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Access Accepted第388回:「Battlefield 4」の開発を指揮するEAのキーパーソンに独占インタビュー
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印刷2013/07/01 12:00

業界動向

Access Accepted第388回:「Battlefield 4」の開発を指揮するEAのキーパーソンに独占インタビュー

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第388回:「Battlefield 4」の開発を指揮するEAのキーパーソンに独占インタビュー

 ゲーム業界のジャイアントElectronic Artsの中でも,身長的にかなりジャイアントな人物が,元バレーボールのスウェーデン代表という肩書きを持つElectronic Artsの幹部パトリック・ソダールンド(Patrick Söderlund)氏だ。DICEを切り盛りした手腕を買われ,現在はコア向けタイトルのほとんどを管轄しているソダールンド氏に,E3 2013の会期中,インタビューする機会を得た。「Battlefield 4」やゲームエンジンの「Frostbite」はもちろん,まだ情報の少ない「Mirror's Edge 2」まで,同社のビジネスコンセプトや社風など,さまざまな質問をしたので,ぜひ読んでほしい。


今,Electronic Artsにスポットライトを当てる


 詳しく数えたわけではないが,本連載で最も多く取り上げた欧米のゲーム企業を挙げるなら,それはおそらくElectronic Artsだろう。1982年の創業以来,今年で31年めを迎えるElectronic Artsは,時価総額で約25億ドル(約2400億円)に達する巨大企業であり,最も多くのフランチャイズを保有するパブリッシャであると同時に,数多くの有名デベロッパを傘下に抱える大手メーカーでもある。
 本連載の第380回「2年連続でアメリカ最悪の企業に選ばれたElectronic Arts」でも書いたが,大企業としてはかなりアグレッシブに新分野へ投資を行っており,欧米のゲーム業界をウォッチする人にとって,同社の動きに注目し続けるのは,いわば「当たり前」のことだといえるだろう。

E3 2013のElectronic Artsは,次世代コンシューマ機が投入される年とは思えないほど絞り込んだラインアップになっていたが,64人対戦がプレイできた「Battlefield 4」や,E3 2013でも最も注目されたタイトルの一つ「Titanfall」,そして「Need for Speed: Rivals」や「FIFA 14」など,粒揃い。「Mirror's Edge 2」の“チョイ見せ”も気になった
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 Electronic Artsは,2007年以来同社を率いてきたCEOのジョン・リキテロ(John Riccitiello)氏が3月末に辞職するなど(関連記事),効率化のための構造改革に取り組んでいる。それは,開発現場にも及んでおり,最近ではゲームエンジン「Frostbite」を開発するEA DICEのR&D部門を「Frostbite」というメーカーとして独立させた。これまでのように,傘下の各デベロッパが独自のゲームエンジンを作るのではなく,Frostbiteを利用することによって開発効率を高めることが大きな目的だ。

 2013年6月に開催されたE3 2013で,EA Games Label副社長として傘下の開発チームを統括するリーダーの一人,パトリック・ソダールンド(Patrick Söderlund)氏に単独インタビューする機会を得たので,今週は,その模様をお伝えしたい。
 ベテランゲーマーにとっては,EA DICEがまだ「Digital Illusions CE」と名乗っていた頃のCEOとして記憶している人も多いかもしれないが,2006年にDigital Illusions CEがElectronic Artsに買収された折,新たに設立されたEA Studio部門のゼネラルマネージャーに就任し,以来,Electronic Artsの経営に参画してきた。現在は,公式サイトに掲載された幹部リストの,上から7番目にリストアップされる重役でもあり,そういう立場にいるソダールンド氏だからこそ答えられる,ゲームからビジネスにわたるさまざまな話を聞いた。

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「Battlefield」シリーズを開発するEA DICEの裏側に迫る
「ゲーマーがいるところに,我々もいたい」


