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いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた
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印刷2011/06/04 02:06

インタビュー

いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた

 昔の名作IP(ブランド)は,いままで数多くオンライン化されてきた。その最たるもの,かつ歴史に名を残す傑作が,事実上このジャンルを作り上げた「Ultima Online」や,「ファンタシースターオンライン」である。一方で,非常に長い歴史があるIP――30年前――にも関わらず,オンラインゲームというジャンルが立ち上がって15年近く,いまだオンライン化がなされていなかったのが,「Wizardry」(ウィザードリィ)だ。

画像集#003のサムネイル/いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた

 2006年11月に,アエリアIPMがWizardryの商標権を獲得し,その一年後の2007年11月に,ゲームポットが「Wizardry Online」を発表。そこから3年以上,表立った動きのなかった本作が,ここへきてようやく動き出した。「Wizardry」シリーズといえば,その登場から今年で30周年を迎えたコンピュータRPGの原点であり,こと日本においては,今も根強い人気を誇っている。
 それがオンラインゲーム化されるということで,先日行われた発表会にも大きな反響があり,発表会後の1週間の4Gamerの記事ランキングで,やたらと「Wizardry」の文字が踊っていたことは記憶に新しい。

筆者所有のAppleII版「Wizardry I」。IIの箱を捨ててしまうという,いま考えれば愚かしい行為をしてしまった。2,3年前に動かしたときは,キャラクターのパスワードを覚えておらず諦めた(昔はキャラクターにパスワードがあったのだ)。コアなWizファンが「シャーマン戦車」と呼ぶのは,この初代のマニュアルに描かれている戦車のことだ
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 正直に書くが,プロジェクトが動き出したときに狂気乱舞した古いWizファンの筆者も,どうも公開される情報を見るにつけ「これは……何か,違うもの?」という感覚がぬぐい切れていない。「モロWiz」だとしても,そうでないとしても,どちらにしても気になる作品ではあるので,そのあたりを明らかにしておきたい。そこで今回は,そんなWizardry Onlineの総合プロデューサーを務める岩原ケイシ氏と,運営プロデューサーの前田有希氏に,本作について根掘り葉掘り話を聞くチャンスをもらった次第である。
 インタビュー日が負荷テストより前であり,かつインタビュー後にも続々とプレスリリースが送られてきているので,カブっている情報や,(今となっては)ちょっと的外れな質問もあるかと思われるが,すべて残したまま掲載する。初出情報だと思われるものも含め,多くの話を聞けたので,まとめてお届けしよう。しれっと掲載されている,数多くの初出の画面写真も必見だ。

※本稿でのWizardryのシリーズ名の数字は,読みづらさを防ぐため,すべてアラビア数字で統一しています

画像集#001のサムネイル/いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた
岩原ケイシ氏
画像集#002のサムネイル/いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた
前田有希氏

「Wizardry Online」公式サイト




ゲーム化権の獲得から5年
満を持して「Wizardry」がオンラインRPGとして登場


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。最初にお話を聞いてからずいぶん経ちますが,Wizardry Onlineもいよいよサービスインに向けて動きだしましたね。

岩原ケイシ氏(以下,岩原氏):
 はい。最初にお話したのはおそらく2008年,正式にお伝えしたのが2009年だったかと思います。そして2010年には「こんな感じのものを作ってます」と画面写真らしきものを手土産に持って。

去年こっそりもらった,Wizardry Onlineの画面写真。いまもほとんど変わっていないが,ライティング周りがずいぶんいじられた気がする
画像集#044のサムネイル/いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた
4Gamer:
 ええ,よく覚えています。っていうかあのときにもらった画面,まだ持ってますよ。せっかくだから記事に載せておきますね。

岩原氏:
 物持ちいいですね……。

4Gamer:
 岩原さんと喧嘩したらすっぱ抜いてやろうかと思ってまして(笑)。
 それはさておき,Wizardryといっても,シリーズは長らく続いていて,変遷がありますよね。実際のところ,ゲームポットが所有しているWizardryの版権は,どこからどこまでになるんですか? 確か当初のリリースでは6〜8だとか。

