プレイレポート
これはもう,間違いなくバトルフィールド! PC版「バトルフィールド:バッドカンパニー2」βテストインプレッション
兵士諸君! 「バトルフィールド:バッドカンパニー2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360。以下,バッドカンパニー2)がいよいよ2010年3月11日に発売である。2月12日に掲載した記事でもお伝えしたように,βテストに参加できるキーコード付きPC版の予約が,AmazonとEA STOREにおいてすでに開始されているし,1月29日から始まったXbox 360版のデモ配信に続いて,2月19日からはPlayStation 3版のデモの配信もスタートしたしということで,あれよあれよという間に臨戦態勢は整った。整ってしまった!
「バトルフィールド:バッドカンパニー2」公式サイト
2002年にひっそり登場したPCゲーム,「Battlefield 1942」(邦題,バトルフィールド1942)はこの8年間でそのフィールドを押し広げ,今やオンラインマルチプレイFPSの人気ブランドに成長した。現在はバッドカンパニー2のほか,ブラウザゲームの「Battlefield Heroes」,ビギナーでも楽しめるようにデザインされた「バトルフィールド1943」(PlayStation 3/Xbox 360。PC版は2010年内に発売予定)など,いくつかのベクトルに分かれて発展を続けている。
余談ながら“ひっそり登場”というのは,あくまで個人的な感想とはいえ,2002年といえばElectronic ArtsのFPS,「Medal of Honor: Allied Assault」が大ヒットしていた頃。同じ第二次世界大戦がテーマということもあり,向こうの雑誌広告なども「Medal of Honorの興奮がオンラインでも」的なニュアンスだったと記憶している。PCに要求されるスペックも高めで,EAがとくに最適化を求めなかったというより,あまり気にしてなかったのだろうという説もある。Battlefield 1942人気は,ネット上にできた数多くのコミュニティを通じて広がっていった雰囲気だ。
話を戻すと,2008年の「バトルフィールド:バッドカンパニー」(PlayStation 3/Xbox 360)は,これまでのバトルフィールドシリーズに比べて,シングルプレイに軸足を置いた作品として登場した。ターゲットをPCからコンシューマ市場に移した作品であり,2005年にリリースされた「バトルフィールド2 モダン・コンバット」(PlayStation 2/Xbox。のちにXbox 360などにも移植)の後継作といえるだろう。バトルフィールド2 モダン・コンバットがクリーンヒットし,デベロッパのDigital Illusions(現EA DICE)がコンシューマ機市場にグッと目を向けた一本であり,またPlayStation 2やXboxではハードウェアの制約からできなかったことを,飛躍的に能力の高まった次世代機でやろうという意志もあったはずだ。
彼らがバトルフィールド:バッドカンパニー用にスクラッチしたゲームエンジン,「Frostbite」は,PlayStation 3とXbox 360にチューンされた,マルチコア専用のものであり,ちょっと前までシングルコアが主流だったPCのことはあまり考えられていなかったりもする(関連記事)。
バッドカンパニー2の開発発表は2009年初めで,前作でおなじみのハミ出し部隊“バッドカンパニー”の面々が,私利私欲のため,またもやアメリカの強大な軍事力を利用しようというアクション満載のストーリーになる予定だ。
今回は最初からPC版のアナウンスもあり,PCゲーマーの期待も高まった。プロモーションは前作のようにシングルプレイを前面に押し出したものではなく,例えば2009年3月のGame Developers Conference(GDC)のメディア向け発表や,同年8月にケルンで開催されたGamescomの展示などではシングルプレイの話がほとんどなく,マルチプレイのアピールが中心。具体的には,「練り込まれたマップ」「豊富な兵士のカスタマイズ機能」「多くのオブジェクトが破壊できる先進のグラフィックス」,そして「各種取りそろえた大型兵器」などだが,なんにせよ従来のバトルフィールドシリーズを強く思い起こさせるプロモーションになっていたのだ。
シングルプレイの話題を避けたのは,2009年末にリリースされる予定だった「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)とのバッティングを意識したのではないかという推測もあるが,いずれにせよ,PC版としては「バトルフィールド2142」(2006年)以来,約4年ぶりの一本である。
新規導入されたゲームモード「ラッシュ」とは