4Gamer
 ではまず,EA Games Labelの副社長というのは,いったいどのような仕事をされているのかをお聞きしたいのですが。

EA Games Labelの副社長として,Electronic Artsのコアゲーム部分を統轄するパトリック・ソダールンド氏。Electronic Arts公式サイトの「重役紹介」では7番目にリストアップされるほどの幹部だが,まるで開発チームの一員のように,一つ一つのゲームの内容を熟知している
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第388回:「Battlefield 4」の開発を指揮するEAのキーパーソンに独占インタビュー
パトリック・ソダールンド氏(以下,ソダールンド氏)
 私の仕事は,EA DICEはもちろん,アメリカ国外の傘下デベロッパ,さらにサードパーティすべてをマネジメントし,パッケージやデジタルでの販売やマーケティングを行うことです。具体的には「Battlefield」シリーズ,「Need for Speed」シリーズ,「Command&Conquer」シリーズ,それからBioWareVisceral Gamesの作品,さらに,今回発表されたRespawn Entertainment「Titanfall」など,現在は9つの開発チームを統轄しています。スポーツタイトルとMAXISレーベル,そしてモバイル部門は管轄外となります。

4Gamer
 オフィスは,EA DICEのあるスウェーデンのストックホルムですか。

ソダールンド氏
 ええ。階は違うけどEA DICEと同じオフィスにいます。しかし,EA Games Labelは非常にグローバルな部門で,私とCFOのマーカス・エドホルム(Marcus Edholm)はストックホルムなんですが,マーケティング部門副社長のローラ・ミール(Laura Miele)はサンフランシスコにいますし,ロンドンにもヨーロッパのチームがいます。仕事の流れは,管轄している9つのデベロッパにマネージャーを送り込み,彼らが私とやり取りするというものになっています。

4Gamer
 なるほど。では,その一つ,EA DICEが開発する「Battlefield 4」ですが,今回のE3ではどのような評価を得られたとお考えですか。

ソダールンド氏
 非常に良いものだったと思っています。今回紹介したのは64人対戦モードで,ブースではPC版でしたが,PlayStation 4/Xbox One版でも「Battlefield」シリーズのコンシューマ機向けとしては初めて64人対戦を実現しています。グラフィックス面でのフィーチャーも増えており,見応え,遊び応えはさらに高まりました。

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4Gamer
 今回,ストーリーについてはそれほど発表されませんでした。これまで「Battlefield」シリーズで弱いとされていたこの部分はどうなりますか。

ソダールンド氏
 確かに「Battlefield」シリーズにおいてシングルキャンペーンは,弱点と言えるものでしたね。「Battlefield 3」はヒット作になりましたが,続編の企画において我々は厳しい自己評価を行い,ストーリーの弱さを改善させるべきだと認識しました。
 もっとドラマチックで人間的な物語を描きたいと思ったのです。ただ,シリーズの良さを壊したくはないですから,ミッションを遂行するために複数の経路が選択できるオープンなものにし,「マルチとシングルではゲームの感覚が違う」という,前作でプレイヤーが感じたであろう違和感を解消しようとしています。

4Gamer
 「Battlefield 4」では,シリーズ従来作にも増してストーリーに引き込まれるということでしょうか。

ソダールンド氏
 そう期待しています。新しいハードウェアと我々の最新ゲームエンジン「Frostbite 3」によって,表現できることが増えており,キャラクターの表情やアニメーションなども大きく向上しています。我々は本作を「Battlefieldシリーズが大きく進化するための絶好の機会」と考えているのです。

「Battlefield 4」
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4Gamer
 ところで,Frostbiteを開発しているチームは,EA DICEから独立したんですね。

ソダールンド氏
 はい。まあ,やはり同じオフィスビルにいるのですが,Frostbiteという独立した会社として,70〜75人のスタッフによってエンジンの開発が進められています。そのうち55人ほどがストックホルムで,ほかの20人ほどはバンクーバーでモバイル向けのFrostbiteを開発しています。
 Frostbiteはゲーム開発をまったく行わないR&D専門のメーカーですが,現段階ですでに15ものタイトルのバックボーンになるという,重要な役割を担っています。

4Gamer
 15ですか。つまり,未発表のものも含めてそれだけの数の新作がFrostbiteを採用していることになりますが,これはElectronic Artsの戦略として,開発パイプラインを一元化していこうということなんですか。スポーツゲーム向けのエンジン「Ignite」を使ったタイトルと,MAXIS作品以外のほとんどが,Frostbiteを使用しています。

ソダールンド氏
 いや,実はそうでもないのです。Frostbiteを採用するか,そのほかのゲームエンジンを使うかの判断は,それぞれの開発チームに委ねられており,こちらから強制することはありません。採用にあたっては,Frostbiteを実際に体験して,プロジェクトに合っているのかどうかを評価してもらっています。サードパーティのエンジンを評価するときとまったく同じですね。
 もちろん,強力な自社エンジンを無料で利用すれば,多額の開発資金や人員を節約できるので,その結果として多くの社内プロジェクトが採用しているという面はあるでしょう。

