インタビュー
[G★2007#64]Kim Tai Gon氏に聞く「ATLANTICA ONLINE」の日本展開
今回のG★会場で,NDOORS Game Development Div 1のディレクターKim Tai Gon氏にコンタクトを取り,同作品の特徴的なシステムと日本展開などについて聞いてみた。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。この作品は日本ではほとんど知られていませんので,まず,軽く作品の概要から説明していただけますか?
分かりました。簡単にいうと「ATLANTICA ONLINE」は,アトランティスの血を引く青年が,アトランティスを求めて旅を続けるというMMORPGです。
4Gamer:
ゲームの特徴としてはどんなものがありますか?
Kim氏:
まず,傭兵を雇うことができます。ゲームを開始するときに3人,レベルが上がるともう一人追加され,あとはNPCをゲームマネーで雇ったり,都市と都市の間を移動している傭兵を仲間にしたり,上級の傭兵になるとクエストを通して仲間になってくれるものもありますね。最大で8人の傭兵を使って戦闘ができるようになっています。
4Gamer:
8人の傭兵をプレイヤー一人で制御するのは難しくないですか?
Kim氏:
戦闘はターン制のストラテジー式になっているので,さほど難しくはないと思います。
4Gamer:
なるほど。雇える傭兵ごとの違いはあるのですか?
Kim氏:
まず,使用する武器によっての違いがあります。またヒーラーやBuffを行う人などのスキルによっても区別されます。
4Gamer:
普通のMMORPGの1パーティがプレイヤーと傭兵だけで組めるわけですね。8人以上の傭兵は使えないのでしょうか?
Kim氏:
一度に使用できるのは8人までですが,待機させておける傭兵が最大10人まで,全部で18人まで雇うことができます。
4Gamer:
この傭兵たちは成長していくんですか?
Kim氏:
傭兵は傭兵の経験値を持っており,レベルアップしていきます。成長すると見た目とスキルが変わってきます。スキルは,レベルが上がるごとに一つずつ覚えていくようにしています。
4Gamer:
傭兵にかなり力が入れられていますね。ところで,プレイヤー同士でのパーティは組めるのですか?
Kim氏:
はい。3組でパーティを組めます。傭兵を入れると27人パーティになります。ただ,これはプレイヤーに限ったことではありません。気をつけなければいけないのは,相手も27体までのパーティを組んでいることがある点です。
4Gamer:
モンスターとかもパーティを組むわけですか?
Kim氏:
やられそうになったモンスターが仲間を呼んできたりします。また,アイテムを使うとモンスターをこっちの仲間にできるようになっています。
4Gamer:
なかなか大規模な戦闘になりそうですね。ターン制で,最大54体が入り乱れて戦うというのは,どういう具合に制御しているのでしょうか? セミリアルタイム制ですか? 完全にターン制ですか?
Kim氏:
これは制限時間制を取っています。時間内に動かせるだけ自由にキャラクターを動かすことができるようになっています。
4Gamer:
自由にですか? 同じキャラクターを何度も使ったリできますか?
Kim氏:
いえ,キャラクターごとに1回の操作になります。
4Gamer:
なるほど。では,戦闘の開始はどのようになっていますか? フィールド上のモンスターに接触すると戦闘に移行するタイプでしょうか? それともモンスターが襲ってくることがあるのでしょうか?
両方ですね。とくに賭ダンジョンという場所では,アイテムなどの報酬がよい代わりに,進路上のモンスターが見えない仕様になっています。いきなり戦闘が開始されるのでかなり緊張感がありますよ。
4Gamer:
ちなみに,戦闘が始まると,戦闘用のマップに切り替わる方式ですか?
Kim氏:
そうです。
4Gamer:
その場合,戦闘している人というのは,ほかのプレイヤーから見るとどう見えるのでしょうか?
Kim氏:
モンスターと格闘しているように見えます。戦闘マップ上の動きとは関係なしに,戦闘モーションをお互いに繰り返します。ちなみに,この状態で,そばにいる人が戦っているプレイヤーを右クリックすると,戦闘に加勢することができます。
4Gamer:
モンスターを右クリックするとどうなりますか?
Kim氏:
モンスター側に加勢することができます。
4Gamer:
!
Kim氏:
ただし,この仕様は上級ダンジョン以外では封印されています。戦闘中だと簡単にMPKができてしまうので,初心者用などでは使えないようにしています。
4Gamer:
MPKぽいものはともかく,PvP自体はどこでもできる仕様なのですか?