というわけで,ここで,現在行われているPC版βテスト(日本時間明日2月25日終了予定)の模様というか雰囲気をちょっとばかり紹介したい。もっとも,Battlefieldシリーズの公式ブログにもあるように,EA DICEはPlayStation 3版のβテスト終了後に,実に130項目にもおよぶ修正リストを公開しており,現段階で武器や兵器のバランスをあれこれ言うのは早計だろう。また,βテスト中にも不具合が見つかるたびにパッチが適応されているので,まあ,とりあえず今回はインプレッションという感じで。それにほら,あんまり書くとレビューとかで書くことなくなるし。
βテストのマップは,雪と氷に覆われた「Port Valdez」。アラスカの石油パイプラインを攻撃するロシア軍と,それを守るアメリカ軍といったような設定で,ゲームのルールは,バトルフィールドといえばこれ! の「コンクエスト」(陣取り合戦)……ではなく,新たに導入された「ラッシュ」となっている。
これは前作バトルフィールド:バッドカンパニーで,「ゴールドラッシュ」として登場したモードだが,PCゲーマーにとっては初お目見え。とはいえ,後述するように似たようなルールを採用したタイトルがいくつかあり,マルチプレイFPSに慣れた人なら,すぐに理解できるだろう。
プレイヤーは攻撃側と守備側に分かれ,マップ上に置かれた「M-COM STATION」と呼ばれるオブジェクトをめぐって戦う。攻撃側のロシア軍はM-COM STATIONを破壊することが目的で,これをすべて壊してしまえばパイプラインは木っ端微塵でざまあみろ。もちろん,守備側のアメリカ軍はそれを阻止し,あらかじめ数が決まっているロシア軍のリスポーンチケットを使い切らせてしまえば,守備側の勝ちとなる。
AとB,二つあるM-COM STATIONは,近づいてタイマースイッチを入れることで一定時間後に自爆するが,守備側がタイマーを解除することも可能だ。タイマーが入ればサイレンが鳴り響き,守備側のプレイヤー全員の知るところになる。したがって,まずタイマーを入れるための攻防があり,その後に解除のための攻防が発生する。
運悪く(攻撃側にとっては運よく)二つとも破壊されると,アメリカ軍戦線の奥にある二つのM-COM STATIONが新たにアクティブになり,これらがロシア軍にとっての次の目標というわけで。こうして戦線がどんどん奥へ奥へと移動し,ゲームが進むにつれて戦闘のポイントになる地点が変化し,それにつれて使用できる大型兵器なども異なっていく。Port Valdezではこれを4回ほど繰り返すことになる。
このあたりのことは,2月12日に掲載した記事中のムービーに要領よくまとめられているので,(英語だけど)ぜひとも参考にしてほしい。ちなみに,ムービーでは“M-COM STATIONを建物ごと吹き飛ばすことも可能である”とされているが,実際のプレイ中では見たことがない。いやー,知らなかった! 今度やってみよう。
さて,コンクエストに比べてラッシュは,プレイヤーが決まった場所に集中しやすく,少ない参加人数でも大規模戦闘の雰囲気が味わえるメリットがある。コンクエストの場合,目標となるコントロールポイント(拠点)がマップに広く分散し,しかも「占領すべき順番」などもとくにないので,それなりの人数がいないと,ゲームとして成立しにくいのだ。うっかりすると広い戦場で敵と出会えず,最初から最後までずっとヒマだった。などということも起きる。
PC版の最大参加プレイヤー数は32人で,PlayStation 3/Xbox 360版の24人に対して増えてはいるが,PC版従来作の64人に比べれば,えーと,半分かな?
デメリットとしては,プレイのパターン化のしやすさが挙げられる。敵も味方も行くべき場所とやるべき事柄が決まっているので,意表をついた展開とか,思いもよらない作戦とかがとりにくいわけだ。AとBのどちらのM-COM STATIONに先に向かうか,といった違いはあるものの,全体として同じことの繰り返しに陥りやすい。またそれだけに個人の技量,つまりFPSの腕前の違いが表に出やすく,一騎当千のベテラン兵士が数人いれば,案外あっさり勝てたりすることもある。
多数のプレイヤーが一か所に集まるため,一般にラグが発生しやすいという問題もあるが,実際にプレイした範囲ではそれほどひどいものに遭遇したことはなく,ネットコードは優秀だと思う。やっぱ,年期が入ってます。
アクションと戦略がバランスよく調和
ラッシュと似たシステムを採用したタイトルとしては,「Wolfenstein: Enemy Territory」(2003年)や,その後継作品である「エネミー・テリトリー クエイク・ウォーズ」(2007年)が有名だ。エネミー・テリトリー クエイク・ウォーズの最大参加プレイヤー数は,バッドカンパニー2より少ない24人となっており,敵を倒すことよりオブジェクティブ(目標)の達成がメインだ。そして,このへんが理解できず,毎度毎度低いポイントしか稼げないのが,誰あろう,私だ。