岩原氏:
 まず正確にいうと,弊社が所有しているのは“Wizardryをゲーム化する権利”です。そしておっしゃるとおり,シリーズの中ではWizardry 6〜8の権利を持っていますので,ゲームポットからそれらを再販することも不可能ではありません。ただ,それをやるには,データがきちんと揃っているかどうかの確認から始めないといけないんですけどね。

4Gamer:
 全然揃ってない気がしますね。とくに8とか。

岩原氏:
 いやもう,なんといいますか,ご推察どおりといいますか……。

4Gamer:
 それでWizardry Onlineのロゴは,剣が長いバージョンなんですね。(※)


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(※)クラシックWizと呼ばれる,Wizardry 1〜5は,Wizardryのロゴの剣が短く,「W」の文字の内側で収まっている。6以降の新生Wizでは剣が長く,「W」の文字の左まで突き抜けている。というのがWizardryロゴの原則ルールである。これを知っていると,日本で数多く出るWizardryゲームが「どの路線」なのか一目瞭然である

画像集#045のサムネイル/いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた
Llylgamyn系や,ゲームボーイの外伝シリーズなどは,すべてクラシックWizardryの血を引いていることが,ロゴから分かる。いい意味でも悪い意味でも,「古き良き」Wizardryを体現するラインナップだ。本稿のオマケの5p目を見ていただければ,日本でも結構な数が売られているのがよく分かる
画像集#046のサムネイル/いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた
一方こちらは新生Wizardryの血を引くラインナップ。さまざまなプラットフォームに名を連ねるエンパイアシリーズも新生ラインだ。この日本語版の「8」は,いまじゃほとんど入手できない一品。筆者はクラシック系ばかり買うのでこれしか持ってないが,本当はもっとたくさんある。同じく5p目を参照してほしい

岩原氏:
 今ではそのロゴの件も,知っている人は少なくなってしまいましたね。
 まぁそれはともかく,Wizの事情に詳しい人であればご存じのように,実はWizardry 1〜5に関しては,まだ権利が本国でもグレーゾーンなんですよ。そんな状態なので,我々としてもどう扱ったものか,と。

4Gamer:
 結局あれって誰が権利持ってるのか曖昧なままなんですよね。でもやっぱり「KATINO」(※)で眠らせたいですよねえ。

(※)クラシックWizardryにおける敵1グループを眠らせる呪文。敵の攻撃を食らわないことが最重要であるWizardryというゲームにおいては,ある種の最強呪文

岩原氏:
 ……実はこれ,英字そのままでは版権に引っかかるかもしれませんけど,「カティノ」とカナ表記した場合には,その限りではないんですよ。例えば「MALOR」なら,カナにした場合には「マラー」なのか「マロール」なのか正確には決まっていませんし。

4Gamer:
 なるほど,じゃそれでいきましょう。それで「マハマンではなくてメイハマンだ」って言い張るとか。

岩原氏:
 いや,そこを頑張らなくても(笑)。
 まぁそんなわけで,今の呪文の名前はWizardry 6以降のものに準拠していますが,それはそれとして,将来的にはWizardry 1〜5で使われていた呪文を「エンシェントマジック」というような扱いで,Wizardry Onlineにも登場させようと考えています。

4Gamer:
 あぁ,それはちょっと楽しそうですね。……ということは,歴代のシリーズとWizardry Onlineの世界観は繋がっている?

岩原氏:
 ええ。実際のところ,何度か世界が崩壊していて,その都度作り直されているという世界観ですし,海を渡ればTrebor(※)のいた大陸があってもいいんじゃないかな,とか。

(※)Wizardry 1と4に登場する狂王。制作者Robert Woodheadの「Robert」を逆からスペリングしたのが名前の由来である。

4Gamer:
 シリーズの一部分を抜き出してオンライン化するのではなく,すべてを内包した,いわば“Wizワールド”があるわけですか。そうなると,Wizファンならニヤリとするような演出が随所にありそうですね。

岩原氏:
 ええ。当初はそのあたりを省略したシンプルな形でスタートしますが,徐々にそういった演出を加えていく予定です。

これが舞台となる「アザルス大陸」だ。大陸の南東に位置する「ディメント王国」,その港町「イルファーロ」がスタート地点となる
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4Gamer:
 ボルタック商店(※)の朽ち果てた看板だけが残っていたり,とか。

