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[GDC 2014]ゲームのストーリーテリングにおける“四層”とは? Frictional Gamesの脚本担当が解説するナラティブゲームの基本構造
GDC 2014で行われた「Game Narrative Summit」というセッションでは,ストーリーテリングを研究する大学関係者による講義が目立っていたが,そんな中,「Penumbra」や「Amnesia」シリーズ,そして現在開発中の「SOMA」など,数々のナラティブゲームを手がけているFrictional Gamesのクリエイティブディレクター,Thomas Grip(トーマス・グリップ)氏も講義を行っていた。本稿では,氏が提唱する物語の四層システム(4 Layers)が解説された,「Making Storytelling a fundamental Part of the Gameplay Experience」(ストーリーテリングをゲーム体験の中核にするために)というセッションの内容を紹介していこう。
(1)ゲームプレイ
(2)ナラティブゴール(ストーリー上の目的)
(3)ナラティブバックグラウンド(ストーリーの背景)
(4)メンタルモデリング
というもので,具体例を挙げながら,以下のように各項目を解説した。
ストーリーテリングを軸に据えるといっても,ゲームの基本になるのはもちろん「ゲームプレイ」である。室内を一人称視点で見回したり,引き出しの中を調べたり,ドアを開けるために鍵を使ったりといった基本システムは,そのゲームにおいてプレイヤーの行動をコントロールし,問題を解決したときに達成感を与えてくれる。一連のゲームプレイの積み重ねが,ゲームの枠組みを形成しているというわけだ。
プレイヤーを部屋から移動させたいとき,ドアと鍵を用意するだけでは,目的(ゴール)を達成させるのは難しい。そこで必要になるのがストーリーだ。プレイヤーはなぜ部屋から移動しなければならないのか。それは何者かから逃げるためかもしれないし,特定の人物を探すためかもしれない。そういった「ゲームを進めるための意味」をプレイヤーに与えることができれば,例えばドアの向こうに人影を映し出すなど,ビジュアル面での誘導もうまくいきやすいはずだ。
(3)ナラティブバックグラウンド
プレイヤーがドアの向こうの人影に気付いても,それが何であるかを解釈するのは難しい。その人影にしゃべらせる(説明させる)という安易な手法も取れるが,部屋の中に,地図や手紙,その人影を連想させる絵画や写真などを設置するのも効果的だ。そういった物語の背景を提示することで,「ドアの向こうの人影は弱々しい声を出しているが,ひょっとしたら敵かもしれない……」などと,プレイヤーに考えさせることが可能になる。
(4)メンタルモデリング
ここでいうメンタルモデリングは,「プレイヤーの脳内に特定のイメージを構築させること」と言い換えると分かりやすいだろう。例えば学生時代,スポーツの試合で負けたときのことを思い出してほしいのだが,まず浮かんでくるのは,その試合内容よりも,負けたあとの苦い思いや,チームメイトの悔しそうな顔だったりはしなかっただろうか。それはゲームがもたらす体験でも同様だと,グリップ氏は語る。緻密なゲーム世界を構築し,その設定をうまく伝えることができれば,プレイヤーは,ゲーム内の説明文やセリフに頼らずとも,自分なりのストーリーを作り上げたり,実際に体験したのと同じ様な喜びや恐怖を味わったりできるというわけだ。
GDC 2014におけるナラティブ関連のサミットでは,「ストーリーよりもキャラクターの練り込みが重要だ」と主張する論客もいたし,視点が開発者寄りか,プレイヤー寄りかによって,「ナラティブ」に対する解釈が大きく変わったりもする。グリップ氏による「四層システム」は,ゲーム制作に関わる脚本家達が無意識に行っている作法のようなものかもしれないが,こうしてあらためて整理してみると,ナラティブゲームに対する理解が深まることは間違いない。ストーリー性に重きの置かれたゲームをプレイする際に,こういった点を考えながら遊んでみると,いつもとは違った発見があるのではないだろうか。
「Frictional Games」公式サイト
- 関連タイトル:
Amnesia: The Dark Descent
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- 関連タイトル:
SOMA
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(C)2006-2008 Frictional Games
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