また,THQの「フロントライン:フュエル・オブ・ウォー」(2008年)も目標をクリアするごとに戦線(フロントライン)が移動していくというゲームシステムであり,エネミー・テリトリーよりは簡単だったが,それなりに複雑。「アンリアル トーナメント 3」(2007年)に代表される「スポーツ系FPS」の対極にある作品群だといえそうだ。
ルールが複雑で,いろいろと覚えることの多い(そこがまた楽しいというのもあるが)エネミー・テリトリー クエイク・ウォーズに比べて,バッドカンパニー2のラッシュは,だいぶ簡単だ。目標はM-COM STATIONだけであり,それ以外のサブ目標みたいなものはない。戦線が移動するごとに,使える大型兵器が微妙に変わってくるところが個人的にちょっと覚えきれないが,普通の人なら簡単に覚えられるはずだ。
こっそりM-COM STATIONに近づいてタイマーをセットするときの緊張感や,戦車や戦闘ヘリなどの大型兵器による派手な攻撃など,撃ち合いと戦略のバランスがよく,緩急自在。相手がヤワな部隊だった場合,かなりのポイントが稼げるのでウハウハだが,強敵に当たるとにっちもさっちもいかず,あっという間に押し込まれたり,最初の拠点から一歩も動けなかったりして愉快だ。
製品版ではコンクエストモードも実装される予定だが,そのほかに4人一組の分隊同士が戦う「Squad Deathmatch」と,ラッシュに準じたルールだが歩兵戦闘がメインとなる「Squad Rush」という計4種類のゲームモードが予定されており,詳細はいまいち分からないのだが,これらの新たなゲームモードも期待したい。
ただ,やっぱりルールに由来するパターン化は存在し,すでにある程度“必勝パターン”ができつつあるような印象は残る。まあ,これはどんなゲームでもそうなるのだろうけど。
多くのオブジェクトが破壊可能なゲームエンジン
Frostbite1.5で描かれるグラフィックスは,掲載したスクリーンショットからも分かるようにハイレベルで,それだけにPCに要求されるスペックも高めだ。
多数のオブジェクトを破壊できるフィーチャーも面白く,戦車や戦闘ヘリコプターといった大型兵器が猛威をふるうことになる。もっとも戦車は,従来作のように“板塀一つ突破できない”というひ弱さこそなくなったものの,ゲームの都合で設けられた障害物は超えられないし,破壊できない。こうした完全破壊できないオブジェクトも割とマップのあちこちにあり,「ありとあらゆるものを破壊して,マップを平べったくできる」というほどではない。
それでも,ここに隠れていれば大丈夫と思っていたら建物ごと吹き飛ばされて戦死,というのは新鮮な体験だ。今後のマルチプレイFPSは,こうしたオブジェクト破壊に進んでいくのは間違いないだろう。うう,大変だ。
またこのことは,プレイしているのが,戦線がどんどん移動するラッシュモードであるところにも理由があり,コンクエストで戦車や航空機が戦場を自由に飛び交うようになれば,終盤は一面の焼け野原,などということになるかもしれない。なったらいいなあ。
いずれにしろ,FrostbiteがPCで使用されるのは初めてのことであり,そっち方面から注目している人も多い。
公式ブログには,PC版グラフィックスに関する言及があり,それによるとFrostbite1.5のPC版は,基本的にDirectX 10環境を想定して開発されているとのこと。ただし,まだまだWindows XPの使用者が多いことから,DirectX 9が“あとづけ”っぽく実装され,さらに対応するグラフィックスカードを使用している場合であれば,DirectX 11の機能も使用されるという,ちょっと複雑な感じ。また,AMDが発表した新技術「ATI Eyefinity」(関連記事)にも対応しており,一枚のグラフィックスカードで複数の高解像度ディスプレイをサポートするとのこと。
それにしても,このあたりが最新PCゲーム制作の難しさといえるだろう。現在PCには3種類のグラフィックスAPIが混在しており,さらにコンシューマ機まで視野に入れるとその開発は非常に面倒なものになる。それにもめげずにPC版をリリースしてくれるというEA DICEに,感謝の念をこっそり送ろう。おおっぴらでも可。
「バトルフィールド 2」(2005年)に代表されるPC向けバトルフィールドシリーズに比べ,参加人数の縮小や「分隊/司令官システム」の簡略化など,一見すると後退しているように見えるかもしれないバッドカンパニー2だが,それでもこれは間違いなくバトルフィールドの世界。てんやわんやの戦場で,敵味方入り乱れた激しい戦いが堪能でき,シンプルになったルールが,よし,もういっちょ! といった中毒性を高める。
βテストがスタートして3週間あまりだというのに,戦場はすでに数々のアイテムをアンロックしたハイレベルの兵士達で満ちあふれており,キミ達,もうちょっと仕事とか勉強とかしたほうがいいんじゃないの,とつい言いたい気持ちになるが,このゲームがそれだけの魅力を持っているのは間違いない。発売を楽しみに待とう。
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