Kim氏:
はい。街などの安全エリアを除いた地域でPvP可能になっています。そのほか,ゲーム内の武術大会などもPvPを楽しむコンテンツとして用意しています。
4Gamer:
改めてお聞きしたいのですが,NDOORSのほかのゲームとは異なった,こういうターン制の戦闘システムを採用したのはどうしてなんでしょうか?
なにも突然始めたわけではないんですよ。オンラインゲームを作るまでは,PCゲームでシミュレーションゲームを作っていたり,巨商伝の開発なども行っていますから。最近のMMORPGは,どちらかというとアクション性を追求するものが増えてきました。同じようなものを作っても仕方ありませんし,私がアクションゲームが苦手なのもあるのですが(笑),じっくり考えて戦えるゲームを作りたくて,このゲームでは戦略性を重視する方向で行こうと決めていました。
4Gamer:
なるほど。しかし,ターン制の戦闘システムを取り入れるというのはかなりの冒険だったのではないかと思うのですが,クローズドβテスターの反応はいかがだったのでしょうか?
Kim氏:
クローズドβテストは1週間,24時間連続で行いました。まずテスターから驚かれたのは,サーバーが安定していたことです。最初のテストにも関わらず,ほかのゲームのオープンβテストよりもずっと安定しているといわれましたね。次に,やはりこのようなシステムをオンラインゲームでやってうまく行くのかに不安を抱いていた人が多かったようなのですが,結果的には非常に満足してもらえたようで,高い評価をいただきました。ちなみに,テスト中の平均プレイ時間は7時間,テストの持続率は80%に達しています。
4Gamer:
それはかなり凄い数字ですね。
Kim氏:
日本のプレイヤーのほうがターン制のゲームに親しんでいるのでよくご存じだと思うのですが,ターン制にはある種の中毒性があります。それをオンラインゲームの面白さとうまく調整していくように気をつけて開発しました。
ゲームの幅を広げる都市経営シミュレーション
4Gamer:
アトランティスを目指して旅をしているという設定になっていますが,では冒険の舞台というのはどのあたりなのでしょうか?
Kim氏:
この物語は,日本,中国,韓国の3か所からスタートポイントを選ぶことができます。主人公はアトランティスの血を引く青年で,ほかにアトランティス文明を悪用した勢力というのがあり,その勢力との戦いというのもゲームの要素となっています。
日本,中国,韓国などから出発し,東南アジア,インド,中東,ヨーロッパ,アメリカとこれらすべての場所が冒険の舞台になります。
4Gamer:
世界中ですね。現時点でそのすべてが遊べるのですか?
Kim氏:
現時点では,アメリカを除いた部分が出来上がっています。
4Gamer:
予想より多くできあがっているようですね。
Kim氏:
これらの世界は現実のマップとは異なりますが,現実の都市をゲーム内に入れています。東京やパリなどがゲーム内にも存在します。また,ダンジョンでは,アンコールワットであるとか,中国の遺跡,モヘンジョダロ,それに日本の城もダンジョンとして用意されています。
4Gamer:
都市はどういった機能を持っているのですか?
Kim氏:
都市はギルドの拠点となります。クエストなどで都市を手に入れたギルドは,そこにさまざまな建物を建てることができます。こうなると経営シミュレーションの要素が濃くなります。都市の位置は決まっていますが,その内部は都市を支配するギルドの裁量でいろいろ変わってくるんですよ。
都市を持ったギルド連合は,国の建国ができるようになります。これがこのゲームのコミュニティ機能の目標点となるものです。国の名前は支配ギルドが自由に付けることができます。
4Gamer:
そうなると,このゲームは最終的に経営シミュレーションゲームということになるのでしょうか?
Kim氏:
このゲームのシミュレーションは3段階になっており,まず,戦闘時の局地戦シミュレーション,そして傭兵の育成シミュレーション,最後にコミュニティの都市経営シミュレーションとなっています。
4Gamer:
NDOORSっぽい特徴が出てきましたね。ではこのゲームの目的というのはどこになるのでしょうか?
