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印刷2008/12/18 11:59

連載

Fallout 3 連載 荒野に咲いた一輪の花 / 第1回:完璧な16歳

荒野に咲いた一輪の花
第1回:完璧な16歳

 

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 まず,編集部からひとこと。
 本日から始まった週刊連載「荒野に咲いた一輪の花」は,タイトルからもすぐに分かってしまうように,Bethesda Softworksの制作したシングルプレイ専用のRPG,「Fallout 3」の英語PC版をテーマにした連載である。遠い未来,核戦争後の荒廃した世界を舞台に,プレイヤーが生き残りをかけて戦うというRPGで,Bethesdaが制作して世界的に大ヒットした「The Elder Scrolls IV: Oblivion」ゆずりの広大な世界や高い自由度から,こちらも大ヒット街道驀進である。
 執筆を担当するのは,Oblivionの連載で愛らしい主人公を送り出し,いろんな意味で一部の評判となったライターの星原氏。とはいえ,剣と魔法の世界から,ただ生存するのでさえ,きわめて困難なアナーキーでインモラルで残酷な世界への転向に当たっては,いろいろと思うことがあり,どうやら,いつもとはかなり雰囲気が違うようだ。まずは,星原氏の決意表明から聞いていただきたい。いや,あんまり心配しなくても大丈夫だと思う。たぶん。(4Gamer編集部)

 

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ビジュアルクイーンの誕生――あるいは星原氏,決意を語る

 

 ちょっと待ってくれ,って言うかぜひ聞いてほしい。オレはしばしば自分勝手で強情で周りのことがよく見えていないやつだと思われがちなのだが,もちろん自分自身ではそんな風だと少しも思っていないのだ。むしろ非常に周囲に合わせがちで,常に他人の気持ちを慮り,なるべく多くの人が幸せになれるようなやり方はないものかとあれこれと考えを巡らし,結果的に自分が一番めんどくさいことを引き受けて,あちらへこちらへと走り回りことになる。そういう人間であるはずだ。

 今回だってそうだ。Fallout 3の連載を引き受けたはいいが,しょっぱなのキャラ作りの段階からオレの気配りはフル回転し始めた。話を面白くするためには,素直に可愛らしい造形のキャラクターを作るのが良いのか,それとも狙ってヘンテコな顔のキャラクターを作ったほうがいいのか,悩みに悩んだ。悩んで悩んでいつまで経っても始められない。このままではだめだ,もうどうしようもないというところまで来てキー! っとなって――そして最後にはキレた。
 ――というわけで,今回はなんの奇もてらわず,普通に美人のキャラを作ってそれで始めることにしよう。ギャグとかなしで素直に可愛いキャラクターを作る。

 Oblivionでもキャラメイクは“このゲームにおける最大クラスの難関だ”などと言われていたが,だいぶ似たところの多いFallout3でも,やはり普通の人にとっては難関となっているらしい。……らしいが――そんなことはない。オレという男はこういうものの扱いに関しては並々ならぬ自信を持っているというか,はっきりいって超簡単だ!   だから一筆書きのような素晴らしい速度で主人公キャラクターはあっという間に完成した。しかも非常に愛らしい仕上がり。あまやかなミルク色の肌,その中にいくつもの星を宿した杏型の瞳,唇は朝露にぬれたイチゴの果実の艶やかさ。アイマスの新キャラだといっても通用しそう。よし,相変わらず完璧だ。

 

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エンジェルの日常

 

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 オギャーと生まれたあたしは,科学者であるパパの手によって蝶よ花よと育てられ,あっというまに10歳の美少女へ成長した。どれほどの美しさかと言えば,間違いなく“学年で最もかわいい”というレベル。  クラスの男子たちが修学旅行の夜にどの女子が好きかをうち明け合う例の会合を開いたはいいけど,クラスで一番かわいいのが誰なのかは誰の目にも明らかなので,自分の好きな子をバラしたとしても,それってほとんど友達とカブッてしまうのは明白であり,何となく言いづらいなあとソワソワしてしまう,そんな可愛さ――といえば分かるかしら。比類のない可憐さは,あたしの日常に例えばこんな出来事を運んでくるわけ。

 

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 パパが開いてくれたあたしの10歳の誕生パーティには,仲良しの女友達のアマタのほかに三人の男子が呼ばれていた。もちろんこの三人全員が私を好きなのは火を見るより明らかで,とくにリーダー格である眉毛の端のとんがったブッチという男子はそうとうキてしまっている。
 パーティでは,親切なパルマーおばあちゃんが誕生プレゼントとしてあたしにスイートロールケーキをくれたのだけれど,ブッチは眉毛の端をとんがらせ,それをよこせと言いながら,あたしに迫ってきた。あたしのかじりかけが食べたいからって, 最悪! マンモス最悪! イヤよって言ったら次はあろうことかあたしにつかみかかってきた。これってきらめくような美少女であるあたしのカラダに触りたいという魂胆がみえみえ!
 結局それに気づいた大人の人がこりゃあマズイと助けに来てくれたのだけれど,でも大人といえども油断できないところがこの世界のサバイバルなところで,廊下に出たとたん,あたしに向かって馴れ馴れしく「やぁ,誕生日おめでとう」だなんて話しかけてきたあのケンダルさんという警備員は,もうすでにあたしの中ではロリコン認定済み。これだからアメリカって恐いわね。
 騒動が収まったところでアマタはあたしに話しかけてきてくれた。なにぶんあたしってば超絶に可愛すぎるものだから,どんな女性でも一目見ただけでその可愛さ故にひとつまみの嫉妬を覚えずにはいられないみたいで,なかなか友達が出来ないんだけれど彼女は別。心配してくれてありがとうアマタ。あたしは口の中に放り込んだスイートロールをカカカカカカカカと秒速8回の速さで咀嚼しながらお礼を言った。

