テストレポート
来たるべき4K時代にGPUは対応できるのか。マルチGPU構成でチェックする,GeForceとRadeonの「4K対応度」
テレビにおける4K解像度の難点としてよく挙げられるのがコンテンツ不足だが,ゲームという立派な4K対応コンテンツがPCにはすでにある。もちろんすべてのゲームが4K解像度をサポートしているわけではないものの,GPU業界の二大巨頭であるAMDとNVIDIAが相次いで4K解像度への最適化を謳ってきているので,デベロッパ側での対応も進むことだろう。数年以内に,PCゲームの4K解像度対応は当たり前のことになると思われる。
となると,当然ながら,GPUにも今までより高い性能が求められることになるわけだが,最近になってNVIDIAが「現行世代のGPUにおける4K対応」の問題点を指摘してきた。
果たしてNVIDIAは何を主張しており,問題とは何のことか。テストを交えながら,PCゲームにおける4K解像度の現状を確認してみたい。
NVIDIAが指摘する4Kディスプレイ環境の問題点
したがって単純に考えれば,「1920×1080ドット解像度で快適に使えるGPU」比で4倍以上の性能を持つGPUが,4K時代には必要になる。もちろん,現行世代のGPUは,ミドルクラス市場向けでも1920×1080ドットでプレイアブルなフレームレートを叩き出せるので,「GeForce GTX 780 Ti」(以下,GTX 780 Ti)や「Radeon R9 290X」(以下,R9 290X)比で4倍の性能が必要というわけではないが,それでも,低くないハードルなのは確かだ。
また,4K解像度では,PCから送られてくる時間あたりのデータ量が1920×1080ドット比で当然のことながら4倍になるため,そのデータを伝送するインタフェースや,データを受ける側のディスプレイ内部処理にも,高い性能が求められるようになる。
PCと4Kディスプレイの接続を例に,まず伝送経路の話をすると,2013年12月時点で,4K解像度に余裕をもって対応できる規格としては,DisplayPort 1.2が挙げられる。DisplayPort 1.2は4本のデータ伝送レーンを持ち,1レーンあたり5.4Gbps,
一方,広く使われているHDMI 1.4は,データ伝送レーンが3本あるのだが,1レーンあたりの帯域幅は3Gbpsなので,合計では9Gbps。4K解像度で垂直リフレッシュレート60Hz表示を行うには帯域幅が足りない。HDMI 1.4では,4K解像度時の垂直リフレッシュレートが最大30Hzまでとされているのだが,その理由は単純で,帯域幅が不足しているからなのである(※まだ実際の採用製品が登場していないHDMI 2.0だと,データ伝送レーンが3本なのはそのままに,1レーンあたりの帯域幅が6Gbpsへ広げられるため,合計18Gbpsで,4K解像度の垂直リフレッシュレート60Hzに対応できるようになる)。
以上がデータを伝送するインタフェース側の課題だが,4Kのデータを受けるディスプレイ側にも課題がある。それは,4K解像度に必要な性能を持つ「スケーラー」(Scaler)がまだないという点だ。
スケーラーというのは,「画像の大きさを変換する機能を持つ,映像処理用LSI」のことだ。たとえば,読者が1280
必要に応じて画面を拡大したり逆に縮小したりする機能を持たないと,ディスプレイはとても不自由なものになってしまう。スケーラーはディスプレイにおける必須機能なので,映像処理回路には必ず用意しておかねばならない。
それにもかかわらず,市場には,4K解像度で垂直リフレッシュレート60Hzの入力を受け付けられる性能を持つスケーラーが存在しない。2013年後半になって,ようやっと数社から発表され,サンプルチップの出荷が始まったという段階なので,IGZOパネル採用ディスプレイとして話題を集めたシャープの「PN-K321」など,現行世代の4Kディスプレイにはどうやっても搭載できないのである。
DisplayPort 1.2 MSTに対応する出力デバイス側――PCならグラフィックスカード――はまず,4K解像度を1920×2160ドットの左右2画面に分割。そしてそれぞれをHDMI 1.4のストリームに載せて,MSTマルチプレクサで束ね,DisplayPort 1.2の物理層を使いディスプレイに送る。
