インタビュー
「のびのびBOY」の高橋慶太氏と「PixelJunk Eden」のBaiyon氏による対談を掲載
今回はそんな疑問を解決すべく,「PixelJunk Eden」のグラフィックスとサウンドのディレクションを担当したBaiyon氏と,「のびのびBOY」の開発者である高橋慶太氏のお二人に対談をしてもらい,ゲーム制作における哲学について語っていただいた。
Baiyon氏(左),高橋慶太氏(右) |
※編注
この対談はアメリカ人のジャーナリスト,Jeriaska氏の希望によって実現したもので,同じ内容の英語訳が「GameSetWatch」に掲載されている。
なお,Jeriaska氏が同席できなかったため,Baiyon氏がJeriaska氏から預かった質問を読むという形で対談が進められた。
「ここまでか」と思っても,さらに作りこめるのがゲーム
Baiyon氏:
早速ですが,Jeriaskaさんから預かった最初の質問です。
「のびのびBOY」は春のバージョンアップで,29個の音楽オプションが追加されました。また,「PixelJunk Eden」は,各ステージの音楽が新しくなった「PixelJunk Eden encore」がリリースされました。
このように完成したゲームに要素を追加するにあたって,苦労はありましたか? また,どのようにして追加要素を組み込みましたか?
高橋氏:
そうですね。最初にリリースした「のびのびBOY」は,当初予定していた要素の3割か4割ぐらいを実装したものでした。
Baiyon氏:
そうだったんですね。ゲームの中で月に行けるじゃないですか。そうなってみて初めて「ああ,そういうことだったのか。世界観としてこうやって広がっていくんだな」ということが分かりましたね。
僕の場合は,ゲーム開発に携わったのが初めてだったのですが,要素を追加するときはちょっとだけプログラミングについて分かったこともあり,新しい工夫が結構考えられるようになっていました。やればやるほど楽しいと思いましたね。
のびのびBOY |
PixelJunk Eden |
高橋氏:
そうそう。一個のゲームを長い時間かけて作っていくと,どんどん理想の形に近づいていくので楽しいです。でも,やればやるほどお金がかかってしまうんですよね……。
Baiyon氏:
「ここまでか」と思ってからでも,ゲームってどんどん作れますから。まあ,それが楽しいんですよね……,ってなんか話が終わりみたいになっちゃってるじゃないですか(笑)。
高橋氏:
本当だ。どうしましょう(笑)。
Baiyon氏:
では,話を戻します。のびのびBOYはアップデートによってかなり変わりましたか?
高橋氏:
ええ。発売後でも手を加えられるのがダウンロードゲームの強みなわけで,ムダにアップデートを繰り返したかったんです。
Baiyon氏:
ムダにって(笑)。そんなムダを作れるほどサーバーは大丈夫なんですか?
高橋氏:
サーバーも危険だし,ダウンロードのコストもかかるし。まったく邪魔くさいですね,そういった制限は。
Baiyon氏:
のびのびBOYの容量を見たら580MBとなっていて,結構重いです。
高橋氏:
ええ,サウンドも追加していますし,全部更新したようなものですから。
Baiyon氏:
そうだったんですね。PixelJunk Edenの音楽はループにしないという話があったのですが,最終的にはループにしました。ですが,ループには聴こえないようにしたいと思ったので,10分ぐらいある曲もあるんですよ。結局トータルで100分ぐらい曲を作ったのですが,拡張もそのぐらいあるので,プログラムの容量は結構あります。
高橋氏:
PixelJunk Edenの音楽データはATRAC3ですか。それと画像は何で描いているんでしょうか。
Baiyon氏:
はい,ATRAC3ですね。で,植物などはインクとか墨汁で描いて,それを最終的にベクターイメージやポリゴンで表現しました。
ただ,拡大するとポリゴンの折り返しが,やっぱり納得いかなくて,ぎりぎりのサイズ以上の拡大はできないようにしました。
高橋氏:
すごい。ズームに耐えられるんですね。
Baiyon氏:
拡張版の一番始めに,すごく大きい雑草のステージがあって,そこでも大丈夫でした。とはいっても,実は結構継ぎはぎだらけなんですよ。
というのも,僕自身がプログラマに依頼するときに,あまりにもきっちりと指示を出しすぎて,汎用性がなくなってしまったのです。ある程度プログラマやデザイナーに任せればそんなことはなかったでしょう。でも,初めにそういった方法で進めたときに,あまりクオリティが高くならなかったのです。であれば,全部きっちり作りましょうということになり,実装された後も植物のパーツやレイアウトとかをプログラマに細かく確認しました。そういう意味で,継ぎはぎなんです。
高橋氏:
そうだったんですか。でも後悔してますか? してないですよね(笑)。まあ,もっとやれる部分があったのではないかっていうことは,たくさんあるでしょうけど。
Baiyon氏:
全体的にアルファ(透明度)が使えたらもっときれいなステージが作れたかもしれないと思いましたけどね。岩に埋まってる枝とかも中が見えてしまうので,それが嫌だったので仕方なかったのですよね。
そういえば,のびのびBOYにはちゃんとした終わりはあるんですか?