 

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パーフェクト・シックスティーン

 

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 16歳になったあたしがどれほど愛らしいかということについては,パパの口からおもわずこぼれたこの言葉に集約されていると思う。

「As far as I can tell, you're a parfectly healthy 16-years-old girl.」
(かなりの意訳:かわいいよかわいいよ。きみは完璧だ。)

 

――完璧な16歳。うん,そうね,あっている。

 

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 さて,このVault101ではこのくらいまで成長した子供は「G.O.A.T.」(Generalized Occupational Aptitude Test)というテストを受けなければならない。これはその子供を将来どういった職業に就けるべきかの適性を調べる試験という設定で,ゲームシステム的にはこの試験の結果によって,そのキャラクターが射撃や鍵開け,ハッキング,薬の使用,アイテム修理など,どういうことが得意なキャラクターなのかが決定されるようになっている。
 Fallout 3においてキャラクターの性能を決定づける要素にはS.P.E.C.I.A.L.(能力値),Skills(スキル)のほかに,Perks(パークス)というものがある。パークスは追加で得られる特殊能力あるいは特別ボーナスのようなもので,その中にはユニークなものがそろっている。意訳と共にいくつか紹介すると,

 

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Gun Nuts(ピストル狂)

あなたは小火器を使ったり分解したりするのがウットリするくらいに好き。Small GunsとRepairのスキルにボーナス。

 

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Little Leaguer(リトルリーグ出身)

あなたは少年野球チームに所属していたので,棒で打ったりものを投げたりするのが得意になった。Melee WeaponsとExplosivesのスキルにボーナス。

 

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Nerd Rage!(オタクの逆ギレ)

あなたはいじめっ子にさんざん小突き回された結果,逆ギレパワーを身につけた! ヘルスが20%を切ったときにストレングスが10,ダメージ抵抗が50%アップする。

 

といったものがある。
 そして,パークスの中にはあたし的に絶対見逃せないっていうか,まあ普通に考えれば当然もとから備わっているはずよねというものが一つある。意訳を交えて紹介すると……

 

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Black Widow(超絶美少女)

あなたは超カワイイ! V(^-^) ヤッタネ
異性の敵に対してはその愛らしさでダメージが50%アップしてオトク☆
さらに異性と会話するときには特別にカワイイ選択肢が現れるよ \(⌒▽⌒*)
しかも登録は無料♪ ( ̄∇ ̄)v ムフッ

 

 あたしは生まれながらにこのパークスを持っているはず。もしも判定で持っていないという結果が出たらあたしは何をするか自分でも分からないけど,さあテストを受けに行きましょう。

 試験会場となっている教室の前まで行くと,本当はあたしのことが好きなブッチを筆頭に,本当はあたしのことが好きな男子二人を交えた本当はあたしのことが好きな男の子の三人グループが,なんだかアマタに意地悪く絡んでいたけど,彼らのこの行為は本当はあたしの気をひきたいために,その友達のアマタに絡んでいるということで100%間違いない。
 あんまりいじましいのでちょっと相手をしてあげたら,ブッチはまるで本当に嫌いな女子を見るような目つきを装いつつこちらをにらんできた。実際はあたしを見ながらエッチなことを想像しているであろうことはバレバレなのに。やらしいっ! そういう態度でいたら今度はこのトンガリマユゲ,まるで本当にあたしのことを殴りたくなったかのような態度を照れ隠しで演じつつこっちに迫ってきた。これはちょっとやりすぎだと思ったので,カカカカカカカカと1秒間に8回歯を打ち鳴らしながらいさめたら,ブッチはまるで気持ちの悪いものを見るかのような視線を装いながら離れていったわ。ほんっと男の子っていつまで経っても子供みたいなんだから。よくないゾっ! カチカチッ。

 

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 「G.O.A.T.」は読み上げられる10の質問に対して答えることで,その人のVault101において向いている仕事が分かるというものだ。質問には以下のようなものがある。

 

●男の子がVaultの下層で迷子になっているのを見つけた。彼はおびえ,お腹をすかせているが,どうやら何か人から盗んだ物を隠し持っているようだ。どうする?

