連載
インディーズゲームの小部屋:Room#727「A Memoir Blue」
プロ野球が開幕したのも束の間,いきなり3連敗した阪神タイガースの先行きに早くも不安を感じている筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第727回は,Cloisters Interactiveが開発した「A Memoir Blue」を紹介する。本作は,若くして水泳のトップアスリートとなった主人公の女性が,幼い頃の母との思い出を振り返っていくというアドベンチャーゲームだ。うう,また今日も負けている……(原稿執筆時点)。
本作の主人公は,水泳のトップアスリートとして,若くしてスーパースターの仲間入りを果たしたミリアムという女性。ゲームは金メダルを掲げたミリアムがたくさんのフラッシュを浴びているシーンから始まるが,彼女の表情はなぜか曇ったままだ。自宅に戻り,ソファでくつろぎながら,何気なくいじっていた古いラジカセから流れてきた懐かしい歌を耳にしたとき,ミリアムの中に子供の頃の記憶が突如として洪水のようにあふれてくる……。
本作はストーリーメインのアドベンチャーゲームで,プレイヤーは寂しさと誇らしさが複雑に入り混じったミリアムの過去を,彼女と共に振り返っていく。基本的なゲームの進め方は,オブジェクトをクリックしてちょっとしたパズルを解いたり,単にスイッチを押したりといった簡単なもので,途中で詰まることはないだろう。テキストやセリフは一切なく,すべてがキャラクターの表情や仕草,意味深で幻想的な風景,ときおり流れてくる歌やBGMで表されており,クリアまでは約1時間と短編映画のように楽しめる。
ゲームの舞台はほとんどがミリアムの心象風景で,2Dと3Dを組み合わせたグラフィックスが特徴的。大人になったミリアムと背景は美麗な3Dグラフィックスで描かれ,そこに幻のように現れては消えていく子供の頃のミリアムと母親の姿は,手描きの2Dアニメーションで表現されている。デフォルメされた,柔らかいタッチで描かれた母と娘の姿が,今となっては手が届かない思い出のワンシーンにうまくマッチしており,見ていると切ない気持ちにさせられる。
非常に短い作品なので,あまり詳しく書くとネタバレになってしまうが,ミリアムの両親は彼女が幼い頃に離婚しており,そのせいでミリアムは寂しい幼少時代を過ごしてきたようだ。そんな中で,小さいときから水泳の才能を発揮したミリアムはいくつもの大会で結果を残してきたが,生活していくため仕事で手いっぱいの母親は彼女のことを十分に構ってあげられず……という感じでストーリーが進んでいく。
母親が喜ぶ顔を見たくて頑張ったのに,期待していたような愛情を得られなかった(と感じている)ミリアムの心情は察するに余りあるが,それでも2人のあいだに互いを思いやる気持ちがなかったわけでは決してない。これまでに取ったたくさんのトロフィーよりも,家族とのたった1枚の写真こそが大切な宝物であるというメッセージが痛いほどに伝わってくる,ちょっぴり切なくてノスタルジックな作品に仕上がっている。
そんな本作のPC版はSteamにて860円で発売されているほか,Xbox Game Passでも配信中。またPlayStation 4/5およびNintendo Switch版が各ストアで配信されているので,そういえば最近は母親とあまり話をしていないかも……という人はぜひどうぞ。筆者ももっと親孝行をしないとなあ。
■「A Memoir Blue」公式サイト
https://annapurnainteractive.com/games/a-memoir-blue- 関連タイトル:
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(C)2022 Cloisters CO., LTD. Published by Annapurna Interactive under exclusive license. All rights reserved.
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