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[GDC07#28]アメリカでは学生出身デベロッパー達が元気
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印刷2007/03/10 18:14

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[GDC07#28]アメリカでは学生出身デベロッパー達が元気

GDCではお馴染みである,職探しのできるリクルート用ブースも盛況。Ubisoftやナムコなどの有名なメーカーが,軒を連ねて人材探しにあたる
 今回のGDCで目立ったのが,イベントに積極的に参加しているゲーム学科やゲーム専門学校の,元学生達の台頭だ。もともとGDCでは,学生は誘導やアンケート配りなどのボランティアワークと引き換えに,空いた時間を使って無料で講義を受けたりできるし,独立系ゲームソフトのコンペなどには学生部門も用意するなど,ゲーム業界入りを目指す若者と積極的に接点を持とうという風潮が根付いている。
 新しい人材の発掘やアイデアの投入を,常に心がけているアメリカのゲーム業界だからなのだろうが,いわばそういう「GDC世代」ともいえる若者達が,実際にゲーム業界に取り込まれたり,小さなプロジェクトながらも大きな評価を得たりする姿が,顕著に見られるようになってきたのである。

flOwを開発したのは,1年前までは学生だったKellee Santiago氏(左)やJenova Chen氏(中央左)ら,ThatGameCompanyの面々。彼らのゲームは,GDCエキスポ会場ではソニーブースの中央ラウンジでも遊べるようになっていた。Flash Gameのデモもあるため,案外PCゲーマーにも馴染み深いかもしれない
 例えば,[GDC07#01]「ValveのKim Swift氏が,プロジェクト「Portal」を語る」でも書いたように,「Half-Life 2: Episode 2」に合わせて無料配信(パッケージ版にも付属予定)されることになるアクションパズルゲームとして話題になっている「Portal」を開発したKim Swift(キム・スウィフト)氏らのチーム7人は,もともとデジペン(DigiPen Institute of Technologies)というゲーム専門学校において,「Narbacular Drop」というプロジェクトを製作していた仲間達。GDCのIndependent Game Awardsに出品することで,ゲーム業界に入るきっかけをつかんだ。
 また,PlayStation NetworkのPlayStation 3用ソフトではダウンロード1位の作品として高い人気を誇る,「flOw」を開発したThatGameCompanyの3人組も,南カリフォルニア大学において,実験ゲームを開発していた仲間達だ。「Classroom to the Console: The Autobiography of flOw」(クラスルームからコンソールへ:flOwの自伝)というセミナーを行った,ThatGameCompanyのJenova Chen(ジェノヴァ・チェン)氏らは,たったの8か月でPS3用ソフトを作ったという経緯を振り返り,無鉄砲で無茶な企画ながらも最後までやり通した喜びと自信のようなもので,満ち足りた様子だった。

 かたや日の出の勢いのゲーム開発チームに仲間入り,かたや卒業直後に仲間達と会社を作るという,まったく別の道を進んでいるように思える元学生チームだが,そこに至るまでは非常に似た道を進んでいる。学生時代から,熱心に実験的なゲームを開発し,その意外性がインターネットやコンペで評価されているだけでなく,学生時代からGDCなどのイベントに出席して業界著名人の話に耳を傾け,意見交換のチャンスなどを得ながら,卒業前には業界への足掛かりをつかんでいるのである。
 flOw自体は,任天堂から発売された「エレクトロプランクトン」に似ているし,Portalも単体ソフトとして商業的にヒットさせるには難しい作品ではある。しかし彼ら元学生達は,業界人を前に物怖じする様子もなく,自分らの目指す将来に向かって邁進しているようなフレッシュさで満ち溢れていて,筆者の目にもどこか頼もしく映るのである。

今回のGDCから,「ゲーム・キャリア・セミナー」という新しいセッションジャンルが増えた。写真は「City of Heroes」のCryptic Studios幹部らの話に耳を傾ける大勢の学生達
 また,今回のGDCでは「ゲーム・キャリア・セミナー」という新しいトラックもでき,業界入りを目指す学生や別業種からの参加者に,ゲーム業界の仕組みやゲーム開発チームの体制といったノウハウを,業界首脳陣が伝授するようなセミナーも加わっている。数年前までは「メディアを研究する側と作る側」で,まったく別の人間に見えた大学機関の研究者とゲーム開発者も,今ではGDC会場内外で親しく談笑し,もはや「同じ釜の飯を食う仲間」のように接しているのも手に取るように見えてくる。
 このように,新しい血やアイデア,知識といったものを次々と受け入れている柔軟さに,アメリカのゲーム業界の層の厚さを感じる。オープンソースやWeb 2.0化の波がゲーム業界にも及んでいるのを感じると共に,人材雇用の面でも非常にオープンな様子が伝わってくる今回のGDCだった。(ライター:奥谷海人)

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