「Need for Speed: Rivals」
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4Gamer
 Ghost Gamesの「Need for Speed: Rivals」や,BioWareの「Dragon Age: Inquisition」,そしてVictory Gamesの「Command&Conquer」のように,ゲームのジャンルもさまざまですね。

ソダールンド氏
 ええ。素晴らしいのは,これらの開発チームがそれぞれにテクノロジーを持っており,彼らから有用なフィードバックが返ってくることです。例えば,レースゲームの「Need for Speed: Rivals」では,アクションゲームを想定しているFrostbiteで使えるのは全体の7割か8割ほどでした。車の細かい挙動や操作感といった部分では,レースゲーム開発のベテランが揃ったGhost Gamesの技術にはおよばないのです。そうした技術がFrostbiteにフィードバックされ,足りない部分が補完されています。

4Gamer
 ある意味,Electronic Artsのような大きなメーカーでしかできないことですね。

ソダールンド氏
 BioWareについては,彼らはカットシーンや会話システムなどに独自のノウハウを持っており,彼らが開発したツールがFrostbiteにも組み込まれることになりました。したがって,私の管轄下にあるチームの1800人にもおよぶ開発者達全員が,Frostbiteの進化に貢献しているといえるかもしれません。

「Dragon Age: Inquisition」
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4Gamer
 「Battlefield 4」の話に戻りますが,今回はDLC第1弾となる「Second Assault」が,Xbox Oneで先行リリースされるという発表が行われました。「Back to Karkand」がPlayStation 3向けに先行配信された「Battlefield 3」から方針変更があるようですが,理由はどういったものなのでしょう。

ソダールンド氏
 我々は,これまでどおり全方向的なプラットフォームのサポートを行うという考えを持っており,当然ながらMicrosoftとも友好的な関係を築いています。「Second Assault」のエクスクルーシブリリースに関しては,そうしたMicrosoftとの協力関係の維持が理由の1つですが,「Battlefield 3」のマルチプレイモードがXboxコミュニティに強く支持されていたこともあって,そうしたサポートに対する感謝の意味も込めています。

4Gamer
 なるほど。下世話な質問で恐縮ですが,PlayStation 4とXbox Oneのライバル対決については,どう見られていますか。

ソダールンド氏
 うーむ。最後に勝つのは我々かな(笑)。まあ,真面目な話,次世代コンシューマ機が発表されて以来,メディアの皆さんの中にも「今までにない視聴率でした」なんて話を私にしてくれた人もいるほどで,今回のE3について言えば,我々のゲームのファンであれ,他社タイトルのファンであれ,ゲーマーの皆さんが大きく注目してくれていることが最も重要なのです。ゲーム業界に活力が戻っているのは嬉しい話ですし,ゲーマーを含めて誰もが勝者になれる状況が一番でしょう。いずれにしろ,我々は双方の次世代ゲーム機に注力していく予定ですから,その意味で我々は必ず勝者になるでしょう(笑)。

4Gamer
 先ほど「全方向的」とお話されていましたが,Wii Uのサポートに関してはいかがですか。

ソダールンド氏
 Wii U向けには,「Mass Effect 3」「FIFA 13」などElectronic Artsから4作をリリースしていますが,PlayStation 4とXbox Oneにリソースを集中している現在,プライオリティがやや低いことは事実です。ただし,「Frostbite 3」をWii Uに対応させることは不可能ではありません。ゲーマーがいるところに,我々もいたい。それが全方向性の真意です。

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4Gamer
 分かりました。ところで,Electronic Artsのデジタル配信サービス「Origin」は,ライバルの「Steam」ほどゲーマーの支持を得ていないように思います。このあたり,何か改善策はおありですか。

ソダールンド氏
 Electronic Artsが過去,ゲーマーの声に真摯に耳を傾けてきたと言い切れないのは,我々も痛感しています。
 最近では,5月末に「EA Online Pass」を中止しています。これは,オンライン機能に最初にアクセスしたときに使用しなければならない購入証明のようなものですが,中古ソフトを購入したゲーマーがゲームをプレイする場合,新しいOnline Passを購入する必要もあるという部分で大きな批判を受けていました。今後はさらに,ファン目線でのサービスを心掛けていこうと思っています。


