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[GC 2007#010]アイテム課金制vs.会員制。SOEの社長John Smedly氏が語る,MMOビジネスモデルの今後
「Subscriptions vs. Micro-Transactions The Evolving Business Model of MMO Games」と題された講演で,SOEが採用してきたビジネスモデルを振り返り,今後のMMOのビジネスモデルはどうなっていくのか,その展望を語るというものだ。
講演は,MMOのビジネスモデルには一定期間分の会費を払う会員制(Subscriptions)と,基本プレイ料金は無料でアイテムを販売する,いわゆるアイテム課金制(Micro-Transactions)の二つがあるという,現状の説明から始まった。アイテム課金制を採用するタイトルが徐々に増えてきており,会員制のモデルを採用したMMOは死に絶えるのではないかという話を,Smedly氏自身,聞くことが多いという。
だが,1999年にサービスインした「EverQuest」は会員制モデルを採用しながらも,2007年11月には14作目となる拡張パック「EverQuest: Secrets of Faydwer」の発売を控えていることを考慮すると,会員制というモデルがなくなってしまうことはないだろうと述べた。
とはいえ,SOEが2005年にスタートしたRMTシステム「Station Exchange」では,2005年6月から2006年6月までの間に187万ドルを売り上げたという。このことから,同社は収益の75%を会費から得ている現状を見直す必要があると考えており,2008年頃にはその比率を50%ぐらいにまで落とすことを目指して取り組み始めたそうだ。
本作でプレイヤーが行うのは,自分のキャラクターを操作し,ほのぼのとした世界を歩き回ったり,そこで出会ったほかのプレイヤーキャラクターと共にさまざまなアクティビティに参加したりすること。用意されているアクティビティについての具体的な説明はなかったが,例えば「ミニゲーム専用の画面」といったものに切り替わることはなく,自分のキャラクターを使ってシームレスに参加できるそうだ。
プレイ料金は無料だが,ゲーム内に表示される広告から得た収益で運営していくとのこと。また,毎月数ドル程度を支払い,ゲーム内に広告を表示させないようにするオプションも用意される。
主に低年齢層をターゲットとし,ゲーム雑誌などには広告を出さず,子供向けのアニメーション番組内でCMを流すなどのプロモーションを展開する予定だ。
Smedly氏は,今後数年のうちに,会員制モデルのMMOは確実に減っていくと考えているという。だが,SOEがFree Realmsのサービスを計画したように,このことはオンラインゲーム運営会社にとって一つのチャンスだと述べるとともに,今後新しいコンセプトを持つタイトルが登場するだろうと予測していた。
また,「アイテム課金制vs.会員制」という本講演のテーマについては,結論としてどちらがより優れているということはなく,ゲームの内容や,サービス開始時のマーケットの状況などを考慮して選択すべきだと述べていた。ただし,サービス開始後にビジネスモデルを切り替えることは,プレイヤーが離れていくきっかけとなりやすいので,避けたほうがよいとのことだ。
8月21日に行われたパネルディスカッション「Life After WoW: MMO Games of 2008 and Beyond」(関連記事)に参加した開発者達は総じて,会員制モデルを好んでいることをうかがわせる発言をしていたが,今回の講演でSmedly氏が述べた言葉からは,そのような考え方は伝わってこなかった。
講演終了後の質疑応答でも,「会員制のほうが売り上げを予測しやすいので,経営者として望ましいのでは?」との質問に対し,「アイテム課金制でも過去のデータに基づけば売り上げ予測は可能であり,問題ない」と答えていたほか,「アイテム課金制はゲームバランスを崩すのでは?」という問いには,「初めからビジネスモデルに合わせてゲームを設計すれば問題ない」と回答していた。
講演のタイトルから,どちらのビジネスモデルがよいかをズバリと結論づけてくれることに期待したが,終わってみると型どおりの結論が導き出された感じで,やや残念ではある。
ともあれ,これまで基本的に会員制モデル一辺倒であったSOEが,新たなビジネスモデルを引っさげて送り出すFree Realmsに注目していきたい。(noguchi)
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