レビュー
カラバリの皮を被った最新世代モデルを徹底チェックする
ROCCAT Kone Pure Military
「Desert Strike」(デザートストライク)「Naval Storm」(ネイヴァルストーム)「Camo Charge」(カモチャージ)と,戦場をイメージした3色展開となるKone Pure Militaryだが,では,一体何がどう変わったのか。今回は,2014年12月に,マウスパッドなどとのセット品として登場した「Power Pack」を入手できたので,それをチェックしてみたいと思う。
Power Packの中身をチェック
デザインは個性と統一感のある3種類
というわけでPower Packだが,簡単に言うとこれは,ガンケース(あるいはミリタリーコンテナ)的なデザインを採用した段ボール製ボックスに,
- Kone Pure Military(※単品版と同じ製品ボックス入り)
- Kone Pure Militaryと同じデザインを採用した布系マウスパッド「Sense Military」(※単品版と同じ製品ボックス入り)
- 赤茶けたデザインのROCCATロゴ入りドッグタグ
- 「War Thunder」の特典「XP-38 Lightning Premium Plane」「T-26 Light Premium Tank」「1000 Golden Eagles」と1週間分のプレミアムアカウントがもらえるコード入りシート
が,けっこうぞんざいに――ROCCATはきちんと梱包したつもりだと思うが,日本人の感覚からすると,そうとしか形容できない――入ったセット品だ。
Kone Pure MilitaryとSense Militaryのデザインは下に示したとおりだ。特定のゲームタイトルとタイアップしたものではないこともあり,単体で見ると,意外にぼんやりした意匠という気がするものの,Sense Militaryの上にKone Pure Militaryを置いてみると,非常にしっくりくる印象も受ける。
Kone Pureシリーズらしく,右手用で小柄
形状自体は変わっていない
冒頭でも紹介したとおり,Kone Pure Militaryの形状は,Kone Pureシリーズのそれを踏襲したものだ。搭載するセンサーは光学タイプなので,「Kone Pure Optical」のカラーバリエーション的な存在だと言ってしまっていいだろう。
結果として,Kone Pure Militaryのスペックは下のとおりとなった。
●Kone Pure Militaryの主なスペック
- 基本仕様:光学センサー搭載ワイヤードタイプ
- ボタン数:7(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,スクロールホイール手前×2,左サイド×2)
- 最大トラッキング速度:130IPS(≒3.30m/s)
- 最大加速度:30G
- 画像処理能力:未公開
- フレームレート:未公開
- DPI設定:100〜5000DPI(100DPI刻み)
- USBレポートレート(ポーリングレート):125/250/500/1000Hz
- データ転送フォーマット:16bit
- 本体実測サイズ:69(W)×118(D)×38(H)mm
- 重量:約121.5g(※ケーブル含む),約91.5g(※ケーブル抜き)
- マウスソール:未公開
- ケーブル長:1.8m
- 製品保証:2年間
再三「Kone Pure Opticalと同じ」と繰り返している形状についても軽く触れておこう。
親指を配置することになる左側面は,本体奥側が内側に向かって切れ込み,本体手前側(=後方側)に向かって,横からスプーンでくり抜いたような丸い凹みが生まれるような構造になっている。
一方の右側面は,薬指と小指の2本を配置する前提で,今度は上から右奥に向かってくり抜いたデザインだ。
スクロールホイールは,プラスチックの上にラバーが巻かれたタイプ。幅は実測約9mmとなり,同5mm間隔で凹凸が用意されていた。指先が段差に引っかかる感じで的確にコントロールできる |
ケーブルは布巻き仕様となっており,太さは実測約3mm。硬めで耐久度は高そうなのだが,厚みのあるマウスパッドの端に引っかかってしまい,ストレスを感じる可能性はある。ケーブルアンカーの利用がお勧め |
形状チェックの最後に,握りやすさをチェックしてみることとした。
例によって,写真と短評でまとめておくので,参考にしてもらえればと思う。
以上が手の大きめな筆者が抱いたそれぞれの持ち方の印象だ。個人的にはつかみ持ちが最もストレスなく操作できたのだが,手が小さめの人だと異なる印象を持つかもしれない。かぶせ持ちは,不可能ではないが人を選ぶだろう。
導入推奨。設定ツールは
サーフェスキャリブレーションをサポート
ドライバソフトウェアにはファームウェアも含まれているため,初回導入時はファームウェアも導入されることになるだろう。
そのメインウインドウは下のとおりで,タブで設定したい項目を選び,中央ペインで選択し,設定した結果は下に5つ並んだプロファイルスロットに登録したり,プロファイルを書き出したり読み込んだりできるようになっている。最上段の製品名表記を見る限り,設定用ソフトウェア自体はKone Pure Opticalと共通のようだ。
起動時に開く「MAIN CONTROL」タブでは,スライダーを使って,最大5段階のDPI設定や,加速,ホイール回転の反応などを設定できる。
続いて「BUTTON ASSIGNMENT」タブだが,ROCCAT製品ならではの仕様で,ここはマウスが2個並んだものになっている。
MACRO MANAGERウインドウ |
EasyShift[+]で割り当てられる機能は使えそうなものから,そうでなさそうなものまでさまざまに用意されている |
なお,EasyShift[+]機能を割り当てられるボタンは左サイドボタンのどちらかのみ。アクション性の高いゲームだと使い道はないと思うが,オンラインRPGのようなタイトルでは,左右メインボタンとスクロールホイール分だけ,追加の機能を割り当てられて便利かもしれない。
