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インディーズゲームの小部屋:Room#457「Orwell」
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印刷2016/11/30 10:00

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インディーズゲームの小部屋:Room#457「Orwell」



 朝から血を抜かれたり,バリウムを飲まされたりで,すでに疲労感が半端ない筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第457回は,Osmotic Studiosが開発した「Orwell」を紹介する。本作は,“オーウェル”という名のセキュリティプログラムを使って人々を監視し,テロ事件の犯人を突き止めるというアドベンチャーゲームだ。何よりもつらいのは,健康診断のために早起きして満員電車に乗ることだけど……。

画像集 No.003のサムネイル画像 / インディーズゲームの小部屋:Room#457「Orwell」

 国家の安全のために政府の権限を拡大し,“必要とあらば”市民生活のスパイを可能とする法案「セーフティ・ビル」の成立によって密かに生み出されたのが,ネット上のありとあらゆる情報を自動的に収集し,ときには個人のPCやスマートフォンの中身まで盗み見ることができるという監視システム・オーウェル。プレイヤーは,導入されたばかりのオーウェルのオペレーターとなって,首都ボントンで起こっている一連の爆弾テロ事件の調査に乗り出すことになる。

画像集 No.002のサムネイル画像 / インディーズゲームの小部屋:Room#457「Orwell」

 プレイヤーの仕事は,オーウェルがニュースサイトやブログなどを検索して集めてきた情報のうち,テロ事件に関係がありそうなものを選別してデータベースに登録していくこと。新たな情報を登録すると,それを基にオーウェルがネット上からさらなる情報を収集してくるという仕組みだ。オーウェルは,さまざまな記事や文書の中で重要と思われる部分にハイライトを付けてくれるので,証拠として採用したいものをドラッグ&ドロップでピックアップしていこう。

画像集 No.004のサムネイル画像 / インディーズゲームの小部屋:Room#457「Orwell」

 オーウェルの情報源はネット上で公開されているものだけではない。個人のSNSやチャットを盗み見たり,電話を盗聴したりも可能で,オンラインになっている他人のPCやスマホに侵入することもできる。
 ネットにつながったあらゆる情報にアクセスできるオーウェルにはパスワードなど不要で,何気なく投稿されたブログのコメントや,大学の学生名簿,企業の従業員紹介などから,監視対象者のSNSのIDやハンドルネーム,住所や電話番号などをつかめば,あとはチャットでも電話でも盗聴し放題というわけだ。

画像集 No.005のサムネイル画像 / インディーズゲームの小部屋:Room#457「Orwell」

 本作では,プレイヤーがどのキーワードを証拠として採用したかによって,もしかしたら何の罪もない監視対象者達のその後の運命が決まり,エンディングも複数用意されている。ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが,終盤の畳み掛けるような展開にはハラハラさせられっぱなしで,ぐいぐいと引きつけられる。
 プレイヤーにはテロリストを見つけ出すという一応の大義名分があるものの,一度個人情報を知られたら,そこから芋づる式に交友関係や誰にも内緒にしていた秘密が暴かれてしまう社会は,もし自分が逆の立場だったらと考えると,その恐ろしさが十分理解できるだろう。


 ところで,「ビッグ・ブラザーがやって来た――そして,それはあなただ」という紹介文からも分かるとおり,本作のタイトルは全体主義国家による監視社会を描いた小説「1984年」の著者,ジョージ・オーウェルから採られていることは明らかだが,本作の舞台は表面上,モデルになった小説ほど絶望的ではない。人々は物資が欠乏しているわけでも,思想を統制されているわけでもなく,ごく普通の日常生活を過ごしている。

画像集 No.009のサムネイル画像 / インディーズゲームの小部屋:Room#457「Orwell」

 とは言え,自分達が常に監視されていることを理解して生きている「1984年」の世界と,気づかぬうちにすべてを盗み見られている本作の世界,どちらがよりマシなのかは微妙なところ。全編英語のため,ストーリーを十分に理解するためにはそれなりの英語力が必要となるが,監視社会の怖さを身をもって体験できるゲームとして,ぜひ多くの人に遊んでほしい作品だ。そんな本作は,Steamでデモ版が配信されているほか,製品版が980円で発売中です。

■「Orwell」公式サイト
http://orwellgame.com/

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