それを受けるディスプレイ側では「MST De-multiplexer」(MSTデマルチプレクサ,MST分離器」を使って,再びHDMI 1.4×2本のストリームに分離。そのうえで,それぞれスケーラーを介して画像処理する。こうすれば,スケーラーが担当するストリームを1920×2160ドット,垂直リフレッシュレート60Hzに抑えられるので,4K解像度の垂直リフレッシュレート60Hzに対応していないスケーラーでも,最終的に4Kの表示が行えるという理屈だ。
ちなみに,上のスライドを見て気づいた人がいるかもしれないが,現行世代の4Kディスプレイでは,DisplayPort 1.2 MSTのほかに,HDMI 1.4の物理インタフェース2本を使って接続する方法もサポートされている。2系統のHDMI 1.4による接続では,2本のHDMIケーブルを使って,それぞれ1920×2160ドット解像度の映像をPCからディスプレイに送る形になる。
物理的に2本のHDMIケーブルでつながるので,1本のDisplayPortケーブルを使った接続とは違うように感じられるかもしれないが,「内部的に2本のストリームで扱われている」という点で,両者に違いはない。
……と,ここまでが概論。いま述べた「現行世代の4Kディスプレイが持つ仕様」がゆえに,競合製品のCrossFire構成で「問題」が生じているというのが,NVIDIAの主張である。
CrossFire構成やSLI構成は,4K解像度におけるゲームプレイにおいて,重要な技術だろう。ゲームタイトルによって事情は異なる一方で,4K解像度では描画負荷が非常に高まるのは間違いなく,PCならではのグラフィックス設定を適用しつつ,最新世代の3Dゲームタイトルを4K解像度で楽しみたいとなれば,2-way以上のマルチGPU構成が,当面は現実的な選択肢となるからだ。
では,CrossFire構成には具体的にどのような問題があるのか。まずはNVIDIA側の言い分を,同社が示したスライドを引用しながら紹介しておこう。
1つめは,4K液晶パネルの左右中央,内部的な2画面の境部分で,テアリング(tearing,日本では「ティアリング」読みが主流)のようなズレが生じ,また,本来であれば中央部分に表示されるべきプレイヤーキャラクターが左に寄って表示されることがあるというものだ。
もう1つは,NVIDIAが独自開発したフレームレート計測ツール「Frame Capture Analysis Tool」(以下,FCAT)を使ってCrossFire環境の描画を検証した結果,4K解像度において,正しく表示されないフレームが多いという指摘である。
FCATに関しては過去に二度取り上げているので,記憶に残っている読者もいるのではないかと思う。「FCATとは何か」という話は,初めてFCATを取り上げたときの記事を参照してほしいが,簡単にまとめるなら,
- ゲームを実行したとき,実際にグラフィックスカードから出力される映像を録画し,それを検証することで,フレーム落ち(Frame Drop)や,20ライン以下しか描画されなかった不完全なフレーム(Runt Frame)をチェックできる
というシステムである。
NVIDIAは,「CrossFire環境では4K解像度においてフレーム落ちや不完全なフレームが多発した」と述べている。さらに,1つあるいはそれ以上前のフレームの一部が表示に混ざる現象「Frame Interleaving」(フレームインターリービング)も確認できたとのことだ。
RadeonのCrossFire構成では4K環境でフレーム落ちが多発するとNVIDIAは指摘している |
さらに,新しいフレームに古いフレームが混ざるFrame Interleavingも確認できたという |
実際,過去の検証では,RadeonのCrossFire構成で,フレーム落ちや不完全なフレームが多くなる傾向を確認できている。AMDはこの事実を受け,ドライバスイート「Catalyst」に対して修正をかけてきたが,この修正がゲームタイトルごとの個別対応になっている模様だということも,4Gamerではすでにお伝え済みだ。
4Kでも同じことが繰り返されるというのは,あっても不思議ではない。
では,NVIDIAの言い分はどこまで正しいのだろう? RadeonのCrossFireには,どの程度の問題があるのだろうか?
