レビュー
白くなった「AM」の変更点をチェックする
ZOWIE AM-FG
販売開始から少し時間は経ってしまったが,今回は,オリジナル「AM」との比較も交えつつ,AM-FGの検証結果をお伝えしてみたい。
形状はAMと変わらないが
本体色と表面加工は大きく変化
重量は,ケーブル込みで実測123g。今回,テストにあたってAM-FGの分解を試みており,その模様は後述するが,分解したときに本体からケーブルを取り外したところ,ケーブル抜きの本体実測重量は82gだった。
オリジナルのAM(右)と並べたところ。間違えようがないほど色が異なる |
本体底面,写真で光学センサーの右下に見える細長いボタンがDPI切り替え用だ |
では,外観上の違いはないのかいう話になるが,従来のAMシリーズが何色だったのか記憶している人にとっては説明不要だろう。オリジナルのAMでは,側面が非光沢加工されているか光沢加工されているかで2モデル用意され,グリップ感に違いが生じていたが,色はいずれにせよ黒ベースで,スクロールホイールと底板が赤いというカラーリングになっていた。これに対してAM-FGは,ラメの入った白がカバーと側面に用いられ,スクロールホイールと底板は灰色という,従来とはまるで違う色合いになっているのだ。
おそらくAM-FGの「FG」は,「Frost Glossy」とか,そんな感じの言葉の略ではなかろうか。
光の当て方を変えて,ラメが目立つようにしてみたカット。個人的には,このラメ入り光沢加工に妙な可愛らしさを感じるのだが,筆者が変なのだろうか? |
USBケーブルはビニール皮膜タイプ。オリジナルのAMと比較すると多少硬度が増したものの,布巻き仕様のものよりはかなり柔らかい。ちなみにケーブル長は実測約2.09mだった |
細かな改良が見られるボタン類
フィーリングはオリジナルAMと異なる
左右のメインボタンは,オリジナルのAMシリーズと同様,上面カバーとの一体型だが,オリジナルのAMで硬めと言われていたクリック感は,AM-FGで若干柔らかくなった印象を受ける。12月8日に掲載したDHARMAPOINTへのインタビュー記事で,同ブランドの開発担当である梅村匡明氏は,クリック感を規定するのはマウス本体側の作りであってスイッチではないという話をしていたが,それを踏まえるに,AM-FGではカバー部に手が入っている可能性が高そうである。
ちなみにクリック音は,オリジナルのAMだと割りと高めの音が出るのに対し,AM-FGでは低めで鈍い音のように聞こえる。いずれにせよオープンエア型のヘッドフォンを使用しながらでもクリック音は聞き取れるレベルだ。
オリジナルのAMと単なる色違いに見えるスクロールホイールも,センタークリックのストロークが短くなっている |
サイドボタンは,上側がカバーとほぼ同じ高さで,下側が少し盛り上がっている |
センタークリックの硬さはオリジナルとほとんど変わらない一方,スイッチが入るまでのストロークは短くなった。これにより,従来製品と比べると若干押しやすくなった印象を受ける。
本体両側面の前後方向に2個ずつ並んで配置されているサイドボタンは,実測で奥側(=メインボタン側)が約15mm,手前側(=後方側)が約17mmの長さ。側面から飛び出している部分の厚みはざっと1mm程度で,マウスの上面カバー側との高低差はほぼゼロだ。底面部に向けて少しずつ盛り上がる形状となっていて,マウスを持ち上げたとき,側面部に配置した親指が軽く引っかかり,滑り落ちにくい。
クリック感は,左右メインと同程度。カチカチと小気味よく扱える。
クリック音については比較ムービーも用意してみたので,合わせてチェックしてもらえれば幸いだ。
左右対称形状のマウスで問題になりやすい
手への収まり具合をチェック
実際に握ったときに得られるフィーリングはどんな案配だろうか。今回も「かぶせ持ち」と「つまみ持ち」,そして筆者独自の持ち方(だと思っている)「BRZRK持ち」の3パターンで試してみた。
左右対称形状の場合,親指を置く場所の凹みが両側面に用意されているため,左右非対称のマウスに比べて小指と薬指を側面へ置きにくい製品が多いのだが,そのあたりの確認を中心に,以下,写真メインでまとめてみたい。
以上,恒例の3パターンで数時間プレイしてみたが,BRZRK持ちで感じた手のひらの窮屈さ以外,これといった問題はなく,快適に操作できた。
マウス本体が光沢加工されていることにより,ペッタリとしたフィット感があるためか,「左右非対称のマウスと比べて小指&薬指をマウス上に置きにくい」問題はない印象だ。非常に持ちやすいマウスと述べていいだろう。
光学式センサーはオリジナルと変わらず
では,ほかはどうか?