高橋氏:
ええ,ありますよ。
Baiyon氏:
状況が整えばエンディングといった感じですか。
高橋氏:
そうです。もう絶対泣ける終わりが入ってます(笑)。
伝えたいのは「ド」と「レ」の間的な感動や面白さ
Baiyon氏:
では,次の質問に移ります。「のびのびBOY」や「PixelJunk Eden」は,ほかとは一味違ったゲームだと思いますが,すごく引きつけるような力を感じます。近年ではゲームプレイヤーが常に新しい体験を切望しているようですが,それに応えるために,ゲームクリエイター達はどのようにあるべきだと思いますか? 必要なのは,探究心や強い想像力でしょうか。
高橋氏:
新しい体験を切望してないような気がするんですけどね(笑)。
Baiyon氏:
僕もこの質問を見たときに,日本のユーザーの場合は新しい体験を望んでいないのではないかと思いました。みんなビッグタイトルが好きですしね。
高橋氏:
この方向で話が進むと,愚痴っぽくなってしまいますね(笑)。「結局俺らが作ってるいるようなゲームはみんな分かってくれないんだ」みたいな。
Baiyon氏:
例えば「ファイナルファンタジー」をプレイした人がそれっぽいゲームを作ろうとしても,とてつもなく時間がかかるわけで,若い人達はそういうエネルギーを持ってやれるのかって話です。
僕は,毎月京都のMetroというクラブでパーティをやっているのですが,シーンを作ることとモノを作ることはほとんど一緒だと思っています。
お客さん側が,僕の作った物に反応して今度は,その人達が次の音楽の担い手になってくれたらいいなというか。音楽では結構当たり前なんですけどね。
パーティーに来たお客さんにDJmix聞いてくださいって渡されて,気に入ったら次のパーティでDJをやってもらうといったように,循環することが結構あるんですよ。まあ,ゲームは基本的に会社単位で作るので,同じようにはいかないでしょうが。
例えば高橋さんのチームにいる人が,「俺もこういうもの作りたい」と言って,別のプロジェクトを立ち上げて何か作るっていうことはあり得ると思うのですが,やっぱり難しい部分もあるでしょうし。でも,そういう形で色んなゲームが出てこないと面白くないわけですしね。「担い手としてのゲーム」みたいなのってあるような気がするんです。
高橋氏:
「塊魂」のときからそういうことは考えていましたが,あんまり広がらないんですよね。新しい物を出してユーザーからの反応が薄いと,「どんだけ俺は恥をかけばいいんだ」っていう感じになります(笑)。
のびのびBOYを作ったときに,「大丈夫なの。あんなにアート系に振ってしまって。もっと分かりやすくしたほうがいいんじゃないの」と心配されましたから。
Baiyon氏:
のびのびBOYは,すごく分かりやすいゲームだと思いますよ。いわゆるアート系というものではない気がします。
高橋氏:
いや,そういうことではないのですが,アート系とおっしゃる人の言うことは分かります。
Baiyon氏:
高橋さんが作るゲームは,ほかのゲームに対するカウンター的な存在だと考えていますか? まあ,全部カウンターだとは思うんですけど,たまに自分の矛盾に気付くというか。
例えば別のゲームに対して文句をいうけれど,もしそのゲームがなくなったら,それと比較していた自分のゲームの存在意義がなくなってしまうと感じることはありませんか?
