プレイレポート
ハック&スラッシュの正統派「トーチライトII」完全日本語版発売。世界中のプレイヤーと遊べ,既存MODも使用可能
本作はいわゆる「ハック&スラッシュ」型のアクションRPGだ。「ハック&スラッシュって?」と疑問に思う人のために少し解説しておこう。この用語には明確な定義が存在しないのだが,RPGの中でも戦闘とアイテム収集の面白さに主眼が置かれたゲームがこう呼ばれることが多い。例えば「ウィザードリィ」(1981)は,ゲームクリア後にも「MURAMASA BLADE!」(むらまさ)や「SHURIKEN」(しゅりけん)といったレアアイテムを求めて迷宮へ潜ることができるハック&スラッシュだ。
「ローグ」(1981)は,遊ぶたびに迷宮の形やアイテムの配置が変化し,与えられたアイテムをいかにやりくりして生き延びるかを競うハック&スラッシュである。このフォロワーである「不思議のダンジョン」シリーズ(1993〜)も広義のハック&スラッシュといって差し支えないだろう。
ハック&スラッシュに革命を起こしたのが「Diablo」(1997)だ。迷宮の形ばかりではなく,そこで入手できるアイテムの性能も変化する。武器や防具といったアイテムにランダムで特殊効果が付与されるのだ。
例えば「ショートソード」が出たとしよう。ほかのゲームではどのショートソードも性能は同じだ。だが「Diablo」では,ショートソードが出たときに,どんな特殊効果がプラスされるかという抽選が行われる。運がよければ「与えるダメージが大きくアップするうえ,攻撃速度も速いショートソード」が手に入る。逆に運が悪いと「命中率が低いばかりか,装備すると能力値も下がるショートソード」になってしまうこともあるのだ。
こうなると,アイテムの中でも強力な特殊能力を付与されたものがほしくなってくるのが人情だ。どんなアイテムがほしいかは人によって異なるが,このシステムで面白いのは“お目当てのアイテムではないが,意外と使えるアイテムが出る”点にある。例えば,良い防具を求めていたのが,かなり強力な弓が出たとしよう。こうなると,強力な弓を活かせるようなキャラクターを作りたくなってくるのだ。
「Diablo」のランダムアイテム生成システムは,今までになかった形でプレイヤーにモチベーションを与えたのである。それまでRPGの作風としてなんとなく知られていたハック&スラッシュは,このDiabloをもって完成されたといってよいだろう。
究極の逸品を探す探索,そしてカスタマイズがプレイにモチベーションを与える
ランダムアイテム生成システムに加え「エンチャント」「ソケット」という要素が用意されており,アイテム収集がさらに楽しくなっている。
エンチャントとは,アイテムにさらなる特殊効果を付与してもらうこと。エンチャントを引き受けてくれる魔法使いは街にもいるが,とくに強力なパワーを付与してくれる魔法使いはマップを歩き回って探し出さなければならない。どんな魔法使いに会えるかはランダムで決められているようなのが面白いところ。能力値をアップさせる特殊効果を付与するのが得意な者がいれば,アイテム出現率が上がる特殊効果を付与してくれる者もいるわけだ。“たまたま出会った魔法使いに手持ちの装備を渡してみたところ,幸運にも強力な特殊効果が付与されたため,手放せない逸品になった”なんてことも起こるのだ。
どんな特殊効果が付与されるかはエンチャントしてみないと分からないのだが,ランダムだといっても悲観する必要はない。エンチャントが失敗することはないし,付与された特殊効果を取り外すこともできる。
一方のソケットとは,装備に空いた穴のこと。ストーリーにも深く関わる魔力の宝石「エンバー」をはめ込むことにより,エンバーの持つ特殊効果を装備に与えられる。
手に入ったアイテムがあまり強力でなくてもエンチャントとソケットによって性能を大きく引き上げることができる。アイテムを見つける楽しさに加え,カスタマイズする楽しさも味わえるのだ。
トーチライトIIの四つの職業とペット達
トーチライトIIで魅力的なのは個性豊かなキャラクターとペット達である。
まずはキャラクターから見ていこう。
本作には「ベルセルカー」「エンジニア」「アウトランダー」「エンバーメイジ」という四種類の職業が存在しており,それぞれが3系統30種類のスキルを持っている。どんなスキルを伸ばすかはお好み次第で,いろいろな育て方が可能だ。
特定の行動で「チャージ」が溜まっていき,満タンになるとパワーアップする。チャージの量で立ち回りが変化するのが面白い。
接近戦に長けた狂戦士。ダメージを与えると同時に自分の体力を回復する突進攻撃や,チェーンで相手を引き寄せる技,周囲にいる相手の数が多いほど自分の攻撃力がアップするスキルなどを持つ。
スピーディな二刀流は爽快で,装備が整ってくると戦闘力が大きくアップする。
チャージが最大になると必ずクリティカルヒットを与えられるようになり,移動も速くなる。火力が大幅にアップする半面,敵に突っ込みすぎて気がついたらやられていた,なんてことも。
ハンマーと大砲,そして召喚メカを扱う技術者。
仲間を回復するロボットや,相手の移動を遅くするヘリコプター,モンスターへ突っ込んで自爆するクモ型地雷を召喚できる。一見すると補助系に思えるが,攻撃スキルも豊富なうえに火力も高く,さらにはダメージを吸収するバリアまで張れる……と,マルチに活躍できるブッ飛んだ性能を誇る。
チャージが一定値に達すると,特定スキルを強化できるポイントを得られる。
拳銃や弓といった飛び道具を得意とする忍者風の戦士。
