レビュー
大型クーラーによるクロックアップでRTX 2080 Tiを超えたRTX 3070搭載カード
ROG-STRIX-RTX3070-O8G-GAMING
2020年10月29日に,Ampereアーキテクチャを採用するNVIDIAの新型GPU「GeForce RTX 3070」(以下,RTX 3070)を搭載したグラフィックスカードの販売が解禁となった。すでにお伝えしているとおり,RTX 3070は「GeForce RTX 2080 Ti」(以下,RTX 2080 Ti)に迫る性能を発揮する一方で,消費電力の低減を実現したことに注目が集まっている。
一部のゲームタイトルにおいて,RTX 3070の性能は,RTX 2080 Tiに届かなかったが,クロックアップモデルならその力関係はどうなるのだろうか。そこで今回は,RTX 3070を搭載したASUSTeK Computer(以下,ASUS)の「ROG-STRIX-RTX3070-O8G-GAMING」(以下,STRIX RTX 3070)をテストして,とくにオーバークロック動作時のポテンシャルを確かめたい。市場で人気のROG STRIXシリーズに属するRTX 3070搭載モデルは,果たしてどの程度の性能を発揮できるのだろうか。
ブーストクロックが1905MHzのクロックアップモデル
P modeとQ modeの2つのVBIOSを搭載
RTX 3070の詳細については,「GeForce RTX 3070 Founders Edition」のレビュー記事を参照してもらうとして,早速,STRIX RTX 3070の動作クロック設定から見ていこう。
3つめのSilent modeは,ブーストクロックが1875MHz,ベースクロックは1470MHzと,どちらもGaming modeから30MHz低い低消費電力設定だ。電力目標もGaming modeの93%に抑えられている。こちらもGPU-Zでテスト中のコアクロックを追ってみると,1995MHzまで上昇しているのを確認した。
なお,メモリクロックは3種類の動作モードすべてが14GHz相当のままである。
カード長は実測319mmとかなり大きめ
GPUクーラーはファンの仕様がかなりユニーク
カード長は実測で約319mm(※突起部含まず)で,RTX 3070 Founders Editionが同241mmだったのに比べると,78mmも長い。ただ,基板自体は267mmほどしかなく,GPUクーラーがカード後方に52mmほどはみ出た格好だ。
また,PCケースに装着すると,垂直方向にブラケットから34mmほどはみ出ていることもあり,そのサイズはかなり大きく感じる。
GPUクーラーは2.9スロット占有タイプで,かなり厚みがある。100mm径相当のファンを3基備えているが,これが非常にユニークな仕様となっているのだ。これらのファンは,同社独自の「Axial-tech」ファンをさらに進化させたもので,中央の1基のみ13枚,両端の2基は11枚と,ブレードの数に変化を付けることで,エアフローの向上を図っているのだという。
また,ファン外枠のバリアリングとブレードは一体成型されているのだが,両端の2基は,バリアリングが波を打ったような形状をしている。ASUSによると,この形状によって横方向の吸気を増やしているとのこと。さらに,中央の1基のみ時計回り,両端の2基が反時計回りと,回転の向きに変化を付けることで,整流効果を高めているそうだ。
それに加えて,GPU Tweak IIでは,Advanced modeの「Left and right fan speed」設定で両端のファン2基を,「Middle fan speed」で中央にあるファンの回転数を,それぞれ個別に設定できる。設定内容は,「Manual」を選択すると1%刻みで0〜100%の範囲で固定できるほか,「User Define」では温度と回転数の関係を示すグラフ上の任意の点をクリックして,回転数の設定を変更することが可能だ。
また,「FANCONNECT II」と呼ばれる2つのPWMファンコネクタを備えている点も,押さえておきたいポイントだ。
分解していないのでGPUクーラーの細かいところまで確認できていないが,隙間から覗き込んだ限りでは,6mm径のヒートパイプを7本用いているようだ。また,メモリチップや電源部にもしっかりとヒートシンクが密接する構造を採っている。
裏面は金属製のバックプレートで覆われているが,ASUSの説明によると,裏面にあるメモリチップの実装部分に熱伝導シートを貼り付けて,バックプレートをヒートシンクとして活用することで裏側からも冷却しているとのこと。さらに,電源部には同社が「Super Alloy Power II」と呼ぶ,独自にカスタマイズを行った高性能高耐久部品が用いられている。
映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a×3,HDMI 2.1 Type A×2という構成だ。このうち4つまでの同時画面出力がサポートされており,その組み合わせはDisplayPort×2+HDMI×2でも,DispalyPort×3+HDMIでも構わない。
RTX 3070 Founders EditionおよびRTX 2080 Tiと比較
3つの動作モードすべてでテストを実施
