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「キネマ51」:第33回上映作品は「ジミー、野を駆ける伝説」
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印刷2015/02/28 00:00

連載

「キネマ51」:第33回上映作品は「ジミー、野を駆ける伝説」

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第33回上映作品は「ジミー、野を駆ける伝説」

 グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏が支配人を務める架空の映画館,「キネマ51」。この劇場では,新作映画を中心としたさまざまな映像作品が上映される。第33回の上映作品は,一貫して労働者階級を描き続けるイギリスの名匠,ケン・ローチ監督の「ジミー、野を駆ける伝説」

「ジミー、野を駆ける伝説」
1月17日,新宿ピカデリー,ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第33回上映作品は「ジミー、野を駆ける伝説」

「ジミー、野を駆ける伝説」公式サイト


須田:
 部長,今年はどんな年でしたか?

関根:
 あのー支配人,もう年が明けてずいぶん経っているようなんですが。

須田:
 マジですか! 確か僕達,忘年会をやっているところだったと思うんですけど。

関根:
 そうなんです。忘年会をやっていたと思ったら,いつのまにか新年会になっていたという。時間の経つのはあっという間ですね。

須田:
 ですねぇ。じゃあ部長,今年の抱負は?

関根:
 切り替え早っ! 今年の抱負ですか? ちゃんと月に1本ペースでこの連載を続けるってことですかね。

4Gamer:
 部長,もうすでに……。

関根:
 す,すいません〜。

須田:
 先が思いやられますねぇ。

関根:
 さて,今年最初の作品は……。

須田:
 切り替え早っ!


新年一発目からいきなりシブいセレクト


関根:
 いきなりシブい監督きましたね。ケン・ローチ監督。

須田:
 2015年は,本物の映画監督と言われてきた人達が,今はどんな作品を撮っているのかを掘り下げていきたいなと。で,ケン・ローチ監督[1]の新作ですよ。

関根:
 まず,ケン・ローチとはどういう監督なのか,説明が必要ですかね。

須田:
 それは脚注を見ていただくとして。

関根:
 ですね。支配人は何がお好きなんでしたっけ?

須田:
 僕はやっぱり「ケス」[2]ですか。

関根:
 製作は1969年なんですけど,日本で公開されたのはなんと27年後の1996年という。

須田:
 監督への再評価の機運が日本でも高まっていた時期でした。

関根:
 「レディバード・レディバード」[3]も衝撃的な作品でしたね。

須田:
 最近の作品だと「SWEET SIXTEEN」[4]や,「天使の分け前」[5]なんかかなぁ。

4Gamer:
 あー,ウイスキーの話。

関根:
 そうですね。このあたりはコメディ色も強い作品です。

須田:
 コメディだと,「エリックを探して」[6]も。カントナのね。

関根:
 エンターテイメントなものを撮りつつも,とにかく一貫して労働者の目線で描き続けているんですよ。
 個人的にオススメなのは,「大地と自由」[7]「カルラの歌」[8]ですね。かつて自分が宣伝に関わっていたこともあるんですが,やはりケン・ローチ監督らしい作風であると思っているんです。

須田:
 なるほど,そこを推しますか。
 そういう意味では今回取り上げる作品も,労働者の目線という色がなり濃いものです。

関根:
 アイルランドの労働運動の史実に基づいていますから。

須田:
 主人公のジミー……,ジミー何でしたっけ? ジミー・スヌーカ[9]

関根:
 違いますね。そこは聞き流しますけど。

4Gamer:
 僕もとくに面白くはしませんけど。

須田:
 めげませんよ,僕だって。えーっと,ジミー・グラルトンさん。実在の市民運動家で。そこに監督独自の目線でキャラクターや事件を肉付けしていったそうなんです。
 これがもしハリウッド映画だったら,もの凄い暴動を命を張って食い止めた無敵の英雄みたいな話になると思うんですよ。でも,実に静かな市民運動でした。