(※)Wizardryシリーズに登場する,今風に言うとNPCのアイテムショップ。その無茶苦茶な価格設定から,プレイヤーから「ボッタクリ商店」と呼ばれ愛されている。

「Wizardry Online」にもボルタック商店(左)やギルガメッシュの酒場(右)が登場
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岩原氏:
 ああ,そういうこともやりたいですねえ。
 とはいっても,もうWizardry Onlineの中にはボルタック商店があるんですよ。冒険者の宿屋もギルガメッシュの酒場もあります。どこかから怒られ……るかもしれませんけど,そのときはまぁ「ごめんなさい」ということで(笑)。
 こういう部分は,グレーゾーンだからといって全然触れないで作ると,Wizardryらしさがどんどん失われていってしまうんですよ。原点回帰……というわけではないですが,かつてWizardryを遊んだ人が「こういうのもあったよね」と思えるような要素を,少しは混ぜていきたいんです。

4Gamer:
 岩原さんも自分のキャラ名の施設とか出せばいいんですよ。(※)
 しかしそういうことは,些細なことに見えますが,結構重要な気はしますね。

(※)ボルタックやギルガメッシュなどは,オリジナルWizardryの制作者がD&D(Dungeons&Dragons)をプレイするときのキャラ名が由来である。

前田有希氏(以下,前田氏):
 ええ。「これがあるからWizだよね」と,遊んでくれる人が引っかかるような,いろいろなフックを用意しておきたいんです。



過半数から「クソゲー」と呼ばれる覚悟で
あえて“記憶に残るゲーム”に挑戦したい


4Gamer:
 ほかに,どこか分かりやすいところでWizardryっぽい部分はありますか?

岩原氏:
 例えばWerdna(※)の部屋にあった営業時間案内表示板や,「*おおっと*」といったメッセージは,ダンジョンの随所にちりばめています。昔のWizardryにあった,「なんなのこれ」という部分は,きちんと継承しました。分かる人には,笑っていただけるんじゃないでしょうか。

(※)Wizardry 1におけるボスキャラ的扱いのモンスター。悪の魔術師と呼ばれるものの,あんまり悪いことはしていない雰囲気。1の目的は,Werdnaが持つアミュレットを取り戻すことで,彼がいる部屋の壁には営業時間の案内が掲げてある。Wizardry 4では,プレイヤーが操作する主人公キャラクターになっていたりして,希有な扱いのキャラクターである。名前は,Wizardryの制作者であるAndrew Greenbergの「Andrew」を逆からスペリングしたもの。

前田氏:
 あとはなにより,キャラクター作成時のボーナスポイントがそうですよね。(※)

(※)Wizardryファンにはわざわざ説明の必要はないが,実はこのボーナスポイントはランダムなので,すなわち言い換えると,MMORPGのキャラのステータスが「ランダム」であるということだ。ありそうで,ほかにはないシステム。

岩原氏:
 ボーナスポイントの上限は,かなり高いです。

4Gamer:
 29じゃないんですか?

岩原氏:
 もっと上です。

4Gamer:
 じゃあ●●?(編注:まだ隠してほしいとのことなので隠します)

岩原氏:
 はい,そっちです。したがって同じ種族かつ同じレベルのキャラクターであっても,ステータスに大きな差が生じる可能性があります。
 もちろん,レベルアップ時にステータスが下がることもあります。今,一般的なオンラインゲームではステータスは上がる一方ですが,ここはWizardryらしく,運が悪いと下がるんです。

前田氏:
 また,プレイヤーは高いボーナスポイントを狙って何度もやり直すと思うのですが,ここでも往年の仕様を継承しています。
 もともとは,「再抽選」(Reroll)ボタンを用意してボーナスポイントの値だけを何度も決め直せる仕様を試したのですが,ここはかつて遊んだ人のために,昔のままにしよう,と。

