レビュー
リアル系レースゲームジャンルにおいて,現在最高の一本
Forza Motorsport 4
大きく進化したシリーズ最新作,「Forza Motorsport 4」
日本マイクロソフトの「Forza Motorsport」シリーズは,家庭用ゲーム機におけるリアル系レースゲームの代表作の一つだ。ここで言うリアル系とは,実在する市販車やレーシングカーなどが登場し,それら実車の挙動を忠実にシミュレートした作品のことだと思ってほしいが,ともあれ,前作「Forza Motorsport 3」から約2年,Turn 10 Studiosが制作したシリーズ最新作「Forza Motorsport 4」(以下,Forza 4)が2011年10月13日,ついに発売された。
同じリアル系のレースゲームとして「グランツーリスモ」シリーズがあるが,個人的な印象としては,「グランツーリスモ」シリーズがより高度なシミュレートを求めるストイックなファン向けの味付けなら,こちら「Forza Motorsport」シリーズは,リアリティを追求しながらも,ベテランからビギナーまで幅広い層でプレイできるという傾向がある。
新たに登場したForza 4では,車の細かい挙動特性やグラフィックス,そしてサウンドなどがパワーアップされており,前作以上にレースの興奮や,車をコントロールする楽しさが味わえる。というわけで,以下,レースゲームファン待望のForza 4について詳しく見ていこう。
500台以上の車のモデリングから挙動特性まで,
リアルに再現
Forza 4には,コンパクトカーやワゴン,セダンなど,普段見かける市販車から,憧れのスーパーカー,そしてレース仕様のグランドツーリングカーやプロトタイプなど,世界80社以上のメーカーから選ばれた500台以上の実車(一部,架空の車両を含む)が収録されている。
もちろん,メーカー名,車名などもすべて実名であり,インテリアからエクステリア,挙動特性なども可能な限り忠実に再現されている。さらに,実在のアップグレードパーツメーカーが販売しているパーツを組み込む形でのアップグレードが可能で,エンジンやマフラー,足回りのほか,エアロパーツ,ボディなど,自分の愛車を現実と同じようにカスタマイズして楽しめるのだ。
ゲームには,ニュルブルクリンク,カタルニア,シルバーストーン,インディアナポリスといった海外のサーキットに加え,鈴鹿サーキット,筑波サーキット,ツインリンクもてぎといった国内サーキットも収録されている。ほかに,前作にも登場した架空の峠道「富士見街道」も収録されており,普段,絶対に走れないプロトタイプでド迫力のバトルを繰り広げたり,対向車を気にせずドリフト走行を楽しむことも可能だ。
世界中のサーキットを転戦しながら
レースキャリアを積んでいこう
オフラインのゲームモードとしては,「キャリア」と「フリープレイ」が用意されている。メインとなるのは前作同様「キャリア」で,キャリアには「ワールドツアー」「イベントリスト」,そして「ライバル」がある。
ワールドツアーは前作の「キャリア」に相当するモードで,基本的な流れは同じだ。最初は下位クラスであるFクラスの車でレースに挑戦し,レースで得た経験値を貯めることでレベルアップし,新たな車を獲得したり,アップグレードして上位クラスのレースに挑戦していくものだ。
キャリアモードの中でも筆者が気に入っているのが,ライバルだ。これはTurn 10 Studiosが企画するという設定のタイムアタック「マンスリーイベント」や,英国BBCの人気自動車番組「TopGear」の有名人レースを再現した「TopGearライバル」のほか,「スペックホットラップ」「オープンタイムアタック」「トラックデイ」「オートクロス」そして「ドリフトゾーン」となどが用意されており,どれも短時間で遊べて非常に面白い。
ライバルでは世界中のプレイヤーのゴーストデータに挑戦し,勝利すれば経験値や懸賞金(クレジット)を獲得できるという内容。とくにチューニングなしの同一車での競い合いになる有名人レースが熱く,ライバルの記録を破ってニンマリしていると,次にプレイしたときにライバルが自分の記録を破ったというメールが届いている……くそ,再挑戦。といった感じで,たとえネットの向こうに相手プレイヤーがいなくても,いつでも熱い戦いが繰り広げられるところがよくできている。
プレイヤー同士のコミュニケーションに重点が置かれた
オンラインプレイ
オンラインプレイはメインメニューの「コミュニティ」にまとめられており,世界中のプレイヤーとレースができる「オンラインレース」のほか,ほかのプレイヤーといろいろな形でコミュニケーションができる内容豊富なものだ。上記の「ライバル」もコミュニティの一つなのだが,ほかにも面白いモードが追加されている。
