レビュー
二人で協力して生き残れ! “サバイバルホラー”金字塔のシリーズ最新作
バイオハザード5
人気シリーズの最新作ということもあり,発売前から世界中で注目されていたタイトルだったわけだが,カプコン公式サイトの発表にあるように,予想どおりの大ヒット。全世界の初回出荷数がシリーズ最高の400万本に達したというのだからこれまたすごい。
ホラー系のゲームが大の苦手な筆者も,バイオハザードシリーズだけは話が別で,気持ち悪いヤツらに銃弾を浴びせつつ,意味不明に後ろをビクビク振り返りながらプレイする日々がやってきたのである。
ちなみに筆者がプレイしたのはXbox 360版だ。「こちら」の記事で,本作のプロデューサーである竹内 潤氏が語っているように,基本的にPLAYSTATION 3版とゲーム内容やグラフィックスにほとんど差はないようだ。ちなみに,レビュー記事中のスクリーンショットは,せっかくなのでフルHDサイズで撮影したものをそのまま掲載したので,ぜひクリックして拡大画像も確認してほしい。
パッケージとしては,PLAYSTATION 3版のみハイブリッドBlu-rayでメイキング映像が入るが,Xbox 360版ではこのメイキング映像はダウンロードコンテンツとして提供されている。
本作は,先述のインタビュー記事でプロデューサーの竹内氏が語ったように,「起承転結における“転”にあたるターニングポイント」になる。
数々の事件で黒幕として暗躍していたS.T.A.R.S.の元隊長アルバート・ウェスカー,アンブレラの創始者オズウェル・E・スペンサー,複合企業トライセルのアフリカ支社長エクセラ・ギオネ,そして謎のフードの人物などが登場し,新たな展開へと続いていく。
もちろん,ストーリーや人物関係がある程度分かるような作りになっているので,本作でバイオハザードデビューを果たす人も安心して挑戦してほしい。
アルバート・ウェスカー |
エクセラ・ギオネ |
本作の舞台は,初代「バイオハザード」の“洋館事件”から10年後。製薬企業アンブレラ崩壊によりB.O.W.(有機生命体兵器)がテロリスト達の手に渡り,世界中にバイオテロが蔓延していた。
責任問題を恐れた製薬企業連盟はバイオテロ対策部隊「BSAA」を組織し,バイオテロの鎮圧に乗り出した。その中にクリスの姿があった。クリスはB.O.W.の闇取引が行われているというアフリカのキジュジュ自治区へ向かい,そこで新たな相棒となるBSAA西部アフリカ支部所属のシェバ・アローマと共に任務を遂行していくことになる。
悲鳴を聞いて駆けつけてみれば,住民が無理矢理に寄生体(プラーガ・タイプ2)を飲み込まされて「マジニ」(寄生された人間)へと変貌して襲ってくる。
血走った目で襲ってくるヤツらは,リアリティ溢れるグラフィックスと相まって迫力たっぷり。怖い系とビックリ系が苦手で肝っ玉の小さい筆者は,「おいおい,洒落にならねーぞ!」と,いきなり挫折しそうな気分である。
普通じゃない雰囲気の漂うキジュジュ自治区に鳴り響くサイレンと共にすべての住民が姿を消す。これから一体何が起きるのだろうか |
寄生体(プラーガ・タイプ2)を飲み込まされると即座に寄生して「マジニ」へと変貌して襲いかかってくる |
まず,前作「バイオハザード4」から大きく変更されたアイテムスロットは3×3の計9マス分で,クリスとシェバで合計18種類の武器/アイテムしか持てない。回復アイテムはもちろん,弾薬も1マスとしてカウントされるが,1マスあたりの弾数上限も少なめという印象だ。
各ステージ開始時(またはチェックポイントからのリスタート前)に,所持する武器,アイテムの選択を行えるのだが,どれを装備していくかで頭を悩ませることになる。“アイテムの取捨選択で悩む”のは,「バイオハザード4」ではアタッシュケースの導入で削除されたといえるが,「バイオハザード5」で復活したわけだ。ちなみに,武器の購入と改造もこのタイミングで行うことになる。
既存シリーズでは,所持武器の切り替えやアイテムを使うには,その都度メニュー画面を開く必要があったが,本作ではショートカット機能に対応。メニュー画面を開くことなしに,ボタン一つで武器の切り替えやアイテム使用が行えるようになった。
