナップは以下のとおり。
- Mobile Intel PM45 Express:
FSB 1066/667MHz対応
DDR2-800/667およびDDR3-1066/800メモリコントローラ内蔵(※DDR3-667は2008年後半に対応予定)
最大メインメモリ容量8GB
1000個ロット時のPCメーカー向け単価:4240円
- Mobile Intel GM45 Express:
FSB 1066/667MHz対応
DDR2-800/667およびDDR3-1066/800メモリコントローラ内蔵(※DDR3-667は2008年後半に対応予定)
Intel Graphics Media Accelerator X4500HD(動作クロック533MHz)グラフィックス機能を統合
最大メインメモリ容量8GB
1000個ロット時のPCメーカー向け単価:4680円
「チップセットでBlu-rayビデオのフルデコード」を
強く訴求するインテル
吉田和正氏(インテル 代表取締役共同社長)
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さて発表会では,インテルの吉田和正代表取締役社長が登壇,世界中のPC全体に占めるノートPCの割合が,2001年の21%から2008年では47%になったことを振り返りつつ,ノートPCの割合が過半数を超えるだろう,向こう3〜4年に何が起こるのかについての見通しを示した。「モバイルでのインターネット利用者数は現在の2.5倍になり,Blu-rayビデオタイトルの数,YouTubeやニコニコ動画といった『ブロードバンドビデオ』の閲覧数も飛躍的に増えていく」と述べた氏は,高画質,高音質になっていくエンターテイメントコンテンツを,外に持ち出して楽しめることが重要で,デザイン性もますます重視されるようになると説明。これからのモバイルコンピューティングに求められる機能を持つものこそが,Centrino 2であると紹介した。
今後,ノートPCを使う人がますます増えていき,ノートPCから高解像ビデオやオンラインのビデオストリーミングを利用するケースが増えていくと吉田氏。そのニーズを満たす,新世代のスタンダードがCentrino 2だという
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及川芳雄氏(インテル インテル技術本部 本部長)
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続いてインテルの及川芳雄インテル技術本部 本部長は,Centrino 2の構成要素であるCPU,チップセット,無線LANモジュールが,正常進化を遂げてきたことをアピール。
- CPUのFSBクロック1066MHz化により,プラットフォーム全体の性能を引き上げた
- TDP 35Wだけでなく,25Wの通常電圧版CPUを用意することで,低電圧版を用いなくても,薄くて軽いノートPCを実現できる
- Mobile Intel GM45 Express(以下,GM45)は,Blu-rayの高解像ビデオをハードウェアでフルデコードできる
- 無線LANカード「Intel WiFi Link 5000」シリーズは転送レートが最高450Mbpsに到達。前世代と比べて電力効率が40%向上し,チップの実装面積も最大で4分の1にまで縮小させた
といったポイントを説明した。とくに及川氏が時間をかけたのはBlu-rayビデオに冠する項目で,外部のGPUを必要とせず,チップセット単体で高解像度ビデオのデコード処理を行えるため,パーソナルな高解像度ビデオ再生環境を,低価格(※GPU分のコストがかからない)で実現できるという。
Centrino 2の機能として,最も多くの時間をかけて説明されたのは,CPUやプラットフォームのスペック向上ではなく,チップセットレベルでのBlu-rayサポートだった
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Blu-ray Disc再生のデモ。ソニーのCentrino 2対応機「VAIO type F」とBlu-rayレコーダで同じムービーを再生し,バッテリー駆動でも動画再生の滑らかさで遜色ないことをアピールした。右はAC駆動でBlu-rayビデオをデコード中の消費電力で,HDMI出力時に20W台中盤。液晶ディスプレイをオンにしても,30W台に留まるそうだ
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ちなみに,第4世代までずっと“Centrino”だったのが,今回の第5世代で突然Centrino 2になったのには,「Blu-rayなどの高解像度ムービーに対応した最新技術であることを,エンドユーザーに理解してもらう意味も込められている」(吉田氏)とのことだった。
3Dグラフィックス性能については,チップセットの特徴の一つとして軽く紹介されるに留まった
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一方,GM45グラフィックス機能統合型チップセットのグラフィックス機能については「前世代(のノートPC用グラフィックス機能統合型チップセット)と比べて約2倍」と,一言述べられるに留まった。単体GPU「Larrabee」(ララビー,開発コードネーム)のリリースをそう遠くない将来に控え,さらにそのモバイル版も準備中のIntelだけに,現時点ではあまり力を入れたくないのかもしれない……というのはさすがに穿ちすぎだろうが,現実として,発表会会場に併設されたショウケースにはGPU搭載モデルが多く並んでいた。当然,ゲーム用途ではGPU搭載モデルが主な選択肢になると思われるので,以下,ミドルクラス以上の型番を持ったGPUを搭載する製品について,写真とともに紹介していきたい。
ユニットコム(フェイス)のゲーマー向けノートPC「Progress MTX T94000N/DVR」。Core 2 Duo T9400/2.53GHzに,Mobile Intel PM45 Express(以下,PM45),DDR3メモリ,GeForce 9800M GTSに,15.4インチ1920×1200ドットの液晶ディスプレイが組み合わせられる |
エプソンダイレクトの「Endeavor NJ5200Pro」。Core 2 Duo T9600/2.80GHz,PM45チップセット,そしてGeForce 8800M GTXを搭載する。15.4インチワイドとなるディスプレイ用の液晶パネルは1920×1200ドット,1440×900ドットの2種類がBTOオプションで用意されるという |
サードウェーブ「Prime Note Galleria MV」。 7月15日の記事で紹介した,Core 2 Duo P9500+PM45+GeForce 9600M GT搭載モデルである。液晶ディスプレイは15.4インチ,解像度1440×900ドット。8月上旬にBTO標準構成価格15万5980円(税込)で発売になる予定だ |
先に掲載した テストレポートで取り上げたMSI製ノートPC「MS-1651」がベースとなる,マウスコンピューターのゲーマー向けモデル「NEXTGEAR NOTE M520WXV1」。Core 2 Duo T9600+PM45+GeForce 9600M GTという構成で,ディスプレイは1680×1050ドットの15.4インチパネルを採用する |
ASUSTeK Computerの「M51Va」。Core 2 Duo P8600/2.40GHzにPM45チップセット,ATI Mobility Radeon HD 3650が組み合わせられる。液晶ディスプレイは15.4インチ,1440×900ドット。Windowsを起動するまでもない,ちょっとした作業に向くLinux「Express Gate」を標準搭載するのも特徴だ |
マウスコンピューター「m-book TW800S」は,Core 2 Duo P8400/2.26GHzにPM45,GeForce 9600M GSが組み合わせられる。ディスプレイは15.4インチで,解像度1280×800ドット。HDMI&eSATAを標準で搭載しており,全体的には「エントリーユーザー向けのオールインワンノートPC」といった趣 |
九十九電機が取り扱うGIGABYTEブランドのノートPC「GIGABYTE W576V」。BTO対応だが,標準構成ではCore 2 Duo T9400にPM45チップセット,GeForce 9600M GSが組み合わせられている。ディスプレイ解像度は1280×768ドットで,パネルサイズは15.4インチだ |
ローエンド向けのGeForce 9300M GS搭載だが,GM45のグラフィックス機能とGPUをシステムの再起動なしで切り替えられる「Switchable graphics」対応だったので,特別にソニーの「VAIO type Z」も紹介しておきたい。Core 2 Duo P9600を搭載し,13.1インチ液晶ディスプレイを持つ,モバイル向けモデルとなる |