レビュー
植民地を開拓し,発展させ,独立を目指せ
シヴィライゼーション4
コロナイゼーション 【完全日本語版】
» 「Sid Meier's Colonization」を最新のエンジンでリメイクした「シヴィライゼーション4 コロナイゼーション」。新大陸を舞台に,本国からの「独立」を目指して植民地を経営していくシミュレーション。とはいえ,本国とは敵対するだけでなく「つかず離れず」の大人の関係を維持する必要があるし,住民も必ずしも全員が独立を希望しておらず,このへんが史実に即していて面白い。……というようなことを,ライターの徳岡氏がレビューするのである。
「シヴィライゼーション4 コロナイゼーション」(以下コロナイゼーション)は,1994年に発表された「Sid Meier's Colonization」を,「シヴィライゼーション4」(以下Civ4)のエンジンを利用してリメイクした作品だ。パッケージとしてはスタンドアローンで起動し,プレイにはCiv4を必要としない。
プレイヤーは新大陸である北米大陸に植民地を切り開き,そこを拡大させ,やがては本国からの独立を勝ち取ることを目標とする。最も基本的なマップは南北アメリカ大陸そのままの形をしているし,歴史上の有名人物も多数登場するとあって,Civ4よりも若干史実性の高いゲームであるといえそうだ。
MODの正式サポートはCiv4譲り。いろいろと遊べそうな雰囲気がひしひしとしてくる |
指導者は全部で8人。いずれも個性的だが,明らかに高難度の指導者もいる |
ランダム生成マップは2枚。ちょっと少ない気もするが,今後のMODに期待したい |
マップの広さやゲーム進行速度,難度の調整などは,当然ながらCiv4とコンパチ |
クラシックな作品を,装いも新たに
まず最初に,ゲームとしての概要をまとめておこう。
プレイヤーが選択できるのは,4か国8名の指導者から一人。それぞれ異なった能力を持っているので,同じマップでも違った楽しみ方が可能となる。このあたりはシヴィライゼーションシリーズの伝統ともいえるだろう。
マップは南北アメリカ大陸を模した「New World」と,ランダムで群島が形成される「Carribian」の2枚。これに加えて,4枚のマップが「シナリオ」として収録されている。もっともシナリオといっても特別なイベントが用意されているわけではなく,地形が固定されたマップと考えてもらったほうがいい。
Civ4との相違はいろいろあるが,宗教や技術ツリーなどが存在しないことが最大の変更点だろうか。また,軍事ユニットは基本的に「生産」するのではなく,都市で働いている住民を転用することになる。
1994年に発表された旧コロナイゼーションとの差異は,もちろんインタフェースとグラフィックスという部分で大きいが,「建国の父」という概念が導入されたことも重要。これはCiv4でいう「偉人」のようなもので,植民地にさまざまな恩恵をもたらしてくれる。
基本は箱庭ゲーム的展開
さて,コロナイゼーションの基本は内政である。Civ4では,外交と戦争がどうしてもゲームの中心部分に入ってくるが(たとえ軍事的な勝利を目指さなかったとしても),コロナイゼーションにおいては内政のマネジメントがそのままゲームの骨格を構築している。
基本的には,植民地経営は都市単位で行う――これは,従来のシヴィライゼーションシリーズそのままだ。都市には住民が住むことになるが,その住民にどんな仕事をさせるのかは,プレイヤーが調整しなくてはならない。ここで問題を難しくしているのは,主に二つの要素,住民の職業と,都市が生産/備蓄する産物である。
コロナイゼーションでは,都市に住む住民にはさまざまな職業が割り当てられている。彼らはその名称は別として基本的にどんな仕事でもこなす(兵士であっても,畑に割り付ければ食料を生産してくれる)が,「熟練」した住民なら,より高い効率で仕事をしてくれるし,逆にちゃんとした教育を施さなくては何をやっても作業効率の上がらない住民もいる。
いずれにしても,彼らは等しい速度で食料を消費していくので,住民単位での作業効率向上をきちんと考えていかないと,文字どおりの「無駄飯食い」を多く養うことになりかねない。
次は生産という観点から見てみよう。彼らが生産/消費する産物は,合計して16種類におよび,食料や鉱石,綿花といった一次産品であれば,それらを産出するエリアで住民を働かせるだけでいいが,コートや布,タバコといった二次産品になると,それらの原材料を生産する人と,それを加工する人が必要になってくる。さらに,将来的な独立に欠かせない銃器ともなると,鉱石→道具→銃という二段階の加工が必要だ。
