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さて,先週で「ハーフライフ2 エピソード2」については一段落。ファンの人々は,またしても「アリックスとゴードンの恋の行方はどうなるのか」などなど,モヤモヤっとした感じでいつになるか分からないエピソード3のリリースを楽しみに待つしかないのだ。なんでも,漏れ聞くところによると,エピソード3ではこれまでのいろんな謎が解け,さらにパワーアップしたSourceエンジンの表現によって,天候が変わったり風が吹いたりと,これまで以上にとんでもないグラフィックスになる予定らしい。うう,今から楽しみだなあ。もういくつ寝るとエピソード3。うう。
というわけで,とりあえずエピソード2に別れを告げ,連載3回目となる今週はオレンジボックスに同梱されている新規2作品,つまり「チームフォートレス2」(以下TF2)と「ポータル」をささっと紹介してみよう。
TF2というからには,昔は「チームフォートレス」があったのだろうというあなたはなかなか鋭い洞察力をお持ちである。探偵並みだ。もともとチームフォートレスは,「こちら」の記事にもあるように,1996年に発売された「Quake」のMODとして公開されたものだ。チームベースのマルチプレイFPSで,これぞスポーツ系といえるスピーディなゲーム感覚を持っていた。
特徴的なのはそのクラス制で,「ソルジャー」「スナイパー」「スパイ」など9種類も用意されたクラスはそれぞれ非常に個性的で,プレイヤーの属するクラスによって全然戦い方が異なってくる。今でこそクラス制など普通だが,単純なデスマッチが主体だった当時のマルチプレイFPS界にあって,チームベースでクラス制というチームフォートレスは非常に新鮮だった。日本でも一部で割とブームになったので,そんなこととっくに知ってらという読者もいるだろう。そういう人はぜひ上記部分を読み飛ばしてほしいと今更書いても遅いか。
そんなチームフォートレスがSourceエンジンで華々しくリファインされ,TF2となって帰ってきたのである。ちなみになぜQuakeのMODであるチームフォートレスがSourceエンジン版になったのかといえば,それはハーフライフ2の前作である「ハーフライフ」のゲームエンジン,GoldsourceがQuakeエンジンを大幅に改良したものだったからである。分かったような分からないような話で恐縮です。
前作は未来的な雰囲気だったが,TF2ではなんとなくアメリカ南部の砂漠地帯のような土地を舞台にした戦いが演じられる。そんな本作の最大の特徴は,カートゥーンレンダリングによるコミカルなグラフィックスだろう。むやみやたらにでっかい機関銃を持ったヘビーや,覆面をつけたスパイ,工事用のヘルメットをかぶったエンジニアなど,アメコミタッチのキャラクターが次々と登場するのだ。
クラスの種類は前作と同じだが,見かけは大きく変わったTF2。選んだクラスで驚くほどプレイ感覚が違うゲームだけに,それぞれの特徴を知ることが大切だ。
スカウト(Scout)
ランニングシューズと野球帽というそのいでたち通り,走る速度は随一だ。防御力は低めだが,ちょこまか走り回ることで敵の弾が当たりにくくなる。拠点をダッシュして奪取するにはもってこいのクラスだろう。武器はショットガンとピストル,そしてバット。
ソルジャー(Soldier)
移動速度はそれほどでもないが,強力なロケットランチャーが魅力だ。公開されたムービーにもあるように,ジャンプしたあと,真下にロケットを撃ち込んでさらに高くジャンプできる。体力的にもなかなか有利な感じ。サブウエポンはショットガンとスコップ。
パイロ(Pyro)
背中の火炎放射器は射程は短いものの,その分接近戦では圧倒的な威力を発揮する。着ている防火服は火が早く消えるため,対パイロ戦で有利かと思ったが,相手も同じもの着ているのね。サブウェポンはショットガンと消火用の斧だが,消火に使うことはないだろう。
デモマン(Demoman)
爆弾男。メインウェポンはグレネードランチャーで,サブウェポンは粘着爆弾を放つランチャー。粘着爆弾は敵が近寄ると爆発する以外,右クリックで遠隔起爆も可能。粘着爆弾の上に乗って爆発させてのハイジャンプも可能だ。もう一つのサブウェポンは酒瓶。