それではテスト環境の構築に話を移そう。
今回は,比較対象としてRTX 3070 Founders EditionとRTX 2080 Ti Founders Editionを用意した。STRIX RTX 3070が,RTX 3070のリファレンススペックからどの程度性能を伸ばせているかを確認するとともに,RTX 2080 Tiを性能面で上回れたのかをチェックしようというわけである。
また,前述のとおりSTRIX RTX 3070は3つの動作モードを備えているため,それらすべてでテストを実施した。
テストは発売前に行った関係で,グラフィックスドライバには,RTX 3070 Founders Editionのレビュワー向けに配布された「GeForce 456.96 Driver」を使用。また,RTX 3070がPCIe 4.0に対応していることもあり,CPUには「Ryzen 9 3900XT」を,マザーボードにはAMD X570を採用したGIGABYTE製「X570 AORUS MASTER」を使用している。そのほかのテスト環境は表のとおり。
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション23.2に準拠している。ただし,「Fortnite」に関しては,グラフィックスAPIをDirectX 12に変更したうえで,DLSSとレイトレーシングを有効にして,レイトレーシングの負荷が最大となるように変更している。なお,テスト方法自体はレギュレーションと同じだ。
解像度は,NVIDIAがRTX 3070のターゲットとして,4Kおよび1440pでのゲームプレイを想定しているため,3840×2160ドットと2560×1440ドット,それに1920×1080ドットの3つを選択した。
なお,以上のテスト環境ならびにテスト方法は,RTX 3070 Founders Editionのレビュー記事とまったく同じである。そのため,RTX 3070 Founders EditionとRTX 2080 Tiのデータは,同記事のものを流用していることを断っておく。
Gaming modeでRTX 3070から8%前後向上
安定してRTX 2080 Tiを上回る性能
本稿で示すグラフ内では,STRIX RTX 3070の各動作モードをGaming,OC,Silentと省略していることを前置きしたうえで,「3DMark」(Version 2.14.7042)から順に結果を見ていこう。
グラフ1はDirectX 11テストでる「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
STRIX RTX 3070は,Gaming modeでRTX 3070よりも1〜6%ほど高いスコアを記録している。とくに,4K解像度でのテストとなるFire Strike Ultraでの伸びが大きく,RTX 2080 Tiに対しても9%近い差を付けている点は立派の一言だ。
一方で,OC modeはGaming modeからスコアを1%も伸ばせておらず,存在感はあまりない。逆にSilent modeは,Gaming modeからスコアの低下が1〜2%ほどに留まっているので,Fire Strike UltraではRTX 3070やRTX 2080 Tiに大きな差を付けたままだ。
続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものだ。
CPU性能の影響を受けないテストであるため,Gaming modeとRTX 3070との差は3〜6%程度と若干広がった。フルHDでのテストとなるFire Strike“無印”でも,3%の差が出ているところは注目すべきポイントだろう。だが,やはりOC modeは,Gaming modeから1%スコアを伸ばすのがやっとといったところ。逆に,Silent modeのスコアはGaming modeから1%も低下しておらず,RTX 3070やRTX 2080 Tiに対して優位に立っている。
Fire Strikeからソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したのがグラフ3となる。今回はCPUを統一しているため,スコアもキレイにほぼ横並びだが,若干,Silent modeだけはスコアが低い傾向が見られる。
GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものがグラフ4だ。
ここではCPU性能の影響が大きくなるため,Fire Strike“無印”では,STRIX RTX 3070はOC modeでもRTX 3070を引き離せていない。また,OC modeとGaming modeでほとんど差が見られないのはこれまでと同様なのだが,Silent modeでは,Fire Strike“無印”やFire Strike Extremeで,Gaming modeから4〜7%程度スコアが低下しており,やはりCPU側も多少足かせがかかっているのではないだろうか。
グラフ5は,DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の総合スコアの結果だ。
