レビュー
無限大のボリュームで終わりが見えない「ファンタシースターポータブル2 インフィニティ」レビュー
ファンタシースターポータブル2 インフィニティ
ということでさっそく,前作ファンタシースターポータブル2にはなく,本作で追加された新たな要素の一つを紹介したい。自分のお気に入りの場面を,簡単操作で静止画として残せる「スクリーンショット(SS)撮影機能」。これがすごい。え? そこから? とか思わずに見てほしい。
物語やシステムの説明をすっ飛ばし,SS撮影機能を冒頭で紹介した理由は,この機能で撮影したSSを,本稿で使用しているからだ。PSP本体と本作があれば,特別な機器などなくても誰でも簡単に撮影できるので,ぜひ試してみよう。
キャラメイクからストーリーミッションまでの進化
さて,ここからが本題だ。PSPo2iは,端的に言えば前作ファンタシースターポータブル2の続編に当たる。舞台はおなじみの「グラール太陽系」で,プレイヤーは民間軍事会社「リトルウィング」所属の傭兵として,“一つの銀河の物語”に絡んでいくというのが大筋だ。シリーズを遊んだことがない人は,本作の画面写真を見て「アクション性が高そう」と思うかもしれないが,PSPo2iのジャンルはあくまで“RPG”。プレイヤースキルに多少不安があっても,キャラクターレベルを上げていけば十分楽しめるバランスだ。マルチプレイは好きだけど,アクションは苦手という人でもとっつきやすい仕様といえるだろう。
システムの大部分を前作から受け継いでいることや,物語の関連性が強いことから,ご新規さんお断りといった印象を受ける人もいるだろうが,実際はまったくそんなことはない。というのも,PSPo2iは前作の内容をすべて収録したうえに,さまざまな追加要素を重ねて「進化」した作品だからだ。ここからは,実際のゲームの流れに沿って本作の要素を紹介していこう。
まずは,シリーズおなじみのキャラメイクからゲームがスタート。PSPo2iでは,従来の種族に加えて新種族デューマンが登場しているので,計5種族の中から好きな種族を選択することになる。新種族デューマンの特徴は,雪のように白い肌と片眼を覆う眼帯だ。性能的には,物理/魔法両方の攻撃力に長ける一方,体力や防御力,回避力に乏しいという,比較的上級者向けの仕様となっている。
ヒューマン(バランス型) |
ニューマン(魔法寄り) |
キャスト(射撃寄り) |
ビースト(物理寄り) |
種族を決定したら,次は本格的なキャラメイクに移る。顔つきや髪型から目,まつげ,体型を決めるプロポーションなど,PSPながらかなり細かく設定できるのが大きな特徴だ。これだけでも,バリエーションは事実上無限なのではないかと思ってしまう。多くのゲームは一度作ったキャラクターは変更できないが,本作ではゲーム内通貨を使えば,名前と種族,性別以外ほとんどの項目を再調整可能。それどころか,PSPo2iでは髪型のバリエーションが増えたりしているため,ついついイメチェンしたくなってしまうほどである。
ぶっちゃけきりがないので,ある程度見た目の設定が終わったら,近接(ハンター),射撃(レンジャー),魔法(フォース),バランス(ブレイバー)の4タイプから好きなものを選択。タイプによってステータスが異なるほか,固有のアビリティもあるのでこの選択は重要だが,ゲーム内でいつでも変更できるので悩む必要はない。
キャラメイクを終えるとエピソードの選択になるが,ここも本作のポイントの1つ。なんと前作の内容であるエピソード1をすべて内包しつつ,追加要素として新ストーリー「エピソード2」が収録されているのだ。物語は時系列的にも繋がっているので,初めての人はできるだけエピソード1から遊ぶことをオススメしたい。
そんな彼女を助けるのは,彼女の体に同化している旧文明人の男性ワイナール。彼はひょうきん性格でもって会話を和やかにしてくれる思慮深い人物で,世間知らずなナギサを陰から支える縁の下の力持ち,というかツッコミ担当といった役回りだ。
彼らコンビの相性は非常に良く,エピソード2の序盤は比較的コミカルかつリズミカルに進んでいく。ストーリーの長さ自体はエピソード1と比べてやや短めだが,エピソードを構成するミッションにさまざまな工夫が施されているのが特徴だ。
オーソドックスなミッションの流れは,ステージを進んで最深部にいるボスをシメるというものだが,エピソード2のストーリーミッションは「ショートカットオーダー」と呼ばれる仲間への指示を使った攻略や,対象物を守りながら戦うといったちょっと特殊な形式のものが多い。
ほかのミッションと差別化が図られたこの形式は,シングルプレイを好むプレイヤーを飽きさせない大切な要素。下手をすると,ストーリーだけ一通りクリアしてやめてしまうという人もいるかもしれないが,はっきり言ってもったいない。何せ本作は,“無限大”に楽しめるRPGなのだから。
※プレイヤーの間で通称「リコトラップ」と呼ばれた。過去の作品で彼女はメッセージカプセルをマップに残していたのだが,実はこれ,調べると読み終わるまで動けなくなってしまうのだ。敵が残っているときに調べてボコボコにされたのはいい思い出……という人もいるのでは。
遊びの幅がインフィニティ
ジャンルがRPGということで,上述したようにストーリーを追っていく楽しみ方が用意されているのは本作の特徴なのだが,本領はやはりオンラインマルチプレイであり,本作が「インフィニティ」である所以もやはりここにある気がする。
オンラインマルチプレイが魅力とうたうPSP用ソフトは多くあるが,そのほとんどはPS3のアドホックパーティといった特殊環境を必要とする。PSPo2iは,用意された専用サーバーを介するため,PSP本体とソフト,そしてインターネット環境さえあればいつでもどこでもオンラインマルチプレイを楽しめるのが大きなポイント。
