レビュー
これぞ「テイルズ オブ」シリーズ! 非常に満足度の高い“「正義」を貫き通すRPG”
テイルズ オブ ヴェスペリア
本稿では実際にプレイした感想を交えつつ,ゲームの内容を紹介していこう。
従来シリーズとは少々毛色の違うストーリー
物語の舞台は,万物を構成する源である“エアル”というエネルギーが存在する世界,“テルカ・リュミレース”。人々はエアルを糧にさまざまな力を発揮する“魔導器”(ブラスティア)によって街に巨大な結界を張り,魔物に脅かされることのない生活を送っていた。
帝都ザーフィアスの下町に住む青年ユーリ・ローウェルも,概ね平和な日々を過ごしていたが,ある日,下町の人々の生活を支えている水道魔導器(アクエブラスティア)から,動力となる魔核(コア)が盗まれるという事件が発生する。犯人に目星をつけたユーリは,魔核泥棒を追っていくことになるのだが……。
しかしその一方で,本作は主人公の年齢が21歳と高めに設定されており,従来シリーズと比べてストーリーの展開は若干“大人向け”と言えるものになっている。
詳しいことはネタバレになってしまうので書くのを控えるが,本作の主人公であるユーリは人情に篤く,困っている人を放っておけない性分であると同時に,目的のためならば自らの手を血で汚すことも厭わないという,ダークヒーロー的な一面も持っているのだ。
基本的には兄貴肌の良いヤツなのだが,少々口が悪く好戦的。長く続いてきた「テイルズ オブ」シリーズでも珍しいタイプの主人公で,好き嫌いが分かれそうではある。
また,ユーリの周りを固める仲間達も非常に個性豊かだ。豊富なサブイベントや独特の“スキット”システムで,キャラクター個々の魅力を掘り下げることに関しては,RPGのなかでも群を抜いている印象のある「テイルズ オブ」シリーズだが,その特長は本作でも大いに発揮されている。
PS3版では新キャラクターが追加されているだけでなく,サブイベントやスキットの量も増加しているので,さらに深くストーリーに没入できることだろう。
やれることが多く,飽きさせない戦闘
同システムは新作が出るたびにマイナーチェンジを繰り返しており,本作では“EFR-LMBS”(エヴォルドフレックスレンジ・リニアモーションバトルシステム)と名付けられている。
名前が妙に長いのはさておき,バトルフィールドを自由に駆け回ることができるフリーランに加え,“フェイタルストライク”“オーバーリミッツ”“バーストアーツ”などの新要素が導入されているのだ。
術式の色は使用する術技によって変わり,敵の種族によって出しやすさも違っている。さらに術式を連続で出したあとにフェイタルストライクを決めると“FSチェイン”が発動し,取得経験値やアイテム入手率の増加など,さまざまなボーナスが得られる。なお,得られるボーナスは出現した術式の色によって変動する。
これを狙って発動させるには,ある程度のテクニックが必要だが,決まった瞬間の爽快感は非常に大きい。それに本作ではザコが結構強めなので,被害を抑えるためにもフェイタルストライクのチャンスは逃さないようにしよう。
方向キーを押す方向で発動させるレベルを選択可能で,レベルが高いほど,術技使用にTPを消費しないなど,得られる効果は強力なものとなる。
通常ならば攻撃時に発生するスキの関係で,通常攻撃→術技→奥義としか繋げられないコンボのセオリーを完全無視できる快感はかなりのもの。ボス戦においても大きなダメージソースになる。
そして最後に,バーストアーツはオーバーリミッツから派生する技だ。オーバーリミッツ中に奥義/上級術/スキル変化技・術のいずれかを使用したあと,×ボタンを押しっぱなしにしていると発動する。
これ単体でも,奥義や上級術を上回る強力な技なのだが,特定の“スキル”を装備することで特性が変化するほか,オーバーリミッツLv3以上で奥義中に○ボタンを押すことで,“秘奥義”を発動させることができる。ド派手な演出と専用カットインが挿入されるので必見だ。
一度習得したスキルは“スキルポイント”を使うことで設定可能となり,以降は装備武器に関わらず効果を得られるようになるのだ。
なお,同カテゴリのスキルを多く設定したときなどは“スキルシンボル”が出現する。オーバーリミッツ中に効果を発揮するもので,物理攻撃力の上昇やHP回復など,その効果は設定したスキルのカテゴリによって変化する。
スキルの設定に関しては自由度が高く,キャラクターを自分好みの性能にしていけるのが面白い。相手によってスキルを付け替えたりといった,戦略的な戦い方も可能だ。
ちなみに本作では“合成”によって装備を作成可能だが,合成で作り出した武器には有用なスキルが設定されていることが多い。スペック不足な古い武器でも素材になることがあるので,なるべく売らずに取っておこう。
それにしても,戦闘では本当にやれることが多い。ストーリーを進めれば進めるほどに戦闘は楽しくなっていき,飽きが来ないのは見事だ。FSチェインやコンボの研究などには,自分の腕をひたすら磨いていく格闘ゲームの面白さに近いものがある。
お楽しみ要素も多数追加!
まずはキャラクターを着替えさせることができる特殊な称号についてだ。本作には水着やお祭り風の衣装などを着させることができる称号のほか,「テイルズ オブ」シリーズの歴代キャラクター風のコスプレ(?)ができるレアな称号も存在している。
さらに,Xbox 360版では各キャラクター固有だった“アタッチメント”が,PS3版では一部を除いてどのキャラクターにも装備できるようになった。ネコミミやぬいぐるみなどの可愛いものから,虚無僧のような使いどころに困りそうなものまで,多種多様だ。
衣装・アタッチメントはイベントシーンにも反映されるので,時と場合によっては凄まじくシュールな光景になりかねない。しかし,やり込み好きのプレイヤーが本作を2周,3周と繰り返しプレイするときなど,着せ替えは大きなお楽しみ要素になるだろう。ちなみに,称号やアタッチメントのなかには,予約特典やDLC販売でしか手に入らない特別なものも存在する。
もう一つ語っておかねばならないのが,「テイルズ オブ」シリーズではもはや伝統ともいえる“闘技場”についてだ。PS3版では,闘技場に団体戦が追加されており,“30人斬りモード”をクリアすることで挑戦できるようになるのである。
勝ち上がっていけばルブラン小隊チーム,魔狩りの剣チームなどと戦えるほか,“ダオス”“シゼル”“バルバトス”“クラトス”で構成された歴代ボスのドリームチームに挑戦することもできるというのだから,シリーズのファンにはたまらない要素だ。
シリーズファンにはもちろん,入門用としてもおススメ
前述したように,仄暗い一面を持った主人公の行動がストーリーにアクセントを加えており,結果,若干“大人向け”の物語になったような印象を受けるが,基本的には「いつものテイルズ」と言って差し支えないだろう。絆で結ばれた仲間達と共に,世界の危機に立ち向かう,実に真っ当なJRPGだ。
完成度の高さは歴代トップレベルなので,シリーズファンはもちろん,「テイルズ オブ」シリーズ入門用としても最適。ファンタジーの世界にドップリ漬かりたいなら,ぜひともプレイしてみてほしい。
- 関連タイトル:
テイルズ オブ ヴェスペリア
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(c)藤島康介 (c)2008 2009 NBGI
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