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[COMPUTEX 2007]DDR3とIntel Extreme Memory総まとめ
DDR3 SDRAMは,メモリチップ側に8bitプリフェッチ機能(CPUがデータを必要とする前にデータを読み出す機能)を内蔵することで,同じメモリクロックで比較したときにDDR2 SDRAMの倍の転送レートを実現できるのが,最大の特徴だ。例えば同じ400MHzのバスクロック(メモリクロック200MHz)のとき,DDR2 SDRAMだとDDR2-800になるところが,DDR3ではDDR3-1600を実現できるようになる。DDR2 SDRAMが,現在DDR2-1066に達しようとしていることもあり,メモリチップ&モジュールベンダー各社は,オーバークロック動作ではない状態でDDR3が実現可能なクロックとして,最終的にDDR3-2132以上を見ているようだ。
少し前提となる話をするが,2006年7月に欧州圏で施行されたRoHS指令を知っているだろうか。これは簡単にいうと,人体に有害な特定の物質を,電子機器に用いることを禁ずるもの。電子機器の製造に欠かせない“はんだ”の材料となる鉛がRoHS指令の対象となったため,メモリのはんだ付けには鉛フリーのものが利用されるようになった。このとき,鉛フリーはんだは従来のはんだよりも融点が低く,これがDDR2メモリでメモリ電圧を上げられない原因となったのだ。メモリ電圧を所定の水準から大きく上げられないとなれば,オーバークロックメモリモジュールを作るのは難しくなる。
こうした状況に対してDDR3 SDRAMでは,動作電圧がDDR2の1.8Vから1.5Vに低下したことで,そもそものオーバークロックマージンが上昇したと,メモリモジュールベンダーの関係者は指摘する。実際,COMPUTEX TAIPEI 2007では,オーバークロック動作でDDR3-2000に達したメモリモジュールを,Corsair MemoryとTeam Groupによって動作デモ展示したほどだ。
これは,DDR3 SDRAMの動作電圧マージンが±0.075Vしかなく電圧変動に弱いので,定格なら定格,(オーバークロックのための)過電圧なら過電圧で安定した電圧を供給しなければならないため。要するに,メモリモジュールの品質や,マザーボードの電源回路設計などの影響を受けやすいのである。
また,メモリモジュールと(ノースブリッジまたはCPUに内蔵される)メモリコントローラを結ぶバスのクロック自体はDDR2 SDRAMと変わらないため,DDR3-1333以上では,メモリモジュールとメモリコントローラを結ぶ配線などの設計も,互換性に大きな影響を与えることとなる。
実はこれこそ,IntelがDDR3 SDRAMにおいて“Intel版EPP”(EPP:Enhanced Performance Profile)ともいえる「Intel Extreme Memory」のサポートを決定した大きな理由の一つだと,メモリモジュールベンダー関係者は指摘する。COMPUTEX TAIPEI 2007の直前に,ASUSTeK Computerがメモリモジュールを手がけると正式に発表し,DDR3メモリモジュールをバンドルしたマザーボードや,DDR3メモリチップをマザーボード上に実装したモデルの投入を決めたのも,こうした背景のためだ。
ただし,マザーボードやIntel Turbo Memoryのように,Intelからリファレンスデザインガイドが供給される予定はなく,現在EPPメモリを展開しているCorsair Memory,Kingston Technology,OCZ Technologyなどが独自にIntel Extreme Memory対応モジュールを展開していくことになりそうだ。またIntelとして,同技術をメモリの標準化団体であるJEDECに申請して標準化作業を進める意向も,いまのところない模様。Intel Extreme Memoryは(少なくとも当面の間)同社の独自技術として存在し,建前上,EPP(≒SLI Memory)と別物というスタンスになる。
Intelでチップセットビジネスを指揮するRichard Malinowski(リチャード・マリノウスキー)氏は,「Intel X38 Expressだけでなく,Intel P35 ExpressもIntel Extreme Memoryをサポートする」「我々はDDR3のポテンシャルの高さに注目しており,DDR2でIntel Extreme Memoryをサポートするつもりはない」と説明する。そしてこれを受ける形で,マザーボードベンダーは,Intel P35 ExpressマザーボードでのIntel Extreme Memoryサポート,あるいはDDR2版Intel X38/P35 ExpressマザーボードでのEPPサポートを行うべく,対応BIOSをリリースする計画を持っているようだ。
ただし,後者に関しては,まだ未定というところが少なくない。とくに中規模以下のマザーボードベンダーにとっては,Intel Extreme Memory対応BIOSのリリースで“いっぱいいっぱい”で,とてもEPP対応BIOSの開発まで手が回らないというのが実情。前者についても,「Intel X38 Expressマザーボードの投入に合わせて,Intel P35 ExpressマザーボードでもIntel Extreme Memory対応を果たすほうが現実的だ」とのことである。
その意味では,市場に存在するIntel P35 Expressマザーボードで,すぐにIntel Extreme MemoryやEPPが使えるようになると考えるのは早計といえる。メモリのオーバークロック性能を重視してマザーボードを選ぼうと思っているなら,メモリモジュールベンダーの対応やマザーボードベンダーのBIOSリリース状況を確かめてからでも遅くはないだろう。(ライター:本間 文)
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