「Mirror's Edge 2」の復活秘話
「ビックリするような仕掛けがいくつかあるんですよ」


4Gamer
 ファンの支持というと,今回正式に制作発表された「Mirror's Edge」の続編は,ゲーマーやメディアをかなりエキサイトさせましたね。私も第1作はプレイしていますが,あれほど騒がれるタイトルになるとは思っていませんでした。

ソダールンド氏
 「Mirror's Edge」は,商業面では大きな成功とは言えませんでしたが,その一方,プレイしていただいたゲーマーやメディアの皆さんからの評価は非常に高いものでした。スクリーンショットを1枚見ただけで,それが「Mirror's Edge」のものだと分かるユニークな世界を作り上げていましたし,一人称視点でパルクールという,それまでになかった要素を持っていたうえ,ゲーマーの心に響くストーリーとキャラクターが表現できていたと思います。ゲームとして完璧だったかと言えば,「ノー」ですが,問題を改善して素晴らしい作品になるかといえば「イエス」です。

「Mirror's Edge」の続編
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4Gamer
 Mirror's Edgeの続編構想は,第1作のリリース時点ですでに存在していたのですか。

ソダールンド氏
 ええ。でも,それは私自身の手でボツにせざるを得ませんでした。その後も何度か企画の見直しは行ってきましたが,さらに優れたIPにするために何をすべきかを決定するには至りませんでした。しかし,一人のプロデューサーが新しいアイデアをプレゼンテーションしたとき,私やEA DICEのメンバーの間で「これならできる」という確信が得られたのです。ゲームに関して詳しい説明はまだできませんが,そのゲーム世界にいる理由をプレイヤーが納得できるものになっており,次世代コンシューマ機だからこそ可能な要素を持っています。これこそElectronic Artsをあげてサポートすべき作品だと,素直に思いました。

4Gamer
 うーん。よく分かりません……。

ソダールンド氏
 まあ,分からないようにお話しているんですけどね(笑)。では,これだけはお話しておきましょう。「Mirror's Edge 2」は,前作よりもアクションアドベンチャーに近い感覚のゲームであり,主人公のフェイスの生い立ちを描く,意味深いストーリーを持っています。そのほかにも,ビックリするような仕掛けがいくつかあるんですよ。

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4Gamer
 発売時期は?

ソダールンド氏
 それは……「完成した時」(When It's Ready)としておきましょう。実際,今の段階で発売予定日を決めて,開発チームをあせらせたくないんです。この“実験的”な作品に関しては,時間をかけて完成度を高めるため,余裕のあるスケジュールを組んでいるのです。

4Gamer
 それは,確実に成功が見込めるという余裕からなのでしょうか。

ソダールンド氏
 どうでしょうね。私は,大きな会社でありながら開発者の意思を尊重するElectronic Artsのスタンスは素晴らしいものだと思いながらも,同時に商業的には無謀なことだとも感じています。しかし,ときにはスプレッドシートやパワーポイントではなく,自分の心を優先させたほうがいいこともあるんです。

4Gamer
 その社風は,最近では元BioWareのグレッグ・ゼスチャック(Greg Zeschuk)氏も,「Electronic Artsは,我々開発者が首を吊るために十分な長さのロープを与えてくれる」(開発者に自由にさせてくれるので,成功も失敗もすべて開発者の責任だという意味)と話していますね。

ソダールンド氏
 「Mirror's Edge」の発売当時の成績は非常に残念に思いましたし,リリースから1年ほどは,続編を作ろうという機運が起きなかったのも事実です。しかし,ゲームに関してはElectronic Artsの多くの社員がポジティブに捉えていますし,心から愛してもいます。実際のところ,新作はプロトタイプの段階で,狙いどおりのプレイが達成できるかどうかはまだ分かりません。だからこそ,開発者には納得できるまで作り込んでほしいんですね。

4Gamer
 Electronic Artsの,意外な側面を聞いたような気がします。開発者というと,このところ「EA Partners」についての話を聞かなくなった気がします。サードパーティに大きな裁量権を与えるというEA Partnersでしたが,ビジネスの転換を行ったのでしょうか。

ソダールンド氏
 そうではありません。以前に比べてEA Partnersのタイトルが少なくなっていますが,それは一時的なことです。EA Partnersという名称も最近は表立って使っていませんが,プログラム自体は継続しており,今年のE3ではRespawn Entertainmentの「Titanfall」がEA Partnersの代表作になります。「Titanfall」は非常に優れたゲーム開発集団が生み出す,我々には作れないゲームです。

