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[Gamescom]まだまだ謎だらけの「FINAL FANTASY XIV」。キーマン,田中弘道氏&Sage Sundi氏のインタビューを掲載
「だったら作っている人に直接聞いてみよう」ということで,FFXIVのプロデューサーである田中弘道氏と,グローバルオンラインプロデューサーのSage Sundi氏に現地にてインタビューを行った。ひっきりなしに海外メディアが訪れる合間を縫っての実施となったため,かなり慌ただしいインタビューとなったが,現時点で公開可能な情報を説明してもらえた。
FFXIVをより長く遊んでもらうためのアニバーサリー課金
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。時間もなさそうなので,早速進めさせてください。
FFXIのサービスインから8年弱が経ち,オンラインゲームを取り巻く環境はずいぶん変わりました。FFXIVを開発するにあたって注意した点や,今後を見据えて意図的に入れ込んだポイントはなんでしょうか。
田中氏:
4Gamer:
なるほど。テクノロジーの進化もさることながら,FFXIのときには“PCとコンシューマ機”という,異なるプラットフォームでの展開は大変だったことが想像できます。
基本的に変わらないコンシューマ機のスペックと,変わり続けていくPCのスペックの間で,ゲームシステムやUIの部分で苦労が相当あったと思います。FFXIVでも同じことが起こると思うのですが,何か対抗策のようなものは考えていますか。
田中氏:
パッケージのゲームはクライアントがすべてですが,MMOのゲーム本体はサーバーにあります。そしてMMOのクライアントはPCであれ,コンシューマであれ,テレビでいう受信機でしかないわけです。放送局の設備自体は,受け手側がモノクロテレビだろうがカラーテレビだろうが変わらないですよね。ですから,受け手側の環境にあまり左右されないようにゲームのサーバーを設計するというのが,一番苦労するポイントです。
4Gamer:
なるほど。
田中氏:
逆にいうと,それができないと,マシンごとにサーバーの仕組みを作らないといけないので,それこそ2本,3本と別のMMOを同時に作っているようなものです。
4Gamer:
ところでE3 2009のインタビューでは,「アニバーサリー課金」を予定しているとおっしゃっていましたが,現状でもそれは変わらないでしょうか。
田中氏:
同じです。「マイクロトランザクション」(アイテム課金)にすると逆に高くなってしまうことがあります。結局はアニバーサリー課金のほうが安くなり,より長く遊んでもらえると判断しました。
アイテム課金のゲームだと,月に4000円〜5000円使っているというのが平均だと聞いています。
Sundi氏:
あくまでも平均なので,もっと使っている人もいるでしょう。そうなるとやはり結果的に製品寿命を縮めることになると思います。FFXIVをそういうゲームにはしたくないという意識が強いです。
確かにアイテム課金が流行っているとはいえ,クライアントが無料ではないメジャーなMMOでは,その多くが月額課金という傾向もありますので。
4Gamer:
しかしFFXIでは,見ようによってはアイテム課金の伏線のようなアクションがみてとれる節もあります。FFXIVでもあとから追加で有料のサービスやアイテムの販売を行う可能性はありますか。
Sundi氏:
バリエーションの一つとしては個別に課金するというサービスがあってもいいとは思います。運営を開始してから3,4年経ってから追加したサービスで,例えば“サーバー移転”などのようなものは,当初予定していなかったからオプション料金とする。そういう考えはあってもいいのではないでしょうか。
4Gamer:
なるほど,FFXIVの基本はアニバーサリー課金であって,アイテム課金のようなものはバリエーションの一つとしてあるかもしれないといった感じでしょうか。
田中氏:
そうですね。少なくとも現在はまったく考えていません。お金をかけない人がつまらなくなると,ゲームを辞めてしまう可能性が高くなります。そうするとゲーム全体が縮小化していって,結果的に短命で終わってしまいます。ですから期間に応じて一定額のお金を支払っていただくというスタイルのほうが,プレイヤーにとっては負担が少なく,運営側も,長期間運営を続けられるのでいいと考えています。
力技で延命させない,末永く遊べる作品を目指す
4Gamer:
長期間の運営,という言葉が出たのでお聞きしたいのですが,少なくとも現状では,MMOの開発はコンテンツの消費速度が早いプレイヤーとの“戦い”であるといえます。そのアプローチとしては,「EverQuest」のように「力技でコンテンツを増やす」という路線と,オンラインFPSやRvRゲームのように「消費されづらいコンテンツをメインにする」という路線の二つが,まず最初に考えられます。FFXIVはどちらを見据えた設計になっているのでしょうか。
