連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第432回「“内輪受け”の向こう側へ」
エンターテイメントにおいて,この内輪受けって非常に厄介な存在なのですね。
先に言っておくと,私は悪いことのように使われがちな“内輪受け”であっても,それ自体は悪ではないと思っているの。なぜなら,ある意味では世界で一番面白いのが内輪受けだから。一般的には知られてないけど,自分は知っているからこそ面白く感じるってのが内輪受けで,自分が楽しい分にはそれで構わないと思う。
問題は発信する側。内輪受けというのは文字どおり輪の内側に向けた面白みだから,輪の外への広がりがない。娯楽としてはともかく,産業としてのエンターテイメントは新規層を広げていかないと結果的に衰退してしまうという持論は,しばしばこの連載で語ってきているけど,結局はそのエンターテイメントがどうありたいかなのよね。
言ってしまえば,すでに興味がある人を楽しませるのは守備力。で,知らない人を楽しませるのが攻撃力。両方高いに越したことはないでしょ。生き残るには守備力が必要だけど,多くのものを得るには攻撃力が必要。私はそういうイメージでエンターテイメント産業を捉えているのね。
ただ,現実はなかなかそうはいかない。あとは,目的にもよるわね。例えばファンを相手にするイベントの場合は高い守備力(=目の肥えた人を喜ばせるような濃いモノ)が求められるし,自分のことなんて誰も知らない状況のイベントであれば攻撃力(=興味を持たせるためのインパクト)が高いに越したことはない。
まあ,平たく言えばケースバイケースなんだけども,何が言いたいかというと,もちろん攻撃も守備も両方強い方がいいけど,現実はなかなか難しいから,だったらそのときどきで使い分けられたらいいよねって話なのです。内輪受けでいいときもあれば,そうでないときもある。
で,それを記念して,これまで新作を待ち焦がれていた人達によるイベントが,昨日(5月31日)LOFT9 Shibuyaで行われたのです。このイベントに関しては,冒頭の表現にのっとるとするならば,もうはぐれメタル級に守備力が高い,マニアに向けたイベントだったわ。
出演したプロレスラーのメンバーは私(40),私が所属するDDTプロレスの現チャンピオン竹下幸之介(22),同じくDDTプロレスの彰人(30),DDT系列プロレスリングBASARAのトランザム★ヒロシ(29),そしてDDT系列の東京女子プロレスにも出場しているアイドル兼プロレスラーの伊藤麻希(21)。
伊藤麻希が一切ファイプロをプレイしたことのない立ち位置で,分からないことを素直に聞くという形で初心者に配慮した感じはちょっとだけ出したものの,基本的にはファイプロが好きすぎるメンバーで進められた特濃の3時間弱だったわ。
イベント自体は2部制で行われたんだけど,今度発売される「FIRE PRO WRESTLING WORLDS」(PC / PlayStation 4)にがっつり触れた第2部に関しては,後日掲載予定のレポート記事をお楽しみに。で,ここでは過去作を振り返ってどれだけファイプロを愛しているか各出演者が競い合った第1部をメインにお届けし,いかに濃いイベントだったかを伝えようと思うわ。
とは言ってもファイプロが好きな人達のイベントだから,説明するのが難しいのよね。「エディット時,DDTを方向キーのどれに割り当てるかで激論を交わした」って言っても,意味分かんないでしょ? 「作り手側は気を使って『カイザーボム』から『シットダウンボム』に技の名前を変えたけど,今作は技の名前もエディットできるのでファイプロ好きなら『カイザーボム』に変えてしまうのではないか」って言われてもピンとこないでしょ? 「自分が作った団体のエースはスカイマンというマスクマンだけど,前座のコミカルな試合は影の実力者つくねマスクがやっていた」ってコメントに対しても,何を言ってるかいっさい分からないでしょ? 「今後のファイプロに求めることはコルベット★マサシの細かい所作」って聞いても,そもそも何だよコルベット★マサシって……としか思えないでしょ? 「試合でイヤなことがあったら夜な夜なファイプロで二丁目ビーノをボコっていた」って話も,けっこう根が暗いのね……という感想を持っちゃうでしょ? そういうイベントだったんですよ。
とにかく! ここに列挙したセリフが,全部観客に刺さっていくというイベントだったの。だから,ファイプロに興味がない人が参加したとしても,意味が分からなかったと思うのよね。まあ,出演者が楽しそうに語っていたから,そういう微笑ましさはあったかもしれないけど。
ハッキリ言うと,内輪受けです。ファイプロという輪の中にいる人しか楽しめない,でもその内輪の人は限りなく楽しい。そういうイベントだったと私は思っていて。ただ,これはこれで成功なのよね。なぜなら,ファイプロを楽しみにしている人が集まったイベントだったから。興味はもうすでに持っているの。だから,ここでは初心者向けの導入は必要なくて。久しぶりのファイプロが,ちゃんとファンの期待に応えてくれるものなのか。いわゆるコアなファンの不安を取り除いて楽しみにさせることができるのか。そういう開催意図のイベントだったから,内輪受けでいいの。
そういう意味では今回のイベントは大成功だったしね。ただ,ここからは逆に我々コアなファンの使命なんだけど,初心者に紹介するときのテンションはこれじゃいけないんだろうな,とも思うのよね。紹介するときは,内輪受け感をなるべく減らさなきゃいけない。そうしないとファイプロの輪を広げることはできないし,つまりは次回作がまた遠のいてしまうから。
新規でプレイする人,もしくは昔プレイしてた人のカムバックをうながさないといけない。そのために,客観的に面白さを伝えなきゃいけないと私は思っていて。それこそ,使い分けよね。だから,私が今回のファイプロに求めるのは,ファイプロとしての変わらぬ面白さに加えて,“プレイしていて普通に面白い”っていう部分よね。プロレスゲイムとして面白い,格闘ゲイムとして面白い,のほかに,“ゲイムとして面白い”。この部分をクローズアップできることを求めたいわ。欲を言えば,毎年プレイしたいからね。
で,私がそうだったように,ファイプロが面白いから実際のプロレスも好きになったって人が増えてほしい。プロレスってね,面白いんですよ。で,ファイプロも面白いんです。両方知っていたら,もっと面白い。人生のこの楽しさをより多くの人に味わってほしいのよね。できることなら,昨日のイベントでの内輪受けの楽しさを,より多くの人と共有したい。ホラ,人生楽しいほうがいいじゃないですか。私が知っている楽しいことの一つなんでね,ぜひおすそ分けしたいのです。
そんな感じで,ひとまずはファイプロの発売を楽しみに,それまでの時間もワクワクしながら過ごそうと思います。逆説的に言うと,ファイプロに限らず,自分が好きなことに関するイベントはなるべく参加したほうがいいよ! その場だけでなく,それまでの時間だったりそれからの時間だったりも楽しくなるから。
人生,楽しんだほうがいいに決まってる。そのために,内輪受けとそうでないノリと,そこを使い分けていかなきゃいけないな,という再確認をしたイベントでしたとさ。今週はそんなところで。また来週!
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「How to Survive:ゾンビアイランド2」
PlayStation Vita:「追放選挙」
Nintendo Switch:「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」
ニンテンドー3DS:「ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王」
iOS:「実況パワフルサッカー」
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ファイヤープロレスリング ワールド
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