「ADVANCED CONTROL」タブでは,直線補正や,リフトオフディスタンス,ポーリングレートなどを設定できるが,ここで注目したいのはリフトオフディスタンスの設定項目「DISTANCE CONTROL UNIT」だ。選択肢は「OFF(DEFAULT)」「NORMAL」「LOW」「EXTRA LOW」の4つで,ラジオボタンから選択すると,キャリブレーション用ウインドウがポップアップするので,それに従えば,センサーの出力をマウスパッドに対して最適化してくれるのである。
マウスパッドを買い換えた後などはハマりやすそうなので,プレイ環境が変わったときには,一度OFF(DEFAULT)に戻すことを勧めたい。
「COLOR CONTROL」タブ。マウスの手前側(=後側)にあるROCCATロゴ部へ埋め込まれたLEDイルミネーションの色や明滅具合を設定できる |
ボタンの使用状況などを確認できる「R.A.D.」タブ。使い込んでいくと実績も解除されたりするが,まあ,あまり意味はない |
「UPDATE/SUPPORT」タブからは,ドライバソフトウェアのダウンロードページやオンラインサポートのページへと飛べる |
なお,全部のタブで下部ペインに表示される「GAME PROFILES」部分だが,ここには前述のとおり,最大5個のプロファイルを設定・保存できる。
1〜5のスロットに保存したプロファイルは,この設定ソフトウェア側で保存した項目は,マウス側のフラッシュメモリに保存される。結論から先にいうと,設定した内容の多くは,ドライバソフトウェアが導入されていないPCでも利用できるため,一部のオンラインゲームでは,そういう設定が規約上問題ないかどうか確認する必要があるだろう。
センサー性能はまずまずか
サーフェスキャリブレーションの効果はある
では,肝心要のセンサー性能はどうだろうか。下に示したテスト環境と設定で,いくつかの検証を行ってみたい。
●テスト環境
- CPU:Core-i7 4770(定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB)
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
※マウスのレシーバーはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
- グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-760OC-2GD(GeForce GTX 760,グラフィックスメモリ容量2GB)
- ストレージ:SSD(CFD販売「CSSD-S6T128NHG5Q」,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:V1.10
- ドライババージョン:V1.05
- DPI設定:100〜5000 DPI(主にデフォルト設定の800 DPIを利用)
- レポートレート設定:125/250/500/1000Hz(※主にデフォルト設定の1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
まずはリフトオフディスタンス計測からだ。DISTANCE CONTROL UNITにある「OFF(DEFAULT)」「NORMAL」「LOW」「EXTRA LOW」の4段階すべてで計測を行うことにした。
計測にあたっては,マウスパッドおよびDISTANCE CONTROL UNITの設定変更を行うたびにサーフェスキャリブレーションをやり直しつつ,厚さの異なるステンレスプレートを重ねて,スコアを取っていく。対象となるマウスパッドは,標準的に用いている14製品とは別に,Sense Militaryも追加している。その結果は表のとおりだ。
OFF(DEFAULT) | NORMAL | LOW | EXTRA LOW | |
---|---|---|---|---|
ARTISAN 隼XSOFT(布系) | 1.7mm | 2.1mm以上 | 0.8mm | 0.6mm |
ARTISAN 疾風SOFT(布系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 2.0mm | 1.6mm |
ARTISAN 飛燕MID(布系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 1.1mm | 1.0mm |
Logicool G440(プラスチック系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 2.0mm |
Logicool G240(布系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 1.1mm | 0.9mm |
Razer Destructor 2(プラスチック系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 1.2mm | 0.9mm |
Razer Goliathus Control Edition(布系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 1.3mm | 0.8mm |
Razer Goliathus Speed Edition(布系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 0.9mm | 0.8mm |
Razer Manticor(金属系) | 0.6mm | 1.5mm | 0.4mm | 0.8mm |
SteelSeries 9HD(プラスチック系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 1.5mm | 1.1mm |
SteelSeries DeX(布系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 0.8mm | 0.7mm |
SteelSeries QcK(布系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 0.8mm | 0.7mm |
ZOWIE G-TF Speed Version(布系) | 2.1mm以上 | 2.1mm以上 | 1.4mm | 1.3mm |