高橋氏:
Baiyon氏:
でも,やりたいことはあるじゃないですか。僕と高橋さんってすごく立場が違いますよね。僕はPixelJunk Edenが初めての作品ですが,高橋さんはもうベテランでいらっしゃるわけで。僕はゲーム作りを始めたのが二年前ですからね。
高橋氏:
でも,俺も塊魂のときはそうでしたよ。初めてのゲームが塊魂で,入社二年目だったかな。
Baiyon氏:
僕はそういう意味で期待している面があると思います。
高橋氏:
ゲーム業界に?
Baiyon氏:
業界というよりは,メデイアとしてのゲームにですね。
高橋氏:
もちろん,それはそうです。俺も可能性は感じるし,いいと思います。でもどこかで,「これでいいのかな」という気もします。ゲームってなんだかんだで贅沢品じゃないですか。Game Developers Conference(GDC)でも講演しましたが,ゲームを作りたいという思いよりも,楽しいことがやりたいっていうほうが強いから,それを達成するのはゲームじゃなくてもいいという考えがあります。
例えば,アフリカやイラクにいる子供達はゲームなんかやってられないです。GDCとかいって局地的に盛り上がっていますが。HDRとか(そういうゲーム機もないような地域の人達は)知らないじゃないですか。
Baiyon氏:
絵の具を見たことがないアフリカの子供は,色という概念がないらしいです。空は空。空色という概念はないんでしょうね。
高橋氏:
低価格のゲームが発売されて,そういった人達がゲームを遊べるようになったらそれで解決かっていうと,そうではないんですよ。ゲームがなくても面白いことはいくらでもありますし,そういう一見貧しいような地域でも,そこでしか体験できない楽しみは当然あるわけです。
それをマクドナルドみたいに,全世界にお店を普及させようなんていう考え方が間違ってると思うんです。でも,そういうのに携わって,そういうのでご飯食べてる俺はなんなんだろうっていうことを考えることもあります。なんか,学生みたいな悩みですけど。
Baiyon氏:
音楽の話になりますが,「ドレミ」っていう音階ができて,それが普及した時点で,民族独特の音階がなくなっていったじゃないですか。「ド」と「レ」の間には無数に音があるはずなのに。
僕達は広い意味で面白いものを作りたいと思っているのでゲームじゃないもの,例えば「ド」と「レ」の間みたいな感動や面白さをピックアップして違う形でプレゼンテーションできると思うんです。そして,「こういうものもあるんだ」ということに気付かせることもできます。だから,視野の広い人間がそういうことをやっていかないといけないと思うんですよ。状況が変わらないというのはおっしゃる通りです。でも,僕はそれでも頑張りたいと思うわけです。
高橋氏:
頑張りたいですね。まあ,みんなまじめだよね。
Baiyon氏:
え,一緒じゃないですか。高橋さんも相当まじめじゃないですか。
海外なんて関係ない! ゲームは言葉がなくても通じるもの
Baiyon氏:
では,次にいきます。「日本のゲームクリエイターはもっと海外のメディアと交流をすべきではないか」ということです。ジェリアスカさんは海外の人なので,その視点からの質問ですね。
高橋氏:
うん。これはよく分からないですね(笑)。
Baiyon氏:
ええまあ,そうですね。僕が思うのは,向こうはライターがしっかりいて,いろいろと聞いてくれます。それは作る側にとってもすごくいいことのような気がしますね。
それこそGDCで僕はすごく感動しました。開発費を何百億円とかかけてるゲームの開発者とかが,目をキラキラさせて「やっと会えた」と言わんばかりに感動してくれて。彼らはビジネスとは別の部分でゲームについて真剣に考えている人達なんだって思いました。だから売上げとかは関係ないんですよね。何かみんなで一つの目標に向かおうとしてる力っていうのがすごい気持ちよかったです。だから楽しくて。もっと交流したいなって素直に感じました。高橋さんはどう思いますか?