「4K環境における表示異常」をどのようにテストするか
このハードルを乗り越えるべくNVIDIAが提案している解決方法は,先に触れた,2系統のHDMI出力を用いるというものになっている。2系統のHDMI出力であれば,1系統あたりの解像度が1920×2160ドットで済む。そしてこの解像度なら,垂直リフレッシュレート60Hzでもドットクロックは296MHzと,VisionDVI-DLでキャプチャできるレベルに収まる。
ここで重要なのは,FCATがその仕様上,画面左にオーバーレイ表示されるカラーバーさえ録画できていれば,フレームの解析が可能なシステムとなっていること。つまり,HDMIの2系統入力に対応したディスプレイなら,向かって左側の画面さえキャプチャできれば,FCATから解析できるのだ。
グラフィックスカードからはDVIおよびHDMIで出力し,DVI出力側は,先のFCATテストでも用いたGefen製のDual-Link DVIスプリッタ「1:2 DVI DL Splitter」(型番:EXT-DVI-142DL)へ入力。そこで2分岐させ,片方をVisionDVI-DL搭載のキャプチャシステムと接続しつつ,もう片方をHDMI変換のうえ,ディスプレイの左画面用HDMI入力と接続する。一方,グラフィックスカードからのHDMI出力は,ディスプレイの右画面用HDMI入力と直結させる。
HDMIの2系統に分かれた片側,1920×2160ドットだけの解析で本当に意味があるのかと思うかもしれないが,先に述べたとおり,現行世代の4Kディスプレイは,仮にDisplayPortケーブル1本で接続している場合でも,ディスプレイの内部的ではMSTデマルチプレクサを使って2系統のHDMI 1.4に分けられている。だから,4K環境におけるFCATテストに問題はないわけだ。
なお,余談ながら書き記しておくと,2014年以降,HDMI 2.0に対応し,4K解像度で垂直リフレッシュレート60Hzに対応するスケーラーを搭載した4Kディスプレイが出てきたときには,今回のテスト方法は使えなくなる可能性がある。「HDMI 2.0やDisplayPort 1.2のストリームを2分割する」というのが,明らかに“余計な仕組み”となるからである。そうなったときにFCATはどうなるのか……とも思うが,それはまた別の話だろう。
4K解像度に対応する4タイトルをFCATでチェック
NVIDIAの指摘する問題点と,テストの方向性が見えたところで,細かなセットアップに入っていきたい。今回は,4K解像度でプレイアブルなフレームレートを狙うために,「GeForce GTX 680」搭載グラフィックスカード2枚の2-way SLI構成(以下,GTX 680 SLI)と,内部で2-way CrossFire構成が採用されているデュアルGPUカード「Radeon HD 7990」(以下,HD 7990)を用意している。いずれも最新世代のGPUではないが,性能的に問題はないだろう。念のため付記しておくと,HD 7990はカード上でCrossFire動作しているため,GTX 680 SLIとの比較にあたって,「2枚と1枚の比較はおかしい」ということにはならない。
そのほかテスト環境は表1,2のとおり。表1は実際にテストを行ったPC,表2は録画する側のPCとなる。
過去2回のテストでは,非圧縮で,フレームの欠落なしに動画をキャプチャすべく,高速なRAID 0環境を用意する必要があった。それに対し,FCATの最新版では,録画する領域の解像度を絞ることで,必要なストレージ帯域幅は大幅に低下。必ずしもRAID 0構成をとらなくてもよくなったので,今回はSerial ATA 6Gbps対応のSSD 1台を録画用のストレージとして用いている。これで問題なく保存できるというのはありがたい。
さて,テストするタイトルだが,今回は,4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0から,4K解像度が公式にサポートされた「Crysis 3」と,非公式にサポートされた「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)の2タイトルを選択。加えて,レギュレーション14.0以外の4K解像度対応タイトルのなかから,国内でプレイヤー数の多い「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」を使うこととし,今回は公式ベンチマークツール「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)を用意した。さらに,NVIDIAがAMDの実装に問題ありとしていることから,AMD製GPUに最適化されたタイトルも必要と考え,今回は「TOMB RAIDER」もテスト対象に加えている。
採用したタイトルでどのようにテストを行ったかは,タイトルごとの分析時に述べたいと思う。
