企画記事
「そういう“くくり方”もあるのか!」と驚いたり,フワっとした条件でも好みのゲームを探せたりするSteamタグガイド
Steamの検索で,「タイプ」を「ゲーム」に絞ってみると,ヒットするのは9万以上。また,独自の手法でSteamのユーザーデータを収集し,公開しているSteamSpy(外部リンク)によると,2022年の1年間にリリースされた作品は1万本を超えており,その傾向からすると,タイトルの数は今後もかなりのペースで増えていきそうだ。
もちろん,Steamのストアには「RPG」「アクション」「アドベンチャー」などのカテゴリが用意されているし,タイトル検索では,対応言語や対応プレイヤー数,価格などのフィルタをかけることもできる。
しかし,これほどのタイトルがある中で,「好みのタイプのゲームが,一般的にジャンルとして認知されていない」「RPGでもアドベンチャーでもいいんだけど,笑える設定のゲームが遊びたい」といった場合はどう探せばいいのか? そんなときに助けになってくれるのが「タグ」機能である。
トップページ左にあるメニューの「おすすめ」にある「タグ」をクリックすると,現在人気のタグが表示される。Steam全体で頻繁に用いられている「グローバルタグ」と,ユーザーのプレイ傾向から割り出された「おすすめのタグ」に分かれているが,特にグローバルタグの数は400以上にのぼっていて,圧倒されるだろう。
なぜここまで膨大な数になっているのかというと,タグは開発者側だけでなく,ユーザー側で自由に作ったり,付けたりすることが歓迎されているからだ。
タグの定義がSteam側で決められているわけではないので,意味が分かりづらい場合は,紐付けられたタイトルから推測するしかないのだが,たくさんのユーザーによって作られた大量のタグを眺めていくと,「こんな嗜好やニーズもあるのか!」と,何かしらの発見につながっていく。
というわけで,「こんなタグがあるくらいなら,自分が探しているゲームも見つかるかもしれない」と思わせてくれるような,ニッチ(?)なタグを,グローバルタグの上位からいくつか紹介したい。
操作も演出もすべてがシンプル
「ミニマリスト」
※原稿執筆時点で全5033本たくさんの肉をひたすら焼き続ける「焼肉シミュレーター」,ピクトグラム的な歩行者を操作する新感覚の横スクロールアクション「The Pedestrian」,プレイヤー自身がルールを変更しながらゴールを目指すパズル「BABA Is You」といったタイトルたちが並んでいるのがこのタグ。
一般的に,ミニマリストとは,衣食住や情報,人間関係などを必要最低限の範囲に留めてシンプルに暮らす人のことを指す。Steamでは,操作方法やゲームの要素が最小限でありながら,それなりに頭を使うことも求められるようなタイトルが集まっている印象だ。
特にミニマリストというタグをよく表している1作と言えるのが,死者の国らしき世界に妹を探しに行くアクションゲーム「LIMBO」(「辺獄」の意)。基本操作は「移動」「ジャンプ」「(ものを掴むなどの)アクション」の3つだけで,グラフィックスはモノクロ,プレイ中の画面にテキストは表示されず,BGMも限られた場所でしか流れない。
懐かしさと新しさ,2つの顔を併せ持つ
「1980年代」
※原稿執筆時点で全3836本架空の共産主義国家で国境警備員となり,密輸や汚職,偽造を取り締まる「Contraband Police」,名作横スクロールアクション「魔界村」「大魔界村」をモチーフにした「帰ってきた 魔界村」,膨大な数のモンスターを夜明けまで撃破し続けるタイムサバイバルゲーム「Vampire Survivors」といった作品たちが並んでいるのがこのタグ。“クソゲーの元祖”と呼ばれることもある「いっき」の最新作,「いっき団結」もここに含まれていたりする。
