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見えてきたSandy Bridgeと,見えてこないLarrabee。Intelのプロセッサロードマップアップデート
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印刷2009/10/08 10:34

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見えてきたSandy Bridgeと,見えてこないLarrabee。Intelのプロセッサロードマップアップデート

 2009年9月下旬に米カリフォルニア州サンフランシスコ市で開催された「Intel Developer Forum 2009 San Francisco」(以下,IDF 2009)とその後の追加取材で,Intelのプロセッサ戦略が見えてきた。

IDF 2009でSandyBridge世代のデスクトップCPU(左)とモバイルCPU(右)を披露する,Stephen L. Smith(スティーブ・スミス)副社長(Vice President, Director of Operations, Intel Architecture Group, Intel)
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 2008年11月の「Intel Micro architecture(Nehalem)」,俗にいうNehalem(ネヘイレム)アーキテクチャをベースとしたCore i7プロセッサの投入以降,Intelは足早にプラットフォーム移行を進めているが,端的に述べて,Nehalemアーキテクチャのベース部分は,前世代のCore Microarchitectureを拡張したものに過ぎない。9月19日に掲載した同社プラットフォームロードマップのアップデート記事でも紹介しているとおり,業界関係者の中に,Intelの大きな飛躍は,現在のNehalemではなく,命令セットの大幅な拡張が加えられる「Sandy Bridge」(サンディブリッジ,開発コードネーム)世代になると見ている人が少なくないのだ。
 また,Intelが目指す,ヘテロジニアス(Heterogeneous:異種混合の)コアの実現には,開発中のグラフィックスプロセッサ「Larrabee」(ララビー,開発コードネーム)の統合が不可欠になるが,こちらについても,少しずつ情報が掴めてきたので,本稿では,2009年10月時点の状況を整理してみたい。


Sandy Bridge世代は3ラインナップ構成に

LGA1366は生き残るか?


IDF 2009で一瞬だけ公開されたSandy Bridgeのダイ写真。クアッドコアCPUにグラフィックスなどが統合された単一シリコンであることが分かる
画像集#003のサムネイル/見えてきたSandy Bridgeと,見えてこないLarrabee。Intelのプロセッサロードマップアップデート
 AMDの度重なるCPUロードマップ変更により,グラフィックス機能をCPUに統合する「Fusion」(フュージョン)は,Sandy Bridge世代に先を越されることになる。
 IntelはIDF 2009で,2011年に市場投入が予定されているSandy Bridgeのダイ写真やCPUを公開し,その開発が順調に進んでいることをアピールした。IDFで“一瞬だけ”披露されたダイは,4コアとグラフィックス機能などを一つのシリコンにまとめた,メインストリーム市場(≒エントリー〜ミドルクラス市場)向けのモデルだ。

IDF 2009で公開された最新クライアントCPUロードマップ。2011年にはSandy Bridge世代へと移行する計画であることが分かる
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 業界関係者によると,IntelはSandy Bridge世代で,3種類のプロセッサを,デスクトップPC市場へ投入する計画を持っているという。
Intelのグラフィックスロードマップ。Sandy Bridgeにグラフィックス機能が統合されることは,ここでも明白だ
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 今回公開されたのは,その中位ラインナップで,最も広範に利用される製品になると見込まれている。統合されるグラフィックス機能は,「Clarkdale」(クラークデール,開発コードネーム)で採用される強化版「Intel Graphics Media Accelerator」とは違い,「ハイパフォーマンスなもの」(Intel)とされるが,Larrabeeコア……というわけではなく,現行グラフィックス機能の流れを汲むものに留まるようだ。

 さて,エントリー市場向けには,クアッドコア版の下位モデルとして,デュアルコア版Sandy Bridgeも用意される計画だと伝えられている。大手PCベンダー関係者によれば,L3キャッシュ容量はNehalemアーキテクチャの最大6MBから,同8MBへと強化され,クアッドコア版は8MB,デュアルコア版は4MBとなるが,動作クロックがどの程度引き上げられるかは,最大消費電力設定次第だという。