これらの生産物をうまく管理し,滞りなく産業が進むように采配するのが,本作におけるプレイの中核の一つだ。生産した物品は船で本国に運んで換金できるし,そうやって獲得した資金でヨーロッパから物資を買い付けることも可能だ。独立戦争が始まると本国との交易ルートは断たれるが,それまでの間は生産と交易をうまくやりくりしていくことが需要なのだ。
最終的には独立戦争という大きな戦いが控えているので,まったく戦争の要素がないとはいえないものの,基本的には箱庭ゲームライクに植民地を経営することが可能だ。
ゲームは新大陸に到着するところから開始。最初の最初は陸地すら見えていない |
専用チュートリアルはないが,ゲームの合間にチュートリアル的な表示が出る |
いざ新大陸へ,移民の時代
都市で働く住民と,彼らが生産する品物の管理がプレイの核となるのであれば,植民地の拡張において最も重要なのは,必然的に「いかにして住民の数を増やすか」という点だ。
Civ4であれば答えは簡単で,都市の生活環境を高めると共に,食糧供給を安定させるということに尽きた。だがコロナイゼーションでは――さすがに大航海時代が背景となるだけあって――Civ4にはないさまざまな手段が用意されている。
最初の選択肢は,ヨーロッパ本土の宗教的混乱によって発生する移民である。プレイヤーは船をヨーロッパに回し,移民希望者を新大陸に運ぶことで都市人口を拡充できる。この際,一定の金額を支払ってさらに多くの移民を募集することも可能だ。
次の選択肢は,宣教師を先住民のもとに送り込み,転向者を募る方法。これはそもそも最初に宣教師が必要で,かつ先住民が宣教師を受け入れてくれないという危険性があり,しかも,必ずしも安定した供給源というわけでもないのだが,新たな住民はごく普通の移民希望者より能力的に優れているので,チャレンジするだけの価値は十分にある。
最後の選択肢が,食糧増産による住民の自然増だ。これは初期においてはそれなりに期待できるが,中心的な方法とするには時間がかかり,ちょっと無理がある。
大いなる援助者としての先住民
新大陸への植民という話になると,勢い出てくるのが先住民との関係だ。
コロナイゼーションでは,史実同様,最初のうちは先住民はプレイヤー達を暖かく迎えてくれ,無償で援助すら申し出る。また彼らは有力な交易相手となり,近代的な道具や銃などとの交換がさまざまな利益をもたらしてくれる(先住民との交易を成立させるためには,都市か先住民の集落上に輸送ユニットがなくてはならないことには注意)。
先住民による利益はこれだけではない。彼らのもとに住民を送り込み,一定期間訓練を受けさせ,それぞれの集落に応じた技能を学ばせることが可能なのだ。もちろんこういった「学習」は都市に学校を建設することでも可能だが,効率から見ても結果から見ても,先住民のもとで学ぶほうが大抵の場合,望ましい。
もちろん,軍隊をそろえて先住民と戦争し,より広い植民地を開拓することも可能だ。しかしながら,そのメリットは個人的にほとんど感じられない。いよいよ先住民の集落が邪魔になってきたら,文化的に侵略してしまう同化政策も取れる。むしろ,彼らにはギリギリまで野外学校としての機能を維持してほしいというのが正直なところだったりする。
とはいえ,先住民の中には非常に好戦的な者もいるので,戦わざるを得ないケースもある。Civ4プレイヤーであれば,「モンテスマ」という名前を聞けば本能的に警戒心が高まると思うが,それはコロナイゼーションにおいてもまったく正しい反応だ。
独立戦争への長い道のり
最終的な課題として独立戦争がある以上,ヨーロッパ本国との関係は本作において重要なパートとならざるを得ない。
とはいえ,本国が絶対的な敵かといえば,そうでもない。すでに書いたように,ゲーム序盤においては本国との交易,そして本国からの移民の流入など,本国をうまく利用した植民地経営が欠かせないからだ。
問題は,ゲームが進むにつれて本国が徐々に税率を高めてくることだ。はじめは数%にすぎない関税は,次第に10%〜20%という数字になり,しまいには50%だの60%だのという暴利を貪るようになる。これに併せて,本国の国王が「金をよこせ」という命令も出してくるので,財政が逼迫するとまではいわないが,大変わずらわしい。
独立戦争を開始すると,本国からは艦隊と陸軍が送られてくる。艦隊はかなり強力なので,海沿いの都市は砲撃によって拠点として利用できなくなると考えたほうがいいだろう。
陸軍の規模と強度は,独立の機運が高まり,最終的に独立を宣言するまでの時間の長さに比例して大きくなる。Civ4と異なり,大砲と戦闘艦を除く軍事ユニットはあくまでも住民を転用することになるので,蜂起の準備にあたっては計画性が欠かせない。