一方,他社製のマウスにはよく提供されている,設定ツール的なアプリケーションは用意されていないため,ボタンの機能を変更したりはできない。できることは,DPI設定とレポートレート(ポーリングレート)の設定だけになっている。
本稿の序盤で述べたとおり,AM-FGでは(オリジナルのAMと同じく)底面のDPI切り替えボタンでDPIを順繰りに変更できる。設定値は450 DPIと1150 DPI,2300 DPIという,あまり一般的でない3段階で,「いまどのDPI値か」は,ボタンの近くに用意されたLEDインジケータで把握可能だ。
当然のことながら,ボタンが底面にある以上,ゲーム中,頻繁にDPI設定を変えるわけにはいかないが,このあたりからは「コアゲーマーならそんなことしないだろ?」というZOWIE GEARのメッセージも感じ取れよう。
レポートレートの変更方法もオリジナルのAMと同じだ。AM-FG(とAM)では,特定の再度ボタンを押しながらUSBケーブルをPCと接続することにより,レポートレートを125/500/1000Hzの3段階から選択できるようになっている。具体的な方法は以下のとおりで,押すべきサイドボタンは本体左側。工場出荷時の設定値は1000Hzとなっている。
- 両方を押しながら接続→125Hz
- 奥側(=マウス前方側)を押しながら接続→500Hz
- 手前側(=マウス後方側)を押しながら接続→1000Hz
以上を踏まえつつ,AM-FGの主なスペックを下記のとおりまとめておきたい。……といっても,ここまでの説明から想像できるとおり,スペックはオリジナルのAMからまったく変わっていないが。
●AM-FGの主なスペック
- ボタン数:7(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,左サイド×2,右サイド×2)
※別途,底面にDPI切り替え用ボタンを装備 - トラッキング速度:60IPS
- 最大加速度:20G
- トラッキング解像度:450/1150/2300 DPI
- フレームレート:6400fps
- 画像処理能力:未公開
- レポートレート:125/500/1000Hz
- リフトオフディスタンス:1.5〜1.8mm
- 実測サイズ:約65(W)×125(D)×39(H)mm
- 総重量(実測値):約123g
- 本体重量(実測値,ケーブル取り外し後):約82g
というわけで,分解の時間だ。
今回はAM-FGとAMの両方を分解して,写真で直接比較してみよう。以下,分解写真はいずれも左側がAM-FG,右側がAMとなる。
※注意
マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
ともあれ言えることは,AM-FGは,外観だけでなく中身もオリジナルAMのマイナーチェンジモデルだということである。
マウスパッド全15製品でテスト
ADNS-3090搭載機らしい安定感を確認
ゲーマー向け光学センサーの“ド定番”といえるADNS-3090を搭載するため,センサー性能には相応の期待が持てるが,実際はどうか。今回もマウスパッドとの相性チェックを行ってみよう。
テスト環境とテスト時のマウス設定は下記のとおりだ。
●テスト環境
- CPU:Core i7-860/2.8GHz
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-P55A-UD4(BIOS F15)
※マウスはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2
- グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-N560OC-1GI(GeForce GTX 560 Ti,グラフィックスメモリ容量1GB)
- ストレージ:Western Digital Caviar Green(WD10EADS,容量1TB,Serial ATA 3Gbps)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:未公開(※ファームウェアアップデート非対応)
- DPI設定:450/1150/2300 DPI(※主に1150 DPIを利用)
- レポートレート設定:1000Hz(※デフォルト設定)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