ZOWIE Swift(プラスチック系) | 1.8mm | 1.7mm | 1.6mm | 1.6mm |
ROCCAT Sense Military(布系) | 2.1mm以上 | 1.5mm | 2.1mm以上 | 0.7mm |
今回特別にテスト対象としたSense Militaryでだけ「LOW」設定時のスコアがおかしいのだが,それ以外では,選択どおりの結果が得られていると述べていいだろう。マウスソールの重ね貼りをしたりしない限り,短めの設定で最適化してしまえばいいのではないかと思う。
ここでは,マウスパッドをARTISAN 隼XSOFTで固定のうえ,レポートレートを1000Hzに固定し,初期のプリセットDPI設定である400
下に示したグラフは,Y軸のプラス方向が左への移動,マイナス方向が右への移動時におけるそれぞれカウント数,横軸がms(ミリ秒)をそれぞれ示している。青い点が実際のカウント,青い波線はそれを正規化したものなので,波線が青い点の上にあるほどセンサーの性能が良好という理解でいい。それを踏まえ,見比べてもらえれば幸いだ。
基本的には綺麗な波線を描いているのだが,DPI設定に関わらず,折り返し時,ほぼ確実にカウントの“すっ飛び”が生じているのは惜しい。全体としてはまずまず良好であるものの,優秀とまではいえない,といった感じである。
最後に,直線補正周りもチェックしておこう。設定用ソフトウェアの「ADVANCED CONTROL」タブ以下にある「Angle Snapping」を「OFF」にした直線補正無効時と,「ON」にしたうえで1〜6の選択肢から最大の6を選んだ最大補正時で,Windows標準の「ペイント」を使って線を引いてみたが,「OFF」選択時は,体感レベルでは直線補正が無効と断言できるレベル。「ON」+6選択時だと,逆に気持ち悪いくらいの補正がかかった。ゲーム用途では「OFF」の利用が賢明だ。
Pro-Optic(R4)は「PMW3310DH」で確定
センサーの性能はまずまず
Kone Pure Opticalの搭載するPro-Optic(R3)センサーはPixArt Imaging(旧Avago Technologies,以下 PixArt)の「ADNS-3090」だったが(関連記事)が,Kone Pure MilitaryのPro-Optic(R4)の正体は何だろうか。
探るべく分解してみると,レンズユニットが黒い布で覆われたメイン基板と,天板部に固定されたサブ基板が姿を見せる。
下に示した写真は,メイン基板を取り出して,黒い布も取り去ったものだ。センサーは,最近のゲーマー向け光学センサー搭載マウス上位モデルで定番の「PMW3310DH」で確定した。組み合わせられるUSBマイクロコントローラが,32bit版ARMアーキテクチャに基づくCPUコア「Cortex-M3」を統合するSTMicroelectronics製「STM32F103」なのも,最近のトレンドに沿ったものだといえるだろう。
左右メインボタン用スイッチはオムロン スイッチアンドデバイス製の標準モデルとなる「D2FC-F-7N」。センタークリック用ボタンのスイッチに「OTM」という刻印が入っている点も含め,メイン基板側のスイッチ系はKone Pure Opticalから変わっていないようである。
というわけで,Kone Pure Militaryは,Kone Pure Opticalよりも一世代新しいセンサーを搭載しており,サーフェスキャリブレーションも含め,イマドキの仕様を獲得していると述べてよさそうだ。これからROCCATの光学センサー搭載モデルを確実に手に入れたいなら,Kone Pure Militaryを選択したほうがよいとさえ言えそうである。
価格は高いが,“総合得点”も高い
見た目に惹かれたなら選択する価値がある
以上,Koneシリーズのカラバリに見えて,その実,最新世代モデルとなるKone Pure Militaryをチェックしてきた。
センサーは,“折り返し”時の乱れが少々気になるので,優秀とまでは言えないと述べたが,ゲームプレイにおいての体感で,問題は最後まで感じなかった。よほど気にする人でなければ挙動に違和感を覚えることはないと思う。サーフェスキャリブレーション機能もあり,総合点は高い印象だ。
問題は価格だろうか。単体で8900〜9300円程度,豪華とはいえPower Packだと1万3200〜1万4000円程度というのは,やはりちょっと高すぎる印象が否めない。「War Thunder」のプレイヤーには申し訳ないが,日本でWar Thunderのバンドルがあっても,喜ぶ人はそう多くないだろうというのも,引っかかるところがある。
ただ,いわゆるゲーマー向けマウスらしくなく,それでいてコラボモデルのようなゴテゴテした感じにもなっていない配色は悪くない。外観に惹かれたのであればアリだろう。
Kone Pure Military - Desert StrikeをAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
Kone Pure Military - Naval StormをAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
Kone Pure Military - Camo ChargeをAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
Power Pack - Desert StrikeをAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
Power Pack - Naval StormをAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
Power Pack - Camo ChargeをAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
ROCCAT公式Webサイト(英語)
4Gamer×ROCCAT特別企画。ミリタリー調マウス&マウスパッドのセット「Power Pack」を購入して,「Kave XTD」ヘッドセットを当てよう
- 関連タイトル:
ROCCAT
- この記事のURL:
(C)2013 ROCCAT STUDIOS