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どうなるE3? 岐路にさしかかる巨大ゲームショウ
E3への不参加,ESAからの脱会を決めたActivisionに対し,業界最大手のElectronic Artsは「大手メーカーとしてゲーム業界に対するリーダシップが欠如している」とコメントしているが,こうした動きは昨年のE3 Media & Business Summit 2007の段階からある程度予想されていた。
1995年にCES(Consumer Electronics Show)から独立する形でスタートした小規模なゲームショウは,年々その規模を拡大。2006年には400社以上が参加し,2000タイトル以上が展示される名実ともに世界最大のゲームショウとして認知されるようになった。だがその背後で,大規模ブースの設営や,早すぎるデモ版の作成(12月のショッピングシーズンに販売する予定のタイトルのデモを,5月に作らなければならない)など,参加各社の負担が増えていく半面,トレードショウとしての意味合いが薄れたお祭り化の傾向が強くなり,改善を求める声も大きくなっていったのだ。ESAがメーカーのそんな要望に対応したのが,規模を大幅に縮小した昨年(2007年)のE3 Media & Business Summit 2007だったのだが,最終的にメディアだけでなく,参加各社からも運営の不手際に対する不満が相次ぎ,ショウの意義そのものが問われる結果に終わっている(関連記事は「こちら」や「こちら」)。
この流れはE3に限ったことではなく,例えば,毎年8月にドイツのライプツィヒで開催されるGames Conventionに任天堂が不参加を表明していることなど,巨大ゲームショウのありかたそのものが岐路にさしかかりつつあるようだ。
こうした背景には,自前のイベントを開催したほうが良いという各メーカーの判断もあるだろう。Ubisoft Entertainmentは,ヨーロッパ時間の5月28日からパリで大規模な新作発表会「Ubi Days」を行うし,ActivisionがE3に相前後して何らかのイベントを開催するという情報もある。id Softwareにはダラスでの「QuakeCon」が,またBlizzardにはアナハイムでの「BlizzCon」があり,新作発表などはそれらのイベントで行われることが多い。数多くのジャーナリストやファンが集まるため情報発信の場としては格好であり,「ショウに参加したメーカーの一つ」として見られるより宣伝効率が高いのは間違いない。
この傾向が加速すると困るのが中小のメーカーだ。昨年のE3を取材して強く感じたのが,「意外な作品」や「ノーマークだったが面白いゲーム」などに出会う確率が激減したことである。宣伝費を含め,莫大な予算と人員を投入して開発が行われる昨今のゲーム業界において,予想外の作品などに出会うことはめったにないといわれるが,それはあくまで大手メーカーのコンシューマ機向けタイトルなどに限った話だろう。現在もロシアや東欧を中心に,小規模なメーカーがもっぱらPC向けにタイトルを制作しており(それらが玉石混淆なのは間違いないのだが),自前のイベントが開催できない中小のメーカーの発表の場がなくなるのは,ゲーム業界としてよいことではないだろう。
いずれにしろ,ここへきてESAの求心力が低下していることは確かで,E3の今後の行方も気になるところ。今年のE3 Media & Business Summit 2008が試金石となるのはほぼ間違いないだろう。
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