ハイエンドデスクトップ市場には,6コアのGulftownを投入する。下がそのCPUパッケージだ
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 同関係者はまた,「当初,IntelはSandy Bridgeの投入を機に,LGA1366プラットフォームをLGA1155/1156プラットフォームで置き換える意向だったが,ハイエンドデスクトップPC向けに,LGA1366は延命される可能性もある」と指摘する。Intelは2010年第1四半期に,BloomfieldコアのCore i7を,32nmプロセス技術を採用し,6コアを実装した「Gulftown」(ガルフタウン,開発コードネーム)へ移行させる計画を持っているが,その後継製品が,Sandy Bridge世代でLGA1366プラットフォームへ投入されることも考えられる,というわけだ。

 実際,Intelの関係者は「サーバー向けCPUに統合型グラフィックス機能は不要で,その分を省電力性能やパフォーマンス向上に振り分けたほうが,市場ニーズに合致する」と述べ,サーバー&ワークステーション市場向けには,まったく別のアプローチでSandy BridgeアーキテクチャベースのCPUを設計していることを明かしている。しかも,現行のXeon 5500番台は,BloomfieldコアのCore i7と同じLGA1366パッケージを採用しているので,この路線でハイエンドデスクトップPC向けCPUを作れないことはない。
 ただ,実際にLGA1366プラットフォームが2011年以降も生き長らえるかどうかは,「市場動向と競合(=AMD)の出方次第だろう」(Intel関係者)。要するに,AMDがこのままフラグシップCPUたる“FX”を投入せず,低価格競争を加速してくるならば,Intelとしても“Extreme”で,わざわざ別プラットフォームを続ける必要はない,ということだ。


GulftownではTurbo Boost周りに改善

コストパフォーマンス面で面白そうなClarkdale


 話を少し戻して,近い将来の製品に目を向けてみよう。Intelは,2010年初頭から,積極的にデスクトップ/ノート市場向けに新製品を投入する。とくにデスクトップ市場では,ウルトラハイエンドとエントリーの両市場で,ほぼ同時期に強化が図られる格好だ。

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Gulftownシステムによるレンダリングデモ。「Intel Hyper-Threading Technology」により,6コア12スレッド処理を実現していることが分かる
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DX58SOベースのGulftown搭載デモシステム。X58マザーボードは,BIOSの変更だけで同CPUをサポートできるという
 ゲーム用途でどこまで期待できるのかも含めて注目の時期Extremeプロセッサ,Gulftownは,Nehalemアーキテクチャの32nmプロセスシュリンク版となる「Westmere」(ウエストミア,開発コードネーム)アーキテクチャのコアを6基内蔵し,L3キャッシュ容量も12MBへと強化される。OEM関係者によれば,メモリサポートは今のところトリプルチャネルDDR3-1066とされており,その点では現行のCore i7-900番台と変わらないが,「Intel Turbo Boost Technology」による,シングル/デュアルコア動作時のクロックは,現行製品と比べて大幅に引き上げられる見込みだ。

 対応チップセットは「Intel X58 Express」(以下,X58)で,現行のX58マザーボードは,BIOSアップデートでGulftownをサポートできる。IDF 2009の会場では,Intel純正のX58マザーボード「DX58SO」でGulftownを動作させるデモが公開されていたので,このあたりに心配はなさそうである。

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Dave Salvator氏(Worldwide Client Capability Evangelist, Intel)
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32nmプロセス技術を採用したClarkdale(左)と,統合されるグラフィックス機能統合型チップセット「Ironlake」(右)の,それぞれウェハ。Ironlakeは45nmプロセスを採用する
 一方,2010年初等に市場投入される予定の“グラフィックス機能統合型デュアルコアCPU”Clarkdaleは,IntelでデスクトップPCやノートPCなどクライアント向け製品の性能や機能の啓蒙役を務めるDave Salvator(デーブ・サルバトール)氏が公開したベンチマークテスト結果によると,かなりコストパフォーマンスの高い製品だ。