なお,今回は「Far Cry 3」と「Battlefield 4」も使うつもりでいたのだが,前者はHD 7990で4K解像度を設定するとエラーが出たこと,後者はFCATのカラーバーを表示させる「Overlay」というツールがなぜか動作しなかったため,いずれも利用を見送った。
OverlayはDirect3DのAPIをフックして画面上にカラーバーをオーバーレイさせるツールなので,動作しないというのは極めて珍しい現象だろうと思われ,原因がなぜなのかは逆に興味がある。問い合わせたが,NVIDIAから回答は得られなかったため,今回はやむを得ず外した次第だ。
4K環境ではHD 7990で大幅なフレーム落ちを確認
では,順にテスト結果を見ていこう。まずは,ベンチマークレギュレーション14.0に含まれるタイトルからだ。
■Crysis 3
あらためて述べるまでもないだろうが,Crysis 3は,非常に描画負荷の高いタイトルである。4K解像度でプレイアブルなフレームレートを得るのは非常に難しく,そこで今回は「エントリー設定」を用いてテストを行うことにした。それでもGTX 680 SLIやHD 7990ではプレイアブルなフレームレートに届かないので,実際にプレイする場合にはさらにグラフィックス設定を落とす必要があるだろうが。
というわけで下のグラフは,GTX 680 SLIで,約1分間――レギュレーションで規定しているとおり,実際にプレイする作業が必要なため,「約」1分となる――のフレームレート推移を追ったものとなる。
なお,下の画像ではタイトルに「Run1」とあるが,これは試行回数を示したもの。今回はすべてのテストを2回行い,フレームレート推移に特別なことがない限り,1回めとなるRun1のスコアを示すことにしている。
以上を踏まえつつ折れ線を見てみると,フレームレートは40fps前後で推移するのを確認できた。FCATが出力したデータによると,平均フレームレートは36.994fps。グラフでは,フレーム落ちが赤,不完全なフレームはオレンジで表示され,「Frapsで計測されるフレームレート」の折れ線も黒で表示されるはずなのだが,フレーム落ち,不完全なフレームの発生が皆無だったため,Frapsで取得されたフレームレートから,ドロップしたり不完全だったりしたフレームを差し引いた,NVIDIAが「Native FPS」と呼ぶフレームレートを示す青い折れ線だけが見えるという結果になっている。
一方,HD 7990のテスト結果が下の画像で,GTX 680 SLIとはまったく異なる結果となった。最初から最後まで,まんべんなくフレーム落ちが確認されたのだ。
FCATが出力するデータによると,APIの呼び出し回数を数えるFraps相当の平均フレームレートは20.97fps。しかし,合計632のフレーム落ちが確認され,結果,Native FPSは10.49fpsと,ほぼ半減してしまった。なお,不完全なフレームは見られない。
HD 7990で何が起きているのかだが,これは,FCATが出力するデータの1つである,1フレームを描くのに要する時間(Frametime)をプロットしたグラフを見れば一目瞭然だったりする。
下のグラフがそれだ。GTX 680 SLIとHD 7990で2回ずつ実行した結果をすべてまとめてあるため,ぱっと見は分かりづらいかもしれないが,10〜50msあたりにまとまっているのがGTX 680 SLI,上下に激しくブレているのがHD 7990のそれぞれFrametimeだというのはすぐに掴めるはずだ。
HD 7990では,描画されないフレームが数フレームおきに発生するため,グラフの線が0まで落ちる。そして,描画されているフレームの描画時間は120ms前後ながら,数フレームおきに描画時間0秒が入るため,Fraps相当では約20fps(=描画の所要時間50ms)というスコアが記録される。しかし,実際に表示されているフレームの描画時間は120ms前後かかっているわけだ。
簡単に言ってしまえば,HD 7990ではフレームの描画が安定していないということになるだろう。
■The Elder Scrolls V: Skyrim
以前のFCATテストでは,Skyrimのテストを安定して行えなかったが,FCATのバージョンアップ効果なのか,4K解像度では問題が出にくいのか,いずれにせよ安定した環境でテストを行うことができた。
さて,Skyrimは現行世代のハイクラスGPUにとっては十分に描画負荷の低いタイトルということもあり,4K環境でもレギュレーションで規定されるプレイアブルなフレームレートを得るのはそう難しくない。ただ,「Ultra設定」だと,HD 7990でやや“重い”挙動が見られたことから,今回は「標準設定」を用いてテストを行うことにした。
ここでもまずはGTX 680 SLIのテスト結果から見ていこう。下に示したとおり,GTX 680 SLIでは,Fraps相当のフレームレート,Native FPSはいずれも平均97.1fpsで,フレーム落ちや不完全なフレームは見られない。
一方のHD 7990は,Crysis 3以上に壮絶な状況となった。
