イベント
[GDC 2012]“一生忘れられない1本”を作り上げるコツとは。「スペースインベーダー インフィニティジーン」の石田氏が語る5つの方法
作り手側である開発者の多くは,ゲーマーの間で語り継がれるようなゲームを世に出したいと願っているだろう。そんな開発者達に向けられたレクチャーが,GDC 3日目となる2012年3月7日に,タイトーの石田礼輔氏によって行われた。タイトルは「Five Techniques For Making an Unforgettable Game」(一生忘れられない1本を作る5つの方法)だ。
このレクチャーは,石田氏の代表作である「スペースインベーダー インフィニティジーン」(PS3 / Xbox 360 / iPhone / AU)と「グルーヴコースター」を例に挙げて,“一生忘れられない1本”を作るためのヒントを提示するという内容だ。
石田氏は最初に「スペースインベーダー インフィニティジーン」と「グルーヴコースター」の概要を簡単に説明したのちに,さっそく5つの方法を下記のように提示した。
(1) Turn your core idea into ad copy.
(固有のアイデアをキャッチコピー化する)
(2) Flesh out your idea in such a way that the core consept is reinforced.
(そのアイデアが引き立つように肉付けする)
(3) Strive for intuitive controls and exaggerated reactions.
(直感的な操作と大げさなリアクションを入れてみる)
(4) Aim for a little quirkiness of disharmony.
(少し違和感のあるものを入れてみる)
(5) Add some value beyond the game.
(ゲームにプラスαの価値を付与する)
以上5つの方法について,それぞれ順を追って説明しよう。
■(1) Turn your core idea into ad copy.(固有のアイデアをキャッチコピー化する)
(1)については,「誰でもやっていると思う」と前置きをしつつ,石田氏は,とにかくアイデアを短い言葉で表現できるようにすることが重要だと説明した。「スペースインベーダー インフィニティジーン」は「進化するシューティングゲーム」で,「グルーヴコースター」は「ジェットコースターのような音楽ゲーム」というのが,それぞれキャッチコピーだ。
アイデアを短い言葉にまとめることにより,意味が明確になり,ゲームの特徴が印象に残りやすくなるという。開発を進めるときには,このキャッチコピーを常に念頭に置くことで,軸がぶれないということなのだろう。
■(2) Flesh out your idea in such a way that the core consept is reinforced.(そのアイデアが引き立つように肉付けする)
次は(2)について。斬新なアイデアというものは,多くの場合コアゲーマー向けになってしまっていることが多いそうで,ライトなゲーマーにも受け入れてもらえるような工夫が必要なのだという。
例えば「ジェットコースターのような音楽ゲーム」と謳っていた「グルーヴコースター」の場合,カメラをズームアップさせてスピード感を出したり,譜面をまさにジェットコースターのように駆け抜ける演出にしてみたり,といった具合だ。
また,「進化するシューティングゲーム」である「スペースインベーダー インフィニティジーン」では,ゲームの進み具合によってゲームのさまざまな部分が“進化”するというギミックを取り入れている。
■(3) Strive for intuitive controls and exaggerated reactions.(直感的な操作と大げさなリアクションを入れてみる)
(3)は,操作方法に関する提言だ。石田氏は「スペースインベーダー インフィニティジーン」と「グルーヴコースター」は,ともに指一本で操作できることにこだわって制作したという。というのも,間接的な要素を盛り込むほど,ゲームはコアプレイヤー向けになる傾向があるからだ。ここでいう間接的な要素というのは,プレイヤーがロボットを直接動かすのではなく,ロボットを動かすキャラクターを操作する,といったようなことを指している。そして間接的な要素が増えるほど,それを遊ぶ人は減っていくそうだ。
確かに練習が必要なゲームは,操作を覚える段階でくじけてしまう人が多いかもしれない。そういったゲームは,面白かったとしても遊ぶ人が限られてしまう。遊んでもらえなければ,記憶に残ることすらないだろう。
また,操作したあとの反応も重要だと石田氏は説明した。とくにタッチパネルのみで操作するデバイスの場合,ボタンを押すという行為がないため,プレイヤーは自分が何をしたのかが分かる反応を求めるのだという。なぜなら,なにも起こらないと不安になってしまうからだ。そして,プレイヤーのアクションに対するゲーム側のリアクションは大げさなほど良く,それによってプレイヤーは充実感を得るのだという。
■(4) Aim for a little quirkiness of disharmony.(少し違和感のあるものを入れてみる)
(4)の例として石田氏があげたのは,「スペースインベーダー インフィニティジーン」の色使いだ。基本的にはレトロテイストになっているが,そこにあえてグラデーションを混ぜることでプレイヤーに違和感を抱かせて,興味を引いている。オリジナルのインベーダーゲームが流行ったころは,グラデーションを色として使うことは不可能だったこともあり,単色でのっぺりとしていた。だが,そこに当時は存在しなかったはずのグラデーションを混ぜることで,プレイヤーの印象に残りやすくしているというわけだ。ただし,これもやり過ぎには注意が必要。こういった要素があまりも多いと,それが違和感を通り越してしまうのだ。
■(5) Add some value beyond the game.(ゲームにプラスαの価値を付与する)
(5)は,例えば,そのゲームを持っていること自体がステータスになるような価値を作り出すということだ。また,ゲームにプレイヤーの個性が反映されることも重要だと石田氏は語る。「スペースインベーダー インフィニティジーン」ではプレイの仕方によって,ステージ/サウンド/自機など,さまざまな要素に違いが出るようになっている。つまり,ほかの人と同じゲームを持っていても,微妙な違いが出るために,そのゲームへの思い入れが深まるわけだ。
ここで紹介された考え方をベースに,「スペースインベーダー インフィニティジーン」と「グルーヴコースター」は作られた。記録的な売上を達成したわけではなかったが,どちらも心に残りやすい作品になったと言える。
事実,どちらのゲームもさまざまな賞を獲得するなど,世界中で認められており,石田氏のもとにもメッセージが届いているという。
石田氏は,ゲームの文化的価値を高めたいと語っており,そのためにも格好いいと思ってもらえるような作品,一生忘れられない作品の開発を目指しているという。また,直感的な操作にもこだわりを持っており,とにかく簡単,それでいてしっかりと遊べる,そんなゲームをこれからも作り続けていくと話していた。
現状では次回作についてのコメントはできないということだったが,「スペースインベーダー インフィニティジーン」と「グルーヴコースター」に通じるようなものを,また発表するとのこと。石田氏の次作品に注目したい。
- 関連タイトル:
スペースインベーダー インフィニティジーン
- 関連タイトル:
スペースインベーダー インフィニティジーン
- 関連タイトル:
スペースインベーダー インフィニティジーン
- 関連タイトル:
スペースインベーダー インフィニティジーン
- 関連タイトル:
グルーヴコースター
- この記事のURL:
キーワード
(C) TAITO CORPORATION 1978,2010
(C) 2010 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
(C) TAITO CORPORATION 1978,2010
(C) 2010 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
(C)TAITO CORP.1978,2009
(C)TAITO CORP. 1978,2011
(C)TAITO CORP.1978,2011