本作において最大の障壁になるのがこの独立戦争であるのは間違いないが,実は戦争を始めるまでの過程にも課題が多い。
独立戦争を開始するには,住民全体の間に独立の気運が高まっていなくてはならない。少なくとも5割以上の住民が独立派でなくては,そもそも戦争を始めることさえできないのだ。
住民の間で独立感情を高めるには,各都市に設置されている「自由の鐘」に住民を配置し,意識の改革を行っていくことが必要となる。だがこれには,どうしても時間がかかる。とくに植民都市の数が多く,人口も多い場合は,気がつくとゲーム終了ターンまでに独立宣言そのものができませんでしたということさえある。
仮にその壁を超えたとしても,前述のとおり,独立の気運が高まる時間が長ければ長いほど,本国の軍隊は凶悪化する。人口や都市が多ければそれでよい,というわけではないのだ。このあたりのさじ加減は,経験で補っていくのがいいだろう――というか,それがおそらく本作最大の楽しみである。
ヨーロッパ本国との交易。新大陸で得られた産物を売り,移民や各種物資を積んで帰る。蜂起のための武装を購入していくのもあり。独立にはお金がかかるのだ |
独立戦争を開始するには,革命の機運が50%以上に高まらねばならない。そのうえで,右側に見える国王軍との戦争になる。国王軍には増援があるので要注意 |
楽しみ方を自分で模索する部分も
本作のターン数や難度,マップの広さの調整などは,ほぼCiv4に準じている。なんのかんので時間のかかるゲーム(だいたい1ゲーム4〜5時間)なので,はじめてプレイするときは,最小マップで最高速度に設定し,だいたいの雰囲気をつかむのがいいだろう。
MOD作成環境も充実しており,Civ4同様,さまざまなバリエーションや便利ツールを導入して楽しめる。
一方,作品としての問題がまったくないわけではない。
一番ひっかかるのは,「ゲームの展開が固定されている」ことだろうか。コロナイゼーションにおいて,勝利とはすなわち独立である。つまり,本国の軍事的脅威を打倒する以外にゲームの目的達成はあり得ないわけだ。同じ勝利にしてもさまざまな手段があったCiv4に比べ,ここはとくに残念に感じてしまう。
同様に,AIがとても弱く,また本国AIも基本は物量作戦なので,本国に戦争準備を許さないような電撃的独立宣言発布に成功すると,それだけでほとんど勝ったも同然になり,これはすでに必勝法として確立されているようでもある。
かくして本作は,「一定の攻略ルートしか存在しないゲーム」という側面が確実に存在するものになってしまった。MODなどによってある程度の変化はつけられるだろうが,根底的なレベルでの変化となると,それをMODと呼んでいいのかどうか疑わしい。
とはいえ,それについては「〜という定石は使わない」「〜というトリックは使わない」「人口を〜人以上にする」「都市を〜以上作る」といった,自分なりの縛りを入れたプレイを行うことである程度まで解消できる。
また最適手順を見つけるまでは,ゲームとして十分以上に楽しめるので,それだけでも価値がある。販売価格がさほど高くはないことを鑑みれば,必勝法を見つけるだけでも面白いともいえる。
それから,慣れの問題もあるのだろうが,Civ4に比べて操作性や情報閲覧性の悪さを感じる。操作体系が同じなのに,このあたりにつまずきを感じるのは,つまるところ,本作のデザインコンセプトが1994年当時のものである(要するに,現代的なテイストとは違うゲームである)ということが影響しているのだろう。これはまた,良いインタフェースは,デザインコンセプトの段階から構築する必要があるということの証左にもなっているように思う。
戦争と同時に,新政府の方針も決定しよう |
独立戦争に勝利。これでゲームに勝ったわけ |
「独立」をテーマにした作品として
そもそも独立戦争というのは,アメリカにおいては南北戦争と並ぶストラテジーゲームの二大定番だ。このため,この二つを扱った多数のゲームの玉石混交度合いは凄まじいが,そのなかにあって本作は十分な完成度に達した作品だといえる。個人的にはシモン・ボリヴァルをプレイヤー・キャラクターとして選べるというだけでも,割と満足気味だ。
また,「独立」というテーマは,近代以降の世界を語るにあたり,重要なキーワードとなる。その言葉の重みは,現代に至るまで(この瞬間でさえ),色あせない――方向性の違いはそれぞれに認められるが。これを踏まえると,シナリオMODはなかなか作りがいがあるように思う。まあ,歴史を顧みるにつけ,どうしてもブラックな展開にはなりそうだが……。
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