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映画「ドットハック セカイの向こうに」は“お前ら”のために作られたんだ! 「.hack//T.E. ―ぴろし社長が『.hack//3rd SEASON PROJECT』について大いに語る―」レポート
劇場版「ドットハック セカイの向こうに」公式サイト
2002年にプロジェクトが開始され,来年2012年で10周年を迎える「.hack」シリーズ。ゲーム,アニメ,マンガなど,さまざまなメディアで作品が展開されており,根幹となるその世界観やストーリーの構築には松山氏率いるサイバーコネクトツーが深く関わっている。
「.hack」シリーズには1st〜3rdの3つのシーズンが存在し,現在は2010年発売のゲーム「.hack//Link」(PSP)や,2011年発売のOVA「.hack//Quantum」などを中心とする3rdシーズンが進行中だ。
今回のトークのテーマとなったのは,2012年1月21日より公開される劇場用3Dアニメーション「ドットハック セカイの向こうに」(以下,「ドットハック」)と,本作をはじめとする「.hack//3rd シーズンプロジェクト」の仕掛けについてである。
「ドットハック セカイの向こうに」とは,松山氏が監督を務め,サイバーコネクトツー社内の映像制作チーム“sai-サイ-”によって作られた3Dアニメーション作品だ。今年8月に制作発表が行われた本作だが,松山氏は「皆さんのTwitterやFacebookやブログなどを粘着質に見ています。本当にさまざまな意見が出ていますが,愛のムチだと受け止めています」と述べる。中でも「“映画”『ドットハック』って“ゲーム”『.hack』シリーズと関係ないんでしょ?」という意見が多かったらしく,これには会場に集まったファンも苦笑混じりに頷いていた。
しかし,こうしたファンからの意見に対して,松山氏は大きく「NO」を突きつける。
たしかに,これまでとは分野が異なる劇場用アニメーションということもあり,一般の映画誌などのインタビューに対しては松山氏も「従来のシリーズを知らない方にも楽しめる内容です」と述べているという。だが,松山氏はここで「ファンなら楽しめる仕掛けがたくさんある」と断言。「『.hack』シリーズを語るために欠かせない要素が『ドットハック』には隠されています! “お前ら”のために作ったんだ!」と松山氏が熱い口調で語ると,客席のファンからも歓声が起こった。
ここで,ファンこそが楽しめる要素として,本作「ドットハック」におけるマニアックな世界観の説明がなされた。今回は映画作品となっているため,作中では世界観のごく一部しか描かれていない。だが松山氏によると,これまでのゲーム開発と同様,「(作中に登場する)CC社の社員になった気持ちで」細部に至るまで設定資料を作成しているそうだ。
まずは,シリーズを通して登場するオンラインゲーム「THE WORLD」の最新バージョンについて。これまでは「The World」という表記だったが,今作からは「THE WORLD」とすべて大文字の表記になり,ゲームのバージョンは「黄昏の碑文」を元にリニューアルされた「THE WORLD FORCE:ERA」(「ERA」とは英語で「世代」「時代」といった意味)となっている。
また,ネットワーク調査局「NAB」のロゴもここで初めて公開された。これまでのシリーズのキャラクターにもNABの調査員がいたが,今回はデビッドとエレノアの2人が新たに登場する。彼らは“ある目的”のために来日したそうで,松山氏の意味深な口ぶりからすると,どうやら今作以外の作品にも登場するようだが――?
