AMDブースで展示されていたAMD 790Xのリファレンスマザーボード。PCI Express x16スロットが4本ある点に注目
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COMPUTEX TAIPEI 2007の会場では,AMDの未発表チップセットで,開発コードネーム「RD790」こと,「AMD 790X」を搭載したマザーボードが複数のベンダーから公開された。グラフィックス機能を統合していないデスクトップ向けのチップセットで,当然のことながらCrossFireをサポート。それどころか,
PCI Express x16スロットを4本持ち,「Quad CrossFire対応」を謳うところすらあり,グラフィックスパフォーマンスを気にするゲーマーとしては,見逃すわけにはいかないところだ。
AMD 790Xチップセットに関しては,会場取材をもう少し進めてからあらためてまとめてみたいと思うが,ざっくり説明すると,主に以下に挙げる二つの特徴を持つチップセットだ。
- AMDの次世代CPU「Phenom」とHyperTransport 3.0をサポート
- PCI Express Gen2対応
さて,AMD 790Xのポイントは,Phenomよりはむしろ後者のPCI Express Gen2サポートにある。これまたおおざっぱな説明で恐縮だが,文字(Gen2)どおり第2世代のPCI Express Gen2では,帯域幅がこれまでの2.5GT/s(GT:Giga Transfer)と比べ,2倍の5GT/sへと拡張される。同時に,PCI Express Gen2は,既存のPCI Express(Gen1)と互換性がある。
各社への取材で明らかになったところによると,AMD 790Xのレーン構成はx16 ×2,x1 ×6(と,サウスブリッジとの接続に用いるx4 ×1)だが,これはもちろんPCI Express Gen2。つまり,x16 ×2を四つのx8に分割すれば,少々強引ではあるものの,PCI Express Gen1相当のx16 ×4という構成を簡単に実現できてしまうのである。どうやら各社のQuad CrossFire対応は,こういうカラクリ――というか,仕様なのだが――で実現されているようだ。
以下,Hall 2で見つけたGIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GBT),ASUSTeK Computer(以下,ASUSTeK),MSI計3社のAMD 790X搭載マザーボードを,筆者が取材した順に紹介してみたい。
■4連のPCIe x16スロットを装備する
■GBT「GA-M790-DQ6」
GA-M790-DQ6
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GBTのAMD関連マザーボード担当プロダクトマネージャーのJenny Lee氏いわく「2007年第4四半期のリリース」とされるのが,「GA-M790-DQ6」だ。なんといっても特徴は4連のPCI Express x16スロットで,これは青いスロット2本で利用しているときはPCI Express Gen2仕様の16レーン×2,オレンジのスロットも利用すると同8レーン×4という接続になるようだ。
スロットが4連なので,Quad CrossFireを利用するには,1スロット仕様のグラフィックスカードでなければならないが,マザーボード自体は(GPUクーラーが2スロット仕様の)「ATI Radeon HD 2900 XT」のQuad CrossFireも可能とのこと。「ATI Radeon HD 2600 XT」を搭載する同社製グラフィックスカードの新製品「GV-RX26T256H」を
4枚差しした状態での展示も行われていたが,「Quad CrossFireがいつサポートされるかは分からない。どのようにNative CrossFireケーブルを接続するかも現時点では聞いていない」(Lee氏)とのことだった。
左:4連のPCI Express x16スロット。シルク印刷を素直に受け取ると,青色スロットは常に16レーンで利用できそうだが,AMD 790Xの仕様からして,それはありえないはず
中央:最近発表された「Intel P35 Express」搭載ボードと比べると,冷却機構「Silent Pipe」が小さいが,これは次世代版で,冷却能力は変わらないという
右:ファンレスのATI Radeon HD 2600 XTカードを差した非動作の展示。現時点ではもちろん,Quad CrossFireは動作しない
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■“メモリモジュールを冷やすヒートパイプ”を
■搭載するASUSTeK「M2A32-MVP Deluxe」
M2A32-MVP Deluxe
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ASUSTeKの「M2A32-MVP Deluxe」は,独自の道を行く製品と紹介するのが正しそうである。まずPCI Express x16スロットは2スロットのみで,潔く(?)Quad CrossFire非対応。その代わりといってはなんだが,ヒートパイプをメモリモジュール部にまで延ばした「ASUS Cool Mempipe」を搭載している。
ASUS Cool Mempipeは,
メモリモジュールの熱をヒートパイプで別の場所へ送る仕組みで,ネジ留めする仕様のため,ヒートスプレッダのあるなしに関わらず取り付けられる銅板でメモリモジュールを挟み込むと,その熱は電源部のヒートスプレッダへ運ばれ,CPUクーラーのエアフローで効率的に冷却できるという。
2007年5月25に「R.O.G.」シリーズの新作を日本で公開したASUSTeKのDerek Yu氏によれば,同製品は2007年7月下旬の発売を目指しているとのこと。
ところで,せっかくYu氏と話をするチャンスが得られたので,AMD 790XベースのR.O.G.シリーズ新作について聞いてみたところ,「CPU(※Phenomのこと)もないので,全体のパフォーマンスを評価できる状態ではない。R.O.G.シリーズで投入するかどうかは,これから検討することになる」という。Quad CrossFireも含めて,結論が出るにはまだ時間がかかりそうだ。
左,中央:「これまでのヒートパイプソリューションでは,メモリモジュールを冷却できていなかった,そこでASUS Cool Mempipeだ」というデモムービーから
右:実機デモが公開されており,確かに登場はそれほど先ではなさそうなことが窺えた。なお,その仕様上,ASUS Cool Mempipeが冷却できるメモリモジュールは2枚だけとなる
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■リファレンスデザイン似のボードに
■CIRCU-PIPEを搭載したMSI「K9A2 Platinum」
K9A2 Platinum
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MSIが展示していたAMD 790Xボードは「K9A2 Platinum」だ。残念ながら初日の取材時には詳細を知るプロダクトマネージャークラスの人が捉まらなかったのだが,チャネルセールス担当のEliane Yang氏によると,同製品は2007年11月ごろのリリースを予定しているという。
PCI Express x16スロットが“1本飛ばし”でレイアウトされたデザインはリファレンスデザインに近いが,独自のヒートパイプ式冷却機構「CIRCU-PIPE」を採用することで,MSIらしさが強調されている。なお,MSIの説明によると
「4本のPCI Express x16スロットはすべてフルスペックのx16で動作する」とのことだったが,これは前述のとおり,「Gen1相当では」という意味だろう。
以上,発売予定時期がASUSTeKだけやたらと早いのは気になったものの,いずれもなかなか興味深い製品といえる。Quad CrossFireがサポートされたり,そのパフォーマンスが期待どおりだったりすると,さらに面白くなりそうで,AMD 790Xというチップセットの名前は,Quad CrossFireとセットで憶えておくといいかもしれない。(佐々山薫郁)