連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第218回「これ,メタルギアか?」
最近,毎週のように試合があって,まるでプロレスラーのような生活をしているわけだけれども。……ええ,ウィットに富んだ小粋なジョークですよ? 私,プロレスラーです。ただし私にとっての“プロレスラー”は,鍛え上げられた肉体を持つ選ばれし者だけがなれる職業なんで,自分的にプロレスラーである自覚はあまりないんだけど。でもまあ,そんな個人的な細かい理由を周りの人に押し付けるのも面倒くさいんで,便宜上“ゲイのプロレスラー”を名乗ってるという次第であります。
ちなみに,さっきの話の面白ポイントは自分がプロレスラーであるのに,あたかもプロレスラーではないかのようなセリフ回しをした点にあるわ。
例えるなら,曙選手に初めて会った時に挨拶したら「どうも! 貴乃花です」って言われたような感じね。実はこのエピソード,私のものではなく同僚のゲイレスラーである大石真翔選手が体験した実話なの。
緊張しながら曙選手に話しかけたら,いきなりこんなハワイアンジョークをブッ込まれたんで,度肝を抜かれて何もツッコめなかったらしいわ。たぶんここでの返しは「ちゃんこダイニングは順調ですか?」が,正解だったんでしょうね。「それ,お兄ちゃんやないか!」を引き出せば,この戦いに勝利したことになるわけだから。
つまりプロレスはね,控室から戦いが始まっているのよ。大御所はボケたがる人が多くて,後輩はついついツッコんでしまうんだけど,それはもう接待でしかないわ。皆にも経験ない? 上司や先輩がどうでもいいボケをかましてきて,無視するのもなんだから,面白くもなんともないと自覚しつつも普通のツッコミで返さざるを得ないってこと。その時の屈服感たるや。あ,でも,曙選手に「貴乃花です」って自己紹介されたら,それはさすがに面白いけどな。
何が言いたいかというと,ボケてきた人をツッコませることで,本当の意味での心の会話が成立する,と。男の世界とはそういうものだ,と。これが言いたかったの。
でまあ,このようにリング上以外でも果てしない戦いが繰り広げられているプロレス界に私はいるのね。で,ゲイム好きでもありゲイのレスラーでもあるこの私が,プロレスラーの視点からゲイムを紹介するのがこの連載なの。
そしてこの連載を始めて,もうけっこうな年月が経つんだけども,連載開始当初は「ゲイムファンの中から,ちょっとでも多くの人にプロレスを知ってもらおう!」と意気込んでいた部分があるのは否定しないわ。もちろん今でもその気持ちがゼロになったわけではないんだけど。でも,前ほど「ゲイム好きをプロレスに引きこむ!」っていう熱いパッションは無くなっているの。
なぜなら,気付いてしまったから。そう,プロレスは確かに面白いけど,ゲイムだって面白いってことに。……気付いたっていうか,再確認したというのが,正確な表現かしら。
そして,この連載は主にゲイムを好きな人が読むものだと思うの。だから,無理やりプロレスをすすめたって仕方が無い。こういうのって,言葉を重ねれば重ねるほど嘘臭くなるしね。自然と興味を持ってくれればそれでいいわ。元々,どちらが上ってことはないんだしね。両方面白い。面白いってことが,何より大切なの。
「これ,メタルギアか?」っていう部分が,気になる人もいると思うの。確かにね,メタルギアシリーズについて持っているイメージと,MGRはずいぶん離れているわ。とくに,ステルスアクションこそがメタルギアだと思っている人ほど,その傾向は強くなると思う。
MGRはとにかく,バッサバッサと斬り進んでいくことの気持ち良さに力が入れられている……つまり,メタルギアシリーズ特有の潜伏する緊張感よりも,切り刻んでいく壮快感を大事にしている感じ。
ニンジャキルっていうステルスプレイっぽいアクションも用意されてるんだけど,失敗して敵に見つかったらバッサバッサと斬っちゃえばいいわけだから,やっぱりあの緊張感とは別物だと思うわけ。……まあ私はEASYモードで,しかも防御に該当する「シノギ」もイージーアシストさんにお願いしてるんだけどな。
でね,実は私って,メタルギアシリーズに対してそれほど思い入れを持っているタイプじゃないの。だから,MGRはメタルギアシリーズの作品だからこうだろう! とか,こうあるべき! みたいな先入観抜きでプレイできたんだけど……。
そんな私なのに,やっぱり「これ,メタルギアか?」とツッコミたくはなった。私ですら思うんだから,メタルギアシリーズのファンならば,なおさらそう感じるかもしれない。
ただね,同時に私,思ったの。「面白い」って。
でも,こういうらしさっていうのは,面白く感じさせるための手段であって,目的じゃないの。極端なことを言えば,何から何までシリーズらしく作って,結果的に面白さが損なわれるよりは,シリーズを逸脱しても面白いほうがいい。そういう観点では,このMGRは抜群に壮快だし,抜群に面白い。モノをめった斬りにするスッキリ感が生む楽しさは,このゲイム以外では味わえないんじゃないかと。
MGRがメタルギアシリーズにふさわしいかどうか? そんなもん知らん。でも,MGRは面白いかどうか? の論点でいけば,めちゃくちゃ面白い。
だからさっきの話に戻ると,プロレスとゲイムのどっちが面白いのかなんて,実はどうでもいいことで,面白いコンテンツはこの世にいっぱいありますよってことが伝えられれば,私としてはそれでいい。なので,従来のメタルギアシリーズは面白いし,MGRも面白い。それで十分。オススメです。
ついでに,アクションゲイムはちょっと苦手で……という人にも,このMGRなら,そんなこと関係ないよ! と言っておくわ。このゲイムの楽しさは,さっきも書いたけどモノをめった斬りにする壮快感からきているの。料理で,食材をみじん切りにすることに悦楽を感じることができる人ならば,絶対に楽しめるわよ。そういう,直感的で本能的な楽しさ。ホントおススメ。
結局,好きかどうかなのよ,趣味なんて。そこに上下はないわ。ただ,肝に銘じておかないといけないのは,「自分が好きではない娯楽=劣っているもの」ではないってこと。自分とその周り以外は敵として見るような生き方って,窮屈じゃない。
冷静になって考えてみて。世の中に人は多いけど,敵なんてそんなにいないわ。電車に乗ったときも,その車両にハッキリと分かる敵はいないでしょ? 人生そんなもん。公共のルールを守ってさえいれば,敵なんてそんなに出てくるもんじゃないわよ。
だから,自分のルールにないものでも相手を即座に否定するのではなく,一度好きになる努力をしてみてはいかがかしら。ゲイムもプロレスも,ソリッドもライジングも,世の中は面白いもので満ち溢れているわ。だから,人生やめられない。そうやって今週もずっと楽しく過ぎていく。
というわけで,また来週。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「メタルギア ライジング リベンジェンス」
PlayStation Vita:「限界凸騎 モンスターモンピース」
PSP:「グラス ハート プリンセス」
Wii U:「ZombiU(ゾンビ U)」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち」
Xbox 360:「トロピコ4 日本語版」
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メタルギア ライジング リベンジェンス
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