ヘビー(Heavy)
ミニガンをバリバリ撃ちまくる大変気分のいいクラス。問題は,マウスクリックから銃撃開始までにタイムラグがあることと,弾薬の消費が激しいこと。開けた場所では,背後からそっと近づいた敵に……なんてことも。サブウェポンはショットガンとゲンコツ。
エンジニア(Engineer)
敵を自動的に攻撃する「セントリーガン」,ヘルスや弾薬を味方に供給する「ディスペンサー」,前線への瞬間移動を可能にする「テレポーター」を設置できる裏方クラス。いろいろと覚えることが多く,慣れるまではちょっと大変。サブウェポンはピストルとレンチ。
メディック(Medic)
勝利のためには欠かせないクラス。メインのシリンダーランチャーはともかく,面白いのは味方に照射して体力を回復させるユーバーガン。ビームを当てることでユーバーチャージが溜まっていき,100%になると無敵発動。うーむ。骨切り用の電動ノコも持ってるよ。
スナイパー(Sniper)
冷酷な狙撃者。遠距離の戦闘ならスナイパーの右に出るものはいない。右クリックでズームになり,ズームし続けていると弾丸の威力が高まる(上限あり)。レーザーポインター付きで便利だが,居場所がばれやすい。サブウェポンはサブマシンガンと蛮刀。
スパイ(Spy)
こっそり戦いたいプレイヤーに大人気。攻撃力,体力ともたいしたことないが,セントリーガンなどを故障させるサッパーや,敵のフリをする変装キットなどを持つ。また右クリックで透明マントをはおるなど,いろいろ侮れない活躍が可能。やはりベテラン向きか。
クラス選びが終わったら,いよいよ戦場だ。TF2に用意されたマップは6種類とやや少なく,またいずれも似たような雰囲気の場所なので,そうした点のバリエーションには乏しい。広さ的にもそれほどでもないが,乗り物の要素はまったくない徒歩の戦いなので,不満はない。建物やトンネルなどマップはどれもかなり入り組んでおり,高低の要素も大きい。高い位置に陣取ったスナイパーはやっかいで,狭い通路でパイロに出会ったら,即座に火だるまにされてしまうだろう。
ゲームモードには「コントロールポイント」「旗取り」「テリトリーのコントロールポイント」の3種類がある。コントロールポイントは,名前の頭に“CP_”のついたマップで,その名の通りコントロールポイント(拠点みたいなもの)と呼ばれる場所を奪い合う。ポイントの数や,攻守の別がはっきり分かれている,さらには奪われたポイントを再奪取できるかどうかなどでバリエーションが付いている。
続いては旗取り。旗取りとはいえ狙うのはブリーフケースで,重要書類の詰まったそれを奪って自陣に持ち帰れば勝利だ。足の速いスカウトが有利になりそう。
テリトリーのコントロールポイントもコントロールポイントのバリエーションといえないくもないが,マップがエリアに分かれており,各エリアの勝敗によってひとまずゲーム(ラウンド)が終わり,次のエリアで次のラウンドが始まるというもの。次のラウンドのことを考てガジェットをセットしたり,チームを移ったりとなかなか面白くて評判がいいようだが,このモードで遊べるマップは“TC_Hydro”一種類となる。
とまあ,文字で説明すると難しそうに感じるかもしれないが,各マップにはルールを解説するとてもカッコいいムービーが用意されているし,一度でもプレイしてみればほぼ間違いなく理解できるはず。ともかく当たって砕けるのが上達の早道だ。
乗り物は出てこないので,マップは比較的コンパクト。建物の中や地下など,似たような雰囲気の場所が多いので,マップを覚えることがまず必要になる
キャラクターグラフィックスのコミカルさ,ガジェットの破天荒ぶり,「罵倒」コマンドによる敵への挑発,スパイの変装がよく見りゃお面を付けてるだけといった腰くだけぶりなどなど,お笑い中心で作っているのかなと思いきや,実際の戦闘はなかなかにシビアだ。マップの攻略にはそれなりの戦略が必要であり,基本的なFPSの腕前だけでなくチームメイトと連携した戦い方が要求される。自分だけで戦うのでなく,チームへの貢献が重要なのだ。
