連載
【RAM RIDER】「十三機兵防衛圏」,食わず嫌いをしていただけだった
RAM RIDER / アーティスト / 音楽プロデューサー
RAM RIDER「明日なにあそぶ?」公式サイト:https://ramrider.com/ |
第1回:「十三機兵防衛圏」
今回から4Gamerで連載を持たせていただくことになりましたRAM RIDERです。好きなものはビデオゲーム,映画,フィギュア,プラモデル,マジックなど。ゲーム歴は1983年の「ドンキーコング」からファミコンを始めとしたコンシューマゲーム機,MSX,PC-8800,FM TOWNS,Macintoshと渡り歩いて,最近ではWindowsのSteam,Xbox Game PassあたりとPlayStation 4,Nintendo Switchに落ち着いてます。PlayStation 5はまだ買えていません。
ちなみに職業は音楽家です。ゲーム関連ではTBSラジオ「プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ」のテーマ曲なども。ゲスト出演している回(前編,後編)もありますので,よろしければぜひ。
さて,この連載はゲームが好きな識者の方から,RAM RIDERがまだプレイしていなそうな,あるいはそもそも手を出さなそうなゲームをオススメしていただき,その雑感を述べていこう,という趣旨になっています。好みが偏りがちな自身のゲームライフに新しい風を吹かせつつ,それ自体をレビューとして成立させたい,そんな気持ちでお送りします。
そんな記念すべき第1回のレコメンドは4Gamerの長期連載「男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ」でおなじみ,プロレスラーの男色ディーノさんから。それではさっそく。
■選者:男色ディーノ
■オススメ作品:「十三機兵防衛圏」 (PlayStation 4 / Nintendo Switch)
■発売元:アトラス
■発売日:PlayStation 4版:2019年11月28日 / Nintendo Switch版 2022年4月14日
■オススメコメント:
今回,RAMちゃんにゲイムをオススメする役を仰せつかりました男色ディーノです。言うて,RAMちゃんはお忙しいと思うのですよ。きっと音楽を作ることって,こだわり出したらキリないだろうからね。だから,延々とヤり続ける系や終わりのないゲイムは,時間的な観点からオススメしちゃいけない気がするのよね。
となると心に強烈に残りつつ,ある程度向き合いさえすれば終わりがある作品がいい。しかものっけから面白みを伝えつつ,尻上がりに先が気になって仕方がなくなるような……。
そんな完璧な作品あるのか? お任せください。番組が一生懸命探しました。そして見つけました。あるのですよ。
その名も「十三機兵防衛圏」。
ゲイマー的にはだいぶベタだけど,マニアックなところよりは多くの人の心に残ったという実績のある作品をオススメしたい。
この作品は,人間交差点です。誤解を恐れずに言うと,私,一番すごいエンターテイメントって“人の人生”だと思っているんですね。なぜなら,喜怒哀楽すべてが詰まっているから。そしてゲイムのいいところの一つは,いろんな人生を追体験できることだと私は思っていて。
そういう意味でこの作品は,まさに13人の人生が緻密に,しかもドラマティックに交差する点に凄味があるのです。モノの作り手視点でプレイしても,重層的な作品のアプローチにきっとビビると思う。仮にシミュレーションが苦手だとしても,ぜひ最後までプレイしてほしい一品ですな。
ディーノさんには僕が音楽監督を務めるマッスル坂井演出の2.9次元ミュージカル「まっする」でもお世話になっており,地方興行では長い移動時間をご一緒することもある仲。思い返すとじっくりビデオゲームの話をした記憶がない。
にも関わらず,「延々とヤり続ける系や終わりのない」作品を避けつつ「ある程度向き合いさえすれば終わりがある」ゲームと,いきなり自分の好みの真芯を食った推薦文をいただいて感無量だ。オンラインゲームやソーシャルゲームもやらないことはないが,何よりも「ゲームをクリアし,エンディングを見る」ということを重視している自分にとって,今回の「十三機兵防衛圏」はたいへんありがたい提案だと思える。さっそくプレイしてみることに。