3×3マスのアイテムスロットのうち,上段中央/下段中央/左段中央/右段中央のマスはそれぞれ十字キーの上下左右と連動している。武器ならその武器に持ち変えるし,回復アイテムならそのアイテムを使用するなど,武器切り替えは格段にやりやすくなっている。
持ち運べるアイテムが少なくなったが,武器弾薬を潤沢に持ち歩ける「バイオハザード4」のアタッシュケースシステムよりも,所持アイテム数に制限がある本作のほうが,より“バイオハザードらしい”のかもしれない。
プレイ中にメニュー画面を開いてもゲームが進行し続けるが,ショートカット機能の実装や所持アイテム数の少なさから,メニュー画面を開く回数は既存シリーズよりかなり減っている。パニくったときなどはアイテム選択をミスることもあり,その緊張感はゲームを面白くする意味でプラスに働いていると思う。
武器攻撃は立ち止まって撃つスタイルで,移動しながらの発砲はできない。左右の旋回はややもっさりした動きだが,視点移動+武器構えを併用すれば素早く向きを変えられる |
台座式機関銃は,弾数制限がなく思う存分撃ちまくれるので気持ちがいい。しかし,撃ちっぱなしだとオーバーヒートするので注意 |
ちなみに本作では,ゲーム難度がアマチュア/ノーマル/ベテランに分かれている。アクションゲームとしてはアマチュアでも難度は高めの味付けになっていると筆者は感じたが,難しくてどうにもならないということはない。
というのも,クリア済みのステージは,個別に選択して繰り返しプレイすることが可能だからだ。たとえば,同じステージのプレイを何度も繰り返して資金を溜め,装備を整えてから先に進むこともできる。ちなみに,武器/アイテム/資金は難度をまたいで引き継げるので,前作「バイオハザード4」よりも高難度に挑戦しやすくなっている。
また,詳しくは後述するが,本作では任意のタイミングで二人プレイのCo-op(協力)モードに移行できる。つまり,難しくて先に進めないようなときは,ほかのプレイヤーに手伝ってもらうことも可能なわけだ。
新たな展開,そして出会い。ファン必見のストーリーモード
マップ構成は地形が複雑で,キーアイテムを手に入れないと先に進めないこともあるという,シリーズおなじみのもの。しかし,一部マップを除き,GPSで目指すべき位置と周辺状況が把握できるので,迷うことは少ないはずだ。また,シリーズおなじみのパズル要素も用意されているが,それほど難解ではないので,落ち着いて行動すればなんとかなるだろう。
ゲーム自体はバイオハザードらしく,チラッと怪しげなクリーチャーを見せて緊張感を醸し出したり,物陰からクリーチャーが飛び出して思わず悲鳴を上げてしまうなど,“いやらしい”演出が多い。何か出そうだなぁと慎重に進んだら何も起きなかったり,逆に油断しているときに驚かされるということが多く,味付けが実に上手いと感じた。
また,随所に挿入されるストーリーシーンはリアルタイムレンダリングなので,イベントとゲームプレイがシームレスにつながっている印象だ。ストーリーシーンの見せ方はさすがの一言で,緊張感や恐怖感を盛り上げ,本作の世界に引き込ませてくれる。特典のメイキング映像を見ると,どれだけ本作が映像にこだわって作られているのかがよく分かるので,購入した人はぜひ一度ご覧あれ。
行く手を阻む仕掛けを二人で協力して解除するなど,別行動を迫られるシーンもあるが,案の定というか,そういうときに限って敵が大量に現れたりするのでご注意を |
「バイオハザード4」のときもあったが,ストーリーシーン中にボタン入力を求められることがある。ぼーっと見とれていると入力が間に合わないこともあるので気が抜けない |
最初のステージであるキジュジュ自治区で遭遇するマジニは,見た目は人間そのもので,火炎瓶/手斧/ボウガンなどの武器を持って襲いかかってくる。ヤツらは目は血走っているし,たまに口から妙な生き物を出したりして,やたらと気持ちが悪い。