高橋氏:
必要なんだけど,「どんなゲームを作るか」ってことをもっと普通に考えればいいと思うほうが強いかな(笑)。
Baiyon氏:
例えば自分のチームの若い子が悩んでいたら,「GDCに行ってきたら」と声をかけないでしょうか? 僕はもしそういう状況になったら「行ってみたら」って助言すると思います。
高橋氏:
マジで!?
Baiyon氏:
「一回行ってみな」と言うと思いますよ。
高橋氏:
でも,多分それは自分でPixelJunk Edenを作ったからですよね。なにも作っていない状態で行っても,そんなに楽しくなかったと思います。
Baiyon氏:
そうかもしれないです。でも日本で悶々としているぐらいなら,一回GDCに行ってみてショックを受けてもいいのではないかと思いました。「やっぱりみんなゲーム好きなんだ」とあらためて考えると思いますよ。
高橋氏:
思います。思いますけれど,GDCも昔と比べると大きくなりました。今では,「売れ線の作り方」とか「失敗しないゲームの作り方」とかいうレクチャーが堂々と行われていて,そういうものはやめてもらいたいですね。
実は,実験的ゲームのワークショップ(Experimental Game Workshop)で塊魂を紹介したことがあります。でもいまは,そこで紹介されるゲームが徐々につまらなくなっているんですよ。エクスペリメンタルなのに,ただの一発ネタで,あとはしゃべりで終わらすみたいな。プレゼンテーションで笑わそうという流れになっています。2009年のGDCはまったく面白くなくて「何がエクスペリメンタル(実験的)なんだろう」って思いましたね,正直。
Baiyon氏:
もはやエクスペリメンタルというジャンルが確立されてしまったということかもしれないですね。ゲーム業界でいうところのエクスペリメンタルはだいたいこういう雰囲気が分かってきたら,それっぽいものがいくらでも作れるといったところでしょう。
では,海外の開発者やユーザーとの交流については,どうでしょうか。
高橋氏:
それは当然メリットがあるし,確かに価値はあります。GDCでは塊魂のときに賞をもらったんですが,そのときはさすがに感動しましたし,日本の田舎で作ったゲームが海外で認められたっていう驚きと感動がありました。ただそれはモノありきで語らないといけないので,何もない状態で海外に行っても全然だめなわけですよ。何かあるから向こうが興味持ってくれるわけで。だから外を見る前に,まずは自分の中でちゃんとしたモノを作るべきだよね。
Baiyon氏:
それでも,なにかきっかけになるのではないでしょうか。僕はGDCに行って,「ああ一人じゃないんだ」って思えましたし。
僕はゲーム以外にもいろいろなことをやっているので,ほかのゲーム開発者とは動きが違います。もちろんそれはゲーム作りにとってすごくいいことだと思っています。でも,GDCはそういったスタンスでも許してもらえる場所だったのでワクワクしました。こうやって自分の持ってる物や感覚をゲームとして形にすればココの人達には届くんだっていうのが理解できて,すごく“ガソリン”をもらったと思いましたね。
高橋氏:
だからそれも,PixelJunk Edenを作ったからでしょ? そんなに国内外ってあんまり関係ないと思いますよ。そんなに考える必要あるのかな。国際的コラボとか。海外で受け入れられたのは嬉しいけど,日本で受け入れられたことがすごく嬉しかったですね。
確かに,言葉が通じない中で分かってもらえたという嬉しさがあります。でも,日本で小学生が「かたまりだましい!」とかいって転がっているなんていう話を聞くと,そっちのほうが嬉しいです。あんまり海を越えてとか考えたことはないです。
Baiyon氏:
日本人だけに向けて特別に,といった感じで作ってはいないですからね。
高橋氏:
だってゲームじゃないですか。「言葉がなくても通じるのがゲームでしょ」みたいなところはありますよね。
Baiyon氏:
そうですね。でも,高橋さんが何らかの仕事をするときに,クライアントは高橋さんなら海外の感覚をつかんでいると考えると思います。そこはどうなんですかね。
僕達は,頭で理解するのではなくて,“肌で感じる”部類の人間だと思います。そんな僕達にとっては,海外や国内っていう垣根は見えないです。また,海外にもよく行くので,さっきいったようなコンプレックスも感じにくいです。でもそういうチャンスがない人の場合は,分からないのかなって思います。例えば,「洋ゲーっぽい」っていう言い方がありますが,僕らからすれば,「洋ゲーってなんなの?」っていう話になるわけですよ。のびのびBOYも洋ゲーっぽいっていわれませんでしたか?
