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「何でもぶっ壊せる」箱庭TPS。オンでもオフでもとにかく激しく楽しめる「Red Faction: Guerrilla」レビュー
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印刷2009/08/25 18:08

レビュー

「何でもぶっ壊せる」箱庭TPS。オンでもオフでもとにかく激しく楽しめる秀作

Red Faction: Guerrilla

Text by Alexander服部


 「Red Faction: Guerrilla」PLAYSTATION 3版 / Xbox 360版)は,テラフォーミングにより植民惑星化された22世紀の火星を舞台とした,オープンワールドタイプのTPSだ。プレイヤーは鉱山技師である主人公アレックを操り,EDF(Earth Defence Force=地球防衛軍)の圧政に抵抗するゲリラ組織“レッドファクション”の一員として,さまざまな作戦を遂行していくことになる。

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 このゲームをざっくりと説明すると,「セインツ・ロウ」シリーズのデベロッパが作った,オープンワールド(箱庭タイプ)のSF TPSとなる。それに加えて,公式サイトにあるように“目に見えるもの全てが破壊できる!あらゆる建造物,乗り物,オブジェクトの数々がダイナミックに破壊可能”なところが,本作の大きな特徴だ。
 先述したように,本作はいわゆる箱庭アクションであり,メインクエストとサブクエストをこなしながら広大な世界を冒険しながらストーリーを進めていく。ただ,このゲームの真に特筆すべき点は,ゲームの舞台を“火星”にしたところに尽きる。その結果,現実的な世界観をキープしつつ,シリアスなストーリーやダイナミックな“環境破壊”が楽しめるというわけだ。

 ゲームの操作方法は,開発元が同じということもあり,「セインツ・ロウ」シリーズを若干簡略化したような感じだ。同シリーズを知らなくても極めて快適に操作でき,一般的なTPSを遊んだことがある人ならすんなりと遊べる。
 動画を見たり,説明を聞いたりすると「セインツの亜流でしょ?」と思う人もいるかもしれないが,実際にプレイしてみると,そんな印象はほとんどしない。世界観とストーリーがうまく結びついていることもあり,鉱山技師が資源を集めることや,EDFの拠点をダイナマイトやハンマーで破壊するという部分に,圧倒的な説得力が生まれるのだ。

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 ともあれ,本作を「何でもぶっ壊せるセインツ・ロウ」と認識している人もいるかもしれないが,Red Faction: Guerrillaにおける最大の見どころは,“火星”という舞台であり,圧政に立ち向かう“ゲリラ”の存在なのである。

※本稿はXbox 360でのプレイをもとに制作しています。また本稿で使用しているムービーは,筆者のフレンド達に許可を得て撮影/掲載したものです


ゲリラ的ミッション,メインは銃撃ではなく爆破!


画像集#005のサムネイル/「何でもぶっ壊せる」箱庭TPS。オンでもオフでもとにかく激しく楽しめる「Red Faction: Guerrilla」レビュー
 冒頭でも紹介したように,主人公が所属しているのはレッドファクションという反政府組織で,当然ながらEDFに真正面から抵抗するだけの力はない。そこで,EDFが火星に築き上げた建築物(主に採掘所や資材庫)に対し,ゲリラとして襲撃をしかけることになる。 破壊活動を行えば,EDFが飛んできて派手な銃撃戦に突入することになるのだが,このゲームで敵と撃ち合うのはあまり賢い選択肢ではない。所持できる弾丸があまり多くないのに,EDFは圧倒的な兵力を誇っているうえ,武装車両なども利用してくるからだ。
 そこで,爆発物をうまく使って車両ごと爆破したり,建物の倒壊に巻き込んだりといった戦い方が必要になってくる。当然ながら,建物の倒壊に自分が巻き込まれると大変なことになるので,ある程度は計算して動かなくてはならないのだが,最終的には面倒になって,“更地”にする勢いで片っ端から破壊していき,生き残った敵を追討することになるだろう。

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 ミッションは何種類も用意されているが,ほとんどが破壊ミッション,もしくは人質救出ミッションになる。これに関してはストーリーとの絡みがあるのでしかたがないが,馬鹿馬鹿しいミッションがないことを,「セインツ・ロウ」ファンは残念に思うかもしれない。火星でバキュームカーを走らせたり,当たり屋のまねごとをしたりはできないので,その点には期待しないように。

 アクションゲームとしてのプレイフィールは,セインツ・ロウシリーズよりも,Gears of Warシリーズなどの,撃ち合いをメインとするTPSに近いものになっている。照準の動きやノックバック,爆発物を投げる感覚などはかなり良くできていて,箱庭アクションのそれに不満を持っていた人にもオススメできる。シングルプレイメインの箱庭アクションならあまり気にならないかもしれないが,このゲームはオンライン対戦が可能になっていることを考えると,非常に重要な要素だ。

