連載
インディーズゲームの小部屋:Room#317「Octodad: Dadliest Catch」
幻影帝国に襲われるまでもなくハピネスが悲しくなるほど不足している筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第317回は,Young Horsesの「Octodad: Dadliest Catch」を紹介する。本作は,タコのお父さんを操作して,コーヒーを入れたり,庭の手入れをしたり,買い物に出かけたりといったタスクをこなしていくアドベンチャーゲームだ。誰か筆者にもハピネスを注入してください……。
本作の主人公であるお父さんは,ちょっぴり奥さんの尻に敷かれているものの,可愛い2人の子供と一家4人で幸せに暮らしている。広い庭付きの一戸建てに,マイカーまで持っている,人生の勝ち組だ。ところがこの一家,奥さんと2人の子供は人間だが,お父さんはタコである。タコのような坊主頭という意味ではない。正真正銘の軟体動物であり,人間の言葉は話せないが,スーツを着て2本足で歩いている。自分でも何を言ってるのか分からないが,事実そうなので納得してほしい。
しかし,いくら人間のように振る舞おうとしても所詮はタコなのでまっすぐ歩くことができず,何かをしようとするたびに手足がグニャグニャと予想外の動きを見せて,周囲のものをしっちゃかめっちゃかにしてしまう。そんなお父さんを操作して,いかにスマートに仕事をこなしていくかが腕の見せどころ……ではあるのだが,お父さんがまき散らすカオスっぷりを笑いながら楽しむのも,本作の正しい遊び方だ。
ゲームは,お父さんと奥さんの結婚式のシーンから始まる。ウェディングドレスに身を包んだ奥さんがチャペルで一人,お父さんの登場を待っていた頃,お父さんはまだ着替えもせずに,毛なんか1本も生えていない頭に念入りにヘアスプレーを振りかけていた。そこへ,式場の人が催促に現れてからがいよいよ本番。タキシードに着替え,蝶ネクタイを付けて,奥さんが待つチャペルに向かうのだ。
お父さんの操作方法はちょっと変わっており,2本の足を自分で操作して歩く“移動モード”と,腕だけを動かせる“上半身モード”の2つを切り替えながら,与えられたタスクを達成していく。移動モードでは,マウスの右ボタンをドラッグして右足を前に出し,しかるのちに左ボタンをドラッグして左足を前に……といった具合に,交互に足を動かしてやる必要がある。もうすでに予想がついていると思うが,これがまったくもって思いどおりにはいかず,まっすぐ歩くのはほぼ不可能と言ってもいい。だってタコだもん!
移動モードと上半身モードの切り替えはSpaceバー(もしくはマウスホイールのクリック)で行い,上半身モードのときは移動できない代わりにマウスで腕を操作できる。腕のほうも足と同様,実にフニャフニャとして意のままにならず,もどかしいったらありゃしない。一事が万事この調子なので,ちょっと手足を動かしただけで当然のようにそこらじゅうのモノにぶつかり,手足が絡まり,お父さんの行く先は常に混乱の渦に巻き込まれてしまうのだ。ダメだこのタコ,早く何とかしないと……。
見るからにあやしい,このタコ人間に不審な眼差しを向けているのはゲーム内の住人も同様のようで,お父さんがグニャグニャヨロヨロと動いて粗相をやらかすたびに,画面下にある“視線ゲージ”が上昇していき,ゲージがいっぱいになってしまうとミッション失敗。お父さんは周囲の人に取り押さえられ,直前のチェックポイントからやり直しとなる。
どうにか無事,結婚式を執り行うと,一気に時間が飛んで,冒頭の一家4人で暮らしているシーンへ移るのだが,お父さんはこのあとも,奥さんに頼まれて家事をこなしたり,子供と一緒に水族館に遊びに行ったりと大忙し。まあ,その結果がどうなるかは言うまでもないだろう。
タコがスーツを着て歩いている絵づらだけで相当なインパクトがあるが,その奇想天外な発想と,お父さんの予想外の動きから生み出されるシュールな状況が楽しい本作。あまりにもグニャグニャで操作しにくいと感じる部分もあるが,このバカバカしさは一度は体験する価値がある。やっていることは,はた迷惑以外の何物でもないが,家族のために一生懸命なお父さんの姿には,思わず笑みがこぼれてしまうだろう。そんな本作は,Steamにて14.99ドルで発売中だ。
■「Octodad: Dadliest Catch」公式サイト
http://www.octodadgame.com/- 関連タイトル:
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オクトダッド -タコと呼ばないで-
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