クレーンゲームよりもビデオゲームがゲームセンターの主役で,ファミコンが登場したのが1980年代。当時リリースされたタイトルの移植版や,その時代を思い起こさせるようなタイトルが主に集まっている印象だ。
当時を知る人にとっては懐かしく,そうでない世代にとってはそのレトロさが新鮮に映るタグのように思われる。
夢か現か幻か
「超現実的」
※原稿執筆時点で全2490本東京を舞台に,人々が突如消失した謎を解決するために戦うアクション「Ghostwire: Tokyo」,独特の怪しい雰囲気の世界で中年刑事が殺人事件の真相に迫っていくRPG「Disco Elysium - The Final Cut」,カードバトルの裏に潜む暗く謎めいた秘密を暴くことが真の目的となるカードゲーム「Inscryption」といった作品たちが並んでいるのがこのタグである。
「超現実的」と聞いてもあまりピンとこないかもしれないが,「シュール」「奇想天外」などといった言葉に置き換えると分かりやすいだろうか。主人公が印を結んで妖怪と戦ったり,あるいは自分のネクタイと脳内で真面目に会話したりといった,現実離れした設定のタイトルが主に集まっている印象だ。
たくさんのアヒルのおもちゃとプールで過ごすSLG「Placid Plastic Duck Simulator」にもこのタグが付けられているのだが,人が何をもって超現実と捉えるのか,その多様さにも気付くことができるかもしれない。
迷宮探索からカバン整理まで
「グリッド移動」
※原稿執筆時点で全1038本かわいらしいイラストからは想像できない歯ごたえが魅力の3DダンジョンRPG「世界樹の迷宮 HD REMASTER」,ローグライクなリズムアクションゲーム「Crypt of the NecroDancer」,美しいボクセルアート世界で持ち物を燃やして進めていくパズル「Bonfire Peaks」といった作品たちが並んでいるのがこのタグである。
2D/3Dを問わず,格子状になっているマス目に沿ってコマ(プレイヤーキャラ)を移動させながら目的をクリアするようなタイトルが集まっている。
作品名やキーワードに「迷宮」「宮殿」「ダンジョン」といった単語をちょくちょく見かけるうえ,一緒によく付けられている特徴的なタグに「論理」などがあることから,先を見通しながら探索するタイプのゲームを探している人にもよさそうだ。
少し趣が異なるが,格子状のインベントリ内に,さまざまな形状のアイテムを配置していく「Save Room - Organization Puzzle」は,某サバイバルホラーが好きな人には刺さるに違いない。
遊び? それとも仕事? 思考整理が捗る
「自動化」
※原稿執筆時点で全767本不時着した星でロケットを打ち上げるまで開拓するのが当面の目標となる2DSLG「Factorio」,その3D版とも称される一人称視点の工場建設ゲーム「Satisfactory」,MMORPGのスキルシステムを参考につくられたという放置ゲー「Melvor Idle」,AをBに置き換えるという命令だけを使って問題を解くプログラミングゲーム「A=B」などに付けられたタグ。手動部分をいかに省き,滞りなく動かし続けるか,ということに重きが置かれたタイトルたちだ。
以前の筆者は,ゲームでそうした作業を行うことの何が面白いのかと思っていたが,実際にプレイしてみて,「ベルトコンベアを美しく配置したい」「無駄を減らして最適化したい」など,自動化の先に見えてくるものを自分なりに追求するようになった。そうなると寝ても覚めてもそのことばかり考えてしまい,遊びなのか仕事なのかが分からなくなってしまったほどだ。
プログラムのスパゲティコードを直したくなる気持ちというのは,こういう感覚に近かったりするのだろうか?
素朴な疑問。犬タグと猫タグ,数が多いのは?