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 一つだけ残念な点を挙げるとすれば,あまりにも火薬関連の武器が強いという部分。建物を爆破するリモート爆弾や,罠として使用できる近接地雷などの爆破物が強すぎるのだ。敵を倒して弾薬を補給しつつ,アサルトライフルで敵を掃討し続けるプレイも当然可能なのだが,爆発物を積極的に使ったほうが早くて安全だ。
 FPSと異なり,TPSと呼ばれるジャンルでは敵キャラクターを少し“硬め”に設定していることが多い。このゲームも同様だ。つまり,多数の敵との撃ち合いが多いこのゲームでの銃撃戦は,はっきりいって割が合わないのだ。それなら燃料タンクを撃つ,もしくは爆薬を仕掛けて周囲を大爆発させてしまえ,と誰もが考えるだろう。持ち運べる爆薬数をゲーム序盤から増やせることも,銃撃戦軽視になりやすい要因かもしれない。



楽しいとしか言いようがない

ぶっ壊せる世界


 ではメーカーがプッシュしている,というかキャッチコピーにもなっている“環境破壊”に関してはどうだろうか?
 はっきり言って,これに関しては“楽しい”としか言いようがない。目の前にあるオブジェクトは基本的にすべて破壊可能。それも,爆発物だけでなく,全力で振りぬくスレッジハンマーでも可能なのだ。

画像集#010のサムネイル/「何でもぶっ壊せる」箱庭TPS。オンでもオフでもとにかく激しく楽しめる「Red Faction: Guerrilla」レビュー

 オブジェクトの壊れっぷりも,物理エンジンのおかげでなかなか様になっている。土台を壊せば倒壊するし,側面のみを破壊していれば横倒しになる。崩すにしても,梁や柱を壊さないと綺麗に倒壊しない。壁を壊すだけでは,建物はボロボロになることはあっても,更地にすることはできないのだ。
 もちろん崩れてきたオブジェクトを足場にして,さらに破壊にいそしむこともできるし,建物内部の階段を壊してしまえば,上には進めなくなる。もしそうなったら建物ごと壊してしまえばいい……という脳髄まで筋肉な発想になってしまうぐらい夢中になれる。
 しかも,建物の倒壊に巻き込まれると命にかかわるという,現実社会では当たり前の事象が再現されているところにも注目。周りを気にせず,むやみやたらにハンマーを振り回していると,自分が瓦礫の下敷きになる恐れがあるのだ。

画像集#011のサムネイル/「何でもぶっ壊せる」箱庭TPS。オンでもオフでもとにかく激しく楽しめる「Red Faction: Guerrilla」レビュー

 オブジェクトの破壊手段としては,ハンマーによる打撃以外にも,燃料タンクを射撃して爆発させたり,ほかの強力な武器を使ったりしてもいい。重力爆弾で建物を内側に崩壊させるのも渋いし,ロケットランチャーで木端微塵に破壊するのも男っぽい。一般的にはリモート爆弾を用いるのが基本と言えるのだが,破壊方法のバリエーションは非常に豊かだ。個人的にはバックパックを背負って,その能力を駆使して壊すという方法が最も破天荒で楽しめるのではないかと思う。
 直線に走り,線上にあるものを破壊しつくす「ライノ」で柱をなぎ倒したり,急上昇が目的のスラスターの推進力を駆使して建物の天井をぶち抜いたりもできる(ジェットパック以外のバックパックはオンライン専用)。
 ただ,シナリオはかなりシリアスであり,片っ端から壊しまくって楽しむというストーリーではないので,上記のような環境破壊のカタルシスを四六時中味わえるわけではないのだが,とにかく“破壊”に関しては良くできているし,片っ端から壊してやろうという気にさせてくれる。


レッキングクルーこそが最大の魅力


 本作ではシングルプレイのストーリーモードだけでなく,オンライン対戦や,レッキングクルー(WRECKING CREW)というモードも用意されている。
 レッキングクルー,という言葉に聞き覚えのある人はかなりのゲームマニアか,単純に35才前後の年齢の方だと思う。過去に任天堂がファミリーコンピュータ用ソフトとして発売したゲームに,同名のものがある。そのゲームではマリオが主人公なのだが,ゲーム内容はビルの解体。ビルを片っ端から破壊していくのが目的のアクションパズルゲームだった。
 そしてここで紹介するWRECKING CREWモードだが,ルールは単純明快。時間の許す限りステージにあるオブジェクトを破壊すること。武器やバックパックはステージ選択の際に選ぶことができる。装備がランダムで選ばれるチャレンジゲームであっても,使いにくい武器は拒否できるので,最終的には自分が破壊工作に向いていると信じている武器を使っての破壊活動に勤しむことができる。


 Xbox 360版では,このレッキングクルーモードで累計2500万ポイントを取ることで,とある実績が解除されるのだが,一回当たりの平均が7万〜10万ポイント。果てしない道のりのように思えるかもしれないが,実際にプレイしているとそうは感じない。短時間で壊しまくるという,極めて分かりやすく本能的に大暴れできるモードなので,何度も挑戦したくなる中毒性がある。
 しかも,建物の倒壊をうまく利用して効率よく破壊していかなければスコアが伸びないので,燃料タンクの誘爆をうまく利用したり,倒れる方向をうまくコントロールしたりする必要がある。任天堂のレッキングクルーほどのパズルゲームではないのだが,これはこれで,大味ながらもパズル要素が楽しめる。個人的にはこのモードのためだけに,本作を購入してもいいと断言できるほどの魅力を感じた。