まずは,ゲーム内の同好会のような「マイ クラブ」。クラブのメンバー同士でレースを楽しんだり,ランキングを競ったりすることができるほか,ガレージにある自分の車をクラブに登録することで,メンバーと車を共有できる。クラブに入っていれば,自分の持っていない車を使ってレースに挑戦することも可能なのだ。一つのクラブのメンバーは,100名が上限だ。
自分でクラブを作って友達を招待することもできるので,気の合う仲間とワイワイ楽しむのもアリだし,誰かが作ったクラブに飛び込んでみるのもいいだろう。
「オークション」は,文字どおり車の売買で,ゲーム内のクレジットを使って入札することができる。キャリアモードで手に入れられない車をオークションで競り落とすのも楽しいだろう。また,「ストアフロント」では世界中のプレイヤーが作成した車のチューニングデータ,ボディデザイン,バイナルデータが購入できる。
購入できるデザインやバイナルなどは,まさに「職人芸」。レベルの高い作品がいっぱいで,それらを手に入れてフォトモードで眺めるのも面白い。もちろん,自分で作成したデータをアップロードすることもできるので,腕に自信のある人は,オークションクレジットを稼いだりするのもいいだろう。
レースゲームはオンラインモードで“レースをする”ものと相場が決まっていたが,本作ではレースだけではないコミュニケーションが楽しめるのだ。知り合いだけでなく,顔も知らない世界中の車好きの連中と盛り上がれるわけで,こうしたコミュニティサポートのシステムは,筆者にとってはなかなか新鮮だった。
路面やタイヤの状況が手に伝わってくるような,
進化した挙動
ドライブ/レースゲームで重要なのはもちろん「どれだけ車を操っているような気分になれるか」だ。Forza 4では,路面の凹凸,タイヤ温度,サスペンション,車の荷重移動などの情報をもとに,毎秒360回もの挙動の計算がされているという。そこから得られた車の動きがプレイヤーにフィードバックされることになり,操作感はリアリティ十分だ。
また,Forza 4では,有名タイヤメーカーであるピレリの全面協力のもと,豊富なデータを駆使したタイヤシミュレーションも行っている。前作では,タイヤのグリップ力が高く設定されていたせいもあり,多少オーバースピードでコーナーに進入してもグリップしてくれたが,その反面,グリップ限界を超えると立て直すのが困難なほどピーキーな挙動に変化し,コースアウトしたり,フェンスに突っ込んだりしたものだ。
本作ではタイヤのグリップ力が前作より落とされており,オーバースピードでコーナーに進入すればアンダーステアになりやすく,粗雑なブレーキングをすれば挙動を乱したままコーナーに入ることになる。しかし「そろそろリアが流れ出すな」「アンダーで外に行くな」ということが感じられるため,タイヤのグリップを気にしながらコーナーリングが楽しめるようにもなった。
とくに,グリップ限界を超えてからのコントロールはしやすく,慣れればアクセルコントロールでリアを微妙に流して車の向きを変えるなんてこともできるようになる。レースゲームにおいては,画面とコントローラにプレイヤーがどれだけシンクロできるかが面白さに直結するが,本作についてはいえば,どの車でもその車なりの操作の楽しさが味わえて,素晴らしいと思う。
初心者と上級者のテクニック差を埋めたレースを可能とする秀逸なアシスト機能
リアル系レースゲームでよくあるのが,街で見かけるような市販車を走らせているぶんには問題ないが,ハイパワーなスポーツカーやサーキット向けのレースカーになるとお手上げ状態になってしまうというもの。リアルに再現されているだけに,実際にアマチュアでは乗りこなすのが難しい車は,ゲームでもやはり難しい。
しかし,不安を感じる必要はない。Forza 4には充実したアシスト機能が用意されており,プレイヤーのレベルや走り方の好みに合わせて細かくアシスト機能をオン/オフできるのだ。また,多数あるアシスト機能をいちいちオン/オフするのが面倒だという人のために,自動設定が用意されている。自動設定には「EASY」「MEDIUM」「HARD」「ADVANCED」そして「EXPERT」があり,ブレーキング,ステアリング,スタビリティコントロール,トラクションコントロールなどがそれぞれ,自動的に選択される仕組みだ。
たとえばEASYでは,ブレーキングとステアリングが「アシストあり」になっており,コーナーが近づくと自動でブレーキングしてくれる。アクセルを踏んでいても速度が落ちるし,ステアリング操作もアシストしてくれるから,車の運転を知らない人でも余裕でコースを完走できるわけだ。
筆者の息子(小学5年生)で実験してみたところ,EASYで,Audi R15 TDIに乗ってガンガン走り回れるようになってしまった。もちろんアシスト機能がなければ不可能であるのは間違いないが,本人は,野獣のようなレーシングカーをプロドライバーのように操る自分の走りに満足している様子だった。ちょっと悔しい。
目の前に車が存在するかのようなバーチャルショールーム
「Autovista」