4Gamer:
 ええと,それってつまり……。

岩原氏:
 名前を決めて,種族と属性を決めて……と,いちいちやり直すんですよ。

4Gamer:
 め,面倒くさい(笑)。

前田氏:
 実際は,種族を選び直すだけでも再抽選画面に戻れるので、そこまで面倒にはしていません(笑)。この記事を読むようなプレイヤーさんであれば問題ないと思うんですけど,まれに非常に高いボーナスポイントが出るということを,自分自身で発見してほしいんですよね。あるいは,かつてそういった経験をしたことを思い出してほしいとでもいいますか。

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岩原氏:
 Wizardryを知らない人は,最初に出たボーナスポイントで,そのままキャラクターを作ってしまうでしょう。しかし,あとから「10」や「20」といった高い数字が出ることを知るわけです。そういったサプライズがあってもいいかな,と。本当に知らなかった人は腹が立つかもしれませんが,もう一度キャラメイクからやってみよう,と思っていただきたいんですよね。
 あとは,とにかく自分で探すことを楽しんでほしいんです。今のゲームは何でも親切に教えてくれますが,そうではなく,自分で試してみて隠された要素を見つけたり,「これをやったら楽になった」という経験をしたり。

4Gamer:
 あとからリネームはできるんですか? 昔は,それを前提に「A」さんとか「あ」さんが大量に作られたものですが。

岩原氏:
 オンラインゲームの性質上,残念ながらソウルネームはリネームできませんが,いまのところキャラクターネームなら変えられるような方向で考えています。

4Gamer:
 あぁ,それでしたら安心(?)です。

岩原氏:
 こうした仕様を採用したのには,かつて遊んだプレイヤーのために,昔のままでやってみよう,という話になりまして(笑)。

4Gamer:
 21世紀の新作オンラインゲームとは思えない仕様ですね。

岩原氏:
 ええ,優しくないです。
 しかし私自身は,最近の親切なゲームをやっても記憶に残らないんですよ。「このゲームはここは面白い」「あのゲームはこうだったから面白かった」ということが,最近まったくないんです。
 かつての,目の前にある難題を苦労して乗り越えたゲームのほうが,記憶に残っているんですね。Wizardry Onlineでは,それを再現したかったんです。だから,わざわざ苦労が多くなるように作っている部分もあります。

4Gamer:
 しかしそれは,コアプレイヤー出身のプロデューサーの方であれば皆口を揃えて言いますが,「言うは易く行うは難し」じゃないでしょうか。

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岩原氏:
 確かにさじ加減は非常に難しいですね。一部から評価される一方で,過半数から「こんなのクソだ」といわれる可能性は十分にあります。

4Gamer:
 というと,そもそも最初からWizardryのコアプレイヤーをターゲットにしたアプローチ?

岩原氏:
 ええ。まずはWizardryのコアプレイヤーに,Wizardry Onlineを知っていただきたい,と。2番めのターゲットはオンラインゲームプレイヤーですが,今どきの楽なゲームや効率プレイに慣れ親しんだ人の大半は,早々に離脱してしまうと考えています。逆にこれを面白いと思った人なら,とことん楽しめるゲームに仕上げています。

4Gamer:
 制作側が,離脱を最初から織り込み済みなんですね。

岩原氏:
 いわば,狭い穴を少数の人が潜っていくような感じといいますか(笑)。そういった人が十分に楽しめるようなものになっています。

4Gamer:
 雰囲気自体も,重苦しいですもんね。雰囲気的には「デモンズソウル」か,それとも「キングスフィールド」か。

岩原氏:
 実は我々も,デモンズソウルを意識していないと言えば嘘になります。ゲームのハードさとか。デモンズソウルがリリースされたときは「やられた!」と思いましたし,自分でプレイしたときも,「これこそがやりたかったことだ」とも思いました。

4Gamer:
 Wizardry Onlineでもやればいいじゃないですか。いいモノは取り入れるべきですよ。

岩原氏:
 はい そうですね(笑)。
 デモンズソウルもWizardryの雰囲気を意識されていた部分は多少なりともあったようですし,こちらも参考になる部分はとても多いと思っています。デモンズソウルはすばらしい作品なので敬意を持って参考にさせていただきたいと考えてます。



「Wizardryらしさ」の中心にあるものは……?