ストーリーが進むにつれて,マジニがチェーンソーを持って襲ってきたり,火炎瓶を持ってバイクで追いかけてきたり,果ては巨人マジニが登場したりと,クリーチャーの過激度も加速度的に増す。ほかにも巨大なB.O.W.やら船より大きいクリーチャーやらうにょうにょしたクリーチャーやらが登場するのだが,どいつもこいつも気持ち悪すぎる。
巨大な斧を持った処刑マジニ。斧の破壊力は凄まじく,一撃で瀕死状態になる。ただし攻撃が豪快な半面,隙も大きい |
音に反応して攻撃してくる強敵,リッカーβが大量に押し寄せる。長い舌の中距離攻撃,そして爪の近距離攻撃で即死することも多い |
バイオシリーズ初のCo-opモードを搭載!
オンラインマルチプレイが熱い
しかし「バイオハザード5」では,主人公のクリスと相棒のシェバは,「守る/守られる」という関係ではなく,共に戦う対等の関係。ゲーム中の一部パートではなく,ゲーム全体を通して二人で協力することが前提になっている。
また,ソロプレイでシェバはAI操作となるが,二人のプレイヤーがそれぞれクリスとシェバを操作できるという,「バイオハザード」シリーズ(ナンバリングタイトル)初の本格的協力プレイ,つまりCo-opモードを全面に押し出したゲームデザインとなった。
AIシェバは,掩護射撃をしてくれるのはもちろん,使用頻度の高い武器の弾薬をくれるし,プレイヤーキャラクターのライフが減ったら回復させてくれるし,ステージ中のアイテムを勝手に見つけて拾ってくれるしと,予想以上に人間が操作してるっぽい動きをしてくれる。
ときには撃ってほしくないタイミングに攻撃オブジェクトを撃って破壊してしまい,頭を抱えさせられることもあったが,これはこれで人間っぽい行動といえるので,ご愛嬌といったところか。
AIシェバに持たせる銃器やアイテムはプレイヤーが選べるので,何を持たせるかもゲームを進めるうえでのポイントになるだろう。
ソロプレイでもシェバがサポートしてくれるが,援護も完全ではないので,常に自分の周りの状況を把握しておこう。気がついたら周りが敵だらけなんてこともしばしば |
弾薬の受け渡しだけでなく,台座式機関銃での援護射撃といったサポートを頼むことが可能。逆に,AIシェバを先に進ませ自分がサポートに回ることもできる |
本作では常に弾薬が不足気味なので,パンチ/キックといったボタンアクション(体術攻撃)を積極的に使って弾薬を節約したいところ |
瀕死状態(DYING)になると,自分では回復できなくなってしまう。しかもクリスとシェバのどちらかが死ねばゲームオーバーになるので注意 |
プレイヤー同士のマルチプレイについては,画面二分割でのオフラインCo-op,インターネットを介したオンラインCo-opの2種類が用意されている。ストーリーモードはもちろん,後述するクリア後のお楽しみ要素「THE MERCENARIES」(ザ・マーセナリーズ)もマルチプレイに対応している。
オンラインのCo-opプレイだが,ストーリーモードをプレイするさい,オプションのネットワーク設定で,協力プレイの項目を「一人で遊ぶ」「招待プレイヤーのみ参加」「制限なし」に変更できる。「招待プレイヤーのみ参加」なら友達と,「制限なし」なら世界中のプレイヤーと一緒に本作を遊べるというわけだ。
インターネット接続している場合は,ストーリーモードをプレイ中に,突然誰かからの参加要請が来ることもある。参加の許可/拒否は自分で決定できるが,一人でじっくりプレイしたいときは,「一人で遊ぶ」に設定しておくといいだろう。
また,「SEND OUT」「COVER」「STOP」「THANK」という4種類の指示を簡単に出せるようになっている。この四つでプレイに必要な最低限のコミュニケーションは取れるので,ボイスチャットが苦手な人やヘッドセットを持っていない人も安心してプレイしてほしい。
やはりキャラクターを人間が操っているため,行動がさまざまで非常に楽しい。気の合う仲間とわいわい遊ぶもよし,世界中の見知らぬプレイヤーと遊ぶもよし。ただ,パートナーキャラクターを動かしているのはAIではなく人間なので,相手に不快感を与えないよう,マナーを忘れずに。
繰り返しプレイもやる価値は大いにあり!