 グラフィックス機能の性能はさておくとしても,「PCMark Vantage」の総合スコアで,「Core 2 Quad Q9400/2.66GHz」比で約30%高いスコアを示すというのは,なかなか興味深い。Windows 7上で,「Core i5-640/3.20GHz」を搭載すると確認できるシステムで「Cinebench R10」の「Multipule CPU Render Test」を走らせた結果が8558というのも,エントリー市場向けCPUとしてはかなりのものだといえるだろう。

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報道関係者に公開されたClarkdale搭載PCのシステム情報。CPU名は「Core i7-640」で,3.20GHzで動作していた
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Cinebench R10のMultipule CPU Render Test結果。8558というスコアは,エントリー市場向けとしてはなかなか
Intelが示した,Clarkdaleシステムのベンチマーク結果。搭載するメモリモジュールがClarkdaleはPC3-10600,Core 2はPC2-6400なので,見方によっては公正さをやや欠くかもしれないが,参考にはなるはずだ
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Intel H57 Expressと思われる未発表のチップセットを採用した,LGA1156対応のmini-ITXマザーボード,Jet Geyser
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 なおIntelは,Clarkdaleの投入に合わせ,対応するmini-ITXマザーボードをラインナップへ追加する意向を持っている。
 同社が開発コードネーム「Jet Geyser」(ジェットガイザー)と呼ぶmini-ITXマザーボードは,未発表のIntel 5シリーズチップセット――「Intel H57 Express」のように見える――を採用。拡張スロットにPCI Express x16スロットを装備しており,PCケースや電源ユニットを慎重に選べば,コンパクトでパワフルなゲームシステムを構築できるポテンシャルを持っている。もちろん,本マザーボードに,LynnfieldコアのCore i7&i5を組み合わせることも可能だ。
 CPUそのものもさることながら,システムに新たなバリエーションをもたらす存在としても,Clarkdaleおよびその対応チップセットには期待したい。


迷走するLarrabee計画

全貌は未だ明らかにならず


IDF 2009で動作デモが行われたLarrabee搭載グラフィックスカード
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 ついに試作カードが姿を見せたLarrabeeだが,IDF 2009でIntelは,最新のデモを披露。「Larrabeeのネイティブコードでプログラミングすることにより,通常は120行のコードを書かなければならない『映像にフィルムの傷などを被せて古く見せる処理』を,たった25行でプログラミングできる」と,Intelアーキテクチャベースで行えるプログラミングモデルの優位性が強調された。

 だがその一方,「標準グラフィックスインタフェースとしてのDirectXやOpenGL,OpenCLもサポートする」とは言われたものの,そのパフォーマンスは最後まで公開されなかった。Larrabeeの評価を開始しているベンダーの関係者によれば,「現時点では一般的なGPUとして評価できる段階にない」そうだ。
 また,Sean Maloney(ショーン・マローニ)上級副社長も,将来的にLarrabeeコアをCPUへ統合する計画に変わりはないとしつつも,いつ,どの市場へ投入するかについては「いまは語れない」の一点張りである。

 付け加えるなら,Larrabee計画の顔役ともいえるPatrick P. Gelsinger(パット・ゲルシンガー)上級副社長が,IDF 2009の直前にIntelを退職するという“事件”もあったが,それと関連してか,この数か月,業界内にはLarrabeeについて,後ろ向きな情報が飛び交っている。なかには「IntelがLarrabee計画を中止する」といったものまで含まれていたほど。「Larrabeeは,TSMCの40nmプロセスで製品化される見通し」という半導体業界筋の情報や,「Gelsinger氏とともに,主要エンジニアもIntelを去った」という情報もある。


 ……計画の公表から早3年が経過し,2008年にはシミュレーションプログラムが,2009年4月に北京で開催されたIDFではシリコンが公開されたLarrabeeだが,外部からはその進捗状況がまったく掴めない状態だ。
 こうした状況に,Larrabeeの成功を疑問視する声も増えつつある中,Intelが高性能グラフィックス,そして並列コンピューティング市場にどのように取り組んでいくのか,その全貌が明らかになるのは,2010年以降になりそうである。
  • 関連タイトル:

    Core i7・i5・i3-2000番台(Sandy Bridge)

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    Core i5&i3(LGA1156,デュアルコア)

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