田中氏:
また,FFXIでもあったのですが,ゲームシステムを応用してプレイヤー自身が本来の遊び方とは異なる新しい遊びを作ったりしていってくれれば,それを開発側がシステムとして昇華していくこともできるかもしれません。
4Gamer:
そういえば,E3のインタビューで聞いたように,FFXIとFFXIVは並行してサービスされていくと思いますが,そうなると田中さんが監督するチームの開発や運営スタッフ数はかなり増えたということでしょうか。
田中氏:
そうですね。FFXIとFFXIVのメンバーは別々のフロアに分かれていて,それぞれが別の仕事をしています。
4Gamer:
FFXIの開発時は田中さん自身がフォントを作ったりUIをデザインしたりしていたそうですが,FFXIVの開発でも同じような業務をこなしているのでしょうか。
田中氏:
いや,今回はあえて手を出さないというスタンスです。FFXIのときは,人に説明するくらいなら自分でやったほうが早いやといった感じだったのですが,いまはみんなに作ってもらって文句をいうという立場です。たまには若い者に任せようってことですね(笑)。
一同:
(笑)
4Gamer:
とはいえ,自分でやらないともどかしいこともあったりしませんか。
田中氏:
そういときもありますが,ある程度は任せないと次世代の開発者が出てきてくれませんからね。そこは我慢です。
ギルドリーヴによってさまざまな
プレイスタイルに対応できるFFXIV
4Gamer:
ではあまり時間もありませんし,ゲームの中身に関する細かい話に移らせてください。まず戦闘方法はどんな感じなんでしょうか。
ターゲットすると画面下に出てくる「アクションメニュー」を選択して行動します。FFXIVでは武器を使うとそのスキルが成長し,それに伴ってアビリティを習得します。
アクションメニューにアビリティをセットしておいて,戦闘で発動させるという仕組みです。また,これをやってからこれをやる,といった具合に連続した動作をマクロとして登録できます。
4Gamer:
武器を持ち替えるとキャラクターの役割が変わるということでしたが,同時にアクションメニューも入れ替わるのでしょうか。
田中氏:
そうですね。例えば杖を装備しているとアクションメニューには魔法などがセットされます。
4Gamer:
コマンドは選択するとすぐに発動するのでしょうか。
田中氏:
アクションゲージが表示されていますが,これが溜まるとコマンドが選択可能になります。溜まる前にコマンドを選択した場合は,溜まると同時に発動します。また,パワーゲージというものもあり,技の威力や命中率などに影響を及ぼします。
4Gamer:
どうしても有利な技,効く技は使い続けてしまいたくなるのですが,同じ技を連続して使う弊害はありますか。
田中氏:
同じ攻撃ばかりを繰り返していると,敵が見抜いてなかなか当たらなくなったりすることもあるでしょう。なのでいろいろ技を組み合わせないといけないようになっています。
4Gamer:
戦闘中に武器の持ち替えは可能ですか。
田中氏:
それはできませんので,戦闘が終わったときに変えておく必要があります。
Sundi氏:
さすがに戦闘中にはできないですが,FFXIでいうところのモグハウスに帰ってジョブチェンジをするといったことが,出先でいつでも気軽にできるというのは大きなポイントです。
4Gamer:
あぁ,なるほど。三國志 Onlineのように出先でコロコロ変えられたりはしないんですね。とはいえ便利ですね。いつも同じメンバーでプレイできるとは限らないので,ジョブに固定されないというのはプレイの幅が広がりそうです。ところでパーティは何人まで組めるんでしょうか。
田中氏:
まだFixしていませんが,プレイヤーの方々の要望に応じて自由に遊んでほしいので,パーティ人数の上限は多めに設定します。そのうえでソロプレイから多人数まで幅広く遊べるようにしたいです。
4Gamer:
例えば実際に田中さんがプレイヤーとしてFFXIVを遊んだとしたら,どんなプレイスタイルになると思いますか。
田中氏:
ソロ中心で遊ぼうと思うと,いろいろなスキルを使えないと厳しいので,さまざまな武器を使うかもしれませんね。いつも一緒にプレイする人がいるなら,一つの武器を使い続けてほかの人との役割分担を明確にすると思います。
4Gamer:
いろいろなスキルを成長させる必要はありますが,FFXIVの場合はソロでも十分に楽しめるようですね。
田中氏:
ソロプレイだと,さまざまなスキルを身につけていく必要が出てくるので,さすがに全体的な成長は遅れ気味になるかもしれません。やっぱり仲間を見つけて役割分担を明確にして育てたほうが,成長は速いでしょう。
Sundi氏:
そうそう,Gamescomに出展したバージョンはギルドリーブを体験してもらうためだけのものという位置づけです。ですので,今回の見た目やさわり心地がFFXIVのすべてだとは思わないでいただければと……。
謎の多いギルドリーヴが遊び方の幅を広げる鍵となる
4Gamer:
