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「キネマ51」:第44回上映作品は「ぼくの名前はズッキーニ」
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印刷2018/02/10 00:00

連載

「キネマ51」:第44回上映作品は「ぼくの名前はズッキーニ」


 グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏が支配人を務める架空の映画館,「キネマ51」。この劇場では,新作映画を中心としたさまざまな映像作品が上映される。
 第44回の上映作はストップモーション・アニメ作品「ぼくの名前はズッキーニ」。映像から伝わってくるクレイアニメならではの手触りと胸に染みるストーリーで,第89回アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされるなど,高い評価を受けた作品だ。

「ぼくの名前はズッキーニ」
2018年2月10日(土)より新宿ピカデリー,YEBISU GARDEN CINEMAほか,全国ロードショー
配給:ビターズ・エンド,ミラクルヴォイス

「ぼくの名前はズッキーニ」公式サイト



ゲーム業界への逆襲!? 映像見放題サービス


「キネマ51」:第44回上映作品は「ぼくの名前はズッキーニ」
大坪:
 無事復活2回目の掲載ということで,安心しているファンも多い……といいなぁと思いますが,1年9か月の休館期間で映画業界にとって大きく変わったのは「定額見放題サービス」が一気に広まった,ということだと思うんです。支配人は加入されてます?

須田:
 NetflixにAmazonプライム・ビデオ,Huluあたりは一式入っています。でも見る時間が足りないんですよね。「DEVILMAN crybaby」も見なきゃって思ってはいるんだけどなぁ。湯浅政明監督の作品は「マインドゲーム」なんかも大好きだったから,すごい期待していますし。
 でも映画以外にもバラエティで「ドキュメンタル」とか「有田と週刊プロレスと」とか周りが凄いレコメンドしてくるから,多くて追い切れない! ずっと楽しみにしていた「仮面ライダーアマゾンズ」すらチェックできていないし……。

大坪:
 Netflixなんかだと,むちゃくちゃ面白そうなドキュメンタリーとか日本語字幕付きで配信してますけど,これ以上,観る時間を作れないですよね。今までですら本やDVDを積んでいたのが,もう“ネット積み”の時代が完全に到来しています。

須田:
 思っていた以上にどんどん観たい映画や作品が出てくるんですよね。本当に時間が足りない。仕事できなくなりますもん。だからもう,今のエンターテイメントって各人の娯楽に使う時間の奪い合いなんですよね。この見放題の勢いは,今まで時間を獲っていたゲームに対して,TVが逆襲してきてる感じがしますよ。

大坪:
 自分達の子供の頃って,もっと映画とか音楽とかゲームも「観たい! 聴きたい! 遊びたい!」って思っていたじゃないですか。でもいざその時代が来てみたら「物量が豊富すぎるって,こんなにたいへんなのか!」って思いますね。

須田:
 ずっと飢えていたはずなんですけどねえ。今は飢えはないんですよね,飽食の時代で。何でも観られるし何でも聴ける。ゲームだって無料ですから。

大坪:
 しかも,支配人は作る側に回ってヒーヒー言っているという(笑)。そういう意味じゃ今の若い人は選ぶのがたいへんですよね。

須田:
 何をチョイスするのか,ってのが本当に大事ですよね。今まではそこを担ってきた雑誌だとか評論家やジャーナリストの人達が,これまでのようには消費者から信用されなくなってきているじゃないですか。
 例えば,今の海外のゲーマー達って,大きなゲーム情報サイトは信用していないんですよ。

大坪:
 そういうものなんですか?

須田:
 ええ。じゃあ何を信用するかっていうと,大手のメディアではなく,個人ベースのブロガーとかYouTuber,実況する人とか。そういう人達を中心としたコミュニティが何千人とか何万人とかの規模であって,そこから自分に合った情報を仕入れて遊ぶんですよね。音楽でも映画でもどれも同じことが起きているんでしょうね。

大坪:
 音楽だと聴き放題が増えて,アルバム単位やアーティスト単位じゃなくて,誰かがいろんな曲をテーマ別にまとめたプレイリストを使って聴く人が増えているそうですね。だから今はオススメする“人”が大事というか。