STRIX RTX 3070のGaming modeにおけるRTX 3070との差は5〜6%程度と,そこそこ有意な差が付いている。また,RTX 2080 Tiに対しても,安定して上回る性能を発揮している点も評価できよう。Time SpyでもOC modeとGaming modeの差は1%にも達していない一方で,Silent modeはGaming modeから1〜2%ほどスコアが低下している。
続いて,グラフ6はTime SpyのGPUテスト結果,グラフ7はCPUテストの結果となる。
まず,GPUテスト結果ではCPU性能の影響がなくなるため,Gaming modeとRTX 3070の差は6〜7%程度まで広がっている。RTX 3070やRTX 2080 Tiが,Time Spy Extremeで6700前後であるのに対して,STRIX RTX 3070はGaming modeで7000を超えている点は賞賛に値しよう。また,OC modeとGaming modeでほとんど差がなく,Silent modeがGaming modeから1〜2%スコアが低下する点は,総合スコアの傾向を踏襲している。
一方,CPUが同一のため,CPUテストの結果はほぼ横並びになっているが,Fire Strikeと同様に,Silent modeだけ若干スコアが落ち込んでいる。
では,実際のゲームではどうなのか。まずは「Far Cry New Dawn」の結果(グラフ8〜10)から見ていこう。
Far Cry New DawnではCPU性能の影響が大きいためか,2560×1440ドット以下の解像度では,スコアが並んでしまっている。そこで,3840×2160ドットを見ていくと,Gaming modeはおろかOC modeでも,STRIX RTX 3070は,平均フレームレートでRTX 2080 Tiに及ばない。これは,11GBというRTX 2080 Tiのグラフィックスメモリ容量が奏功したのではないかと思われる。そのため,4K解像度においては,グラフィックスメモリ容量で勝るRTX 2080 Tiのほうが有利な結果を残すことがあるということなのだろう。
なお,3つの動作モードについては,平均フレームレートで数fpsの差が生じてはいるものの,最小フレームレートが揃っているため,その差を体感することは難しい。
続いて,「バイオハザード RE:3」の結果がグラフ11〜13となる。
ここでも,1920×1080ドットではCPUがボトルネックとなり,スコアの頭打ちが発生している。そこで,2560×1440ドット以上の解像度に着目すると,Gaming modeは,平均フレームレートでRTX 3070から7〜8%程度の差を付けて,RTX 2080 Tiに対しても優位に立っている。
なお,ここでもOC modeのメリットはほとんどない。一方,Silent modeはGaming modeから4〜6%程度もスコアが低下している。ただ,Silent modeはそれでも,RTX 3070をしっかりと上回っている点は評価できる。
「Call of Duty: Warzone」(※グラフ内ではCoD Warzone)の結果がグラフ14〜16だ。
ここでは平均フレームレートで,Gaming modeがRTX 3070に最大で約9%もの差を付けた。とくに,OC modeが真価を発揮して,Gaming modeと比べて最大約4%も伸びている点は注目したいポイントだ。OC modeとRTX 3070との差は,平均フレームレートで約11%にも達しており,Call of Duty: Warzoneにおいては,OC modeを使う価値はありそうだ。また,Silent modeは,平均フレームレートがGaming modeから1〜4%程度落ち込んでしまっているが,RTX 3070を下回ることはなく,RTX 2080 Tiともいい勝負を演じている点は押さえておきたい。
グラフ17〜19は,DLSSやレイトレーシングを有効にしたFortniteの結果となる。
描画負荷が大きいため,全体的に結果は低調だが,Gaming modeは平均フレームレートで,RTX 3070に7〜14%程度の差を付けている。ただ,OC modeはそこから1fpsも向上しておらず,使用する意味はあまりなさそうだ。一方でSilent modeは,Gaming modeから1〜3%ほど平均フレームレートが低下しているが,RTX 2080 Tiを下回ることがない点は触れておきたい。
グラフ20〜22は「Borderlands 3」の結果だが,Fortniteなどと似た傾向が見られた。
1920×1080ドットでCPUのボトルネックが発生しているが,2560×1440ドット以上の解像度では,Gaming modeは平均フレームレートでRTX 3070より7〜10%程度高いスコアを残している。また,OC modeの結果がGaming modeとあまり変わっていない点もFortniteなどと同じだが,Silent modeは,Gaming modeから平均フレームレートが4〜5%程度と低下の幅が大きめだ。しかし,それでもRTX 3070やRTX 2080 Ti以上の性能を発揮している。
グラフ23は「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
