連載
ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第25回「映画のあとはゲームで追体験せよ! ディズニー×ピクサーのメディアミックス・ゲーム再遊記(3)」
前回,Pixar Animation Studiosが生まれ,「トイ・ストーリー」を制作し始めた頃までについて語ったが,今回はその続きから。
今となっては信じられないような話かもしれないが,Pixarがトイ・ストーリーを制作している様子を,Disney側は比較的冷ややかに眺めていたという。劇場公開タイミングに合わせて作られたキャラクターグッズの商品数が,ほかのDisney作品に比べて決して多くはなかったという事実も,これを裏付けている。
劇場用のフルCGアニメ作品が,子供達が受け入られるのだろうか。3DCGのキャラクターを商品化して,本当に喜んでくれる人はいるのだろうか。そんな懸念があったっため,Disneyの幹部達は会議で“商品点数の絞り込み”を決めたのである。
確かに,Pixarが前人未踏の地に挑み,新たなジャンルで映画界へ風穴を開けようと映画を作っている段階では,その成否など誰も予想はできない。キャラクターグッズの商品化で,余計なリスクを背負い込みたくないというのも,Disneyの立場であれば仕方のない選択だろう。
アニメ版のスタッフも制作に関わっていたというゲーム版アラジンは,セルアニメのように細かくなめらかなキャラクター・モーションを実現しており,評価の高い作品となっていた。おそらくPixarとしてはトイ・ストーリーでも,そういったゲームを望んでいたのだろう。
Pixarの提案は,映画公開と同時期にゲームを発売するという形のメディアミックス案が中心だったというが,Disneyサイドは「たいへん面白い企画だとは思うが,ビデオゲームに必要な開発期間を考えると,今からでは映画公開に間に合わない。リスクヘッジのためにキャラクターグッズの商品点数を絞り込むことで合意しているはずなので,残念だがこの提案を受け入れることはできない」と一蹴した。
ご存じのとおり,主人公のアラジンは白人ではない。そのため,数多くおもちゃを購入する富裕層をターゲットにするのは難しいのではないかという見方から,商品点数の絞り込みが行われた。そのため,映画自体は子供や大人,さらにはカップルまでもがこぞって劇場に足を運ぶほどの大ヒットを記録したにもかかわらず,その時点で発売されたキャラクターグッズは少なかったのである。
そして映画がヒットするやいなや,Disney側が営業活動をしなくても,各メーカーからの企画提案が殺到し,関連グッズもかなりの売れ行きを記録することとなった。映画の公開が1992年のサマーシーズンで,ゲーム化されたのが1993年の冬ということも,こういった事情があったからなのだ。
そう,トイ・ストーリーもまた,アラジンと同じ道をたどっていたのである。確かにDisney側の思惑としては,クオリティの低い商品を世に出すことを避けたいところだろうし,そのことはPixarも理解していた。3DCGにかけてはオーソリティで幾多の賞を獲得したPixarも,映画界には参入したばかり。となれば,大先輩のアドバイスに耳を傾けないわけにはいかない。
なお当初の予定では,実際の制作費の半分をDisney側が負担することになっていた。しかし,買い揃えた機材を自社資産にするべく,PixarはDisneyに制作費の半額(2500万ドル)を請求していないという噂がある。これが事実であるなら,ジョブズ氏のPixarへの思いが尋常ではなかったということになるだろう(しかしお金持ちだ)。
そんなトイ・ストーリーは,全米で約2億ドル,全世界で約3億6000万ドルもの興行収入をたたき出すという大ヒットを記録。ジョブズ氏は,Pixar創設当時からDisneyへCG専用コンピュータを販売していたという経緯もあってか強気の交渉をした結果,映画とキャラクターに関する著作権をDisneyに譲るかわりに,映画の興行収入でDisneyが手にする額の半分を,Pixarに分配するという契約を結んでいた。
結果,3億6000万ドルの半分,つまり1億8000万ドルを映画を公開した劇場側が手にし,残りの1億8000万ドルをDisneyとPixarが9000万ドルずつ分配することとなった。ジョブズ氏が投じた5000万ドルが,見事に倍近くまで膨れあがったのである。
トイ・ストーリーのヒットを受けて,アラジンのときと同じように,キャラクターグッズ化のラインセンスを求めるメーカーがDisneyに殺到。一番先にビデオゲーム化の企画を持ち込んだのは,「レゴ スター・ウォーズ」や「レゴ バットマン」の開発元として有名なTraveller's Talesだった。
同社がそれまでに手がけたシネマゲームは,「Bram Stoker's Dracula」のみだったが,「ミッキーマニア」の下請け開発を行ったこともあってDisneyとのパイプは持っていた。そのため,難なくライセンスを取得できたようである。
Traveller's Talesは,映画をもとにトイ・ストーリーのゲームを作り始めたのだが……。というところで,今回はここまで。続きはまた来年!
■ドブ漬けゲームスープレックス(25)
Xbox 360
「ミラーズエッジ」(エレクトロニック・アーツ)
「バトルフィールド:バッドカンパニー」では,グラフィックスやオンラインプレイのクオリティで,度肝を抜かせてくれたスウェーデンのEA D.I.C.E.。その最新作が「ミラーズエッジ」だ。開発スタッフはシンガポールや日本などへ足を運び,高層ビル群を撮影してゲームに活かしたらしい。
本作発表時にはルーシー・リュー似の女性キャラが大暴れするゲームという印象が強かった。だが,いざ発売されたものを遊んでみると,リュック・ベッソンがプロデュースした映画「ヤマカシ」チックな動きがPOV(ポイント・オブ・ヴュー)的な一人称視点で展開されるという,今までに味わったことのない3Dアクションゲームだった!(プレイムービー)
チュートリアルも丁寧で(これをやらないと「忍者龍剣伝」のリュウ・ハヤブサみたいな壁登りの動きすらできない),さまざまなアクションをきちんと習得できる。そして,自分が達成したヤマカシってるジャンピング・アクションに惚れ惚れできるのだ。
ゲーム中盤ともなると,それなりの指先テクニックも必要になるため,トライ・アンド・エラーの連続を強いられるが,その分,成功した瞬間には思わず「オレってスゲー!」と自画自賛できること確実。
ただ,ジャンプボタンがデフォルトでLB(Xbox 360版)というのがやりづらい……が,スウェーデンではこれが普通なのかもしれないということで,無理矢理納得することにしよう。
ところで,一人称視点のPOVで「ストライダー飛龍」が作られたらこんな感じになるんだろうか?
「ミラーズエッジ」公式サイト
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