ご存じのように,Forza 4はKinectに対応しており,Kinectがあれば,バーチャルハンドルなど,さらにいろいろと楽しめることが増える。バーチャルハンドルとは,両手を前に突き出してハンドルを動かすように手を動かすとステアリング操作ができる機能。アクセルとブレーキは自動で操作されるのだ。細かい動きにも追従してくれるので,家族など,大勢でワイワイと遊ぶようなときに楽しめるだろう。
また,頭の動きを感知して視点移動をしてくれるのも面白い。現実に車を運転するときは普通,進むべきコーナーに視線をやりながら走るものだが,ゲームのドライバーは常に真正面を向きっぱなし。そこでKinectを使うと,首の傾きを感知して進むべき方向を表示してくれるで,より自然な運転感覚が得られるというものだ。
もっともこれ,筆者はちょっと違和感を感じてしまった。このへんは慣れとか,個人差があると思う。
Kinectの機能を最大限に生かせるのが,バーチャルショールーム「Autovista」だ。ゲーム中に見る車のモデリングも素晴らしいが,Autovistaには実車と見間違えるほど精巧に再現された車が登場し,プレイヤーはその周囲を自由に歩き回って,可動部分を開閉させたり,車内に乗り込んだりできる。まさに,ショールームで車を眺めている雰囲気だ。
世界的に有名な自動車番組「Top Gear」の司会,ジェレミー・クラークソン氏の解説を日本語字幕付きで聞くこともできる。クラークソン氏のユーモラスかつシニカルな解説は,ファンにとってはたまらないものがあるはずだ。
個人的には,本作に登場するすべての車をAutovistaでじっくりと眺めたいところだが,残念ながら見られるのは,無料のダウンロードコンテンツで入手できるBMW M5を加えて全部で26台。しかも,最初から見られる車は限られており,ほかはその車を使用したチャレンジをクリアすることでロックが解除される仕組みになっている。したがって,すべての車を眺めることは大変なのだが,ゲームを進める良いモチベーションにもなっている。
コントローラだけでなく,新登場のスピード ホイールなど
使いやすいデバイスでレースを楽しもう
Uの字型の形状が特徴的なXbox 360 ワイヤレス スピード ホイール。Uの左右の棒を握る感じになり,人差し指の当たる裏側にアクセル,ブレーキのアナログボタンが用意されている。公式サイトの製品紹介ページは「こちら」 |
すでに販売終了となってしまったXbox 360 ワイヤレス レーシング ホイール |
とはいえ,純正の「Xbox 360 ワイヤレス レーシング ホイール」はすでに製造,販売されておらず入手は困難だ。海外製のステアリングコントローラもあるが,値段も高いし,なかなか手に入れられない。ダメじゃんという声が聞こえて来そうだが,ご心配なく。実は本作の発売に合わせて,新たに「Xbox 360 ワイヤレス スピード ホイール」が発売されたのだ。まあ,とっくに知っているという人も多いと思うが,一応簡単に説明しよう。
外観はU字型をしており,両手でUの2本の棒の部分を握り,左右にステアリングを切る動作をする。使う前から多少は分かっていたが,プレイ中の姿は確かにちょっと妙。しかし,予想とは裏腹に,意外なほど自然に使えて驚いた。
ちなみに,ホールを垂直に立てたときが一番クイック,水平にすると緩やかになるという設定だ。
まあ,それなりの慣れが必要になるし,長丁場のレースを戦う場合には,腕が疲れることもあるだろう。結論としては,首までどっぷりつかってプレイするならば,やはりステアリングコントローラ,手軽にプレイしたいのであれば,スピード ホイールという感じだ。
車好きならば,プレイしない手はない
Forzaシリーズの第4作目となるForza 4。従来作から確実に進化し,現在手に入るリアル系レースゲームにおいて最高の出来と断言してよさそうだ。
冒頭でも書いたとおり,リアル系のレースゲームはコアなプレイヤー向けの味付けになりがちだが,本作は,コンマ何秒かを縮めるためにセッティングを煮詰めたい人,カジュアルに楽しみたい人,オンラインのコミュニケーションを楽しみたい人,美しく車を着飾ってみたい人など,非常に多彩な人向けの面白さを持った作品に仕上がっており,幅広い層にアピールできそうだ。
もちろん,フォーミュラカーやオフローダーなど,個人的にぜひ収録してほしいレースカテゴリは残っているし,ほかのレースゲームでは実現されている,リアルタイムの天候変化がなかったり,ウェットコンディションが再現されていないなど,まだまだ進化を期待したい部分は残されている。
ともあれ,レースゲーム好きにはForza 4をぜひ楽しんでもらいたい。Xbox LIVEマーケットプレースで公開されている体験版をプレイしてみれば,本作の完成度の高さが分かるはずだ。
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