全般にわたってフレーム落ちや不完全なフレームが見られることが分かる。FCATが出力するデータによると,Fraps相当のフレームレートは163.02fpsだが,6499ものフレーム落ちと97の不完全なフレームによって,Native FPSは56.63fpsにまで落ち込んでしまう。
先ほど,Ultra設定時にHD 7990はやや“重い”挙動を見せたと述べたが,標準設定においても,これだけフレーム落ちが多いと,視覚的にも当然のことながらカクついて見えるのが分かる。Fraps相当のフレームレートは非常に高いのだが,それでも動きがカクついて見えるのは,フレーム落ちが極端に多いためだろう。
■TOMB RAIDER
レギュレーション14.0に含まれないTOMB RAIDERだが,ゲーム側にベンチマークモードが用意されている。ベンチマークのシーケンスは約1分で,操作の必要はもちろんなく,FCATの計測にはちょうどいい。なので今回はベンチマークのモードのシーケンスをFCATで録画することにした。
TOMB RAIDERメインメニュー。「START BENCHMARK」でテストを実行できる |
TOMB RAIDERインゲームベンチマークモードの一コマ |
そしてその「Basic」タブから,「Ultimate」「Ultra」「High」「Normal」「Low」の4つ用意されたグラフィックス設定のプリセットを選ぶと,それに応じて「Advanced」タブにある詳細設定が自動的に変わる仕様になっている。
TOMB RAIDERはハイエンドクラスのGPUからすると十分に負荷の低いゲームタイトルなので,今回はより高いグラフィックス設定を狙うことになるが,
ちなみに,AdvancedタブにはTressFXに関するそのものズバリな名前の設定項目はないものの,「Hair Quality」のプルダウンメニューがTressFXの有効/無効切り替え用となっている。
さて,テスト結果である。
GTX 680 SLIのテスト結果が下の画像で,15秒過ぎにがくっと落ち込む場面は見られるものの,フレーム落ちはない。付け加えると,次に掲載するHD 7990でもがくっと落ちる現象は確認されたので,これはゲーム側の問題によるものではなかろうか。
Fraps相当の平均フレームレートは58.13fps。非常に分かりづらいのだが,がくっと落ちたところで1フレームだけ不完全なフレームが検出され,その結果,Native FPSは平均58.11fpsとなっている(※グラフをよく見ると,落ち込んだところだけ,黒い折れ線が見える)。
除外されるフレームがわずか1ということもあって,Fraps相当のフレームレートとNative FPSの違いは小さい。
一方,Radeonに最適化されたタイトルということで期待されたTOMB RAIDERだが,やはりというか何というか,HD 7990は,ここでもかなり厳しい結果となった。
グラフは下に示したとおりで,Fraps相当の平均フレームレートは72.57fpsながら,フレーム落ちが2209あり,不完全なフレームも1つあったことから,Native FPSは36.21fpsと,ほぼ半減してしまうのだ。なお,50秒のあたりで大きく落ち込むのは,先ほど指摘したとおり,ゲーム側の問題によるものと思われる。
ちなみに,TOMB RAIDERのベンチマークモードは,全シーケンスが終わると,平均fpsと最大fps,最小fpsを表示するという,ごく一般的なものだ。そのため,
参考までに,30fps(29.97fps)設定のビデオカメラで撮影したムービーを下に置いておくので,興味のある人は見比べてみてほしい。
■ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア
前述のとおり,ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼアのテストでは公式ベンチマークツールたる新生FFXIVベンチ キャラ編を用いるが,実行したことのある人なら体験的に知っているとおり,本ベンチは,複数のシークエンスがつながったものになっており,各シークエンスの間には「Loading…」という静止画が表示される仕掛けになっている。
FCATで録画する場合,静止画が混ざるのはあまり好ましくない。その一方で新生FFXIVベンチ キャラ編のテストシークエンスに,1分を超えるものは含まれていない。そのため,今回は50秒程度の長さがある,最後のシークエンスを用いることにした。50秒程度あれば,傾向は十分に掴めるだろう。
なお,グラフィックス設定は,「グラフィック設定プリセット」から「最高品質」を選択した。
というわけで,GTX 680 SLIのテスト結果が下の画像である。やや変動幅が大きいものの,フレーム落ちや不完全なフレームは見られず,Fraps相当の平均フレームレートとNative FPSは変わらず69.06fpsとなった。
