インタビュー
前代未聞の3社による協力体制,運営移管後の「TERA」はどうなるのか? 新プロデューサーらキーマンに直撃インタビュー
運営移管に至った理由,今後の「TERA」はどう変化していくのか……など,Bluehole Studioの日本ライブチーム チーム長であるキム・ナクヒョン氏,NHN PlayArtで「TERA」日本運営プロデューサーを務めてきた鈴木貴宏氏,そして運営移管後,新たに「TERA」日本運営プロデューサーとなるゲームオンの中川敬順氏に話を聞いてみた。
前向きな移管,そして「TERAをPay to Winのゲームにはしない」方針を明示
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
TERAの運営が移管されるということでかなり驚きました。率直に言うと,運営移管にはネガティブなイメージがつきもので,プレイヤーの中には不安になっている人もいると思います。そのあたりについてコメントをいただけますか。
中川敬順氏(以下,中川氏):
まず「TERAをPay to Winのゲームにはしない」と宣言させてください。Pay to WinとはMMORPGでは「課金して装備を手に入れないと,モンスターやほかのプレイヤーさんに勝てない」ということです。「TERA」では「最強装備をガチャで販売する」ようなことはありません。これは開発元であるBluehole Studioさんと弊社ゲームオン共通の考え方です。
4Gamer:
現在の「TERA」では,有料アイテムの購入額が必ずしもキャラクターの強さに直結しないバランスとなっていますが,この方針は運営移管後も引き継がれるということですね。では,運営移管に至った経緯はどのようなものなのでしょうか?
キム・ナクヒョン氏(以下キム氏):
NHN PlayArtとの3年間の契約が切れたことが直接的な理由ですが,その後の展開を考えたときに,停滞することなくチャレンジを続けるということを重視しました。MMORPGはプレイヤーが多ければ多いほど楽しいゲームです。今回は,プレイヤー数を増やす方法としての移管という意味もあります。サービスはゲームオンに移管されますが,現在のプレイヤーの皆さんは,今まで通りハンゲームからも遊んでいただけます。窓口を増やすことで,さらにプレイヤーを増やしていきたいという狙いもあるのです。
4Gamer:
プレイヤー獲得の面において,これまでのNHN PlayArtの施策では不足だと感じられたのでしょうか?
キム氏:
4Gamer:
では,新たなパートナーとしてゲームオンを選んだ理由はどこにあるんでしょうか。
キム氏:
MMORPGの運営経験が豊富であることが大きな理由です。「天上碑」は11年,「RED STONE」は9年間サービスを続けておられます。「TERA」が今後長年サービスを続けていくうえで,ゲームオンさんのノウハウは大きな力になるだろうと考えました。
4Gamer:
ここしばらくで,ゲームオンには大型タイトルがいろいろ集まっていますよね。プレイヤーの中には"そんなにたくさんの大型タイトルを抱え込んで大丈夫なのか"という点を危惧される方もいると思いますが。
中川氏:
もちろん大丈夫です。ご存じの通り,既存タイトルを含め当社では大型タイトルを多く抱えていますが,「TERA」には全社を挙げて取り組む予定でおり,そのために万全の体制を整えて準備しています。
4Gamer:
3社共同ということが強調されていましたが,運営移管以降も,NHN PlayArtがノータッチになるということではないんですよね。
鈴木貴宏氏(以下鈴木氏):
4Gamer:
「TERA」が運営移管することで,ハンゲームのMMORPGのタイトルが一つ減ることになります。NHN PlayArtはスマホを中心にゲーム開発を重視していく方針と聞いていますが,PCオンラインゲームの運営は縮小していくのでしょうか。
鈴木氏:
いえ,そんなことはありません。今後もちゃんと新しいタイトルをPCでも展開していきますので,ご安心ください。
運営移管後も,開発方針は「プレイヤー本位」で変化なし
4Gamer:
前者が新職業「ソウルリーパー」の実装やインスタンスダンジョンの追加など。後者の代表は,発表ごとに独創性が話題となるアバターアイテム,そして人気声優陣によるエクストラボイスなどですね。こうした方向性は運営移管後も変わらないのでしょうか?
中川氏:
プレイヤーさんがゲームをどのように遊んでおられるかをよく見て,よく聞き,そのうえで施策をするのが我々パブリッシャの仕事ですから,もちろん「TERA」でも同じことを行っていきます。「TERA」を遊ばれるプレイヤーさんの姿をしっかりと見たうえで,さまざまなタイプのMMORPGを運営することで蓄積されたノウハウも合わせ,方向性を間違わずに運営していきたいと考えています。
キム氏:
開発の方向性を決めていくうえで大切なのは,あくまでプレイヤーさんの意見で,運営会社のカラーを打ち出すことではありません。プレイヤーさんを第一に考えて開発を進めていくという姿勢は,運営が移管されても変化しません。
3社が関わってゲームを運営していくというのはこれまでに例のないことですので,プレイヤーさんが戸惑われることもあると思いますが,弊社とNHN PlayArtさん,ゲームオンさんが連携していく姿をお見せできればと考えております。
鈴木氏:
ハンゲームでは,チャネリング担当の部署があるのですが,「TERA」については,現在の運営スタッフでチャネリングに対応していきます。開発とのやり取りや,これまでのサービスでのノウハウなどを共有しつつ,ゲームオンでのサービスに協力していくことになります。
運営移管で何が起こるのか?