須田:
 この連載も負けないようにしなきゃいけないですね(笑)。


フランス人って仕掛けてきますからね


大坪:
 さて今回の上映作はストップモーションアニメ作品「ぼくの名前はズッキーニ」ですけど,支配人のチョイスにしては意外な気がしました。

須田:
 フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で二冠と評判が高かったのもあるんですけど,メインビジュアルを見てなんとなく気になって。これはフランスとスイスの合作なんですけど,ハリウッドや日本の映画に比べると,ヨーロッパ映画って観ている途中でどこにいくのか想像つかないものが多いんですよね。ハリウッド映画なんかだと,中盤まで来たら最後までの展開が読めるじゃないですか。


大坪:
 中盤まで来たらだいたい全体の関係性が見えてきて,あとはコイツとアイツがぶつかって……と想像つくところはありますよね。

須田:
 だけど,フランス映画を好きになったのって,ずっと物語がどこに向かっていて,今自分がどこに連れてってもらえるのか分からないところなんですよね。まったく知らない車に乗っている楽しみっていうか。だから怖いんですよ,ヨーロッパ映画って。楽しい展開なのがいきなり悲劇になったりするから。フランス人って仕掛けてきますからね。

大坪:
 そんな厄介なプロレスラーみたいな(笑)。本作は,思わぬ事故で母親を亡くしてしまい,その自責の念に駆られ続ける少年のズッキーニが,孤児院に入れられるところから物語は始まります。主な友達が全員孤児だというのもあって,子供らしい明るい生活の中にも随所に影や寂しさが感じ取れますね。

須田:
 そうなんですよ。孤児院の子供達も,やんちゃなんだけどその裏には移民とか親からの虐待とか,それぞれの過酷な面を抱えていて。徐々に子供達も打ち解けていって,恋心を抱いたりといった微笑ましい展開が続くだけに,「途中から凄い悲劇にはなるなよ!」と願いながら観ていた感じですね(笑)。
 どういう結末になるかは皆さんお楽しみに,って感じですけど。

大坪:
 9歳の子供が「自分が母親を殺したんじゃないか」ってけっこうハードな始まり方ですよね。ほかの子供達も親に虐待されて顔を半分見せないとか,歯磨き粉を飲まされていたとか……。


須田:
 これ,実写でフランス映画のトーンだったら,もっと痛々しさが前に出てきていただろうなぁ。心の痛みみたいなものを実写で描くと,強く出過ぎちゃうんですよ。クレイアニメで描かれた子供達だからこそ,子供達の心の痛みが少しオブラートに包まれた形で伝わってくるっていうのはありますよね。

大坪:
 といっても,普通のアニメだったら,正直地味すぎる話ですよね。

須田:
 そうかもしれないですね。クレイアニメという手触り,肌触りが伝わってくる手法だから,ちょうどいいリアリティなんです。実写だと目を背けたくなるような世界なんだけど,それを人形を通すことで包み隠さず見せられる。ここに映像の力を感じますね。

大坪:
 生身ほどエグくなく,アニメほど嘘っぽくないバランスはクレイアニメじゃないと描けなかった感じはしますね。

須田:
 孤児院の中での子供達の成長に心温まりながらも,現実的な展開もあって。ただ完全ではないけど少し救いはあるというところがほろ苦い感じというか,それが合っていますよね。最近,子供が出て来るのに弱いから(笑),ぐっときましたね。


ゲームの中での”トラウマ”との向き合い方


大坪:
 本作に出て来る孤児院にいる子供達ってそれぞれトラウマを抱えていますけど,支配人もゲーム内に幼少期のトラウマを抱えたキャラクターを描いたりするじゃないですか。そういうところに気をつけてます?

須田:
 子供時代を描写するときは凄く気をつけますね。「なぜこういう性格になったんだろう?」って思えるような強い人物を描くときには。とくに僕の場合は殺し屋だったり,犯罪絡みだったりすることが多いので,まず生い立ちや育ってきた環境から考えますから。

大坪:
 支配人の作品の場合,超個性的なキャラがその性格やスタイルになった理由として,トラウマを描くことも多いですよね。

須田:
 ある日突然,ポッと殺し屋になるわけじゃないですからね。当然そこに至るまでの“何か”があるわけで。その過去を描くときは気をつけますし,普通の育ち方をしてそうなったわけじゃないから,「じゃあ何があったんだろう」って考えますね。