やり込み要素で本作をしゃぶり尽くせ
「こちら」の記事で紹介済みだが,ストーリーモードをクリアすると「THE MERCENARIES」(ザ・マーセナリーズ)がプレイ可能になる。
シリーズのファンにはおなじみとなるが,このクリア後のお楽しみ要素は,生き残ることが目的の本編とは異なり,クリスやシェバなどのキャラクターを操って,制限時間内にクリーチャーをどれだけ倒せるかを競う,スコアアタックのモードとなる。
各キャラクターの初期装備は固定で弾薬も少なめ。初期装備以外の武器や弾薬などの補充は,ステージ内で調達する必要がある。
10秒以内に2体以上の敵を連続して倒すと“コンボ”が発生し,コンボをつなげるとコンボボーナスが増えてスコアが加速度的に上昇する。また,ステージ内の各所には「タイムボーナス」があり,獲得すると制限時間が延長される。
つまり,ステージにあるアイテムや敵の配置を覚えてコンボを切らさないルートを見つけ出すか,いかに操作ミスをしないかが高得点を狙うポイントになるわけだ。分かっていても冷静に行動するのは難しいけど。ちなみに,スコアがBランク以上だとステージが,Aランク以上だと使用できるキャラクターが増える。
また,ゲーム中に登場するキャラクターや敵の3Dモデル(フィギュア)集め,キャラクターコスチュームの変更といったオマケ要素がたっぷり用意されている。
これらはステージクリア時に獲得できるポイントを溜めて交換することになる。ポイントを溜めるには,同じステージを何度もプレイする必要があるが,武器を改造して威力を上げれば相対的に難度は下がるので,がんばってほしい。
そのほか,やり込み要素として実績(Xbox 360版)/トロフィー(PS3版)が合計50個が用意されている。何度も繰り返しプレイしないと,すべてを獲得するのは不可能だが,コンプリートを目指すのは楽しい。
同じステージを何度もプレイしないとポイントが溜まらないが,武器を改造すれば難度は下がる |
トレジャーアイテムの種類も豊富だ。売れば武器の改造がより楽になるのでたくさん集めよう |
武器の改造項目には威力/装填速度/装弾数などがあり,フル改造にはかなりの資金がかかる |
ステージ中には,BSAAエンブレムが隠されている。中にはかなり意地悪いところにあるものも |
言うまでもなく今までのバイオハザードでは得られなかった面白さであり,個人的にはインターネット接続環境があるなら,マルチプレイを遊ばないと絶対に損だと思う。また有料ダウンロードコンテンツではあるが,プレイヤー同士のバトルができる“VERSUS”モードも(配信が一度延期されたが)4月9日から配信されている。
筆者も完全にハマっていて,最初にビクビク怖がっていたのはどこ吹く風か,夜な夜な気持ち悪いマジニたちと戯れている。プレイしない日はないほどで,クリア後も長く楽しめることは請け合いだ。本作をまだプレイしていないという人は,まずは体験版をダウンロードしてプレイしてみてほしい。
キーワード
(c)CAPCOM CO., LTD. 2009 ALL RIGHTS RESERVED.
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