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GeForce 8800
  • NVIDIA
  • 発表日:2006/11/09
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「ビジュアルコンピューティング」におけるGPUの重要性,NVIDIAがアピール
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印刷2008/04/15 21:42

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「ビジュアルコンピューティング」におけるGPUの重要性,NVIDIAがアピール

飯田慶太氏(Director of Content Management, APAC, NVIDIA)。国内報道関係者の前に姿を見せるのは久しぶり
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 2008年4月15日,NVIDIAは「PCの最適化」というテーマで報道関係者向けの説明会を都内で開催した。GPUはゲーマーのためだけではなく,視覚的な要素が強くなってきているPCの用途全般――ビジュアルコンピューティング――にわたって重要であることを,広く伝えるための説明会だという。
 登壇したのは,NVIDIA本社のコンテンツ・リレーションズ事業部本部 アジア太平洋部長,飯田慶太氏だ。


GPUはハイエンドPCだけのものではない


並列処理能力においてGeForceがCore 2 Duoを圧倒するとしたスライド
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 飯田氏は,PC製品はもはやエントリー/スタンダード/ハイエンドなどといった単純なクラス分けで片付くものではなく,ユーザーが求める機能性の違いによって選択されつつあると主張。そのなかで,あらゆる用途においてGPUが有用な存在であるとした。
 「CPUは複雑だがシーケンシャルなスカラ処理を得意としており,プログラムやデータをキャッシュに置くことで,複雑なアルゴリズムの高速な処理を実現する。しかし,大量のデータに対してはオンキャッシュでの処理が難しく,データが多ければ多いほどパフォーマンスは低下してしまう。莫大なデータ処理には大局を見た並列処理(Massive Parallel Operation)のほうが有効」(飯田氏)であり,こうした体系的な並列データ処理にはGPUが向いているというわけだ。

自動車にもいろいろな種類があるが「トラックを買うときに,4ドアセダンと比べたりはしない」(飯田氏)。自動車というカテゴリー全体をローエンドとハイエンドで分けたりは普通しないが,それはPCも同じという説明
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一般PCユーザーに身近なAdobe ReaderでもGPUの恩恵を受けられるというアピールに使われたのは,なぜか繁体字中国語版の東京地下鉄路線図
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 飯田氏が最初にデモを披露したのは,Adobe PDFファイルの閲覧ソフト「Adobe Reader 8」で,マウスのスクロールホイールによるズーム機能「ダイナミックズーム」を有効化したとき,PDFデータの拡大/縮小表示速度が,GPUアクセラレーションのオン/オフで劇的に変わるという内容である。
 PDFファイルの閲覧といった一般的なPC用途においても,GPUのあるなしでパフォーマンスが変わってくると,飯田氏はアピールする。

 お次は,1分強の長さを持つ1280×720ドットのハイビジョンMPEG-2ムービーファイルを,iPod向けのH.264形式へトランスコード(再エンコード)するデモだ。

NVIDIAのテストでは,2時間の高解像度ムービーを変換するのに,クアッドコアのCore 2 Extreme/3GHzで4時間53分かかるところを,GeForce 8800 GTS 512は23分で完了したという
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 デュアルコアCPUに最適化されている「Xilisoft iPod Video Converter」を用いて,ビットレート1.2MbpsのH.264形式へ変換するには42秒かかったのに対し,NVIDIAが現在Elemental Technologiesと共同開発中であるCUDAベースのトランスコードソフト「RapiHD」(※α版)では,ビットレート1.5MbpsのH.264形式へ16秒程度で変換を完了するさまを披露した。
 現在,HDベースの高解像度ビデオカメラが普及してきており,一般ユーザーにおいても「ハイビジョン」「HD」などと呼ばれる高解像度のビデオデータに触れる機会が増えてきている。これら高解像度ビデオのエンコード/トランスコードを,CPUよりもコアの数で勝るGPUで処理することによって,約3倍の性能向上が得られるとすれば,これは(ゲーマーはともかく)一般PCユーザーにとって,GPUを選択する積極的な理由として受け入れられるかもしれない。