「Titanfall」
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4Gamer
 「Titanfall」には,多くのメディアが期待を寄せています。ちなみに今回のE3では,インディーズタイトルはまったく発表されていませんね。EA Partnersからは,「Shank」「DeathSpank」といったユニークな作品が生み出されてきました。

ソダールンド氏
 それについては,やはり次世代コンシューマ機の登場というゲーム業界の大きな転換期にあって,我々も大きなプロジェクトに集中しているということがあると思います。
 「EA Partnersが消滅した」という噂には,我々が「ゲーム業界のサポートを怠っている」とか,「サードパーティを支援する余力がなくなった」というニュアンスがあると思いますが,それが間違いであることを明確にしておきたいですね。モバイル部門でもサードパーティと協力していますし,アウトソーシングなどによって業界をバックアップしています。EA Partnersは,我々の長期戦略として重要な部分なのです。

4Gamer
 最近では,日本のゲーム開発会社が,アメリカのパブリッシャと契約するケースが増えてきました。Electronic Artsでは日本のパートナーを探していますか。

ソダールンド氏
 日本に限らず,我々はグローバルに常にビジネスチャンスは模索してますよ。

4Gamer
 まあ,そうでしょうね。では,日本のゲーム市場についてはどうご覧になっていますか。

ソダールンド氏
 日本のゲーム市場が「特異である」ことは以前から良く言われていますし,Electronic Artsにとっても基盤を築くのに苦労している市場です。ところで私は,ずいぶん長くゲーム業界にいますが,まだ一度も日本に行ったことがないんです。みんなにヘンだって言われるので,いつか,日本のテクノロジーや文化にどっぷり浸かってみたいですね。
 今年の東京ゲームショウにぜひ参加して,日本市場について会社でウンチクを語れるぐらいになりたいです。

4Gamer
 そうなんですか。では,来日を期待しています。最後になりますが,EA DICEの暗黒部分を教えてください。

EA DICEストックホルムオフィス(公式サイトから転載)
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ソダールンド氏
 え,なんだろ(笑)。水槽で飼っていた熱帯魚が全滅したのに,しばらく放置されてたけど……。うちのオフィスは妙に明るいんです。ゲーム会社って,ディスプレイに外光が当たらないようにブラインドを下ろしたままだったりするじゃないですか。でも,ストックホルムの冬は,光がほとんどない状態ですから,その反動で開放的な非常に明るいオフィスになっています。短い夏も,太陽の光を必死に受け止めようと窓を全開にしていますしね。
 一度,EA DICEに来ていただくといいですよ。あっ,そのときに「Star Wars: Battlefront」のプロデューサーに会わせてあげましょう。結構ダークな男なので,彼がEA DICEの暗黒部分かもしれません。

4Gamer
 なるほど分かりました。本日はどうもありがとうございました……って,やばいっ,その「Star Wars: Battlefront」について聞き忘れていました。

ソダールンド氏
 大丈夫ですよ。どのみち,今は何も教えられませんから (笑)。


 全世界で9000人以上の従業員を抱える企業とは思えないほど,どこかアットホームでゲーム開発者思いな雰囲気を持つElectronic Artsの社風は,今回のソダールンド氏へのインタビューからも伝わってくるのではないだろうか。「ゲーム業界の巨悪」などと言われることもあり,実際にそうしたビジネスを展開してきた過去があるのも事実だが,ソダールンド氏の口調からは,ゲーム開発にかける強い意気込みと,大企業としての責任が感じられた。
 Electronic Artsは,PlayStation 3/Xbox 360の世代では,存在感を示しつつも商業的に苦戦していたが,「Battlefield 4」や「FIFA 14」,そして「Titanfall」といったラインナップを擁した次世代コンシューマ機時代にはどのようになっていくだろうか。Electronic Artsの動きは,今後も当連載で注視していきたい。

元バレーボールのスウェーデン代表という経歴を持つソダールンド氏の趣味は,レース。実際に,「Need for Speed」のロゴを貼った「Team NFS」のレーサーとして,地区大会に参戦している。また,1週間に4回は「刺身を食べる」とのことだ(画像は,Electronic Artsの「Speedhunters.com」より転載)
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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