 

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  • 男の子を抱きしめて,「何も心配しなくていいよ」と言う。
  • 盗んだ物を取り上げて,男の子は罰としてそこに置き去りにする。
  • 盗んだ物をスリ盗って,男の子はそこに置き去りにする。
  • 男の子を安全なところまで連れて行き,Vault管理者に引き渡す。

 

●おばあちゃんにお茶に呼ばれたので行ってみたところ,ピストルを渡されて「住民の一人を殺してきておくれ」と頼まれた。どうする?

 

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  • お年寄りの言いつけに従って,住民をピストルで殺す。
  • 交換条件としてご褒美をねだる。
  • ミスしないようにピストルではなくミニガンがほしいという。
  • おばあちゃんの顔にお茶を投げつける。

 

●アベーマシーさんがまた自分の部屋に閉じ込められてしまった。彼を救助するために,あなたはどうする?

 

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  • ヘアピンを使ってドアの鍵を開ける。
  • 取引で爆発物を手に入れてドアを吹き飛ばす。
  • 武器庫に行ってレーザーピストルを持ってきて,それで開ける。
  • 立ち去って,バカなジジイは腐るにまかせる。

 

 いずれも現在を生きる我々から見れば,どこか少し狂ったようなところを持った質問だ。画面ではこれらにコミカルな挿し絵がつけられるため,おかしな印象はさらに増す。このどこか奇妙な感覚はゲームの至るところにちりばめられており,プレイヤーは冒険を通じて,本作ならではの“奇妙な未来”を実感していけるような仕組みになっている。

 

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 さて――ここでみなさんに恥ずかしいお知らせをしなければなりません。
 当初の計画では連載第1回はこの判定によってBlack Widowの能力がないことが分かって,キレた主人公が「チクショウ! フ○ック!」的な終わり方でまとめようと考えていたのだが,確認のためにプレイし直してみたところ,G.O.A.T.の結果によって決定するのはSkillsのみであり,Peaksはぜんぜん関係ないことが分かったのだが,オレはゼッテーあやまんねーぞ! これはこれでオチとして扱えばいいじゃねーか! ついでに,ちょっとオチャメなオレの性格も強調できていいじゃねーか!
 大丈夫――何も問題はない。
 相変わらずオレは完璧だ。

 

 

※追記

 実際にG.O.A.T.で決まるものは“三つの得意なスキル”だ。本作には13のスキルが存在し,プレイヤーはゲーム最序盤,このうち三つにボーナスを付加できる。その三つが設問に対する答え方で自動的に決定されるというわけだ。
 ただ実際には,このあとにスキルだけでなく容姿や能力値も含めて全部まとめて変更する機会が用意されているので,G.O.A.T.の段階で神経質になる必要はなく,ここは遊びのつもりで進めてしまってもまったくかまわない。ちなみにPerksのほうはレベルアップのたびに一つずつ取得するもので,初回の選択を行うのはプレイヤーレベルが1から2に上昇したタイミングである。

 

 

 Fallout 3ではどんな能力のキャラクターでもプレイを進められるようになっているが,“初回のプレイであればこれはぜひ抑えておきたい”というポイントも確かに存在する。
 S.P.E.C.I.A.L.(能力値)ではStrengthが重要だ。なぜならこの値でプレイヤーキャラクターが持ち運べる荷物の量が決定するからだ。この値が標準以下だと過般重量はかなり限定され,冒険に出掛けた先から換金目当てのアーマーや武器をほとんど持ち帰れなくなる。そうなると金も貯まりにくく,厳しいプレイを強いられることになる。
 Skills(スキル)で強くおすすめしたいのはRepairである。Fallout 3のリペアは,同じ種類のアイテム同士を組み合わせることで修理するスキルだ。例えば耐久度が30%程度まで下がったピストルと40%まで下がったピストルを組み合わせて,耐久度60%の1丁のピストルにする,といった使い方。これが使えると,まず自分の武器のコンディションを高い水準で保つことが可能になり,そうすると,与えるダメージもアップする。またリペアはいつでもどこでも可能であり,冒険中に二つのオブジェクトを一つに減らせるので,上述の重量問題の緩和にも貢献する。個数は減るが武器や防具は耐久度が上がればそれなりに売却価格も上がるので,あまり損をしたようには感じない。
 つまりリペアが使えれば,より長い時間冒険することが可能になり,さらに出掛けた先からより価値の高いアイテムを持ち帰ることができるのだ。とくに序盤から中盤では,これがあるとないとではプレイ内容にだいぶ差がつくはずなので,初回のプレイでは早いうちから伸ばしておきたいスキルだ。

 

 

■■星原ミッシェル昭典(ライター)■■
本日から始まった「Fallout 3」の週刊連載。どうしたわけだが,いつも以上に気合の入ったライターの星原氏に,編集部としても「行かせるべきか,行かせないべきか」と悩んだが,まあ面白そうだから思いっきりやってもらうことにしたのである。荒野に咲いた一輪の花,主人公を待ち受けるこれからの展開をぜひ楽しみにしていただきたい。
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