高橋氏:
一回言われました。
Baiyon氏:
腹立ちますよね。多分,褒めてくれているのだとは思いますが。
高橋氏:
え,褒めているんですかね?
Baiyon氏:
おそらくですが,「センスがいい」っていうことだと思うんですよね。
高橋氏:
そうなのかなあ(笑)。分からないですね。
Baiyon氏:
え,違いますか?
高橋氏:
分からないですね。洋ゲーはセンスがいいんですかね。
ところで,新しいゲームを発表すると,みんなすぐにジャンルを聞いてきます。「これって何ゲーなの?」というふうに。多分,ジャンルがはっきりしないと,プロモーションがしづらいんでしょう。
Baiyon氏:
ああ,そうですね。音楽業界でも,ジャケットの帯にテクノとかハウスといったようにジャンルが書いてあります。あれはなぜかというと,ジャンルがはっきりしないと,レコード会社内でどの担当につなげばいいのかすら分からなくなって,話すらできないということがあるからなんですよ。完全に新しいタイプの音楽になると,「何これ,ポイっ」みたいになってしまうんです。
話は変わりますが,もっとみんな現金のやり取りをすればいいと思っています。一つ作ってそれを売って儲けたお金で五つ作って,50個,100個……みたいにどんどん作る量を増やしていったほうが自然だし,リアリティがあると思うんですよ。
高橋氏:
俺もそういう成果が生まれることに関しては嬉しいですけど,単純に喜んでるだけでもダメだと思っています。素直に喜べない部分も当然あって,「どうしていこうかな次は」っていうことを常に考えています。俺は会社に入る前から物を作っているけど,「出来た。やったー」っていう感じがないんですよね(笑)。人に喜んでもらっても,「あっそう」といったように感じてしまうんです。何なんでしょうね。
たぶん,頭の中でできているゲームに,いろいろと作業をしてなるべくそれに近いものを作っているという感覚なのかもしれません。だから,作り終えると「ああやっと終わった」っていう思いのほうが強くなるのでしょう。
Baiyon氏:
ゴールは見えているに,そこまで行くのがめちゃくちゃ大変なので,達成感よりも解放感を強く感じるのかもしれませんね。
高橋氏:
そういった意味でも,個人ではなくてチーム作業のほうが嬉しいです。自分が思いつかなかったアイデアが出てくることもありますからね。だからゲーム作りは楽しい。俺はプログラムが書けないけど,書けなくてもいいですしね,実際。
Baiyon氏:
では,次の質問にいきます。のびのびBOYやPixelJun Edenには,デザインも個性も新しいキャラクターが登場します。それぞれ,キャラクターが誕生した過程をお話しください。
のびのびBOYのボーイは,もともといたのでしょうか?
高橋氏:
ええ,いましたよ。
Baiyon氏:
のびるのが先ですか? それともデザインが先ですか?