本ベンチマークはCPU性能の影響も大きいため,2560×1440ドット以下の解像度では,STRIX RTX 3070は動作クロックの高さという強みを発揮できていない。3840×2160ドットでようやく約8%ほどの差を付けているが,それでもRTX 2080 Tiとの差は1%未満と,これまでのタイトルに比べて引き離せていない。
OC modeがGaming modeから1%もスコアを伸ばせていないのは,ほかのテストと同様だ。またSilent modeは,Gaming modeと比べたスコアの低下は2%弱に留まったが,2560×1440ドット以下の解像度では,RTX 3070のスコアを下回っている。
そんなFFXIV漆黒のヴィランズ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ24〜26だ。
平均フレームレートは総合スコアを踏襲している。また,最小フレームレートはCPU性能の影響が色濃く反映されるのだが,それでもGaming modeやOC modeは,3840×2160ドットでRTX 2080 Tiを上回っている点は立派と言えよう。
グラフ27〜29には,「PROJECT CARS 2」の結果をまとめている。
ここでもCPUが足かせとなり,平均フレームレートは96fps前後で頭打ちとなっている。その影響は2560×1440ドットでも見られ,Gaming modeは平均フレームレートでRTX 3070を約3%しか離せていない。しかし,3840×2160ドットになると,その差は約10%にまで広がっており,RTX 2080 Tiを約6%ほど上回る結果を残している。
なお,やはりOC modeのGaming modeからの伸びは小さい。Silent modeのGaming modeと比べた低下の割合は6%弱と大きめだ。
消費電力はFounders Editionから23〜66W増加
GPUクーラーの冷却性能は非常に優秀
さて,クロックアップモデルであるSTRIX RTX 3070は,消費電力も増大しているであろうことが懸念材料となるが,果たしてどの程度増えたのだろうかだろうか。
なお今回も,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いたシステム全体の最大消費電力のみを計測している。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランスに設定」。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ30だ。
各アプリケーション実行時で,STRIX RTX 3070のGaming modeは,RTX 3070と比べて消費電力が23〜66W程度増えてしまっている。RTX 2080 Tiよりも少し高いくらいだ。RTX 3070における魅力のひとつに,性能のわりに消費電力が抑えられている点が挙げられるが,STRIX RTX 3070では,高性能の分だけその魅力は損なわれてしまうのが残念だ。
OC modeになると,Gaming modeからさらに消費電力が2〜12W上昇している。RTX 3080ほどではないにしても,この消費電力の増大を許容できるかどうかは意見が分かれるところになりそうだ。なお,Silent modeは,Gaming modeから最大で約19W減少しており,しっかりと消費電力を抑えている。
最後に,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえて結果はグラフ31となる。
注目したいのは,STRIX RTX 3070はGaming modeやOC modeでの高負荷時でも,温度が60℃台半ばまでしか上がっていない点だ。RTX 3070が70℃を,RTX 2080 Tiが80℃をそれぞれ超えてしまっているのと比べると,STRIX RTX 3070の温度はかなり低い。STRIX RTX 3070が採用する新型ファンを備えるGPUクーラーは,かなり冷却性能が高いと言ってよいだろう。
最後に,筆者の主観であることを断ったうえで,STRIX RTX 3070の動作音についても触れておこう。その動作音だが,決して静かとは言い切れない。ただ,PCケースに入れてしまえば聞こえなくなるレベルで,比較対象の両Founders Editionより静かなのは確かだ。
消費電力は増大したが性能向上は申し分なし
価格は税込で9万円前後
その一方で,消費電力の増大は看過できない。Silent modeを使えばいくらか抑えることはできるが,それでもRTX 3070から60W程度増えてしまう点はデメリットとして挙げられよう。また,OC modeについては,あまり利用価値を見出せない点も指摘しておきたい。
消費電力が増えるものの,STRIX RTX 3070は動作クロックを引き上げることで,性能が10%程度は向上しているといった印象だ。実勢価格は税込みで9万円前後と,ほかのRTX 3070搭載モデルに比べると高めである。だが,性能の高さやGPUクーラーの出来が良い点を考慮すると,十分に見合った価格のグラフィックスカードと言えるのではないだろうか。
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