「進化するウィルスバグ」として,「ドットハック」に登場する新たなウィルスバグも紹介。これには「.hack//Quantum」に登場したハーミットの黒枝ともつながりがあり,その開発には研究機関「PFW」が携わっているそうだ。
また同じく「.hack//Quantum」とのつながりとしては,ALGOS社のコンピュータウィルス駆除ソフト「ソフィア」の変遷も見られる。2022年が舞台の「.hack//Quantum」では初代のソフィアが登場したが,2024年の「ドットハック」の世界では,指揮官型と量産型がチームを組んでウィルス除去を行う二代目ソフィアの活躍が描かれるそうだ。
今作の舞台となる2024年の現実世界については,「行き過ぎた未来」にならないよう,現代から想像がつく範囲の描写にとどめたという。
松山氏が具体例として示したのは,電子機器の電源がコードレスになっている,いわゆる「無接点充電」の普及だ。これは現実にも開発が進んでいる技術で,すでに対応機器も登場しつつあるが,これが完全に普及している「ドットハック」の劇中では,ケーブルやコンセントが一切登場しないのだという。
また,街中にはデジタル表示の広告が普及。これもすでに東京の都心部ではよく見られるようになっているが,松山氏によると「今度福岡にも実際にできるので,タイアップを考えている」そうだ。
さらに,家庭内のさまざまな機器を音声認識で操作できる「サーバーロボ」も,一家に一台というほどに定着している。主人公そらの家にある「まことさん」もその一つ。ゲームのクラウド化も進んでおり,サーバーロボを介して携帯端末から「THE WORLD」をプレイできるようになっているのだ。携帯端末だけでも手軽にプレイ可能だが,オプション品としてコントローラやFMD(フェイスマウントディスプレイ)を用いれば,より臨場感のあるプレイが楽しめるという。
と,このように非常に細かい設定が行われているわけだが,中でも,主人公そらの家については,実際に図面を引いて部屋に置かれている小物類まで全部設定したそうだ。こうした設定上のそらの部屋の広さに合わせて,本作のモーションキャプチャ撮影が行われたという。
また,劇中に登場するコントローラやFMDなどのガジェット類については,スタッフが実際に商品のケースまで作成。ちなみに,福岡県を舞台にしている本作では実在のメーカーやお店が作中に多数登場しており,福岡市内の「ベスト電器」本店に設置された架空のFMDコーナーへ主人公達が買い物に行くシーンなどもあるそうだ。
このほかにも,「デビッドの名刺」を実際に印刷したり,ソフィアの広告やTHE WORLDのログイン画面をiPad/iPhoneの画面上で再現したり,「まことさん」1/1スケールのぬいぐるみを制作したりと,さまざまなアイテムが実際に作られている。
これらのアイテムについては今回特別に展示ブースが設けられており,本作の台本・絵コンテ・設定資料などとともに,トークの終了後,来場者に披露された。
ここで,「ちょっと余談を」と述べつつ松山氏が手にしたのは,なぜか「鉄拳 ハイブリッド」(PS3)。一見,サイバーコネクトツーや.hackシリーズとはまったく無関係に思える作品だが,実はこのタイトルに同梱されている3DCGアニメーション映画「鉄拳 ブラッド・ベンジェンス」は,「我々の『ドットハック』と苦楽を共にしてきている」作品なのだという。というのも,この2作は3DCGアニメーション映画のプロジェクトとして同時期に動き出しており,両者の制作スタッフが技術を共有するため,バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長が間に立ち,定例の勉強会を行っていたそうだ。
なお,松山氏が手にしている「鉄拳 ハイブリッド」は,鉄拳プロジェクト ディレクターの原田勝弘氏から送られてきたものだという。ここで松山氏が,ソフトに同封されていたという原田氏からの手紙を紹介。手紙の文面には「ハワイ土産の『鉄拳 ハイブリッド』をお送りします」と書かれていたり,なぜかカプコンの小野義徳プロデューサーの顔写真がプリントされていたりと,原田氏の遊び心が感じられる内容で,客席も笑いに包まれていた。
最後に,今回来場したファンに向けて松山氏は「皆さんの応援があればなんだってできます」と感謝を述べ,今回のトークの内容や撮影可能な展示物について「もう,ばらまきやがれ!」とファンによる“拡散”を希望した。
さて,気になるのは劇場版「ドットハック」以降の3rdシーズンの展開だが――それについては,12月下旬に新情報が明らかになるそうだ。その具体的な内容こそ不明なものの,松山氏は「喜べばいいさ!」と自信満々に述べる。どうやら,ファンにとって嬉しい知らせが待っているようだ。
トークの終了後,松山氏を囲んでの記念撮影が行われた。遠く離れた福岡会場でも,スクリーンに映された松山氏の姿とともに「バーチャル記念撮影」が行われたそうだ。なぜか記念撮影の小道具としてバナナが配られていたのだが,どうしてバナナなのかについては,「ドットハック」を観れば謎が解けるそうだ。
本作のポスターには,メインキャストの桜庭ななみさん,松坂桃李さん,田中圭さんのほか,声優の福井裕佳梨さん,井上麻里奈さん,緒方賢一さん,藤田咲さん,勝生真沙子さん,増谷康紀さん,檜山修之さんの名前も。増谷さんや檜山さんはこれまでのシリーズにも出演しているが,今回の役どころは――? |
なぜバナナなのか……? その答えは劇場版「ドットハック」を観れば分かるらしい。映画は2012年1月21日公開 |
劇場版「ドットハック セカイの向こうに」公式サイト
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