本作は見た目の軽さにだまされてはいけない,かなり骨っぽいマルチプレイFPSであり,「カウンターストライク」といった類作と同様,マップと武器とガジェットを熟知し,練習を重ねて腕を上げ,プレイを重ねて戦略を知ることが大切なのである。
……それにしても,なんで戦っているんだろうなあ,この人達。
「罵倒」コマンドを発動すると敵を挑発するポーズを取る。それぞれのクラスにそれぞれのポーズが用意されているので,ここぞというときに使おう
目覚めると,そこはガラス張りの無機質な小部屋。非人間的な機械音声が,ここがAperture Science(もしくはAperture Laboratories)のコンピュータ制御のトレーニングセンターだと告げる。なにがなんだかよく分からないまま,プレイヤーは「あっち」と「こっち」を一瞬にしてつなぐ携帯ポータル装置を使って複雑怪奇なトレーニングをクリアしていかなければならないのだ。
というわけで,オレンジボックスに同梱された新作パズルゲームがPortalだ。もともとはワシントン州シアトルの私立大学,DigiPen Institute of Technology(デジペン工科大学)の学生プロジェクト「Narbacular Drop」が原型。これを同じくワシントン州ベルビューに本拠を置くValveの担当者が気に入り,開発チームを丸々吸収する形で自らのものにしたという経緯がある。
プレイヤーが“訓練を受けている”という設定でゲームは進んでいくが,失敗すると死んじゃったりしてなんだか怪しい。しかもApertureという研究所名は「ハーフライフ2 エピソード2」にも登場するし,ゲーム中にはゴードンが以前働いていた職場の名前なんかも出てきたりして,微妙なところで本編とつながっているんだかいないんだかという雰囲気だ。
まったく人の気配もしないし,実はすでに外はコンバインに支配されたシティ17なんじゃないという気がするが,思わずこうやって余計なことを話して行数を稼ぎたくなるほど異色なパズルなのである。クライマックスも比較的謎がいっぱいなので,お楽しみに。
プレイヤーが使用するのは,前述の通り携帯ポータル装置。説明するのが難しいが,要するに好きなところに入口と出口を作れるのである。この出入口を使えば普通行けないところにも行けるようになるという寸法だ。ゲーム序盤は,必ずしも入口と出口をペアで作る必要はなく,適当なところに口を開けると,適当なところにつながったりもする。
穴ぼこは,高いところへ飛び移ったり,ピンチから脱出したり,敵(ロボットだが)を排除したりとまさに融通無碍なお役立ちギミックなのだ。
マップは全部で20面用意されているが,最初は何もすることがないので,実質19面。最初のほうこそ単純でちょっと単調だが,次第に難しくなってくるので安心(?)してほしい。うう,難しい。シビアなタイミングを要求されるところもあるし,どこをどう進んでいいのか分からない場所も多い。セントリーガンは凶悪そのものだ。また,どこにでも穴ぼこを開けられるわけではなく,適切な場所を選んで打ち込まなければならない。
まあ,文章で説明すると難しいが,実際にプレイしてみれば,やることそのものはそんなに難しいことではないのが分かるはず。マップも最初は簡単だが,次第にさまざまなテクニックを自然に修得できるように構成されているので安心だ。
ハマる人は相当ハマるようで,すでにネット上に新マップが公開されるなど,ポータルワールドも順調に拡張しているご様子。それにしても,Sourceエンジンでパズルを作っちゃうかあ,というのがそもそも驚きである。
というわけで,せっかく「ハーフライフ2 オレンジボックス」を買ったのに,エピソード2だけ遊んでいるのではもったいなさすぎるというもの。TF2とポータルもぜひプレイしよう。
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- 関連タイトル:
ハーフライフ2 オレンジボックス
- 関連タイトル:
ポータル【日本語版】
- 関連タイトル:
Team Fortress 2
- 関連タイトル:
ハーフライフ 2
- 関連タイトル:
ハーフライフ2 エピソードパック【日本語版】
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