レビュー
地球外生命体との過酷な戦いに挑む,「The Bureau: XCOM Declassified」をレビュー。仲間と協力して進める戦略的なプレイがポイント
シリーズ第1作は,1994年にMS-DOSやAmiga向けにリリースされたターン制のストラテジーで,理由はよく分からないが,「XCOM: UFO Defense」のほかに,「UFO: Enemy Unknown」というタイトルで呼ばれることもある。また,シリーズ作品の中には,ストラテジーではなくTPSもあるし,デベロッパやパブリッシャも複数にわたっているが,2001年を最後に「XCOM」シリーズは休止状態に入った(アナウンスだけ行われて,結局出なかったタイトルもある)。
その後,オリジナルの発売から18年を経て,販売権を獲得していた2K Gamesが「XCOM」シリーズのリブートタイトルとなる「XCOM: Enemy Unknown」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)を発売した。開発は傘下のFiraxis Gamesが担当しているが,ここは「Sid Meier's Civilization」シリーズの制作で知られる実力派であるだけに,発売後の評価は非常に高く,Metacriticのメタスコアでは各プラットフォームで90点近いスコアを獲得するなど,見事な復活劇を遂げたのだ。
「XCOM: Enemy Unknown」については,2012年10月25日に掲載したレビューで内容をお伝えしたとおりだが,実は「XCOM」シリーズの再スタートが発表された2010年のE3では,シリーズの復活作が「FPS+ストラテジーのハイブリッド作品」とされていたのだ。その後,Firaxisのストラテジー版が発表され,予定どおりリリースされたものの,FPS版の情報はなかなか出てこず,どうなったのかよく分からないという状況が続いていた。ようやく概要が明らかにされたのは,最初の発表から3年後の2013年4月のことだった。その際,タイトルも「XCOM」から「The Bureau: XCOM Declassified」に改められた。
「The Bureau: XCOM Declassified」公式サイト
というわけで,今回筆者がプレイした「The Bureau: XCOM Declassified」は,「XCOM」の再スタート作品として企画されたタイトルの,さらに再スタート作品という,ちょっと変わった過去を持つ作品となる。FPSというアイデアは開発途中で破棄されたようで,本作はTPS+ストラテジーに変更されている。
地球外生命体の突然の攻撃で,アメリカ全土が
恐怖のどん底へ
敵勢力とは実は地球外生命体,つまり「アウトサイダー」であり,彼らの進んだ技術力に圧倒された人類はなすすべもなく撤退に次ぐ撤退を繰り返す。カーターは,アウトサイダーに対抗するために組織された「XCOM」(Extraterrestrial Combat Unit)のメンバーとして,人類のために数々のミッションに挑んでいく,というのがざっくりとしたゲームの流れだ。
序盤は,XCOMに必要な人材にも事欠く状況なので,組織に必要な科学者達を集めつつ,アウトサイダーの技術を手に入れて装備品を強化していくことになる。戦況が好転するにつれて,彼らがなぜ地球を狙うのか,人間を捕虜として集める理由は何か? といった謎も少しずつ判明していくが,これ以上のストーリーについては,ぜひ実際にプレイして確認してほしい。
TPS+ストラテジーで戦略性の高い戦闘が可能に
ゲームは基本的に三人称視点,つまりTPSで進行する。しかし,Spaceバーを押すと,やや引いた視点へと切り替わり,この間は時間の流れが遅くなり,仲間のエージェントに指示を出せるようになる。これを使って,例えば味方を指定した障害物まで移動させたり,オトリとして使ったりといった戦略的な戦いが可能になるのだ。
具体的には,仲間のエージェントをうまく運用して敵の射線をバラけさせ,スキを見せた敵を片っ端から排除していくというのが戦闘の基本。文章で書いてもちょっと分かりづらいかもしれないので,筆者が実際にプレイしたムービーを用意した。
味方のエージェントには「偵察」「工兵」「支援」,そして「コマンドー」といったクラスがあり,それぞれ異なるスキルが用意されている。スキルにより,例えば敵を挑発して注意を引いたり,指定した座標から一定範囲内の味方にシールドを展開したり,攻撃力を上昇させたりといったことが可能になる。また,プレイヤーキャラクターと仲間のエージェントにはレベルがあり,戦闘を重ねてレベルアップすることで,新たなスキルが習得できる。スキルは戦闘に必要不可欠なので,アウトサイダーのケツを蹴り上げるためにもぜひ使いこなしてほしい。
なお,作戦に連れて行かなかったほかのエージェントを別のミッションへ派遣し,勝手にレベルを上げさせることが可能だ。一緒に行動しなければ味方のレベルが上がらないという面倒な育成が不必要なのは,筆者としては嬉しいところ。
ちなみに,プレイヤーキャラクターであるカーターのレベル上限は10であるのに対して,仲間のエージェントのそれは5となっている。このことからも分かるように,仲間はあくまでも戦闘のサポート役だ。とはいえ「XCOM: Enemy Unknown」と同様,ミッションで一度死ぬと二度と復活しない,パーマネントデスのシステムが採用されているので,せっかくレベルを上げた味方があっさり殺されないように気をつける必要がある。
登場する敵キャラクターの種類はやや少なめだが,場面によっては大きな二足歩行兵の機械に乗っていたり,全身をシールドで覆い隠す能力を持った上級職っぽいアウトサイダーが現れたりする。とりわけ,アーマーに身を包んだ連中は凶悪で,各部位のアーマーにダメージを与え続け,はがしていかなければ倒せないので,かなり手強い。
ミッションに挑むには,司令室に置かれている端末にアクセスしなければならない。この端末ではミッション選択のほかに,味方エージェントの管理も可能で,スキルの習得や装備の変更などが行える。
ミッション選択では,自らがアウトサイダーと戦う「小規模作戦」か「大規模作戦」のほか,派遣専用ミッションが選べる。ちなみに,小規模作戦の場合,1ミッションが約15分〜30分程度で終わるが,大規模作戦は1時間前後を要する長丁場になる。
ストーリーの根幹に触れるため詳しくは書けないのだが,彼らとの会話中に選択肢が表示されることがあり,選択によってゲームの流れが左右される。とくに物語終盤では,作戦中の会話は慎重に進めたほうが良さそうだ。
ややボリューム不足感はあるが,遊びごたえは十分
ノーマルでは味方のスキルが強すぎるため,敵をサクサクと倒せるのはいいが,やはり物足りない。ゲームも短時間でクリアできてしまうだろう。ハードになると,敵をいかに効率よく倒すかを慎重に考えつつ戦わなければならなくなり,かなり歯ごたえがある。
ミッション数はそれほど多くはなく,最近のゲームの傾向とはいえ,正直「もう少しボリュームがあれば」と感じてしまった。また,物語を深く知るために司令部に置いてある文章を読むことになるが,その探索はちょっと退屈だ。ただ,XCOM司令部の研究所では,ときどき科学者が相当アホな実験をやっているので,結構笑えたりする。
1950年〜1960年代の(どちらかといえばB級の)SF映画を思わせる設定とグラフィックスが独特の雰囲気を生み出している本作。仲間と一緒に戦うストラテジックな戦闘も面白い。
ボリューム的にやや物足りなく,AIに問題なしとはいえないが,かなり楽しめた作品であることは間違いない。「XCOM: Enemy Unknown」を楽しんだ人なら,この「もう一つのXCOM」にも挑戦してみよう。
「The Bureau: XCOM Declassified」公式サイト
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