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Access Accepted第438回:第一次世界大戦を扱ったタイトル
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印刷2014/10/20 11:13

業界動向

Access Accepted第438回:第一次世界大戦を扱ったタイトル

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第438回:第一次世界大戦を扱ったタイトル

 今年(2014年)は,第一次世界大戦が勃発してからちょうど100年めにあたる。欧米では“グレートウォー”とも呼ばれる歴史的に重要な戦いであり,激戦地などで記念イベントが行われたり,テレビの特集番組が作られたりしてきたが,ゲームでは第二次世界大戦や,それ以降の現代戦をテーマにしたタイトルに比べて,どういうわけか第一次世界大戦モノは非常に少ない。そこで今週は,最近リリースされた第一次世界大戦をテーマにした作品を紹介してみよう。


世界を変えた“グレートウォー”


欧米では,第一次世界大戦の開戦100周年に合わせたイベントも各種,開催されているようだ。写真は,7月に西ケンタッキー大学で行われた写真展を紹介する際に使われたもの
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第438回:第一次世界大戦を扱ったタイトル
 第一次世界大戦が勃発したのは,今からちょうど100年前の1914年のことだ。その年の6月,オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者だった大公夫妻が銃撃されるというサラエボ事件が発生し,芋づる式にヨーロッパ全土を巻き込んだ戦争が始まった。
 戦争は,オーストリア=ハンガリー帝国およびドイツ帝国を中心とした中央同盟国と,フランス共和国,大英帝国,そしてロシア帝国などからなる連合国との間で約4年にわたって続けられ,1919年1月にヴェルサイユ条約が締結されて,ようやく戦争は終わった。
 この戦いはまた,連合国側として参戦し,戦勝国となった大日本帝国が大国化していくきっかけにもなった。

 戦争史的に見ると,歩兵がライフル銃を携帯したことで,ナポレオンの時代のような騎兵隊を主体とした戦術が終わりを告げ,膠着した塹壕戦が行われたことが特徴だ。化学兵器や飛行機,戦車といった兵器が初めて投入されるなど,現代戦につながる戦争でもある。

 戦後の国際社会での日本とアメリカの台頭,ドイツやロシアにおける社会主義革命や共産主義の拡大など,歴史的な意義は非常に大きい戦争だったのだが,なぜか欧米のゲーム業界ではあまり取り上げられてこなかった。
 「独裁者ヒトラーに率いられた残忍なナチ」といった分かりやすい悪役がいないことや,武器/兵器のバラエティに乏しいことなどがその理由かもしれないし,100年という歳月は,イマジネーションを刺激する古代の戦いや,資料が豊富な現代の戦いに比べて,いかにも中途半端なのかもしれない。

 第一次世界大戦モノゲームのハシリといえそうなのは,1980年にアーケード向けに登場し,1990年にSierra On-Line(Dynamix)がPC向けにリリースしたフライトコンバット,「Red Baron」あたりだろうか。その後,ドッグファイトや爆撃にフォーカスしたナムコの「スカイミッション」(1992年)や,Electronic Artsの「Wings of Glory」(1994年)のような複葉機によるフライトコンバットがリリースされている。
 ストラテジーゲームでは,例えばParadox Interactiveの「Victoria」シリーズのように20世紀初頭の国際社会が舞台になることがあるが,これを「第一次世界大戦モノ」と呼ぶのは語弊があるだろう。

「Battlefield」シリーズの先祖ともいえるFPS,「Codename Eagle」。1999年当時の最新グラフィックスであるはずだが,今見ると,技術の進化には驚くばかりだ
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第438回:第一次世界大戦を扱ったタイトル

 アクションゲームジャンルになると,その数はさらに少なくなる。とりわけ,3Dグラフィックスが普通に使われるようになって以降の作品に絞れば,思い浮かぶのは,スウェーデンのReflaction Gamesが開発した「Codename Eagle」(1999年)だろうか。これは,社会主義革命が起きなかったという架空のロシアを背景にしたシューティングゲームで,カルト的な人気を獲得した作品でもある。ちなみにReflaction GamesはのちにDigital Illusions CEと合併して,「Battlefield 1942」を作ることになる。
 オカルト要素が混じったものであれば,2009年にポーランドのThe Farm 51がリリースした「NecroVisioN」がある。憶えているプレイヤーも少なくないとは思うが,商業的には大成功したとは言い難い。