4Gamer:
8月18日に運営が移管されたあとも,これまでと変わらずハンゲームIDからプレイすることができますし,PmangのIDへ移行することもできます。では,IDを移行すると何が変わるんでしょうか?
鈴木氏:
ひと言でいえば"ハンゲームIDでプレイしていたキャラクターを,Pmang IDで使えるようにする"手続きですね。
キャラクターのデータは,8月18日の運営移管をもってゲームオンさんに移りますが,IDを移行されない場合,ハンゲームIDからゲームオンさんのキャラクターデータを呼び出して「TERA」をプレイしてもらうことになるんです。言い換えれば,ハンゲームIDはゲームオンさんのキャラクターデータとリンクしているんですね。
ハンゲームIDからPmang IDへ移行してもらうと,このリンクが変更され,Pmang IDから「TERA」をプレイすることになります。キャラクターデータ自体に何か変化が起こるわけではなく,あくまでリンクが変わるだけですのでご安心ください。
公式サイトなども,これまでのイメージから大きく離れないようなものにしていただくようにお願いしています。
中川氏:
運営移管というと面倒なイメージがあるかもしれませんが,これまでプレイしていた人が,気がついたらいつの間にか運営が変わっていたというくらいのスムーズな移管を目指しています。ハンゲームIDからPmang IDに移行していただいた方には “移行手続きに一手間掛けてもらったお礼”としてゲーム内アイテムを差し上げることを検討しています。ですが,とくに“ゲーム内アイテムを使った移行促進”というわけではありません。
鈴木氏:
運営移管以降に有料アイテムを買う場合,ハンゲームIDだと“現金→ハンコイン→JEWEL→アイテム購入”となりますが,Pmang IDに移行するとワンステップ減って“現金→JEWEL→アイテム購入”になりますね。また,月に一度ハンゲームで行われるメンテナンスの影響を受けないこともメリットでしょうか。逆にハンゲームIDではハンコイン購入時にハンゲームポイントが累積され,ハンコイン商品券と交換できることがメリットと言える部分となります。
基本的には今プレイされている環境をそのまま移管後もキープする方針ではありますが,現在諸々調整中ですので,一部変更になるものもこれから出てくるかもしれません。
運営移管後のアップデートは?
4Gamer:
キム氏:
ギルドハウスを求める声は,以前から多くありました。最初のうちは,街にある普通の館のようなものを考えていたのですが,「TERA」にふさわしいギルドハウスのあり方を問い直した結果,出てきたのが天空の城だったんです。
実装後は,各都市や拠点それぞれにいくつかの城が浮かぶことになります。PvPやインスタンスダンジョンを攻略した成績など,多角的な基準でランキングを行い,上位のギルドが一定期間城を占有できるようになる予定です。
都市ごとに配置される城の数や,城の選択方法,手に入れた城をどの程度の期間占有できるかといった部分は現在検討している最中なのですが,優れた成績を修めたギルドがヴェリカなど大都市の城を持つこととなるでしょう。
特定の有力ギルドが城を占有し続けることがないよう,時期によってランキングの基準を変化させるといったことも検討しております。
4Gamer:
城の外見をカスタマイズできるようになるそうですね。
キム氏:
城に塔や旗を立てるなど,外見を変えることが可能となっております。こうしたパーツはギルドで蓄積したポイントと引き替えに入手していただけるようになる予定です。
4Gamer:
改装した城はどの程度の期間保持できるのでしょうか。割り当てられる城の位置が変わると,外装もやり直しですか?
キム氏:
そういった細かい部分についてはまだ検討中です。皆さんの意見を聞きつつ,調整していくことになると思います。
4Gamer:
65レベルキャップの開放と共に実装される新スキルについて教えてください。
キム氏:
各クラスに2〜3個,実装されたばかりのソウルリーパーには1個の新スキルが実装されます。例えば,バーサーカーに遠距離攻撃のスキルが追加されるなど,プレイヤーさんからの意見を反映させたものとなっているのが特徴です。どのスキルも強力で,戦いを変化させていくことでしょう。
4Gamer:
キム氏:
アーティファクトは,クリスタルの上位バージョンのようなものだと考えていただいて結構です。原石とクリスタルを合成することで,ランダムにオプションが付与されたアーティファクトを作り出すことができます。これを装着することで,キャラクターがパワーアップする点はクリスタルと同様です。
しかし,クリスタルのオプションの中でも人気がなかったものはアーティファクトでは廃止されているなどの違いがあります。両者の最大の違いは,キャラクターが死亡してもアーティファクトが壊れることがないという点です。
4Gamer:
死んでも壊れないというのはかなり嬉しい点ですね。
キム氏:
これまではクリスタルが壊れることでストレスを感じさせてしまっていましたが,アーティファクトの仕様は喜んでいただけると思います。
4Gamer:
今後はソウルリーパーに続く新クラスも追加されるとのことですが。
キム氏:
新クラスに関しては現在開発中で,この段階では残念ながらお出しできる情報がありません。「TERA」では半年ごとに大型アップデートを実装することが目標となっておりますので,続報をお待ちください。
4Gamer:
実装時期は,次回の次の半年後,来年の春とかになるのでしょうか。
キム氏:
具体的なことは言えませんが,それを目指して開発しています。
ゲームオンの「TERA」は,プレイヤーが楽しめる"空気"の醸成と,オフラインイベントに注力
4Gamer:
話題を運営移管に戻します。Bluehole StudioはNHN PlayArtと共に「TERA」を開発・運営してきたわけですが,鈴木さんのお仕事ぶりで感心された点などありますか?