Steamのタグには,ひねったものだけでなく,直球のものだってある。例えば,犬や猫が出てくるゲームで癒やされたいと思ったときは,そのまま「犬」と「猫」といったタグで絞り込むといい。まあ,ヒットする作品が癒やし系かどうかまでは分からないのだが。
ところで,この人気そうな犬タグと猫タグ,どちらの数のほうが多いか気にならないだろうか? あくまで筆者は中立的立場であるが,好奇心には勝てず単純な本数を調べてみることにした。
結果は,「猫」が990本,「犬」が445本というダブルスコア以上の大差に。一躍話題となったサイバーパンク猫アドベンチャー「Stray」を擁する猫タグが,柴犬を操作して群衆を導く「Humanity」率いる(?)犬タグ陣営を抑えて圧勝となった。
2つのタグの間で,高評価になっている作品をざっと見てみたところ,どちらかというと犬タグの場合,プレイヤーと犬は別の存在で,育成の対象やパートナーだったりするものが目立った。
それに対し,猫タグの場合は,プレイヤー自身が猫視点になるものがちらほらあった気がする。猫になりたいというニーズは,意外と多いのだろうか。また,隠れている猫を探す作品の割合がやけに高かったのは,気まぐれで狭いところにも入り込める猫だからなのだろうか。
加えて,猫タグでは猫耳美少女系の作品が視界の端に数本あった記憶がなんとなくある。もしかすると,こういったところが猫陣営の強さの隠された秘密なのかもしれないし,全然関係ないのかもしれない。
スローモーション機能で活路をひらく
「バレットタイム」
※原稿執筆時点で全650本自分が動けば周りの時間も進むユニークなFPS「SUPERHOT」,西部開拓時代を賞金稼ぎとして旅する隠れた良FPS「Call of Juarez: Gunslinger」,しゃべるバナナ(バナナ……?)を相棒に敵を倒していくガンアクション「My Friend Pedro」といった作品たちが並んでいるのがこのタグ。
バレットタイムとは,被写体をたくさんのカメラで取り囲み,被写体が静止またはスロー状態でカメラアングルが動いていくようなシーンを撮影する方法のこと。映画「マトリックス」で,主人公のネオが銃弾を避けるシーンが有名だ。
ゲームでは,スロー効果を利用して敵の攻撃を避けたり,次にどう動くかを考えたりといったことができる能力や機能を指すのが一般的で,動きの激しいゲームでも正確な操作がしやすくなるお役立ち機能となっている。アクションが苦手な人は,このタグが付いているタイトルを選ぶといいかもしれない。
眼下に広がる美しい世界に足をすくませながら,スローモーション機能を駆使してひたすら上を目指し続けるゲーム「Only Up!」にも付けられていたが,同作の販売は中止となってしまった。
コントローラ派でもチェックする価値あり
「マウスのみ」
※原稿執筆時点で全492本「マウスのみ対応」ではなく,おそらく「カーソル操作が主体」といった意味合いで付けられていることが多いと思われるタグ。全体的な印象としては,当然ながらコントローラよりもマウスのほうが快適にプレイできるものが多いと感じる。
不気味な人形,枯渇する電力,夜間警備といった嫌らしい要素が揃った,ジャンプスケア系ホラー「Five Nights at Freddy's」,ランダム要素がある中でのデッキ構築が深いローグライクカードゲーム「Slay the Spire」,六角型のマインスイーパにピクロスの要素が加わったようなパズル「Hexcells Infinite」といったタイトルが並んでいる。
なかには,器に浮かんだ油をつなげるだけのゲーム「ラーメンあぶら集め」も。確かに,あの油はコントローラでの操作がなかなか難しそうというか,マウス操作の方が気分が出そうではある。ゲームの中ならマナーや人目を気にする必要はないので,思う存分マウスで連結させてほしい。
いざというときは時間を操る
「ポーズありのリアルタイム」
※原稿執筆時点で全298本「現実の戦いがターン制で進むわけがないだろう!」と言いつつ,「ピンチのときは時間を止めてじっくり考えたいな」と思っているような人にぴったりのタグ。