4Gamer:
 それで,本作が第一のターゲットとするところの「Wizardryのコアプレイヤー」……いわゆる“Wiz好き”は,日本にどのくらいいるとお考えなんでしょうか。

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岩原氏:
 一つの目安として,コンシューマ版がコンスタントに売れていたコアな数字を見込んでいます。

4Gamer:
 私が知る限り,コンシューマ版は「1本作れば10〜15万本」でしたよ,あのころは。

岩原氏:
 まあ,今となっては歳をめされて……悪くいえばオッサンになってゲームから離れてしまった人もいるでしょうから,我々の想定よりもっと数字は低いかもしれませんが。

4Gamer:
 世代的には,Apple II版やPC-9801版から遊んでいた人達,あるいは名作といわれるゲームボーイの外伝シリーズでWizardryを知った人達,といったところでしょうか。

前田氏:
 そうですね。ゲームボーイは,一世代下かもしれませんけれども。

4Gamer:
 しかし,そうしたコアプレイヤーの立場でWizardry Onlineを見ると,Wizardryの名を冠するには,あまりにもWizardryらしくない部分が目立つように思えてならないんですが。

ローカスの「ウィザードリィ・コレクション」を持っている人は,相当貴重なものだと思ってもらってよいと思う。日本語版の1〜7までのWindows版(正確にはエミュレート版)が入っている逸品だ。それの英語版に相当するのが,右に見える「The Ultimate Wizardry Archives」。こちらは,1〜7(+7の豪華版であるGold)が入っている
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岩原氏:
 先日の発表会でも話したのですが,昔のWizardryをただオンライン化しても,それはどうなんだろう,と考えたんです。パーティのマッチングだけオンラインで,ダンジョンはワイヤーフレームで表示され,キャラクターは見えない,あとの進行はリーダー任せみたいなものなら,ソーシャルゲームでも十分実現できるんじゃないか,と。まあ,それはそれで面白いものができそうですけどね。

4Gamer:
 ……実はすごく面白そうに感じてしまうんですが。

岩原氏:
 まぁ中にはそういう人もいます(笑)。
 しかし真面目な話,そういった内容のものであればすでに「Wizardry Renaissance」シリーズで提供しているわけですから,Wizardry Onlineでは異なる部分を前面に打ち出したかったんです。また,この先10年20年とWizardryの名前を残していこうと考えた場合に,新しいことに挑戦しなければなりません。毎回,同じことばかりやっていたのでは未来がないんですよ。

4Gamer:
 確かにそれはそのとおりですね。ドラクエだってFFだって,歴史と共に強烈な様変わりをしてここまで生き残っているわけですし。つまりこれは,Wizardryシリーズの将来を見据えた取り組みである,と。

岩原氏:
 はい。例えばWizardry 8には,それ以前と異なる新しいゲームシステムが入っていました。あれと同様に,昔ながらのシステムを継承しつつ新しい何かも入れるということに挑戦したんです。オンラインゲーマーの皆さんにとっては当たり前すぎて気付かない人もいるかもしれませんが,自分のキャラクターが画面に表示されるところは,まさに今のオンラインRPGに寄せている部分ですよね。

4Gamer:
 言われてみれば,確かに。
 ではもうちょっとシンプルな質問に切り替えて,Wiz好きなコアプレイヤーに向けて「ここはWizardryである」「ここはWizardryではない」と明確に言い切れる部分は,どのあたりでしょう?

岩原氏:
 まず見てすぐ分かるように,グラフィックスや戦闘システムは,かつてのWizardryと違いますよね。ワイヤーフレームではないし,キャラクターは表示されるし,戦闘はターン制じゃないし。
 最もWizardryっぽいのは,とにかく“キツい”ところです。レベル1のキャラクターなら,一撃食らっただけで街に帰らなければならないほどのダメージを負いますし,迷宮は本当に迷宮です。また,キャラクターが死んでしまえばロストする可能性もあります。とくにロストというのは,Wizardryならではの要素ですよね。

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4Gamer:
 根底にWizardryのお約束である“Hard to Play”という部分があって,そのうえでボーナスポイントやアイテム鑑定といった,特徴的な要素を盛り込んでいるわけですね。