大坪:
 ただ,そのトラウマが濃さをどの程度まで表現するのかという線引きって,すごい難しいんだろうなという気がするんです。

須田:
 僕が「KILLER IS DEAD」PC / PlayStation 3 / Xbox 360)を作ったとき,第一稿では主人公のモンド・ザッパはゴミ捨て場に捨てられてた赤ん坊で,そこから拾われて育ったというベースがあって。「大雨の中,生ごみと一緒に捨てられていた。そこから彼はなぜ殺し屋になったのか?」というファーストシーンの物語をイメージしていたんですよ。「ゴミ山の少年」みたいな。
 でもそれはNGが出ましたね。「生い立ちが暗すぎる」って。エンターテイメントだとそういうところも意識してシナリオを書かないとダメなんですよね。

「KILLER IS DEAD」
「キネマ51」:第44回上映作品は「ぼくの名前はズッキーニ」

大坪:
 その点,先ほどの話とも重なりますが,この「ぼくの名前はズッキーニ」はクレイアニメだからこそ描ける感じがありましたね。子供達の生き生きとした様子とか。

須田:
 声優は全部素人さんなんですよね。それが良かった。意味が分からなくても,子供の声ってやっぱり伝わるじゃないですか。元気があるのか,がっかりしているのか。

大坪:
 日本語版は峯田和伸,麻生久美子,リリー・フランキーという豪華布陣です。映画好きの中だと“吹き替え問題”が起きがちですけど,支配人はその点についてどう思われてます?

須田:
 僕は4DXが大好きなんでよく行くんですけど,あれって吹き替えじゃないとのめり込めないんですよね。あと僕の周りだと老眼で字幕が見えなくなってきたなんて声も,正直あります。だから吹き替えには頑張ってほしい気持ちはありますよ。吹き替えタレント問題はねえ……お客さんを入れるためにはしょうがないのかな。

大坪:
 正直,宣伝も兼ねて,という意味のことも多いですよね。

須田:
 ただ声優でも,山ちゃん(山寺宏一)クラスになると,もう山ちゃん以外の何者でもないじゃないですか(笑)。声色を変えても山ちゃんは山ちゃんなんですよね。

大坪:
 世間的知名度が高いから使われるし,うまいから主役級に抜擢されるんですよね。確かに“山ちゃん多すぎ問題”はあると思います! 山ちゃんにまったく罪はないし,本当に凄い声優さんなんですけど(笑)。


“素材感”があるゲームといえば!?


大坪:
 では最後に,今回も本作に絡めたゲームを紹介していただきたいんですけど,クレイアニメっぽいゲームといえば……?

須田:
 それだと「リトルビッグプラネット」シリーズかなあ……。あと“素材感”でいえば,「ヨッシー ウールワールド」ですね。毛糸の世界に挑戦しているという。任天堂のタイトルは映像の質感みたいなところにも,常に挑戦しているんですよ。

大坪:
 Nintendo Switch用にも「ヨッシー for Nintendo Switch(仮称)」というのが発表されてますね。

須田:
 (トレイラー動画を見ながら)今度は紙かあ。「ペーパーマリオ」シリーズもあったけど,さらに進化してますね。これは楽しみ。

大坪:
 毛糸や紙といった映像の質感をさらに遊びにつなげてくるのは,さすが任天堂! という感じがしますね。

須田:
 今回の映画を観て思ったんですけど,クレイアニメって日本だとEテレくらいでしか流れないじゃないですか。本当に手間暇かかるから商業アニメではなかなか難しいというか。これをスポンサードできるだけの予算のあるところってなかなかないんでしょうね。
 最近だとクレイじゃないけど同じストップモーションアニメで「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」はありましたが。

大坪:
 CGでずいぶん近い表現はできるようになりましたけどね。クレイアニメ“っぽい”なら,かなり現実味が増してきました。

須田:
 そうですね。でも「ぼくの名前はズッキーニ」は子供達の吹き替えなんかも含めて,映画だからこその世界が描けていて良かったですね。目にも耳にも,子供達の手触りが伝わってくる感じっていうか。いい作品でした!

「ぼくの名前はズッキーニ」公式サイト

  • 関連タイトル:

    KILLER IS DEAD NIGHTMARE EDITION 日本語版

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