序盤の舞台は1985年。教室での何気ない友人とのやりとりから始まり,クラスメートや教師との会話からストーリーを進めていくうちに事件が勃発,ロボットアニメのようなシミュレーションバトルに巻き込まれていく。
一通りプレイしてストーリーを整理すると,1985年はあくまで舞台の一つにすぎないことに気付く。本作はアドベンチャーパートの「追想編」,シミュレーションバトルパートの「崩壊編」,そしてすべてのストーリーや資料の断片をつなぎ合わせる「究明編」の三つで構成されており,それらを行き来することで壮大なストーリーの全容を解明していくゲームであることが分かってきた。
EASY(カジュアル)設定(ぬるくてすいません)のせいか,バトルパートはそこまで難度は高くなく,「究明編」はゲームというよりは巨大なパズルのピースを埋めるアーカイブ,という感じ。
三つのパートを行き来しながら頭の中でストーリーの考察をする。時間と場所,縦軸と横軸が徐々に広がっていく。怪獣とは? 機兵とは? イージス作戦とは? この複雑怪奇なストーリーと頭の中の「?」を整理するためには,巨大なホワイトボードが必要だ。ミステリーSFのような,海外ドラマのような引きの連続。なんだかんだで2週間ほどプレイし,間もなくクリア,というところまでたどり着いた。
「追想編」がメインのゲームだと捉えるのなら,本作はサイドビュー型アドベンチャーゲームの最新系といえるだろう。単純に反射神経を必要としない選択式謎解きゲームの系譜であれば「ポートピア連続殺人事件」や「ファミコン探偵倶楽部」,移動にサイドビューを用いているという点では「たけしの挑戦状」や「クロックタワー」シリーズ,そして群像劇を主体に複雑に絡み合ったストーリーが進行するという意味では「街」や「428 封鎖された渋谷で」など,さまざまな名作の延長線上に出来た「交差点」という印象。
例えに挙げた作品はどれも自分のお気に入りばかり。それなのに本作を敬遠していた唯一の理由は,「主人公が少年少女」という一点だった。自分が年を重ね大人になることで,甲冑をまとった可憐な美少女や半袖パーカーを着こなすタイプの美少年に感情移入してプレイすることに若干の気恥ずかしさ,罪悪感を抱くようになり,「GEARS OF WAR」や「アンチャーテッド」など,海外の無骨なおっさんが主人公のゲームを好んでプレイするようになった。
同じような理由で「10代の子供達に大人が過酷な運命を強いている」みたいな構図が苦手になってしまった,というのもある。だが映像作品に目を向ければ「新世紀エヴァンゲリオン」をはじめとするアニメシリーズはもちろん,実写映画「サマーフィルムにのって」などの青春群像劇も好んで観ているわけで,「十三機兵防衛圏」もこれだけ楽しめたということを考えると,結局はゲームにおける食わず嫌いだったに過ぎないのかもしれない。
ストーリーの壮大さだけで言えば最近観たマーベル映画「エターナルズ」と並ぶようなぶっ飛んだスケール感だ。「ひぐらしのなく頃に」や「シュタインズ・ゲート」が好きな人にもきっと合うだろう。現在,ほぼほぼ謎は解明し,クリアまであと少し。メモをとらないと追いつかないほどの謎解き要素や,アニメを操作しているかのような滑らかな2Dグラフィック,少し耽美なキャラクター造形など,一度プレイにのめり込んでしまうと愛着が湧くようになってきた。4月にはNintendo Switch版が発売されるとのことで,ここまでに出てきたようなタイトルが好きな方なら,僕のようなタイプの人にも推せる一本といえるだろう。
男色にいやん,素敵なオススメありがとうございました。
■■RAM RIDER(アーティスト / 音楽プロデューサー)■■ 自身のソロはもちろんアイドル,ドラマ,バラエティ番組まで幅広く手掛けるアーティスト / 音楽プロデューサー。「GEARS OF WAR」のオンラインで仕事がまったく手につかなくなって以降はオフラインソロキャンペーンゲームを好んでちまちまプレイ。 |
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