テストレポート
6500円のAPU「A4-3400」を試す。上位モデル比で半減したGPUコアはゲーム用途に堪えるか
メーカー推奨小売価格は順に6480円,5980円(いずれも税込)と安価だが,果たしてこれらはゲーム用途に堪えるのか否か。発表直後となる9月28日,日本AMDからA4-3400の製品版サンプルを入手できたので,上位モデルとの性能差を取り急ぎチェックし,お伝えしてみたい。
実行ユニット数が減り,動作クロックは向上
〜A6とは大きな差別化が図られたA4
ちなみにGPUのブランド名は「Radeon HD 6410D」。GPUコア数が400基の場合は「Radeon HD 6550D」,320基の場合は「Radeon HD 6530D」といった具合に,A-SeriesではこれまでRadeon HD 6500Dシリーズの名が与えられてきたが,今回Radeon HD 6400D型番になっているのは押さえておくべきポイントだろう。
A4 3400とA6-3500,そしてさらなる上位モデルとなる「A6-3650/2.6GHz」のスペックを表1にまとめてみたので,参考にしてほしい。
というわけで,今回は,いま挙げた3製品で性能を比較してみたいと思う。A4-3400とA6-3650の性能差は明らかだが,CPUコア数が4→3→2と減っていくことで,性能面にどういった違いが生じるかを見るべく,あえて用意したことをここでお断りしておきたい。
そのほか細かなテスト環境は表2のとおり。北米時間28日付けでグラフィックスドライバは「Catalyst 11.9」がリリースされたが,テスト開始が日本時間28日だった関係で,今回は「Catalyst 11.8」となっている。
掲載スケジュールを優先した結果,今回のテストが簡単なものになるというのは冒頭でお伝えしたとおりだが,今回は,4Gamerのベンチマークレギュレーション10.2から,DirectX 9世代の総合性能とCPU性能とをチェックできる「3DMark06」(Build 1.2.0)を採用。また,最新のレギュレーション11.0から「DiRT 3」も用意したが,レギュレーションで規定される「UItra」プリセットだと描画負荷が高すぎる可能性も考えられることから,別途「Low」プリセットでもテストを行うこととした。
解像度は1280×720・1600×900・1920×1080ドットの3パターンで,「標準設定」のみとなる。
もう1つ,消費電力測定にあたっては,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を使用したことも述べておきたい。PCの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,3Dアプリケーションを実行したとき,最も高い値を示した時点を,タイトルごとの実行時とする。さらに,CPUコアだけに負荷をかけ続けた状態における傾向を見るべく,ストレスツール「OCCT」でシステムに100%の負荷をかけ続けたときの消費電力も「OCCT時」としてチェックすることにした。
なお,テスト環境はA6-3500のテストレポート時と完全に同じであるため,流用できるスコアは積極的に流用している。
A4-3400の3D性能はA6-3500比75〜80%
省電力化はあまり期待できない
結果を見ていこう。グラフ1は3DMark06の総合スコアをまとめたものだが,A4-3400のスコアはA6-3500比81〜84%。解像度が高くなるにつれてスコア差が開いていくのは,シェーダプロセッサ半減の影響と思われる。
続いてグラフ2は,3DMark06の1280×720ドット設定時におけるCPUスコアを抜き出したもの。A6-3500比87%というのは,コア数と動作クロックから考えるに,妥当な結果といってよさそうだ。
DiRT 3におけるUltraプリセット,つまりレギュレーション11.0の規定そのままの条件で実施したテストの結果がグラフ3だ。DiRT 3の場合,ゲーム側で最低フレームレートが13fps程度に固定されているのだが,A6-3400のスコアは見事にそこで揃ってしまい,まったく性能が足りていないと分かる。
そこで,Lowプリセットでテストし直してみた結果がグラフ4になるが,ここではA6-3400がA6-3500比74〜77%のスコアを示した。A6-3500だと,1280×720ドット解像度において,レギュレーションが合格点とする60fpsを超えているのに対し,A6-3400はそうではないのが目を引くところ。Lowプリセットまで描画設定を落としたDiRT 3は決して“重い”タイトルではないのだが,それでも,A4-3400単体で満足にプレイするのは厳しいわけだ。
TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が65Wと同じなので,当たり前といえばそれまでかもしれないが,もう少し想像力を働かせてみると,Llanoコア全体の歩留まりを確保しようという動きのなかで,“A6シリーズになれなかった”(=A6として動作する基準を満たせなかった)個体のうち,TDPの枠内で動作クロックを目いっぱい引き上げられたのがA4-3400になった,ということなのかもしれない。
いずれにせよ,A6-3500からのさらなる省電力化をA4-3400に望むのは難しそうである。
以上,駆け足で見てきたが,全体としては,デュアルCPUコア化したことよりも,GPUコア数が大幅に低減してきたことのほうがゲーマーにとっては痛い印象だ。
そもそも論として,FM1プラットフォームのFusion APUは,現行最上位のA8-3850なら3Dオンラインゲーム用として十分に使えるものの,それ以下のクラスでは,「FM1プラットフォームを1から揃える費用」まで考えると,いろいろハードルが高くなる。A6-3600でもそうだったのに,それよりさらに3D性能が落ちるA4-3400となると,「セカンダリでプレイしているゲーム用のマシンを低コストに」という用途でも,なかなか選びづらいと言わざるを得ないだろう。
UVD 3を活用したビデオ再生機用としてはアリなのかもしれないが,ゲーム用途でのA4-3400は,厳しい立ち位置へ置かれているように見える。
日本AMD
- 関連タイトル:
AMD A-Series(Llano)
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