今回も,使用感とリフトオフディスタンスを,マウスパッドごとに以下のとおりまとめてみる。AM-FGのリフトオフディスタンスは,公称値が1.5mm〜1.8mmとなっているので,厚さ1mmとなる1円玉を2枚重ねた状態で反応しなければ合格という前提に立ち,コメントの最後に【○】か【×】かで書き加えることにしている。【○】なら2枚置いたとき無反応になったという意味だ。
●ARTISAN 隼XSOFT(布系)
かなり滑るが,急停止はさせやすかった。【○】
●ARTISAN 疾風SOFT(布系)
良好な滑りで操作しやすい。【○】
●ARTISAN 飛燕MID(布系)
抵抗は感じるものの,滑りは良好。【○】
●DHARMAPOINT DRTCPW35CS(布系)
抵抗感はあるが,これといった問題はなかった。【○】
●DHARMAPOINT DRTCPW35RS(布系)
抵抗感はあるが,操作性に支障なし。【○】
●Razer Goliathus Control Edition(布系)
ソールが擦れる感じがあるものの,操作自体は行いやすい。【○】
●Razer Goliathus Speed Edition(布系)
すべすべとした感触がある。コントロールしやすい。【○】
●Razer Ironclad(金属系)
多少の抵抗感はあるが,快適に操作できる。【○】
●Razer Scarab(プラスチック系)
抵抗感はがあるが,操作に影響はない。【○】
●Razer Sphex(プラスチック系)
やや抵抗感はあるが,操作に支障が出るほどではない。【○】
●Razer Vespula(プラスチック系,両面)
両面ともに抵抗感はあるが,こちらも操作に支障なし。【○】
●SteelSeries 9HD(プラスチック系)
少しザラついた感触。操作自体は問題なく行える。【○】
●SteelSeries QcK(布系)
こちらもザラついた印象だが,快適に操作可能。【○】
●ZOWIE G-TF Speed Version(布系)
良好な滑りで,これといった問題は感じない。【○】
●ZOWIE Swift(プラスチック系)
摩擦感は強く受けるものの,快適に操作可能。【○】
オリジナルのAMはARTISANの隼や飛燕と相性が悪いという意見が一部で出ているのを確認しているが,筆者が試した限り,AM-FGでこれといった問題は生じなかった。「QUAKE LIVE」のプラクティスで,「SENSITIVITY」の値を変えたりなど,いろいろやってみたのだが,状況に変化はなかったので,問題が生じるとしても,ごく一部の環境に限られるということなのかもしれない。あるいは(根拠があるわけではないが)光学センサーのカバーの有無が影響している可能性もゼロではないだろう。
不満はDPI設定に代表されるカスタマイズ性の低さ
価格も低くないが,全体としては無難な作り
AMの不満点として挙げられていたメインボタンのクリック感にメスを入れ,同時に,筐体の光沢加工によってグリップ感を引き上げてきた,マイナーチェンジモデル。AM-FGとは,そういうマウスである。もともと無難な作りだったAMが,ブラッシュアップを経て,より無難な製品になったと評することもできそうだ。
ただ,DPIの設定が特殊な3段階で決め打ちというのは大きなマイナスだろう。コアゲーマーの多くは,好みのDPI/CPI設定値を自分の感覚として持っており,そこにマウスを合わせてから,ゲームでの調整に入ると思うのだが,AM-FG(やオリジナルのAM)では,450 DPIと1150 DPI,2300 DPIの三択から選ばなければならない。つまり,このなかにしっくりくるものがなければ,プレイするゲームタイトルごとに“感度の誤差”を考えて補正していかねばならないのだ。
これが実勢価格2480円前後とか2980円前後の製品なのであればそれでも納得できるだろうが,5200〜5700円程度(※2012年12月15日現在)で販売されている製品の仕様としては,評価を下げざるを得ない。
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ZOWIE GEAR公式Webサイト(英語)
- 関連タイトル:
ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)
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