バック転で後退しつつ,元いた場所に罠を置いたり,風車手裏剣のようなグレイブを投げたり,空中から毒の雨を降り注がせたりと身軽な動きや遠隔攻撃で戦う。
また,仲間の防御力を上げるフィールドを作り出したり,相手の接近を阻むイバラの壁を設置するなど,補助的なスキルも多い。
チャージが多く溜まるほど,攻撃速度やスキルの使用速度,回避率がアップする。逆に,チャージが0の場合は,次の一撃のダメージが上昇する。チャージが0の際にメリットがある唯一の職業だ。
火・氷・雷の魔法を操る魔法使い。
火の魔法は一定時間の追加ダメージを与え続け,氷の魔法は相手を凍らせて行動を遅くし,雷の魔法はトドメを刺した相手が爆発したりするなどトリッキーな効果を持つ。
遠隔攻撃が多く,広範囲を一気に攻撃できるが,指定地点に炎や氷を降らせたり,一定時間後に爆発する火球を設置するなど取扱いが難しいスキルも存在しており,ほかの職業にも増して立ち回りが重要になる。
チャージが最大限になると,一定時間マナ(スキルを使うためのエネルギー)消費なしでスキルが使えるようになるのに加え,与えるダメージもアップする。広範囲を攻撃するスキルを連発して相手を殲滅する様は圧巻だ。
キャラクターには,冒険の仲間となるペットがついてくる。
犬,タカ,オオカミ,ヒョウ,フェレットなど種類はさまざまだが,どれを選んでも能力は同じだ。あとから色を変えることもできるので,安心して見た目で選んでしまおう。
中でも注目したいのが「パンダ」だ。日本語版などアジア圏での販売に伴い,アジアの販売チームから提案されたという経緯を持ち,ペットの中でもとくに可愛らしい。
海外版であっても,これまでのアップデートを適用していればキャラクター作成時にパンダを選ぶことができるため,これを機会に新しいキャラクターを作ってみるのも面白いのではないだろうか。
これらのペットは,プレイヤーと共に戦ってくれるだけでなく,荷物を持たせることも可能。街にお使いに出すこともでき,不要なアイテムを売ったり,ポーションやスクロールといった消耗品を買ってきてもらったりもできる。また,体力を回復したり,ガイコツやゾンビを呼び出したりといった「スペル」を覚えさせれば,より頼もしくなってくれる。
遊びやすくなった完全日本語版
すでに海外版でプレイをしている人もいるかと思うが,海外版のセーブデータや海外で作られたMODは,完全日本語版でも問題なく使うことができる。
本作ではマルチプレイも可能だが,完全日本語版を持っていれば,日本だけでなく世界のプレイヤーと一緒に遊べるのだ。なお,マルチプレイには「Runic Account」が必要だが,登録にもマルチプレイにもお金はかからないので安心して遊ぶことができる。
完全日本語版は,標準で日本語表示に対応しているが,表示用言語はオプションから切り替えることが可能だ。日本語を選べば完全日本語版のプレイヤー同士がマッチングされ,英語を選べば表示が英語になって,英語版のプレイヤーと遊ぶことができる。そのほかにもロシア語や中国語も用意されているので,いろいろ試してみるのも興味深い体験になるだろう。海外版でも言語切り替えは可能だが,日本語表示ができるのは完全日本語版のみとなる。
とくに便利に感じられたのは,モンスターの名前の下に出る解説文も日本語になっていたことだ。モンスターが特殊な能力を持っている場合,「数が少なくなると逃げる」「盾でダメージを防ぐ」といった解説文が表示される。
この解説文はモンスターにカーソルを合わせている間しか表示されない仕様だ。英語版だと解説文を読んでから頭の中で翻訳しなければならなかったため,解説文が出ることは分かっても,何が書かれているかが分からなかったことも多かった筆者としては,日本語表示になっているのはとてもありがたかった。
アイテムやスキルの名前は,基本的に英語名をカタカナ読みにしたものとなっているが,これはプレイヤーコミュニティに配慮してのものだそうだ。英語版が7か月先行して発売されたという事情もあり,本作のプレイヤーコミュニティは英語版を中心にしたものが多い。アイテムやスキルの名前が日本語に訳されていた場合,日本語版を遊んでいる人と英語版を遊んでいる人で話が通じなくなってしまう可能性があることから,カタカナ読みを採用したのだという。
トーチライトIIは今後もアップデートが続けられるが,その際に開発元のRunic Gamesは多言語に対応したパッチを用意するという。もちろん日本語版も含まれるため,常時最新の内容を楽しむことができるのだ。
このように,完全日本語版は,先行して英語版を遊んでいるプレイヤーにとっても魅力のあるものとなっている。とくに,セーブデータが流用可であり,MODも使えることで安心した人も多いのではないだろうか。言語の切り替えという一手間はあるものの,英語圏など他言語のプレイヤーと遊べるのも大きな魅力だろう。
一度クリアしたあとのお楽しみも多彩だ。「マップ」というアイテムを購入すれば,アイテムが手に入りやすくなったり,敵の攻撃力がアップしたりとさまざまな特殊条件のあるダンジョンに挑める。キャラクターのデータをそのまま引き継ぎ,難度がアップしたニューゲームを始めることもできる。とことんやり込むことができるのだ。
価格も1980円(税込)とお手ごろで,Act1の部分を無料で遊べる体験モードも付いているので,海外を中心に多くの人を虜にしているハック&スラッシュ,その楽しさをトーチライトIIでせひ体験してみてほしい。
インディーズゲームの小部屋:Room#249「Torchlight II」
「トーチライトII」公式サイト
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