カオスな魅力に満ちあふれた

オンライン対戦に注目


 一般的には,箱庭アクションのオンラインモードはおまけ程度に考えている人が多いかもしれない。「ライオットアクト」や「セインツ・ロウ 2」「マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス」などでもCo-opが可能だったものの,それが新しい楽しみを与えてくれるかというと,そうでもなかった(もちろん協力プレイならではの楽しみはあるが)。例外的に「グランド・セフト・オートIV」のオンラインモードは,カオスな魅力に溢れているものの,オープンワールドタイプのアクションゲームというジャンルで考えるとオンラインを生かしている作品はまだまだ少ない。
 TPSでは,GoWシリーズの対戦は素晴らしいものがあるが,これも例外に近い。オンラインでの対戦となると,レースゲームやFPSが極めて強いジャンルになっているが,それ以外のジャンルはまだまだこれからといった状況である。

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 本作のオンライン対戦は,数少ない“例外”に含めていいと個人的には思う。対戦に関しては一般的にいうランクマッチ(世界中のプレイヤーが敵であり味方であるガチンコ勝負)とプライベートマッチ(フレンドを集めてワイワイ楽しめる)が用意されているのだが,そのどちらでも,ルールを細かく設定することができる。
 マップは当然として,デフォルトの武器や体力,移動速度,建物の壊れやすさやバックパックの初期装備などなど。ここまで細かく設定できるのは,筆者のプレイしたことのあるタイトルでは「Halo 3」ぐらいしか思いつかない。細かく設定できれば楽しいというわけではないのだが,飽きることなく遊ぶためには大事な要素だ。

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 そしてルールはともかく,ステージには武器とバックパック,オブジェクトなどが点在している。強力な武器や使いやすいバックパックを求めて移動するにしても,敵との遭遇に気をつける必要があるし,建物に逃げたところで,建物ごと破壊される恐れがある。しかも武器の種類が豊富で,バックパックもユニークなものばかりだ。急上昇で空高く舞い上がるスラスターバックパックを利用して,上空からロケットランチャーで建物ごと強引に破壊したり,ステルスバックパックを用いて物陰からスナイプしたり,スピードアップバックパックで一気に距離を詰めてのハンマー攻撃を仕掛けたりと,多種多様な戦い方が楽しめる。
 実際に遊んでみた感覚だけで言うなら,本作は,オンライン対戦を完璧に調整してから,シングルプレイモードを作ったのではないかと思うほどの対戦バランスだ。地形すら無視できる環境破壊が可能なだけでもバランス調節が難しいと思うのだが,対戦をやり続ければ続けるほど,よく練りこまれていることが分かる。決してスポーツ系でもリアル系でもないので分類が難しいのだが,対戦ファンならば絶対に経験すべきものの一つだと断言したい。

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タイミング的にライバルはGoW2?

まさにEDFに抵抗するレッドファクション?


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 このゲーム,発売する時期が悪かったからか,若干地味な印象がある。何といっても今年最大級の注目ソフトの一つ,GoW2の発売直後に登場したのだから,その印象もやむなしといったところだろうか。
 海外では,化け物クラスのソフトの発売日が分かっていると,メーカーによっては発売時期をずらすことが少なくないし,Microsoftは他社のクリスマス商戦を邪魔しないためか,少し早めの秋口にHaloシリーズを出すようにしている。ソフトを購入する人間の資金力やゲームを楽しむ時間は有限であることが分かっているからだ。
 もちろん,パブリッシャがゲームを発売するタイミングには,さまざまな要素が絡んでくるのだが……Red Faction: Guerrillaに関しては,とにかく発売時期が残念でならない。遊んでいない人には皆目理解できないかもしれないが,GoW2は化け物タイトルの中でもトップクラスの化け物だ。ストーリーモードもオンライン対戦も,(海外での)発売から1年経った今でも最高品質であり,最高に近いバランスを保持している。プレイヤーの時間と資金は有限なのだから,Red Faction: Guerrillaほどのタイトルでも,苦戦を強いられるのは仕方のないことである。

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 「Red Faction: Guerrilla」はとてもよくできたゲームであり,筆者も猛烈にお勧めしたい。しかし,日本での発売時期が悪かった。これが1か月前であれば「黙って買え」クラスのタイトルで,重厚なシナリオが好きだったり,箱庭アクションが好きだったりするならば,かなり長時間楽しむことができる良作なのだ。
 そこで言葉を少々変えてみたい。「GoW2を遊び倒した,もしくは遊ぶ予定のない人は,Red Faction: Guerrillaをプレイしてみてほしい」。レッキングクルーモードと対戦のバランスに関しては全力で保証できる。TPSとしての完成度と,何でもぶっ壊せる箱庭アクションとしての面白さに少しでも食指が動く人であれば,購入して損はないタイトルであることは確実だ。

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動画撮影機材:トムソン・カノープス HDRECS
動画編集用ソフト:トムソン・カノープス Edius Pro 5
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    Red Faction: Guerrilla

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