ではそのギルドリーヴに少し的を絞らせてもらいます。受けられるギルドリーヴは,人によって異なるのでしょうか。
ええ,異なります。また,ギルドリーヴはFFXIVの中心になるものなので,種類はかなり多いですね。
田中氏:
バージョンアップで増やしていくのはもっぱらギルドリーヴが中心になると思います。できた端から追加していくというか,可能なかぎりたくさん用意すべく,開発チームが頑張っています。
4Gamer:
ギルドリーヴは,「各プレイヤーが持ち寄れば,大きなクエストに発展する」といったことが可能という話ですが,もう少し具体的に聞かせていただけますか。
田中氏:
まだ詳しく教えられないのですが,実はギルドリーヴの所持数には上限があります。ですから一日にたくさん遊ぼうと思ったら,ほかの人のギルドリーヴを一緒にこなす必要が出てきますね。
Sundi氏:
自分が持っていないギルドリーヴでも,ほかの人が持っていれば一緒に遊べるというわけです。まあ,そこから先の仕様はまだ秘密ですが(笑)。
4Gamer:
なるほど。まだ謎が多いですが,ギルドリーヴを持ち寄って遊ぶというイメージはつかめました。
Sundi氏:
30分ほどで終わるものもあれば,数日間かけてクリアを目指すものまで,そのパターンはかなり多いです。
4Gamer:
プレイヤーは,自分のプレイスタイルに合わせた遊び方ができそうですね。
Sundi氏:
ある意味コアプレイヤー向けのFFXIに対して,さらにカジュアル部分を足していったのがFFXIVというイメージですので,コアを排除してカジュアルにシフトしたというわけではありません。
4Gamer:
昨今はなんでもかんでもイージーな方向にする傾向があるので,それならコアなファンも安心ですね。
種族は基本的にフラット。好きなもので遊べ!
4Gamer:
FFXIVではいまのところ5種族が公開されていますが,さらに別のプレイアブルな種族が登場するという可能性はあるのでしょうか。
え〜とどうでしょうかね(笑)。ただ,肌,目,髪型,顔のディテールなどをいじり,細かくキャラクターを作れます。また設定上,各種族に部族があり,同じミコッテでも部族が違うということもあります。
4Gamer:
では,種族が同じでも部族が異なるとストーリーが違うといったことがあるのでしょうか。
田中氏:
基本的には設定上の差だけですが,将来的には何かあるかもしれません。
4Gamer:
種族が違うとゲームのスタート地点も異なりますか。
田中氏:
スタート地点はどこでも好きなものを選んでもらえます。
4Gamer:
FFXIではヒュームのプレイヤーがスタート地点にバストゥークを選ぶとリングがもらえる,といったようなオマケ的なものがありましが,そういった要素はありますか。
田中氏:
今回はもう少しフラットな状態で,見た目で好きなキャラクターを選んで,好きな場所からスタートしてもらおうと思っています。
4Gamer:
では種族間の能力差というのはあるでしょうか。
田中氏:
多少の色づけ程度はあるかもしれませんが,自分が育てないクラスやスキルに相反するような種族の影響というのは,ないようにしたいと思っています。
4Gamer:
能力差がないのならPvPとかもやりやすそうですが,PvP要素は用意されますか?
田中氏:
基本はやっぱりPvEです。PvPを導入するとしても,FFXIと同じようなスポーツ風なものになるでしょう。とはいえ,まだそこまで考える余裕がないので,最初の段階ではPvPは入らないかもしれません。
4Gamer:
あぁもう時間がないですね……では細かい話で申し訳ないんですが,プレイヤーのカメラ視点は何種類ありますか。
田中氏:
いまはキャラクターの後ろからの三人称視点,TPSのようなショルダーカメラ,そして主観視点の3種類を検討中です。例えばショルダーカメラの評判が悪ければやめてしまう可能性などもあります。
4Gamer:
MMOでショルダーカメラというのは珍しいかもしれませんね。
田中氏:
走っているときに自分の真後ろにカメラがあると,進行方向が見えづらいという声があったのでショルダーカメラを検討しているようです。
まあ,まだαバージョンということで,いろいろな部分の仕様が変わっていくと思います。なるべく早く多くの方に遊んでいただいてさまざま意見を吸収しつつ,開発を進めていきたいです。
4Gamer:
では最後にFFXIVを早く遊びたくてウズウズしている読者へのメッセージをお願いします。
田中氏:
なるべく早く皆さんに見ていただいて,いろいろな意見を集めたいと思います。そういう機会をもうけられるように,開発一同がんばりますのでよろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
このまま順調に開発が進んでいけば,田中氏がいうように,日本のプレイヤーが実際に本作を体験できる日は,それほど遠くないかもしれない。
- 関連タイトル:
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