関根:
 そうですね。でも,あれ市民というか村民ですよね。

須田:
 舞台もダブリンじゃないんですよね。

関根:
 リートナム。ダブリンが東の海沿いだとすると,ここは南西の海沿い。かなりの田舎のようです。

須田:
 ところで僕ら,ダブリンといったらダンバインしか思い出せないじゃないですか。

関根:
 ジェリル・クチビの出身地ですね。それ以外だとマシュマー・セロがコロニーを落とした場所ですかね。

須田:
 ZZガンダム的には。もしくはU2,シニード・オコナー(シネイド・オコナー)。

関根:
 ……僕らって,薄っぺらいですね。

須田:
 ……。


時代背景はなかなか複雑


関根:
 この作品,ストーリーを説明すること自体は簡単なんですが,アイルランドの歴史を知らないと分かりづらいんですよ。でも,ハードル上げてもしょうがないですから。僕なりに簡単にまとめてみました。

須田:
 はいはい。

関根:
 時代は第一次世界大戦と第二次世界大戦の間,イギリスからの完全独立派と非完全独立派が対立していたアイルランド。反体制派を良しとしない社会道徳面での強い指導権利を持つカトリック教会と,ファシスト(極右派)が手を組むという複雑な関係性も生まれていた。
 そんな反体制派のカリスマ,労働運動家ジミー。彼が若者からの望みで,ダンスや音楽,書籍や絵画といった文化に触れることのできる,労働者達の集まる公民館を建てたことによって,村の中に複雑な対立構造と悲劇を生み出してしまう……やっぱり難しいですかね?

4Gamer:
 難しいですね(笑)。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第33回上映作品は「ジミー、野を駆ける伝説」

須田:
 簡単に言うと,Zガンダムですよ。対立構造がたくさんありすぎて,敵の敵は味方も多く生まれてしまうみたいな。

4Gamer:
 分かったような分からないような。

関根:
 歴史が分からないと,軽はずみなことは言えないですよね。

須田:
 そうなんですよ。慎重に発言しなきゃいけないんですけど……僕らって軽はずみなことしか言えないじゃないですか。

関根:
 ですよね。

4Gamer:
 この作品を紹介するのに一番ふさわしくないじゃないですか。


マジメにやってはみるものの


須田:
 この作品を見て感じたのは,ただ単にその場を撮っただけ故に笑いが起こり,涙も出る――つまり,演出なんてしなくても映像自体が自然とエンターテイメントになってしまうということ。

関根:
 記録ということですかね。

須田:
 逆にいうと,ドラマなのに記録,ドキュメンタリーのようにできあがっている。この映画で言うと,ジミーのお母さんの行動なんか,笑っちゃうじゃないですか。

関根:
 どんなシリアスな場面であっても日常に混ざると,そこにおかしみも入り込んでしまう。

須田:
 そうなんですよ。ハリウッドの映画を見慣れている人にとっては物足りないと思うかもしれませんけど,一度それを感じたらきっと楽しめると思うんですよね。

関根:
 僕,一つだけ思ったことがあるんですけど。

須田:
 何でしょうか?

関根:
 監督は,アイルランドの労働者の英雄であるジミーの半生を,どうしても描きたかったんだと思うんですよ。でも,僕はジミーのお母さんの半生を見てみたかったなぁと。

須田:
 なるほど。

関根:
 本当に何もないような片田舎でジミーという英雄を育て,彼が二度の国外追放になっても気丈に生き,息子の不当追放を訴えるために各地の動労運動で演説を行ったという彼女の物語。いい話になると思うんですよね。