提供時期未定となっている,GPUアクセラレーション対応のエンコードソフトを用いて高解像度ビデオからのH.264トランスコードを実演。Core 2 Extreme QX6700/2.66GHzとGeForce 8800 GTベースのPCで,クアッドコアCPUよりもGeForce 8800 GTのほうが3倍速いとした
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 最後にはお待たせのゲームだが,飯田氏はFPS「BioShock」において,グラフィックス機能統合型チップセット「Intel G33 Express」(=GMA 3100グラフィックス)では,ゲームを実行すらできないことを見せる。「性能向上比何倍とかいう以前に,GPUの有無によって,ユーザーは『遊べるか遊べないか』の問題に直面することがある」と,GPUの有効性を強調してプレゼンテーションを締めくくった。

GeForceであれば難なく実行できるBioShock(左。FPSファンにはお馴染みのオープニングだ)も,Intelのグラフィックス機能統合型チップセットではゲーム画面を拝むことすらできない。どんなに高性能なCPUを搭載していても,GPUがなければできないことがあるという例
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NVIDIAは生き残るための新たな進路を見いだせるか?


 今回の説明会でNVIDIAは「GPUを搭載するとあなたのPCは速くなります」ということを言いたかったと思われる。「ハイエンドPCにだけハイエンドGPUを載せるのではなく,たとえローエンドPCであってもGPUを載せればビジュアルコンピューティング性能が向上するから,どうぞ皆さんグラフィックスカードをもっと買ってください」というメッセージだといっても語弊はなさそうだ。

 NVIDIAとしては,ゲーマー向けの「NVIDIAのGPUはゲームにおいて有効である」というメッセージは「The way it's meant to be played.」「SLI」ロゴで一通り伝わったという理解なのだろう。
 しかしPCゲーマーは,PCユーザー全体からすれば(小さくはないが)それほど大きな割合を占めてはいない。大多数はゲーマーでない“一般”ユーザーだ。

飯田氏は説明会の後半で,米国の大手家電量販店「BEST BUY」がGatewayとコラボレートして,そこそこのCPUと「GeForce 8800M GTS」を組み合わせたゲーマー向けの格安ノートPCを発売し,これがあっという間に完売したという事例を紹介した
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 例えば現在,日本国内にある,一般ユーザーをターゲットにしたミドルクラス以下のPCでは,グラフィックス機能統合型チップセットを採用したものが圧倒的多数だ。結果として,PCのハードウェアそのものに関心がないユーザーの間では,GPUの重要性はおろか,その存在すら意識されていない。
 これら大多数の一般PCユーザーに,利益率の高い,ミドルクラス以上のGPUをどんどん売っていくことが,NVIDIAの次のミッションなのだ。

 短期的な視点で極力具体的に言うなら,しばらくの間NVIDIAは,G92コアベースのGeForce 8800 GTや同8800 GTS 512,9600 GT,9800 GTX,9800 GX2を売っていきたいと考えているはずである。
 長期的な視点に立てば,1基のビッグチップによるハイエンドGPU戦争が終焉した今世代以降,複数のGPUコアを搭載したマルチダイグラフィックスソリューションでハイエンド製品を構成する方向に向かっている。そのため,ミドルクラス(もしくはミドルハイ,エントリーハイエンド)クラスの単一GPUをいかに多く売るかが,NVIDIAのビジネスにとって今後はとても重要になっていくのだ。
 この戦略を成功させるには,一般ユーザーが高性能GPUを欲しがる土壌が必要になる。そのためには一般ユーザーに向けた,ある意味の「教育」(飯田氏)が必要だ。今回のカンファレンスはこの土壌開拓の第一歩ということなのだろう。

 NVIDIAの言いたいことはよく分かるが,一般ユーザーがGPUを欲しがる土壌作りは,なかなか難しい。多くの一般ユーザーが日常的に使っているアプリケーションで,GPUの恩恵が分かりやすく見えてこなければならないからだ。
 今回のAdobe Readerやトランスコードのデモは確かに興味深く,有効な一打であるとは思うが,決定打といえるほどのインパクトは持たない。GPUを別途購入することで特定かつ少数のアプリケーションが20倍速くなるのと,しばらくいまのPCで我慢して,何年か後に買い換えたとき全体的に何十%か速くなるのと,どちらがいいかと問われたとき,一般ユーザーがどちらを選ぶかはまだ「人それぞれ」といえるレベル。御利益が狭いままではいかんともしがたい。

 Intelはメニーコア型x86プロセッサ「Larrabee」(ララビー,開発コードネーム),AMDはCPU+GPUの「Accelerated Computing」で,いずれもCPUとGPUのいいとこ取りをやろうと画策している。単体GPUメーカーとしてのNVIDIAは,生き残りのための戦略を今,必死に探しているところなのかもしれない。
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