一方のHD 7990におけるテスト結果も以下のとおり示すが,ご覧のとおりの有様である。Fraps相当の平均フレームレートは85.36fpsで,GTX 680 SLIを大きく上回るのだが,フレーム落ちが2299,不完全なフレームが58記録され,Native FPSは半分以下の40.89fpsにまで落ち込んだ。傾向としてはTOMB RAIDERに近い印象だ。
なお,ここでは「Run2」の画像を掲載してあるが,これは「Run1」で録画停止が間に合わず,静止画部分もグラフに入ってしまったためである。基本的にはRun1とRun2でスコアに大きな違いはない。
HD 7990で見られたフレーム中央の分離線
ここまで,FCATを用い,フレーム落ちや不完全なフレームを見てきたが,本稿の序盤でも述べたとおり,NVIDIAはそれ以外に,Radeon搭載環境では,
- ディスプレイの画面中央で表示のズレが発生すること
- 本来表示されるべき場所ではないところにプレイヤーキャラクターが表示されること
- 新しいフレームに古いフレームが混ざること
も指摘している。
では,そのような問題はあったのか。結論から先に言うと,今回のテストを通じ,1.と3.は確認され,2.は確認されなかった。まず,画面のズレがはっきりと確認されたのはCrysis 3とTOMB RAIDERだったので,以下,撮影したカットの拡大画像で見比べてほしい。分かりづらい場合は赤い矢印の先に注目してもらえれば幸いだ。
Crysis 3 - GTX 680 SLI |
Crysis 3 - HD 7990 |
TOMB RAIDER - GTX 680 SLI |
TOMB RAIDER - HD 7990 |
HD 7990の中央のラインは,常時出現するものではない。そこで細かくチェックしてみると,画面全体が動いているときに出やすいという特徴があった。おそらく,画面の片方,見る限りは左側の表示がやや遅いために生じている分割線のように見える(※このテストにあたってはFCATシステムを介在させていないので,HD 7990とディスプレイは直結されている)。
画面が止まっていたり,動いていても動きが小さかったりするときは目立たないが,画面が動くとチラチラと線が現れる感じで,そのために線が消えたり出たり見えるようだ。
メッセージの表示は流れてしまうので確認はしづらいものの,メッセージを一時的に止めるmoreコマンドを併用するなどすれば,どのグラフィックスカードのどのタイトルでFrame Interleavingが多発しているか把握できるのだ。
そして実際に試したところ,GTX 680 SLIでは,結果的に4タイトルすべてでFrame Interleavingが生じていなかった。一方,HD 7990では全タイトルでFrame Interleavingの存在を確認できる。新生FFXIVベンチ キャラ編を除くと数フレーム〜10フレーム程度が発生しているだけだが,新生FFXIVベンチ キャラ編では大量のFrame Interleavingが発生していることを確認できた。
Frame Interleavingはおそらく,2基あるGPUの描画タイミングがうまく取れないために生じる問題と思われる。フレーム落ちや不完全なフレームとほぼ同じ原因で起きているのだろうと思う。
4K時代に向けてAMDの修正が待たれる
CrossFireの「フレーム異常」問題
ムービーを示したTOMB RAIDERのように,HD 7990が高いスコアを残すにもかかわらず,画面のカク付き度合いはGTX 680 SLIよりずっと大きいという点も指摘しておく必要があるだろう。FCATに頼らずとも視覚的に分かるほどなので,「NVIDIAが作ったシステムだから……」という批判はナンセンスだ。
正直なところ,今回のテスト結果は,2014年に本格的な幕開けを告げそうな4K時代に向けて,かなり大きな問題を孕んだものになりそうな気がする。というのも,4K解像度で,最新世代のゲームタイトルをプレイしようと思った場合は,現行世代のハイエンドGPU比でざっくり2倍の性能を持った次世代製品を待つか,マルチGPU構成をとるしかないからである。
にも関わらず,4K解像度において,Frapsで得られるスコアよりもかなり低い体感速度でしか描画できないとなると,ゲーマーは,マルチGPU構成の選択肢として外さざるを得なくなるだろう。付け加えるなら,4Gamerとしても,Frapsで得られるスコアと実フレームレートの乖離があまりにも大きい場合,4K解像度のテストにFrapsを使うのは難しくなってくる。
AMDにとって幸いなのは,それほど長くはないとはいえ,まだ,4K解像度が主流となるまでの間に時間が残されていることだ。
最近のAMDはCatalystのアップデートに熱心で,CrossFire構成時のフレーム表示異常にも,少しずつ対処は進んでいる。その速度を上げ,4K解像度への対応も進めてくれることを大いに期待したい。
Crysis 3
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TOMB RAIDER
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