第2次世界大戦や近世を舞台に,歴史のifを疑似体験できるストラテジー「Hearts of Iron IV」や「Europa Universalis IV」,ガンビットシステムによる自動戦闘が特徴の1つとなる「FINAL FANTASY XII THE ZODIAC AGE」,TRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をベースとした古典的名作「BALDUR'S GATE: ENHANCED EDITION」といった作品たちが並んでいる。
基本的にはリアルタイムで進行しつつも,ゲーム内の時間経過スピードを調整できたり,または止められたりといった共通点がある。
一緒によく用いられている特徴的なタグとしては,「大戦略」「リアルタイム戦略」「戦術」「歴史改変」など,歴史を題材としたストラテジーを思い起こさせるものが目に付く。リアルタイムストラテジーは決してとっつきやすいとは言えないジャンルだと感じるので,初心者はまずこのタグがついたタイトルを選んで,采配に迷ったら即ポーズをするくらいの勢いでプレイするといいだろう。
犯罪の枠を外れた悪が集合
「悪役主人公」
※原稿執筆時点で全220本ガチョウになって平和な村の善良な人々を微笑ましい〜結構ひどいイタズラで翻弄する「Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜」,宇宙人になって地球を侵略し,人々を恐怖に陥れる「Destroy All Humans!」,復讐に狂った巨大ザメがやはり人々を震え上がらせる,午後ローもびっくりな「Maneater」といった作品たちが並んでいるのがこのタグである。
「PAYDAY」や「Grand Theft Auto」シリーズといったあたりは含まれておらず,犯罪という枠には当てはまらない,あるいはそれを超えた,人間にとって好ましからざる存在が幅をきかせているタイトルが集まっている印象だ。「Police Stories」があるのを見るに,プレイヤーキャラが悪役かそうでないかまでは関係なさそうである。
ちょっと意地悪く,「スーパーヒーロー」のタグでさらに絞り込みをかけてみると,フリーザやセルがフィーチャーされたアクション「ドラゴンボール ザ ブレイカーズ」などがヒット。その検索結果に,やたらと納得してしまったのであった。
もどかしさより笑いが勝る
「意図的に不便な操作」
※原稿執筆時点で全64本外科医志望の主人公が危うい手つきで某大統領や宇宙人の手術をすることになる「Surgeon Simulator」,物理演算にもとづいた西洋竹馬のコントロールが難しすぎる「Stilt Fella」,バナナ(またバナナ……?)になって左右の回転だけでギミックを超えて行かなければならない「International Space Banana」といった作品たちが並んでいる。
昨今のゲームは,いかにユーザーが快適にプレイできるかに注意が払われて開発されているわけだが,それを嘲笑う(?)かのように,難ある操作をゲーム性の柱にしているようなタイトルたちが集まっているタグだ。
一緒によく付けられている特徴的なタグは「コメディ」や「笑える」といったもの。自分の思ったような操作ができず,もどかしくなること確実なのだが,それが逆に受け入れられているのは,変な動きによるバカバカしさや可笑しさのほうが,イライラよりも大きく勝るからなのだろう。
変わったタグから,一生もののタイトルが見つかるかも
普段あまり見かけなさそうなくくりの10のタグをできるだけ選んでみたが,これをヒントに気になるタグやゲームは見つかりそうだろうか?
紹介したもの以外にも変わったタグはたくさんあるので(個人的には「ラヴクラフト」タグなども,とても気になっている),眺めてみるときっと新しい出会いがあるはずだ。
Steamでは,既存のタグを活用するだけでなく,ユーザーが「新たな概念」を生み出すことも推奨している。筆者も試しにと凡庸なタグを付けてみたのだが,もし自分推しのタグが同志からの共感を得たり,そのタイプの作品自体が増えるなどして育っていったら,ちょっと嬉しい気もする。
それにしても,知らないゲームのなんと多いことか。それに気付かされると同時に掘り出し物と出会うこともでき,無駄にウィッシュリストが充実した,いい散策となったのであった。
- 関連タイトル:
Steam
- この記事のURL:
(C)2019 Valve Corporation.All rights reserved.