キム氏:
4Gamer:
新たなパートナーとなる中川さんに期待したいところは?
キム氏:
これまで中川さんが手がけてこられたゲームを見ていると,プレイヤーさん本意の姿勢が徹底されているので,その点に関しては安心しております。鈴木さんは「TERA」のプレイヤーさんにとても親しまれていたので,中川さんも親しみやすいプロデューサーになってほしいです。
中川氏:
8月18日の運営移管以降,「TERA」に関するご意見は弊社ゲームオンにお送りください。いろいろなスタンスやプレイ歴のプレイヤーさんが集まるのがMMORPGです。我々は単にご意見を取りまとめるだけではなく,"そのご意見がどういったプレイヤーさんから発せられたもの"かという点まで踏まえて,Bluehole Studioさんへ提案を行っていきますのでご安心ください。
また,プレイヤーさんのお声を聞くにはオフラインが一番だと考えていますので,今後はオフラインイベントなども増やしていきたいです。オンラインゲームをオフラインで遊ぶというのは本当に楽しいものですので,この新しい楽しさを広めていきたいですね。弊社にはオフラインイベント専門部署もあって,スタッフはやる気満々ですのでご期待ください。
4Gamer:
では,最後に読者にひと言ずつメッセージをお願いできますか。
中川氏:
運営移管についてプレイヤーの皆様の中には,いろいろな不安を持たれる方もおられるでしょうが,これは当然の反応だと思います。ですが,これからの運営を見て判断を下していただきたいですね。我々はプレイヤーさんとコミュニケーションを取っていきたいです。もし間違いがあれば指摘していただきたいですし,こうした双方向のやりとりで必ず良い方向へ向かえるのではないかと考えています。先日まで「TERA」と同時期にサービスを開始した「C9」というタイトルの運営プロデューサーを務めており、「TERA」の動向はローンチ当初から意識していました。「C9」でのノウハウも活かして「TERA」を盛り上げていきたいと思いますので,どうかよろしくお願いします。
鈴木氏:
今回の発表に関して驚かれた方も多いかもしれませんが,ハンゲームとしても協力できることは積極的に協力していきますので,今後も「TERA」をよろしくお願いします。
キム氏:
3社協力というのは例のないことですが,今後のPCゲーム開発の上で良いお手本になれるよう,お互いに協力できればと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
オンラインゲームの運営が移管されるというのは,決して小さな出来事ではない。これまで親しんできたゲームの世界が変わってしまうのではないか,と思ってしまう人がいても致し方ないところだろう。
しかし,Bluehole StudioとNHN PlayArt,ゲームオンのキーマン達は,運営移管に不安を抱く人が出ることを理解しながらも,これからの「TERA」に期待してほしいと語っている。3社ともに強調していたのは,公式サイトの見た目やゲームの方向性をはじめ,なるべく変化の少ない方向で移行するということだ。これは,運営にNHN PlayArtのスタッフが協力するというところでも明らかだろう。
「TERA」のような大型タイトルの移管も,3社が手を携えての運営も,共にあまり例のないことだが,現在のハンゲームでのプレイヤーにPmangからのプレイヤーが上乗せされれば,MMORPGとして大きな飛躍が期待できるとする,「攻めの移管」が強調されている点はとくに珍しい展開といえる。
また,現在の「TERA」にとって,鈴木氏の果たした役割は大きなものがあるのだが,その鈴木氏が当面はアドバイザー的な立ち位置で開発とゲームオンとの仲介を行うということで,少し安心した人はいるのではないだろうか。
一方で,ゲームオン側のプロデューサーに中川氏が抜擢されたことに驚いた人もいるだろう。氏は,日本上陸時にはさほど注目度が高くなかった「C9」を人気コンテンツに仕立てていった立役者でもあり,中川氏が今までの経験を積んだ鈴木氏のアシストを得て運営にあたるというのは,もの凄く贅沢なことのようにも思える。
「TERAをPay to Winのゲームにはしない」「プレイヤーさんとコミュニケーションを取りたい」という中川氏の言葉に期待しつつ,運営移管の日を待ちたいところだ。
Pmang「TERA」サービス告知ページ
「TERA The Exiled Realm of Arborea」公式サイト
- 関連タイトル:
TERA :The Exiled Realm of Arborea
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