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Intel 6シリーズの最上位チップセット「Z68」登場。MSI製の搭載マザーボード「Z68A-GD80」をチェックしてみる
P67との最も大きな違いは,CPUに統合されたグラフィックス機能をサポートしている点で,その意味では「Intel H67 Express」(以下,H67)の上位モデルと見ることも可能だろう。
これまで,一般PCユーザー向けのLGA1155対応チップセットは,マルチGPU対応やKシリーズ用のオーバークロック設定を持つP67と,Sandy Bridgeの統合型グラフィックス機能を利用できるH67という具合に,立ち位置がはっきり分かれていた。両者の機能を内包するのが,Z68というわけである。
そんなZ68のスペックをまとめたのが表だが,ご覧のとおり,グラフィックス周りを除くと,ほとんど何も変わっていない。
もう1つは,「Intel Identify Protection Technology」で,これはワンタイムパスワードなどのハードウェアトークンを用いてマシンのセキュリティを向上させるというもの。3月に開催されたCeBIT 2011では,Valveのコンテンツ配信システム「Steam」を用いたデモが行われたが,ゲーマー向けPCなどでZ68マザーボードと本機能が積極的に採用されれば,オンラインゲームのセキュリティ向上に大きく寄与してくれるだろう。ある意味,PCゲーマーにとっては最大の“キラーコンテンツ”と言えるかもしれない。
Virtuに関しては3月5日の記事に説明があるのだが,要するに,Sandy Bridgeに搭載される固定機能で,一部ビデオフォーマットのデコードやトランスコードに利用できる「Intel Quick Sync Video」(以下,QSV)が,「グラフィックス機能をサポートしたチップセットで,かつ,Sandy Bridge側のグラフィックス機能がプライマリになっていなければ使えない」という問題に対処するもの。異種混合マルチGPU技術「HYDRALOGIX」(旧称 Hydra Engine)で知られるLucidLogix Technologiesがライセンスする技術で,ライセンスを受けたマザーボードでのみ利用可能になる。
Virtuを利用可能なマザーボードでは,CPUに統合されたグラフィックス機能をプライマリとして利用している場合でも,セカンダリとして単体のグラフィックスカードを利用できるというのが大きな特徴だ。3Dゲームをプレイしながら,裏でQSVを使ったトランスコードを行ったりできるわけである。
ただ,こう説明すると,PCゲーマーにとってあまりメリットない機能だということも分かると思う。どうしてもQSVを使いたいということでなければ,PCゲーマーが気にする必要はまずないだろう。
MSIのZ68マザーボード
Z68A-GD80を写真で見る
なお,今回入手したのはレビュワー向けサンプルなのだが,個体不良のためか,何をどうやってもOSをインストールできなかった。この点はあらかじめお断りしておきたい。
拡張スロットは,PCI Express x16を3本装備。CPUに近いほうから2本が16+0もしくは8+8レーンでCPUと接続されており,CrossFireXおよびSLIをサポート。残る1本は4レーン動作で,PCI Express x1 ×2およびPCI×2ともども,Z68 PCHと接続されている。
マザーボードの背面。表面のヒートシンクはネジ止めされているのが分かる |
ヒートシンクを取り外したところ。ヒートシンクを取り外す行為がメーカー保証外となる点は注意してほしい |
ヒートシンクを外すとZ68 PCHが姿を見せる。「BD82Z68 SLJ4F E112A646」という刻印がなされていた |
さて,Serial ATAポート周りの問題でP67やH67の回収騒動が起こったことは記憶に新しいと思うが,Z68A-GD80は対策が施されたB3リビジョンを採用しているとのこと。そんなZ68でSerial ATA 6Gbpsが2ポート,同3Gbpsが4ポートの対応となるのは上の表で示したとおりだが,Z68A-GD80では,前者が白色,後者が黒色コネクタで,いずれも基板に対して並行に並べられている。
下の写真を見ると,基板に対して垂直に立っている白ポートが1つあるのにも気づくと思うが,これは別途搭載されるMarvell製Serial ATA 6Gbpsコントローラ「88SE9123-NAA2」によって提供されるもの。同コントローラは2ポートのSerial ATA 6Gbpsをサポートする関係で,もう1ポートはI/Oインタフェース部にeSATAとして用意されている。
USBは3.0×2,2.0×4。ただし,付属のブラケットを利用すれば,USB 3.0はもう2ポート追加できる。
ちなみにUSBポートは,同社が「Super Charger(スーパーチャージャー)」と呼ぶ機能を備えている。最大5Vで1.5Aの出力に対応しており,スレートPCやスマートフォンなどの充電ができるほか,システムがシャットダウン時も接続している機器の充電が可能という。
例えば,MSI独自の品質規格「Military Class II」に準拠している点だ。アルミ固体電解コンデンサ(Solid Capacitor)や固体ポリマー電解コンデンサ(Hi-c CAP:Highly Conductive Capacitor),それにSFC(Super Ferrite Choke,スーパーフェライトチョーク)などを採用することにより,安定性が向上するとMSIはアピールしている。
また,CPUへの電源供給を担うVRMも12+1フェーズと豪華な仕様。MSI独自の「APS(アクティブフェーズスイッチング)」を備えているため,負荷に応じてフェーズ数を動的にコントロールすることができ,負荷が低い場合に消費電力を低減させることができるという。なお,使用しているフェーズ数は,CPUの横に備えられている青色LEDの点灯数で視覚的に確認できる。このあたりの仕様もP67A-GD80 V2とまったく同じだ。
VRM周りのヒートシンクを外したところ |
10個のLEDが使用しているフェーズ数によって変動する。全点灯は100%使用を表している |
IGD Multi-monitor設定。これをEnabledにすることで,CPU統合型グラフィックスと単体グラフィックスカードの両方を利用できるようになる |
メニューにはオーバークロック設定が充実しているほか,グラフィックス設定には「IGD Multi-Monitor」という項目がされており,EnabledにすることでCPU統合型グラフィックスとグラフィックスカードとを併用することができるようになる。そのほか省電力設定項目が「Green Power」として用意されていたり,「Memory Test」や「HDD BackUp」といったユーティリティが用意されていたのもトピックといえそうである。
以上の仕様を踏まえるに,このZ68A-GD80はP67A-GD80 V2に外部グラフィックス出力を加えた製品といって問題ないだろう。MSIが公式にVirtuのサポートを謳っていることもあり,CPU統合型グラフィックスと単体グラフィックスを両立いうとき,Z68A-GD80のスペックは考慮に値しそうである。
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