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「ビジュアルコンピューティング」におけるGPUの重要性,NVIDIAがアピール
登壇したのは,NVIDIA本社のコンテンツ・リレーションズ事業部本部 アジア太平洋部長,飯田慶太氏だ。
GPUはハイエンドPCだけのものではない
「CPUは複雑だがシーケンシャルなスカラ処理を得意としており,プログラムやデータをキャッシュに置くことで,複雑なアルゴリズムの高速な処理を実現する。しかし,大量のデータに対してはオンキャッシュでの処理が難しく,データが多ければ多いほどパフォーマンスは低下してしまう。莫大なデータ処理には大局を見た並列処理(Massive Parallel Operation)のほうが有効」(飯田氏)であり,こうした体系的な並列データ処理にはGPUが向いているというわけだ。
PDFファイルの閲覧といった一般的なPC用途においても,GPUのあるなしでパフォーマンスが変わってくると,飯田氏はアピールする。
お次は,1分強の長さを持つ1280×720ドットのハイビジョンMPEG-2ムービーファイルを,iPod向けのH.264形式へトランスコード(再エンコード)するデモだ。
現在,HDベースの高解像度ビデオカメラが普及してきており,一般ユーザーにおいても「ハイビジョン」「HD」などと呼ばれる高解像度のビデオデータに触れる機会が増えてきている。これら高解像度ビデオのエンコード/トランスコードを,CPUよりもコアの数で勝るGPUで処理することによって,約3倍の性能向上が得られるとすれば,これは(ゲーマーはともかく)一般PCユーザーにとって,GPUを選択する積極的な理由として受け入れられるかもしれない。
最後にはお待たせのゲームだが,飯田氏はFPS「BioShock」において,グラフィックス機能統合型チップセット「Intel G33 Express」(=GMA 3100グラフィックス)では,ゲームを実行すらできないことを見せる。「性能向上比何倍とかいう以前に,GPUの有無によって,ユーザーは『遊べるか遊べないか』の問題に直面することがある」と,GPUの有効性を強調してプレゼンテーションを締めくくった。
NVIDIAは生き残るための新たな進路を見いだせるか?
今回の説明会でNVIDIAは「GPUを搭載するとあなたのPCは速くなります」ということを言いたかったと思われる。「ハイエンドPCにだけハイエンドGPUを載せるのではなく,たとえローエンドPCであってもGPUを載せればビジュアルコンピューティング性能が向上するから,どうぞ皆さんグラフィックスカードをもっと買ってください」というメッセージだといっても語弊はなさそうだ。
NVIDIAとしては,ゲーマー向けの「NVIDIAのGPUはゲームにおいて有効である」というメッセージは「The way it's meant to be played.」「SLI」ロゴで一通り伝わったという理解なのだろう。
しかしPCゲーマーは,PCユーザー全体からすれば(小さくはないが)それほど大きな割合を占めてはいない。大多数はゲーマーでない“一般”ユーザーだ。
これら大多数の一般PCユーザーに,利益率の高い,ミドルクラス以上のGPUをどんどん売っていくことが,NVIDIAの次のミッションなのだ。
短期的な視点で極力具体的に言うなら,しばらくの間NVIDIAは,G92コアベースのGeForce 8800 GTや同8800 GTS 512,9600 GT,9800 GTX,9800 GX2を売っていきたいと考えているはずである。
長期的な視点に立てば,1基のビッグチップによるハイエンドGPU戦争が終焉した今世代以降,複数のGPUコアを搭載したマルチダイグラフィックスソリューションでハイエンド製品を構成する方向に向かっている。そのため,ミドルクラス(もしくはミドルハイ,エントリーハイエンド)クラスの単一GPUをいかに多く売るかが,NVIDIAのビジネスにとって今後はとても重要になっていくのだ。
この戦略を成功させるには,一般ユーザーが高性能GPUを欲しがる土壌が必要になる。そのためには一般ユーザーに向けた,ある意味の「教育」(飯田氏)が必要だ。今回のカンファレンスはこの土壌開拓の第一歩ということなのだろう。
NVIDIAの言いたいことはよく分かるが,一般ユーザーがGPUを欲しがる土壌作りは,なかなか難しい。多くの一般ユーザーが日常的に使っているアプリケーションで,GPUの恩恵が分かりやすく見えてこなければならないからだ。
今回のAdobe Readerやトランスコードのデモは確かに興味深く,有効な一打であるとは思うが,決定打といえるほどのインパクトは持たない。GPUを別途購入することで特定かつ少数のアプリケーションが20倍速くなるのと,しばらくいまのPCで我慢して,何年か後に買い換えたとき全体的に何十%か速くなるのと,どちらがいいかと問われたとき,一般ユーザーがどちらを選ぶかはまだ「人それぞれ」といえるレベル。御利益が狭いままではいかんともしがたい。
Intelはメニーコア型x86プロセッサ「Larrabee」(ララビー,開発コードネーム),AMDはCPU+GPUの「Accelerated Computing」で,いずれもCPUとGPUのいいとこ取りをやろうと画策している。単体GPUメーカーとしてのNVIDIAは,生き残りのための戦略を今,必死に探しているところなのかもしれない。
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