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[GDC07#28]アメリカでは学生出身デベロッパー達が元気
新しい人材の発掘やアイデアの投入を,常に心がけているアメリカのゲーム業界だからなのだろうが,いわばそういう「GDC世代」ともいえる若者達が,実際にゲーム業界に取り込まれたり,小さなプロジェクトながらも大きな評価を得たりする姿が,顕著に見られるようになってきたのである。
また,PlayStation NetworkのPlayStation 3用ソフトではダウンロード1位の作品として高い人気を誇る,「flOw」を開発したThatGameCompanyの3人組も,南カリフォルニア大学において,実験ゲームを開発していた仲間達だ。「Classroom to the Console: The Autobiography of flOw」(クラスルームからコンソールへ:flOwの自伝)というセミナーを行った,ThatGameCompanyのJenova Chen(ジェノヴァ・チェン)氏らは,たったの8か月でPS3用ソフトを作ったという経緯を振り返り,無鉄砲で無茶な企画ながらも最後までやり通した喜びと自信のようなもので,満ち足りた様子だった。
かたや日の出の勢いのゲーム開発チームに仲間入り,かたや卒業直後に仲間達と会社を作るという,まったく別の道を進んでいるように思える元学生チームだが,そこに至るまでは非常に似た道を進んでいる。学生時代から,熱心に実験的なゲームを開発し,その意外性がインターネットやコンペで評価されているだけでなく,学生時代からGDCなどのイベントに出席して業界著名人の話に耳を傾け,意見交換のチャンスなどを得ながら,卒業前には業界への足掛かりをつかんでいるのである。
flOw自体は,任天堂から発売された「エレクトロプランクトン」に似ているし,Portalも単体ソフトとして商業的にヒットさせるには難しい作品ではある。しかし彼ら元学生達は,業界人を前に物怖じする様子もなく,自分らの目指す将来に向かって邁進しているようなフレッシュさで満ち溢れていて,筆者の目にもどこか頼もしく映るのである。
このように,新しい血やアイデア,知識といったものを次々と受け入れている柔軟さに,アメリカのゲーム業界の層の厚さを感じる。オープンソースやWeb 2.0化の波がゲーム業界にも及んでいるのを感じると共に,人材雇用の面でも非常にオープンな様子が伝わってくる今回のGDCだった。(ライター:奥谷海人)
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