目的をどこに置くかは個人個人で違ってくるでしょう。シナリオ上は,アトランティスを探すことが目的ですし,武術大会で勝つことを目的とする人もいるでしょう。またコミュニティでは国の勢力を広げることを目的とする人もいるでしょう。ただ,一つの国だけでは全マップを占領することはできないという仕様になっていますので,世界制覇などはできません。三国志の時代のように,何か国かで勢力争いを行うという感じにしています。
4Gamer:
なるほど。ところで,アトランティスというのはゲームに出てくるんですか?
Kim氏:
ちゃんと出てきます。ただし,アトランティスに着いても,そこでゲームが終わったりはしません。そこからまた新しいストーリーが展開していくことになります。
4Gamer:
それを聞いて安心しました(笑)。ただ,舞台が非常に広いエリアにわたっているのですが,移動の手段にはどんなものが用意されているのでしょうか?
Kim氏:
都市には旅行管理所という施設があり,そこからほかの都市にワープできるようになっています。ワープにはお金が必要で,それがギルドの収入源の一つにもなっています。また,アイテムを使って,友達のところにワープするとか,ダンジョンまでワープすることもできます。
4Gamer:
乗り物は用意されていないのでしょうか。
Kim氏:
現在はありません。馬や自動車といったものをオープンβテストから入れていく予定です。
4Gamer:
なるほど。では,都市の機能で有料なのは旅行管理所以外にどんなものがありますか?
Kim氏:
マーケット,銀行,病院ですね。
そして日本サービスは?
4Gamer:
これまでに挙げられたもの以外で,なにか特徴がありましたら教えてください。
Kim氏:
MMORPGでは,数多くの戦闘を繰り返してキャラクターが成長していくのですが,これがすべてターン制の戦闘によるものだと,時間がかかりすぎて途中で飽きられてしまうおそれがあります。そこで,自動戦闘の仕組みを最初から用意しました。
また,移動についても,自動移動システムを導入しました。これはナビゲーションシステムのような感じのものです。マップ上の地点を指定すると,そこまで自動で移動してくれます。また,クエストなどで,例えば「鹿を10匹〜」というものがあった場合,マップを見ただけでは鹿がどこにいるか分かりません。ここでクエストをクリックすると,鹿のいる場所まで自動的に移動するようになっています。
それは便利ですね。しかし,移動中に敵に襲われることはないのでしょうか?
Kim氏:
襲われる可能性はあります。自動移動中には,モンスターを逐次左右に避けながら進めていくのですが,それはそれでなかなか面白いものですよ。
4Gamer:
やはり襲われますよね。そのほかの特徴はいかがですか?
Kim氏:
ゲーム内で初心者をサポートする「師と弟子」のような関係が用意されています。また,武器や装備,薬などの生産と,生産品などを売るマーケットのシステムがあります。これは登録しておけば,プレイヤーがいなくても勝手に売ってくれるものになっています。戦闘では,チャプターの最後に必ずボスモンスターがいて,それを倒さないと次に進めないようになっています。
4Gamer:
最後に日本でのサービス予定と抱負を聞かせてもらえますか?
まず韓国で安定してから日本に持っていくという方法を取る予定です。韓国では年内にオープンβテストを予定しており,次いで正式サービスに移行していきます。日本展開はそのあとになります。日本のゲームプレイヤーの目は非常に肥えていますから,十分な準備をしてから持っていくつもりです。
いまのMMORPGはどれも似通ったものが多くなってきています。ATLANTICAは,ほかのゲームとはかなり違った特徴を備えており,そういったゲームとは違った作品だと分かっていただけると思います。日本のプレイヤーの嗜好ははっきりしていますので,このような作品は日本で受け入れられると信じています。もうすぐ日本サービスについてもお話できるようになると思いますので,期待して待っていてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
Kim Tai Gon氏は,韓国ではKim Hakyu氏に負けないくらいプレイヤーに愛されている開発者の一人である。「巨商伝」や「君主 online」などのユニークな作品を世に送り出してきた氏が,長年のゲーム開発の集大成として作成したのがATLANTICA ONLINEであり,この作品にかかる期待は非常に大きなものがある。
今回のインタビューからは,そうった状況下で,ATLANTICA ONLINEは期待を裏切らないオリジナリティのある作品として生まれようとしていることが分かるだろう。斬新なシステムが多いので,調整に多少時間はかかると思われるものの,日本での展開も視野に入れた開発が行われており,実際にプレイできる日もそう遠くない雰囲気である。次は国内サービスの具体的な話にも期待したい。
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