ポータブルシリーズでは初実装となるビジュアルロビーの効果もあって,遠方のプレイヤーとの距離感は,PSPのほかのタイトルと比べてかなり近い印象を受けた。
肝心のゲーム内容も,従来のフリーミッションやエクストラミッションといった最大4人での協力プレイや対戦に加えて,新たに「インフィニティミッション」が登場したことで,幅が大きく広がっている。
インフィニティミッションは名前どおり無限に遊べるミッションなのだが,無限に遊べるがゆえにちょっと複雑なシステムになっている。誤解を与えることを恐れずにあえて一言で表すならば,2つの異なるミッションを合成することで新たなミッションを生み出せるというシステムだ(関連記事)。
インフィニティミッションには経験値の上昇や獲得メセタの上昇といった特殊効果があるものが含まれているほか,ミッションごとにステージや道中の敵のタイプ,ボスの種類などが異なる。そのミッションでドロップする武器などは,これらの組み合わせで決定されるというが,ボスだけでも40種類程度,それにステージや雑魚敵の組み合わせの分だけバリエーションがあるとなれば,やりこみ度はかなりのもの。マルチプレイにおいてはこのミッションを中心に遊ぶことで,何が出るか分からないワクワク感や強力なボスに出会ったときのドキドキ感を味わえるようになっている。
長い時間マルチプレイを続けていくと,気になってくるのはやはりキャラクターの個性。自分が気に入るキャラを作りたいと思うのはオンラインプレイヤーの性と言ってもいい。本作には,アニメやゲーム,食品,清涼飲料水などさまざまな分野の企業とのコラボレーションによって生まれたユニークなアイテムがいくつも登場する。「ボーカロイド」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」「ファンタ」「ケンタッキー・フライドチキン」など例を挙げるときりがない。こういった企業や作品とのコラボによって生まれた衣装や武器などは,非常に再現率が高くユニークだ。中には髪型まで真似できるキャラクターもいて,ちょっとしたコスプレ気分が味わえる。
ゲームオリジナルのアイテムだけでもかなりの数なのだが,コラボアイテムを交えたキャラのコーディネイトは,まさに無限大。しかも,これからも継続して新しい物が実装されていくというのだから,今後の展開からも目が離せない。
要するに,無限大の組み合わせの中から生み出したお気に入りのキャラで限りなく遊び続けられる,というのが,本作がインフィニティ級である理由の一つなのだろう。
前作の元にした戦闘バランスの調整や細かい改良もバッチリ
また,同じく遠距離を得意とする職業として若干影が薄かった「レンジャー」も,フォースほどではないものの,銃器類に「チャージアタックII」が追加されたことで活躍できるシーンが増えている。
そうすると相対的に近接攻撃は弱体化したのか,というとそんなこともない。一部尖がり過ぎた性能のフォトンアーツが調整されたものの,これまで若干使いにくかった武器などに改良が入っているのが嬉しい。具体的には,ソードの攻撃速度が上昇したことや,アックスの通常攻撃が2回ヒットになったことなどが分かりやすい改良点だ。
実際にプレイすると,インフィニティランクはちょっと凶悪すぎるんじゃないのと思えるほどだが,高レベルプレイヤー向けの要素として導入された「転生」システムとの相乗効果で,やり込み度を上昇させる大きな要因になっている。これまた無限に遊べる要素の一つと言うわけだ。
このほか,誤ってアイテムを捨ててしまうといった事故を未然に防ぐ「アイテムロック」の導入や,チャット時の文字入力に携帯電話風の入力形式が用意された点など,細かい部分への配慮もなされており,プレイをとおして感じる快適さや気持ち良さはかなり上昇している印象を受けた。
このように,新要素の追加だけに留まらず,前作を元にした大胆な調整や細かい改良がしっかりとフィードバックされている点は素晴らしいの一言だが,前作から1年を経たずに発売されたことを考えると,開発者達は休む間もなかったのではないか……と,なんだか余計な心配すらしてしまうのだ。
横にも縦にも進化して「インフィニティ級RPG」に
あえて何か一つ苦言を呈するならば,データ量が多すぎるためか,メディアインストールの有用性が一部発揮されていない箇所があるところ。武器の読み込みなどは高速化されるのだが,マップの読み込みには若干時間がかかるなど,細かい部分だが少しだけ気になった。
だからといってメディアインストールをしないと,武器の持ち替えにもたつくこともあるので,プレイする際はほぼ必須。ただこれらの気になる点は,ダウンロード版を購入することで改善できるので,どうしても気になるという人は,そちらの購入を検討してみるといいかもしれない。
ゲーム内容としては,ミッションを繰り返すタイプのゲーム性が肌に合わないという人意外には,文句なしにオススメ。現在でも,レベル100まで無料でプレイできるという規格外のボリュームを誇る体験版が配信されているので,本稿で興味を持った人はぜひプレイしてみよう。もちろん,そのまま製品版へのデータ引継ぎも可能だ。ただ,肝であるインターネットマルチモードは製品版でしかプレイできない。体験版で好感触を得たなら,早めに製品版に移行して,一緒にミッションにいこうじゃないか。
「ファンタシースターポータブル2 インフィニティ」公式サイト
- 関連タイトル:
ファンタシースターポータブル2 インフィニティ
- この記事のURL:
キーワード
(C) SEGA
- ファンタシースターポータブル2インフィニティ 特典 プロダクトコード「キズナ インフィニティセット」付き
- ビデオゲーム
- 発売日:2011/02/24
- 価格:¥980円(Amazon) / 1001円(Yahoo)