インタビュー
日本のアーケードは格闘ゲーマーの夢――オーストラリア発,台湾経由の新作2D格闘「カオスコード」。開発のFK Digitalに話を聞いてみた
本作は,1レバー4ボタンを使用する2D格闘ゲーム。そのシステムはオーソドックスながら,“チェーンコンボ(カオスコンボ)”や“EX必殺技”,必殺技をキャンセルできる“カオスキャンセル”“カオスシフト”など,近年の格闘ゲームに必要とされる要素を過不足なく搭載。またアニメ風に表現された個性豊かなキャラクターや,高解像度のドットアートなど,見るべき所が非常に多いタイトルである。
詳細については以前に掲載した「こちら」の記事や,公式サイトに詳しいので合わせて参照してほしい。
そんな高いクオリティをもつ本作ではあるが,ここでまず注目しておきたいのは,本作のデベロッパ FK Digitalについてである。コーポレートサイトを見ると分かるように,同社は日本の会社ではなく,なんとオーストラリアに本社を持つ,れっきとした海外のデベロッパ。しかも台湾にも拠点を持ち,かなりワールドワイドな活動を行っている様子だ。本作カオスコードは,そんなFK Digitalのアーケード参入第1作となる。ゲームの内容もさることながら,一体どうして「アーケードという市場を選んだのか」までを含め,何かと気になるデベロッパといえるだろう。
そこでさっそく連絡を取ってみたところ,今回のロケテストに合わせて,関係者がちょうど来日しているとのこと。今回インタビューに応じてくれたのは,FK DititalのMichael Lin氏とMickey Lin氏。ロケテストが行われていた秋葉原にて,本作のディレクターを務めるお二人に話を伺った。
「カオスコード」公式サイト
4Gamer:
お忙しいなか,お時間をいただきありがとうございます。まずは本作,カオスコードの特徴を教えてください。
カオスコードのウリは,シンプルなシステムと個性的なキャラクターです。あまり複雑な,新規性の強いことはしていないので,初めてプレイする人もすんなり遊べると思います。それからキャラクターもほかのゲームにはない,濃いキャラクターが揃ってます。オカマとか,コックとかね(笑)
4Gamer:
たしか必殺技が2タイプから選択できるんですよね。
Michael Lin氏:
必殺技とダッシュの性能が選べます。同じキャラクターでも,自分のスタイルに合わせて違う動きができるんです。とくにダッシュは,キャラクターの性能がかなり変わります。RUNタイプとSTEPタイプで,攻めの幅が違ってきます。
4Gamer:
あくまで第一印象ですが,カオスコードのアートスタイルからは,アークシステムワークスさんのタイトル,「ギルティギア」や「BLAZBLUE」っぽさを感じたんですが,このあたりはいかがですか?
Mickey Lin氏:
それはありますね。なんといってもアークシステムワークスさんのタイトルは,どれも人気ですから(笑)。ただ,自分達としては「KING OF FIGHTERS」(以下,KOF)シリーズや「CAPCOM vs. SNK」の影響が大きいと思っています。とくにKOFは,台湾でもすごく人気があるんです。やっぱり自分達がプレイしてきたゲームがベースになっているので,カオスコードもその延長線上になるのだと思います。
4Gamer:
確かお二人は台湾のご出身で,しかしFK Digitalはオーストラリアが本社なんですよね。失礼ですが,どういった成り立ちのなのでしょうか。
Mickey Lin氏:
FK Digitalは,私達がオーストラリアに留学した後入った会社でして,最初は新聞などのデザインを主な事業としていました。そこで僕等はフリーの同人ゲームを作ったんですね。それが「スーパーコスプレ大戦U(Super Cosplay War Ultra)」というタイトルで,日本ではあまり知名度がないと思いますが,台湾をはじめ,香港や中国,アメリカやスペインなどでは結構人気を博しました。
4Gamer:
それは業務として制作したわけですか?
