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【島国大和】ドラクエが日本のゲーム市場に残した功績
島国大和 / 不景気の波にもがく,正体はそっとしておいて欲しいゲーム開発者
島国大和のド畜生 出張所 |
4Gamer読者の皆様,初めまして。そうでない方はこんにちは。
ゲーム業界の隅っこで糊口(ここう)を凌ぐ,企画屋兼犬猫世話係の島国大和と申します。
恐れ多くも4Gamerで記事を書かせて頂くことになりました。どんな記事を書いたものやら……と正直悩んでおりますが,ゲームやゲーム業界についての話題をネタにできればと思っております。これからどうかよろしくお願いします。
というわけで,第一回めは何をネタにしよーかなーというところなのですが,今話題のドラゴンクエストについてのお話をしてみようかと思います。
ドラクエとは何ぞや。
でも,別にドラクエが,何かのゲームシステムの先駆者であったわけではない。
アメリカでは,「アカラベス」(1979年),「ウルティマ」(1980年),「ウィザードリィ」(1981年)と,既にコンピュータRPGが盛り上がっている。
日本でも,1984年には既に「ザ・ブラックオニキス」,「ハイドライド」,「夢幻の心臓」,とヒットを飛ばしたRPGがある(これらはPCゲーム)。
「イース」や「ゼルダ」は「ハイドライド」の影響下にあるし,「ドラクエ」は「ウィザードリィ」と「ウルティマ」の影響下にある。
そんなわけで,別にドラクエが先駆者だったわけではないのだけど,決定打はドラクエ。それはいったいなぜか。
日本のゲームのあり方を変えた「ドラクエ」
ゲームとはなんぞや。答えは色々あるけど,とりあえずその内の一つの回答。
「ゲームとは能力判定装置である。」
「インベーダーゲーム」は,いかに弾を避け,敵に弾を撃ち込むか,反射神経と操作能力を判定するもの。
「テトリス」は,降ってくるブロックと現在の地形とのマッチングの速度とその戦略能力を判定するもの。
プレイヤーの能力がいかに高いかを,スコアや,ステージをどこまで進めたかで評価する。プレイヤーが上手なら先に進め,下手ならそれまで。
プレイヤーの能力を判定するのがゲームだった。
だから,プレイヤーのモチベーションはいかに自分の能力を上げるか。つまり,いかにゲームがうまくなるかに向かう。
んが,RPGは違う。特に和製のRPGは違う進化を遂げた。
基本的に能力不要。
レベル上げさえすれば,どんなにゲームが下手でもとりあえず進む。
しらみつぶしをすれば,謎解きが苦手でもどうにかなる。
(ドラクエの呪文アバカム [カギ不要で扉をあける] や,レミラーマ [画面内のアイテムを発見する]等からも,それを狙って作られたのは理解できる)
ね。つまり和製RPGは能力を判定しない。だから,うまくなることがモチベーションたり得ない。
プレイヤーがうまくなる代わりに,ゲームキャラが強くなっていくんだから,そりゃそうだ。先に進みたければ,時間をかければそれでいい。
しかし,上手になるという目標を排除したら,ゲームなんて何のためにやるんだろう。
そこで,ストーリーに重きが置かれた。魔王を倒して来い,といわれたら倒さなきゃいけない気もするわよね。
「ドンキーコング」ではさらわれたレディーを助けるのは,主題ではない。ぶっちゃけ,樽をジャンプで避ける能力の向上がメイン。(何度助けても必ずまたさらわれて難度が上がってループする)
「クレイジークライマー」では,ビルを登った先に何があるかはどうでもいい。登る事に意義がある。(難度も変化せずループする)
しかしRPGは,物語の進行をモチベーションとし,プレイヤーのゲーム能力の向上を不要とした。誰だって最後まで遊べる。
ゲームは勝ってるほうが面白い。負けて面白いゲームってのはそうは無い。
そして,世の中のほとんどの人は,ゲームが苦手だったりする。
ゲーセンのゲームを1コインクリアできる人は実は希少で。でも,それまでのゲームはそういう希少な人に向けて作られていた。(というか,連コインしてもらう前提というか)
そこに出てきたRPGは,誰でも遊べるからこそ爆発的に売れた。
そしてドラクエは,誰でも遊べるようにと,RPGというジャンルを日本のコンシュマプレイヤーに解りやすく伝えることに注力されていた。
・呪文がすべて日本語的な音で分かりやすい。(メラ,ギラ,ヒャド)
・装備の概念を覚えるまで,城から出さず戦闘をさせない。(武器は装備しないと意味がないぞ)
・例え死んでも所持金が半分になるだけで,それ以上のペナルティがない。
・レベルアップというRPGのキモの要素を,少年の成長物語として分かりやすく語る。
・レベルを高く上げてもクリアしていないと,王様に早く竜王倒してこいと促される。
ドレもコレもRPG初心者に,非常に,本当に気を配って作られている。
「はなす>ひがし」 とかいう入力システムのゲームとは思えない。
それから数年後の某ゲームのマニュアルなんか,「データセーブ=データをセーブします。」とか書いてあって,当時のユーザーから,セーブってなんですかと電話が来たと聞く。
ちったぁ見習え。
そんなわけで,ドラクエのおかげで日本のゲームシーンは大きく変わった。
ゲーマーじゃない人でも遊べるゲーム,しかもそれゆえに大ヒット作というのが出てきた瞬間。
かくして,日本のゲームシーンの方向は決まった
というわけで,日本でゲームを大きく売りたきゃ,誰でも遊べる物を作るのが良い,ということに相成った。以後,RPGが大量に出回る。
誰でも遊べる(難しくない,システム的特徴は少な目)となると,もうグラフィックスとシナリオで差別化するのが一番の正道となる。
そもそも,ゲーム進行のモチベーションをそこに置いたのだからそこを強化するのは当然。そして,競合が多数出る。
その結果,グラフィックだシナリオ(ボリューム)だと,分かりやすいところにコストを投下していき,それが開発費の高騰だとか,また別の問題を生んでいくんだけど,それはまた別の話。
いずれにせよ,ドラクエがゲームの新しいあり方の一つを提示し,日本のゲーム市場の裾野を広げたのは確か。
ドラクエがなかったら,ゲームそのものに触れなかった人がもっとたくさんいたかもしれない。そういう意味でも,やっぱドラクエは偉大だよなーと思う。
ちなみに私自身,現在絶賛プレイ中なドラクエ9ですが,根性がなくてまったくレベルが上がりません。レベル10でヘタってます。
歳食ってからRPGやるのは大変だー!
■■島国大和■■ 有名ゲーム系Blog「島国大和のド畜生」の管理人で,不景気の波にもがく,正体はそっとしておいて欲しいゲーム開発者。みんなも知ってるあんなゲームやこんなゲームの開発に携わってきた同氏だが,最近は,オンラインゲームの開発にも手を出しているとかいないとか…… |
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