須田:
 ハリウッドだったらそっちを映画化しますよね。主題歌はU2で。

関根:
 移動図書館をやって町の子供達に夢を与えていたエピソードも素敵じゃないですか。

4Gamer:
 ハリウッドだったら,演説中に暴漢に襲われたりするんですよね,きっと。

須田:
 涙で訴えるシーンで流れるのは,シニード・オコナーですよ。

関根:
 ぜひね,続編はお母さんにスポットを当ててもらって。

須田:
 でもケン・ローチ監督だと,その演説シーンだけを切り取りそうですよね。

関根:
 そうなると,ちょっとやっかいなおばさんの話になってしまうかもしれませんね。

4Gamer:
 ところで,常に労働者の目線で作品を撮ってきたケン・ローチ監督からしたら,支配人なんて敵ですよね。経営者ですからね。

関根:
 ホントだ,真っ先に標的にされますよ。

須田:
 いやいや,うちは労働者に優しいですよ。ウフフ。

関根:
 最後のウフフが非常にドキドキさせられる笑みでしたが,まあ,きっとそうですよね。

須田:
 うちの会社なんかより撮ってほしいのは,やっぱりアナウンサー内定取り消しホステスじゃないですか? あれなんかまさに労働問題として社会現象にまでなりましたからね。

関根:
 あの後,某週刊誌が「銀座ホステスが内定取り消し問題に,怒りの抗議ヌード!」なんてグラビアを掲載しましたけど,そもそもヌードが抗議になるのかと。

4Gamer:
 ある意味,ハンガーストライキ的な意味があるんじゃないですかね。知らないですけど。

須田:
 なるほど,着る服がない! みたいな。きっとケン・ローチ監督もふざけるな! って思っているんじゃないですかね。

関根:
 それはあの問題にですか? それとも僕達にですか?

4Gamer:
 間違いなく,“僕達”のほうだと思います。

須田:
 ダハハハ。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第33回上映作品は「ジミー、野を駆ける伝説」


この映画をどうやってゲームに……


須田:
 監督が描くのは,その土地に根付いている人ですよね。

関根:
 町とか村に。

須田:
 その設定って,僕は藤子・F・不二雄の世界だと思うんですよね。

関根:
 ちょっと待ってください?

須田:
 いえ,待ちません。このゲーム,最高なんですよ。「藤子・F・不二雄キャラクターズ 大集合!SFドタバタパーティー!!」Wii U / ニンテンドー3DS)。

関根:
 どういったゲームなんですか?

須田:
 これはですね,簡単に言うと,藤子キャラがいっぱい出てきます。

関根:
 それじゃ簡単すぎだしいろんな意味でダメだと思います。

4Gamer:
 もう少し正確に表現するならば,ミニゲームを通じていろんな藤子キャラを集めていくゲーム……といったところでしょうか。

須田:
 そうですそうです。これ,キャラが凄いんですよ。あんなキャラいいな,こんなキャラいいな,がいっぱいいるんですよ。部長もご存じだと思いますけど,僕の一番好きな「TPぼん」,そして「21えもん」「エスパー魔美」「パーマン」などが全部出てくるんですよ。

関根:
 そうなんですか。

須田:
 ほんとね,僕,こういうゲームを作りたくて,バンダイに企画書を出したことがあるくらいなんですよ。

関根:
 へー,ホントですか?

須田:
 ホントです。「ドラえもん」のゲームを作りたくて。

4Gamer:
 バイオレンスな?

須田:
 違いますよ! ニンテンドーDS用の「グランド・セフト・オート:チャイナタウン・ウォーズ」みたいな感じで,ドラえもんで描かれている町の中を移動して。

4Gamer:
 はいはい,俯瞰視点で。

須田:
 町に行くと,いろんなF先生のキャラに会えて,で,大きなミッションは,全部劇場版のストーリーなんですよ。

4Gamer:
 それ,面白そうじゃないですか。

須田:
 絶対面白いですよね。ずーっと作りたいと思っているんですよ。そのゲームと,あと「閃光のハサウェイ」のゲーム。

関根:
 じゃあ,支配人の今年の目標ということで!

須田:
 みなさま今年もよろしくお願いいたします!

一同:
 よろしくお願いいたします!

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