Mickey Lin氏:
最初は趣味で制作していのですが,これは「格闘ゲームツクール2nd」がベースでした。それが社長の目に止まり,これは行けるのではないか? ということになったんです。なのでカオスコードは,初期こそオーストラリアが拠点でしたが,現在は台湾にスタジオを作って,そこで開発しています。だから台湾人をはじめ,スタッフの出身はさまざまです。
4Gamer:
ではスタッフの皆さんは,かなり格闘ゲームがお好きなんですね。
Mickey Lin氏:
実は全員がそうというわけでもないです(笑)。でも日本のアートスタイルが好きな人は多いですね。漫画とかアニメとか……。台湾の若い人は,皆日本のものが大好きですよ。デザインセンスも日本に近いと思います。
4Gamer:
なるほど。確かに台湾の絵師さんの中には,近年侮れないクオリティの人がいます。しかしなぜ日本の,しかもアーケード市場を選ばれたんでしょうか。
Mickey Lin氏:
それは……やっぱり夢ですね。台湾のアーケード市場は,日本に比べるととても小さいのです。ゲームセンターはあるんですが,そのほとんどがPCオンラインゲームとスロットなどで,ビデオゲームはほとんどありません。
4Gamer:
PCやコンシューマなどは考えなかったんですか?
実はカオスコードは,最初はPCオンラインゲームとしてリリースしようと考えていました。実際に2年間ほどはそれに向けた作業をしていたのですが,各方面から検討した結果,やっぱり2D格闘ゲームはオンラインゲームには向かないという結論になりました。課金アイテムをどうやって入れればいいのか,そこが難しかったんです。
4Gamer:
ああ,なるほど。アニメーションパターンの多い2D格闘ゲームだと,衣装一つ作るのもすごく大変そうです。
Michael Lin氏:
そこで一旦考えを改めて,格闘ゲームの本場,日本のアーケードを目指すことにしたんです。運良く日本の会社で協力してくれるところが見つかって……。
4Gamer:
それは?
Michael Lin氏:
今はまだ秘密で(笑)。その会社に技術面やマーケティングの面などでいろいろ手伝ってもらって,今回のロケテストにこぎ着けることができました。私達は日本の市場について全く分からなかったので,進出の足がかりとして協力して貰った形です。
4Gamer:
今回のロケテストで,日本のプレイヤーの反応はどうでしたか。
Mickey Lin氏:
今回のロケテストは実は2度目なんですが,前回に比べるとかなり盛況でしたね。やっぱり私達の作ったゲームで,日本のプレイヤー達が楽しんでくれているの見るのが一番嬉しいです。心配事だったフリーズもなくて,テストは成功といっていいと思います。
Michael Lin氏:
カオスコードはゲームバランスの調整がまだまだ必要な状態なんですが,それでも皆さん,熱心にプレイしてくれましたね。「このキャラ強すぎ!」とかいいながらも研究してくれて,コミュニティができていく。アーケードならではの光景が見れて,とても嬉しく思いました。
4Gamer:
そこはやっぱりアーケードの醍醐味ですね。ではずばり,稼働はいつ頃になるんでしょうか。
今,ゲーム自体は80%の完成度です。ロケテストの結果次第ではありますが,今年中は難しくても,来年の春には出したいですね。
Michael Lin氏:
その前に,バランスを調整してもう一度テストをしたいですね。できれば近いうちに。
4Gamer:
わかりました,楽しみにしています。では今回ロケテストに参加した人,また本作を楽しみにしている格闘ゲームファンに向けて,メッセージをお願いします。
Mickey Lin氏:
今はちょっと前に比べて,日本の格闘ゲーム市場が賑やかになっていて,私達もすごく嬉しいです。だから色々なタイトルにトライしてほしいですね。そこにカオスコードも含めてくれるとすごく嬉しい(笑)。私達は海外の会社ですけど,日本のスタイルに合わせて頑張ってますので,よろしくお願いします!
Michael Lin氏:
私達としてもアーケードは初めてのチャレンジなので,今回プレイした意見があれば,ぜひ公式サイトからメールしてほしいです。実は2ちゃんねるなども見ていますが,直接もらったたほうがずっと嬉しいので(笑)。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
格闘ゲームの本場,日本のアーケード市場は夢なのだと語る二人。その言葉の端々からは格闘ゲームとアーケードへの情熱がうかがえ,時間は短いながら,同じ格闘ゲーマーとして,ぜひ応援したくなる熱いインタビューだった。
リリースまでにはもう少し時間がかかりそうな本作だが,ここまで来たからにはぜひ稼働まで漕ぎつけてほしいもの。ロケテストに参加した人はもちろん,本作に期待を寄せる人は,「こちら」の公式サイトからぜひメールを送ってみてほしい。今回のロケテストの結果を反映し,よりパワーアップしてくるであろう,次回のテストにも期待しておこう。
――2010年7月30日収録
- 関連タイトル:
カオスコード
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(C)F K Digital