岩原氏:
 いまどき“レベルが上がってステータスが下がるゲーム”なんて,なかなかないですからね。
 ただ,もちろんステータスが下がり続けたり上がり続けたりするのも個性がないと思うんです。ステータスが下がったら「仕様がおかしい」「運営のせいだ」と思うのではなく,「今日は運が悪いな」と捉えていただけるよう,最初から“運”ということを打ち出しています。

4Gamer:
 とかなんとかいろいろ言っておきながら,いざフタをあけてみたらステータスが下がらない有料アイテムを販売してしまうとかっていうことは……。

前田氏:
 そういったアイテムの予定はないですよ。

岩原氏:
 運ですから。
 というかそもそもの狙いとして,誰にでも受け入れられるようなゲームを目指してはいないんです。本当にコアで,好きな人に向けてディープに面白くしようとしているんです。

4Gamer:
 非常に心強い姿勢ですが,現実問題としてそれビジネスになるんですか?

前田氏:
 ええ,プラン上は。

4Gamer:
 プラン上(笑)。

岩原氏:
 うーん……大丈夫,です。きっと(笑)。

4Gamer:
 やはり,例えば私もそうですが,いまのゲームじゃちょっとなぁと思ってるプレイヤーさんから見た不安は,ビジネス面だと思うんです。Wizardryの名を冠したハードコアなオンラインゲームが出てくることはとても嬉しいし,要所要所がちゃんとWizardryっぽいし,これは一度遊んでみるべきだろう,と思う人は多いでしょう。
 ただ,知れば知るほどビジネスとしてどうなんだろう,という心配が拭えません。それはサービスの継続に関わる部分ですから,運営だけの問題ではないんです。

岩原氏:
 そうですね。発表しているように,ビジネスモデルはアイテム課金制です。メインターゲットは30〜40代の社会人ですから,そんなに長い時間を割いて遊べないことを踏まえて,時間短縮できるアイテムを基本にしています。あとはお得なアイテムをパッケージングして販売したり。
 逆に,装備の販売はあまり考えていません。

前田氏:
 Wizardryといえば装備の強さが重要ですが,自分で揃えて強くなっていかないと達成感が得られません。有料で販売するアイテムは,強さに関係しないものを前提にしています。

4Gamer:
 Wizardryの世界観を壊さないものを販売するわけですね。極論ですが,村正を1万円で売るようなことはしない,と。

岩原氏:
 もし売るとしたら500万円とか,1千万円とかで本物の刀とセットにしたりとか(笑)。

4Gamer:
 時間短縮アイテム……というと,ダンジョンから一瞬で帰還できたりするようなものですか?

岩原氏:
 それはないです。

4Gamer:
 それくらい帰らせてください……。

岩原氏:
 ダメです(笑)。ダンジョンから一瞬で帰る手段を用意しないというのは,一つのこだわりですから。
 ここでいっている「時間短縮」とは,いわゆる経験値ブーストですね。

前田氏:
 あとは,お金の入手量や確率が増えるものとか。

4Gamer:
 なるほど,未鑑定アイテムの鑑定料もかかるんでしょうし,お金は重要ですね。そこはビショップを使って節約できたりしないんですか?

岩原氏:
 実は上位職は,今後のアップデートで実装されるんですよ。なので,しばらくは店で鑑定する以外ないのですが……。

4Gamer:
 まさか,昔ながらの売値同等の鑑定料?

岩原氏:
 はい(笑)。昔同様,高いんです。

前田氏:
 しかし鑑定額が鑑定後の売却額を上回ることはありませんよ。

4Gamer:
 ま,まぁ少しは「優しく」なってますね……。

ソウルネーム
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岩原氏:
 Wizardry Onlineでは「アカウント」を「ソウル」と表現するのですが。キャラクターだけでなくソウル自体にもランクがあります。ソウルランクはクエストをクリアしていくことなどで専用の経験値が溜まり,一定値になるごとに上がっていくのですが,ソウルランクに応じて鑑定料などが割引になる仕組みです。
 例えばキャラクターがロストしても,ソウルランクとソウルの経験値は失われません。ソウルランクが高い状態で新キャラクターを作れば,次はそれだけ楽に進められるというわけです。


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