高橋氏:
のびるのが先ですね。
Baiyon氏:
そうなんですか。
高橋氏:
のびのびBOYは俺一人で考えたゲームではなくて,スタッフと話し合ってるときに出てきたアイデアで,ボーイのキャラクターもスタッフがささっと書いてくれたものがベースです。のびる前とあとでどう違いを出すかっていうことや,ソーセージみたいにしても気持ち悪いので,両端に球体をつければ,形も分かりやすいだろうなどと考えた結果があれです。
Baiyon氏:
PixelJunk Edenは,開発の初期段階ではキャラクターがいなかったんですよ。それで,キャラクターを入れようってなったときに,とりあえずただの円形にしようという話が出たんです。でもそれだけは絶対やめてくれと頼み込みましたね(笑)。
開発がちょうど中間点という状況だったので,手書きでアニメーションを作るのは間に合わなかったんです。そこで,植物の物理エンジンを利用したらいけるんじゃないかという話になって,キャラクターのボディに物理エンジンで動く手足をつけて完成させました。ちなみに,形も自分が納得いく物に描き直しました。いろいろと制限があったので,実装できる形になるまでいろいろ試行錯誤しましたけどね。
そういった手順を踏んでメインキャラクターが決まりました。残りの二つもそれと同じにするという案があったのですが,それはやっぱりおかしいということになって,別のデザインになったという経緯があります。
最終的には,男の子と女の子,あとはメガネでちょっと機械に強いオタクみたいなキャラクターにしたんです。どうしても3人が冒険してるような雰囲気を演出したかったので,それぞれ個性をつけました。
高橋氏:
PixelJunk Edenを考えたのは,ディレクターですか?
Baiyon氏:
そうです。あとはディラン(Q-Gamesの代表取締役社長)ですね。
高橋氏:
あ,そうだったんですか。
Baiyon氏:
僕はゲームディレクターではなくて,ミュージックとアートを担当しただけなんですよ。
高橋氏:
なるほど。
Baiyon氏:
まあ,Q-Gamesはかなり自由な雰囲気の会社で,自分がこういう性格をしてるのもあって,初めからお互いに合意のもと,一緒に協力してやりましょうという話になっていました。だから最初から,いろいろと自由に言わせてもらえたし,気に入らない表現に対してははっきり「良くない」と言っていました。いろいろと勉強させてもらったと思っています。
では,次の質問です。ゲームの中でユーモアを感じる部分やプレイヤーをビックリさせるような要素の役割についてお話ください。予想外の展開を用意してプレイヤーを驚かそうとしたことはありましたか?
高橋氏:
そんなに細かく,「ここでビックリさせよう」みたいなことは考えていませんね。まあ,自分が作るゲームの存在自体で驚きを与えたいとは思いますが。「ええっ,これでゲームなんだ」みたいに。
Baiyon氏:
そうですよね。一ついいなと思ったらほかのゲームもいいなと思えますし。
高橋氏:
ええ,あれが認められたなら,これでもいいかなといった具合に寛大になってきます。
Baiyon氏:
なるほど。あえて挙げるとしたらキーワードは何でしょう。と,なんか広報さんみたいな質問になってますが(笑)。
高橋氏:
え,なんだろう,「くだらなさ」かな。「くだらないなあ,こんなのでゲームと呼んでいいの。でも何か楽しいね。こんなのでいいなら俺も!」みたいにどんどん開発していく人が増えたら嬉しいとはずっと思っています。
Baiyon氏:
僕の場合は「気持ちいい」ですね。PixelJunk Edenは明け方のクラブのような雰囲気,そういう気持ちよさを演出しよう心がけました。
高橋氏:
それはなかなか伝えづらそうだ。
Baiyon氏:
高橋さんはゲーム自体のコアな部分に向かおうとしているから,その表面の要素をどんどんはがしている感じですよね。
高橋氏:
そうですね。
Baiyon氏:
僕がやっているのは,周りから攻めている感じなので,一緒に仕事をするときは,分業できそうです。
高橋氏:
じゃあ,一緒に作りますか。 なんか大喧嘩になりそうですが(笑)
Baiyon氏:
ええ,確実に喧嘩しそうですが,ぜひ(笑)。
都合によって質問者/進行役が不在で進められた対談ということもあり,かなり脱線してしまった部分があったが,二人がどんなことを考えながらゲームを作っているのかが,垣間見えたのではないだろうか。彼が次にどんなエンターテイメントを提供してくれるのかに注目したい。
- 関連タイトル:
のびのびBOY
- 関連タイトル:
PixelJunk Eden
- この記事のURL:
キーワード
(C)NBGI
(c) 2008 Q-Games Ltd., All Rights Reserved