 とまあ,そんな状況ではあるのだが,さすがに節目の年ということで,最近,いくつかの作品が登場してきた。以下に,そんな“グレートウォー”を扱った作品を3本紹介してみたい。


■VERDUN
デベロッパ:BlackMill Games/M2H Game Studio
公式サイトhttp://www.verdungame.com/


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 1916年2月から12月まで,10か月間にわたってフランス北東部で行われた「ヴェルダンの戦い」を描いたスクワッドベースのマルチプレイFPS。第一次世界大戦で最も重要な戦いの1つに数えられる「ヴェルダンの戦い」では,要塞や塹壕に立てこもるフランス軍と,砲兵を主力にしたドイツ軍が激突し,両軍合わせて70万人の死傷者を出すなど熾烈を極めたが,それを忠実に再現することにフォーカスしている作品だ。

 インディーズ開発者が共同で作っているためか,1年以上にわたってアーリーアクセスのままβ版発売が行われている作品だが,「Frontlines」モードでは,最大32人のプレイヤーが4人1組のスクワッドを作り,与えられた目標の達成を目指すという対戦が楽しめる。 第一次世界大戦の象徴的な戦い方である「塹壕戦」がベースになっており,迷路のような塹壕を敵と戦いつつ進んでいくなど,当時の戦闘を追体験しているような気分になれるはずだ。
 弾丸や銃にバリエーションが乏しく,また物理効果が再現されていないなど,現代のFPSとしては作り込みの足りない部分はあるものの,今後の進化には期待してみたい。


■Rise of Flight: Channel Battles Edition
デベロッパ:777 Studios
公式サイトhttp://riseofflight.com/


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 ニューポールやフォッカー,フェリックストウなどの複葉機を駆って,ドッグファイトを満喫できるのが,「Rise of Flight: Channel Battles Edition」だ。開発するロシアの777 Studiosは,1C Companyから発売された「IL-2 Sturmovik: Battle of Stalingrad」の元開発メンバーで構成されたデベロッパとのことで,それだけにフライトシミュレーションとしての完成度は高い。

 英仏海峡を舞台に,ドッグファイトやチーム対戦を楽しむ本作では,「Quick Mission Builder」でミッションを自作することも可能で,利用可能な機種や武器だけでなく,高度や風速なども細かく設定できる。

 さらに,「Hat in the Ring」「Du Doch Nicht」と呼ばれるキャンペーンモードで,「レッドバロン」と呼ばれたリヒトホーフェン男爵のように,エースパイロットとしてのキャリアを積んでいくこともできる。ミッションには新目標の出現や気象変化といったダイナミックな要素があるため,プレイするたびに状況はまったく異なるものになるという。
 レーダーも誘導ミサイルもなかった第一次世界大戦の大空の戦いを,リアルなグラフィックスで体験したいという人にはオススメだ。


■Valiant Hearts: The Great War
デベロッパ:Ubisoft Montpellier
公式サイトhttp://valianthearts.ubi.com/


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 2014年7月31日にユービーアイソフトから「バリアント ハート ザ グレイト ウォー」PC/PS4/PS3/Xbox One/Xbox 360/iOS)というタイトルでリリースされた本作は,第一次世界大戦にフォーカスしたという意味では決定版ともいえる作品だ。「チャイルド オブ ライト」と同様,Ubisoft Entertainmentが開発したゲームエンジン「UBIart framework」を使用した2Dゲームであり,グラフィックスノベルのような風合いのあるアートスタイルが魅力的だ。

 フランス領でフランス人女性との間に子供までもうけながら,第一次世界大戦の勃発によりドイツ軍に召集されたカールが,妻子を探すためのさまざまなアドベンチャーを,義父でフランス軍に入隊したエミール,ベルギー人看護婦のアンナ,そしてアメリカ人志願兵フレディの視点で描き,彼らの物語を救助犬のウォルトがつないでいくという趣向になっている。
 銃を持って戦う場面はなく,パズルを主体にしてストーリーを進めるというプレイスタイルで,戦争の中で生き別れた人々の切ない物語が展開していく。当時の人々が直面したであろう悲劇をじっくり描くと同時に,第一次世界大戦のさまざまな情報が盛り込まれているところも見逃せない。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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