連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第433回「世の中,うまくいかない」
前向きな人は「トライアンドエラー」「失敗から成功を」と思えるんだろう。でも,世の中そんなポジティブな人ばかりではない。失敗をずっと引きずる人もいるし,そもそも失敗したくないから挑戦しない人だっている。私は,そういう人が悪いとは思っていない。なぜなら,私がそういう部分を多く持っている人間だからだ。
そりゃね,挑戦するほうがいいっていうのは分かっている。でも,失敗したら怒られる。怒られるのがイヤなんだ。なるべく平和に生きていきたい。……なんで? なんで怒られるのがイヤなんだろう。たぶん,思い知ってしまうからだ。自分に才能がないってことを。自分ができないヤツだってことを。
……あれ? おかしいぞ。自分ができないヤツだと思われたくないってことは,じゃあ逆に自分で自分ができるヤツだと思っているのか? ……そうなのかもしれない。誰も認めてくれないから,せめて自分だけは自分の才能を信じているのかもしれない。
だから,失敗して自分をがっかりさせることだけは避けねばならない。ミスしたくない。ミスするくらいなら,挑戦しない。挑戦しないってことは,人を出し抜くような結果を出せないってことだから,誰からも認められることはない。自分が思う成功はしなくても,自分を守ることができればそれでいい。
挑戦はしない。……それでも,成功者をうらやむ気持ちはある。運が良ければ成功者と同じように自分も成功しているはずだと思っている。なぜなら,信じているからだ。実は才能がある,と。それを信じているのは自分だけだけど。
今,世の中は失敗を許さない。失敗すると,みんなから袋叩きにされる。だから自主規制という盾が強く働く。怒られたくないから。そして,自主規制の盾で自らを守ったコンテンツは「昔に比べて面白くない」と攻撃される。モノを作る人は,一体どうしたらいいのだろう。
とはいえ,「今がそういう時代だ」というだけで,私は別にこの現状がイヤなモノだとは思ってはいない。みんなが自分が傷つかないように周りをうかがっている。怒らないし,怒られない。だから,傷つきにくい。それはそれでそれなりにいい世の中だ。悪くはない。
でも,世の中うまくはいかない。それは,挑戦していないから。怒られていないから。
これ,最近流行のいわゆる“死にゲイ”ってやつ。プレイしていると,とにかく死ぬわ。で,繰り返し死んで,主人公キャラがってよりもプレイヤー自身が攻略法を覚えていくって感じの2Dアクションゲイムなの。
ここだけ聞くと,死ぬのがそもそもイヤな人には向いてないゲイムってことになるわよね。実際その面は否定できないわ。ただ,私も比較的ゲイムでは現実の憂さを晴らす方向でプレイしたいほうだから,このタイトルは向いていないと思っていたのよ。
でも,最近ハック&スラッシュ的なゲイムが好きだから,このゲイムもそうかなーって思ってプレイしてみたの。そしたら,ハクスラってよりはちゃんとした横スクロールアクションRPGだったわ。
武器は頻繁にドロップする感じではないけれども,その分レベルアップすることで強くなっていく感じ。とはいえ,アイテムの種類自体は600種類以上あるし,スキルの覚え方や職業で遊び方の幅がやたらと広い。簡単に言うと,できることなら死にたくない私でも面白く感じたわ。
これは,死ぬことでやる気が失せない作り方をしているからだと思うの。死んで当たり前。言い方がアレだけど,死がカジュアルなのよ。だから失敗を重ねられる。死にゲイってことで,最初っから自分が特別だと思っていないのね。
例えば死にゲイじゃないゲイムだと,「失敗しないことがすごいこと」のように扱われるじゃない。でも,このゲイムだとそうではない。「失敗? そんな当たり前のこと,大したことじゃないよ」って言ってくれているわけよ。“死にゲイ”って響きだけを聞くとストイックな印象を受けるけど,実はほかのゲイムよりも優しさに満ちているのよね。
ま,逆に言うと「才能なんてあろうがなかろうが関係ないよ。クリアできたら,それは根気という才能があったってだけで」って話でもあるんだけど。これってけっこう芯を食ったメッセージで,いくら才能があろうがなかろうが,もっと言うと努力しようがしまいが,結果の前には関係ないのよね。
例えば,私はよく「同性愛ネタでプロレスをするなんて」って種類の怒られ方をするわ。確かに結果として面白く見ることができない人もいるでしょう。その人にはごめんなさい。その人には見ないという選択肢を選んでもらったほうがいい。
ただ,私のやったことの結果でなく,方法に対して面白くないということであれば,それもまた申し訳ないけど変えることはできないの。それは,あくまで叩く人の好みの話だから。ただでさえトリッキーな出し物なのに,嫌いな人に合わせていたのではキリがない。それが,会場をドン引きさせたのであれば叩かれても仕方がないし,受け止めるべきだと思う。
でも,盛り上がったならば叩かれたとしても本質的には気にする必要はないと思っているわ。人それぞれ感性が異なる以上,全員を面白いと思わせることはできないから。向けるはより多くの人に。楽しませるために必要な要素であれば,“頻繁に死ぬ”ってことも使えばいい。そしてその先に何を用意するかまでを考えて丁寧に提供する。こういった部分をこのゲイムから学んだわ。いや,食わず嫌いは良くないわね。あらためてそう思ったわ。
世の中,うまくいかない。けど,うまくいってばかりの世の中が今ほど楽しいだろうか。怒られたくなくて,なるべく怒られないような生き方をしている。でも,それでもやっぱりちょっとは怒られる。うまくいく世の中って,誰からもちっとも怒られなくなる世の中のことだ。誰も怒ってくれない。これは,とても孤独である。
怒られるのはイヤだけど,怒ってくれない世の中はいつかきっともっとイヤになる。それでも,もう少し思い通りになっていいんじゃない? とも思わないでもないけども。でも。うまくいかない世の中も,そこまで悪くない。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「ソルト アンド サンクチュアリ」
PlayStation Vita:「追放選挙」
Nintendo Switch:「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」
ニンテンドー3DS:「ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王」
iOS:「実況パワフルサッカー」
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ソルト アンド サンクチュアリ
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Salt and Sanctuary (C)2016 Ska Studios
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